2005年 6月24日

 

牛島総合法律事務所
弁護士 井上 治

一 はじめに

近年、特に国際的なM&A取引に関与する際に、依頼者から環境法の分野についてのより厳密なリーガル・デュー・デリジェンスを要請される傾向が見られる。

 

1972年に発表され、環境問題の重要性について世界に警鐘を与えた「成長の限界―ローマクラブ人類の危機レポート」[1]に、環境問題が加速度的に危機的状況に陥りかねないことを説明するこんな例え話が紹介されている。「あなたが池を持っていて蓮を育てているとする。蓮は1日に2倍の大きさになる。とどめられることなく成長すると蓮は30日で池をおおい尽くしてしまう。しかし長い間、蓮はほんの小さなものだったのでそれが池の半分を覆った時に刈るつもりだったとする。いつその日がくるだろうか。」というものである。

 

答えは29日目である[2]。周知のとおり、世界人口が増加し[3]、経済が発展を続ける一方、地球温暖化[4]、異常気象[5]、砂漠化[6]、オゾン層破壊[7]、天然資源の枯渇化、生物多様性の減少等に見られるように地球環境をとりまく状況は日々悪化している[8]。環境問題は世界規模で喫緊の課題となっているといえる。

 

最近、日本におけるビジネスの分野においても地球環境問題が注目を受けている。例えば、地球温暖化防止に関してロシアが京都議定書の批准を決めたことが衆目を集めており、これにより同議定書は来年2月にも発効する見込みとなり、温暖化ガスの排出権ビジネスといった環境問題に関する新しいビジネスが脚光をあびている[9]。企業において、環境対策は経営コストであり必要悪であるといった消極的な考え方から、CSR(企業の社会的責任)経営により企業の市場競争力の強化を図ろうとするより積極的な動きが本格化してきており[10]、また、SRI(社会的責任投資)ファンドの設立などのようにCSR経営を積極的に評価する動きも見られる[11]。環境問題の重要性が増すにつれ、M&A取引の場面においても、顕在的又は潜在的に大きなリスクの所在する事項としての重要性が増すことは勿論、当該企業の将来的なビジネスを視野に入れた正確な企業価値を把握するため、環境法分野のリーガル・デュー・デリジェンスの重要性も増すものといえる[12]。企業法務実務家としては、かかる変化に対応してゆくことが肝要であると思われる。

 

環境法の分野は関係法令、条例等が多数存し、規制内容も極めて多岐にわたっているため、その全体像をつかむことは容易ではない。本稿は、環境法分野のかかる現状を踏まえて、特にM&A実務の視点から環境法全体を俯瞰し、特に注意すべきと考えられる点について論ずるものであり、これによりM&A実務に携わる法律実務家の一助となることを目的とするものである。また、かかる本稿の目的に鑑み、必ずしも各法の詳細までは踏み込んではいない[13]。言うまでもなく実際の取引においては具体的な買収対象に応じた、より具体的かつ詳細な調査が要求されることとなる。

 

以下では、まず、日本における環境法制定の状況及び環境マネジメント基準について論じ、次に一般的な環境関連法のデュー・デリジェンスの内容と重要性について概観し、最後に主要な環境法ごとに関連するポイントについて論ずることとする。

 

二 日本における環境法制定の状況

日本における環境法の立法状況について概観すると、1960年代後半から1970年代にかけてと、1990年代から2000年代にかけての二つの大きな立法の波が見られる[14]。前者は、高度経済成長に伴う公害被害が日本各地で発生したことに応じた、公害対策に関する一連の立法の動きである。例えば昭和421967)年に公害対策基本法が制定されている。この法律によって初めて事業者、国、地方公共団体が公害防止に対する責務があることが明らかにされ、以後、平成51993)年に環境基本法が制定されるまで、この法律に従って我が国の公害対策が総合的に実施された。また、昭和451970)年のいわゆる公害国会では14の公害関係法の制定・改正が行われ、それ以後も昭和471972)年に制定された自然環境保全法を含め公害防止のための各種法令が制定された。

 

しかし、その後、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代になると、生活排水や自動車の排ガスなどによる都市型・生活型複合環境汚染、廃棄物の増大などが地球規模の環境問題となった。さらにこれらの地球規模の環境問題から、オゾン層破壊、地球温暖化、砂漠化、酸性雨などの地球規模の環境問題に広がっていった。そのため1990年ころ以後、公害対策といういわば局地的、事後的な規制から、管理・計画型化、統合化、国際化を施行する傾向がみられるようになった[15]。例えば、持続可能な発展できる社会を築くために、公害対策基本法と自然環境保全法が発展的に継承され、平成51993)年、環境基本法が制定された[16]。また、同法に引き続き、循環型社会の形成を推進するため、平成122000)年6月に循環型社会形成推進基本法が制定された。同法に関しては、廃棄物処理法の改正や容器包装リサイクル法、家電リサイクル法等のリサイクル関連法の整備が行われている[17]

 

一方、昭和631988)年5月には、特定物質の規制等によるオゾン層保護に関する法律(オゾン層保護法)が制定され、同年10月には地球温暖化対策推進法が制定された。なお平成111999)年7月に制定された特定科学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)などは、有害性の判明している化学物質について、人体等への悪影との因果関係等の判明の程度に係わらず事業者による管理を強化しており、予防法的側面を推し進めるものといえる。

 

環境法の分野においては関連法規が多岐にわたって存在しているが、リーガル・デュー・デリジェンスの際にこれらの多くの法律について調査することに加えて、地方公共団体が制定した条例による規制についての調査も必要となる。実際、環境関連法の分野では、条例は、国の規制ではその地域の環境が維持できない場合に制定されることが多く、その規制の内容が国のものに比べてより厳しかったり、より詳細であったりする場合が多いことから、国の法令よりも重要になるケースも多々存するところである。しかも条例等は非常に数も多く、注意を要する調査項目である[18]。これらの内容は買収対象企業や事業の内容に則して具体的に検討される必要がある。

 

三 環境マネジメント基準の国際規格化の動き

(1) ISO14001の概要

世界的に環境マネジメント基準の国際規格化が進んでいるが、その代表例はISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization[19]の環境管理規格ISO14000シリーズであろう[20]ISOの環境マネジメントシステムであるISO14001は、199691日発行した[21]ISOの環境監査が制度として浸透しつつあり、日本においても急速に普及している[22]

ISO14001における環境マネジメントシステムは、①環境方針、②計画、③実施と運用、④点検及び是正措置、及び⑤経営層による見直しの各項目から構成されている。例えば、環境法遵守に関し、ISO14001においては、組織は、その活動、製品又はサービスの環境側面に適用可能な、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照できるように手順を確立し、維持することが要求されると共に[23]、組織は関連する環境法規制の遵守を定期的に評価するための文書化した手順を確立し、維持するものとされている。また、環境マネジメントに関する文書化についてもルールがあり、組織の関連する各部門及び階層で、文書化された環境目的及び目標を設定・維持することが要求されるものとされ、組織は、外部の利害関係者からの関連するコミュニケーションについて受付け、文書化し及び対応するものとされ、著しい環境側面についての外部コミュニケーションのためのプロセスを検討し、その決定を記録するものとされると同時に、環境マネジメントに関連する文書の所在がわかること、法律上及び/又は情報保存の目的で保管されるあらゆる廃止文書は適切に識別されるされることが要求される。さらに、環境記録の識別、維持及び廃棄のための手順を確立、維持すると共に、環境記録は容易に検索でき、かつ、損傷、劣化又は紛失を防ぐような方法で保管、維持されなければならないとされている。認証が行われれば審査機関に登録される。登録後も登録者の環境マネジメントシステムが維持され、改善されているかチェックするために、登録後1年毎の定期審査と、3年毎の更新審査が要求される。

従って、M&A取引の対象となる企業が、ISO14001の認証を得ている場合、その企業の文書化された記録[24]を検討することによって、当該企業に適用される環境関連法の状況や、環境マネジメント実施状況等を検討することがが可能となる。その意味で、リーガル・デュー・デリジェンスを行うための手がかりとして実務的に重要な資料となる。

(2) ISO14001に関する留意点

ISO14001は、企業が活動を行う際に環境負荷への影響を考えたマネジメントを行う一定のシステムの構築にあり、企業組織が守るべき環境基準の規格ではないことに留意する必要がある。すなわち、環境負荷を低減してゆくシステムが組織的に一定の水準に整備されているか否かが審査されることになるものであって、その成果を審査するものではないし、法的拘束力を有するものでもない。さらに、ISO14001は、あくまで統一的な基準であり、必ずしも具体的企業にとって最善の環境マネジメントシステムを保証するものでもない。従って、M&A取引の対象となる企業が、ISO14001の認証を受けている場合、当該企業において環境関連法令の遵守を含めた合理的な環境マネジメントが行われていることを推測させるものとはなりえても、リーガル・デュー・デリジェンスを軽視することを許容するものではない。

 

(3) 環境報告書等

日本においても、企業への環境ISOの導入が一段落し、取得したISOをどのように活かしていくのかという段階に入っていると考えられる[25]。事実、環境報告書、環境IRなどを含めた適切な情報公開の仕組み作りが急がれている。その一例が、企業による情報公開を推進する手助けとしての環境報告書の第三者レビューである。環境報告書を作成する企業は増加しており、デュー・デリジェンスの際には環境報告書、第三者レビューの存否・内容について検討することが必要である。また、近年いわゆるCSR報告書を発行する企業も相次いでおり、これらの資料も適宜検討する必要があろう[26]

 

四 環境法関連デュー・デリジェンスの内容とその重要性

環境法に関連するリーガル・デュー・デリジェンスの対象項目は当該M&A取引の対象会社の業種や取引形態に応じて変わりうる。また、環境マネジメントの実施状況に応じても変わりうる。前記のISO14001の認証を得ているような場合、通常、環境マネジメントに関する文書が揃っているはずであるからそれらの各文書を検討することになろう。その上で、当該企業における環境マネジメントシステムの実施状況、あるいは、環境マネジメントシステムからの逸脱の状況等について調査していくことになろう。あわせて追加資料の要求、質問票による問い合わせ、対象会社の役員や従業員に対するインタビュー等を実施することになろう。他方、ISO14001の認証を得ていない場合、当該会社における環境マネジメントに関する関連文書の提出を求めた上で、質問票による問い合わせ、対象会社の役員や従業員に対するインタビュー等を実施することになろう。いずれの場合であっても、各環境関係法について、その重要性に応じて各法についての個別的な調査が必要な場合もあろうし、環境関連法一般にわたる包括的な調査で足りる場合もあろう。また、現地調査や、コンサルタント、不動産鑑定士その他の専門家による調査、オピニオンの取得等も事案に応じて行う又は依頼する必要があろう[27]

 

リーガル・デュー・デリジェンスの結果に基づいて、取引の形態を変更する等が必要となる場合もあろう。例えば偶発的債務の承継を避けるために合併、株式譲渡、会社分割等の方法によらず営業譲渡を用いることを検討すべき場合もある。環境汚染物質が発見された場合、必要に応じその除去費用に対する取り決めも必要となろう。

 

リーガル・デュー・デリジェンスはM&A取引における顕在的又は潜在的な法的リスクを適切に評価するために重要であるが、これまで環境法に焦点をあてて網羅的かつ体系的なデュー・デリジェンスを行なうことは必ずしも一般的ではなかったように思われる[28]。もちろん従前から環境法についてのデュー・デリジェンスも実施されてきたが、実務的にはPCBやアスベスト等について調査する他は、表明・保証条項や補償条項において環境に関する包括的な条項を設けることで対応することも多くみられたところである。環境汚染の調査、特定を十分しないままM&A取引を実行した場合、将来的にこれらが発見されることにより汚染拡大防止や汚染除去等の費用、環境問題により生じる周辺住民・従業員等の健康・財産への被害に関する損害賠償請求等の費用、環境法関連法規に違反した場合の行政からの罰則や指導・命令に応じる義務、環境問題による信用・企業イメージの低下や風評被害、所有資産の価値の低下等様々なリスクが存する[29]。環境関連法の多くにおいて、刑事罰が規定されていることにも注意すべきである。また、裁判の場面においても、また取引時に確認されていなかった環境汚染物質が後に発見されたような場合、それが買収取引以前に発生したか否かの立証が困難となりかねないなどのリスクもある。

 

五 企業買収の場面における具体的な調査内容

主要な環境法令について、M&A取引におけるリーガル・デュー・デリジェンスという視点からみたポイントについて概観する。なお、各項において論ずる環境法令について、当該項における該当法、該当施行令についてはそれぞれ「法」、「令」という。最終改正は本稿執筆時点のものであるが、以下に明らかなとおり環境法分野においては近年とみに新法の制定、旧法の改正の動きが著しい。リーガル・デュー・デリジェンスの際には直近の関連法について慎重に調査する必要がある。

 

1 環境一般

(1) 環境基本法

平成51993)年1119日、地球化時代の環境政策の新たな枠組みを示す基本的な法律として、公害対策基本法と自然環境保護法が発展的に承継され環境基本法が公布され、同日施行された。同法によれば、「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいうとされ(法22項)、「公害」とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生じることをいうとされる(法23項)。なお、本法は平成162004)年62日に最終改正がなされている。

 

環境基本法は、環境保全のための基本理念にのっとり、国や地方公共団体のみならず、事業者に対しても公害防止と自然環境の適正保全のための必要な措置や製品等が廃棄物になった場合に適正な処理ができる措置をとり、環境負担低減に資する原材料や役務等を利用し、国又は地方公共団体の施策へ協力する責務を有するとするが(法8条)、具体的な施策や規則は個別法で規定されるため、勧告、命令、罰則等の規程はない。

 

その意味で、基本法としての一般的な重要性は格別、現状においてリーガル・デュー・デリジェンスにおいては特段問題とならない。むしろ具体的な各規制内容について検討する必要がある。

 

(2) 環境影響評価法

環境影響評価(環境アセスメント)は、環境に影響を及ぼす事業について、その実施前に、事業者自らがその事業に係る環境への影響を調査・予測・評価することを通じ、環境保全対策を講じるなど、その事業を環境保全上より望ましいものとしていく仕組みである。制度を世界で最も早く導入したのは米国で、昭和441969)年に制定された国家環境政策法で環境影響報告(環境アセスメント)を行うことが義務付けられた。日本では環境基本法において国の施策として環境影響評価が法律上位置付けられ(環境基本法20条)、平成91997)年613日に環境影響評価法が制定され、平成111999)年612日から本格的に施行された。本法は、平成162004)年331日に最終改正がなされている。

 

法の定める第一種事業と第二種事業に該当する事業者には一定の要件のもとに環境影響評価を行うことが要求される。「第一種事業」とは、事業規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるもので、必ず環境影響評価を行うことが必要となる事業をいう。「第二種事業」とは、第一種事業に準じる事業規模で、環境影響評価を行うかどうかの判定(スクリーニング)を個別に行う事業をいうとされる(法2条)。第一種事業の規模は施行令第1条で定め、その全てが対象事業である。第二種対象事業の規模は、第一種事業の0.75以上とされ(令5条)、国が、原則として都道府県知事の意見を聞いて、環境影響が著しいものになるおそれがあるものを対象事業とする(法2条、4条)。

 

対象事業の種類は、①高速自動車国道等の道路の新築・改築、②ダムの新築・改築その他の河川工事、③鉄道の建設・改良、④飛行場・その施設の設置、変更、⑤発電所の設置・変更工事、⑥廃棄物最終処分場の設置等、⑦公有水面の埋立て・干拓、⑧土地区画整理事業、⑨新住宅市街地開発事業、⑩工業団地造成事業、⑪新都市基盤整備事業、⑫流通業務団地造成事業、⑬宅地の造成事業、その他港湾計画であり、これらのうち国が実施し、又は免許等で国が関与する事業が対象となる(法2条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスの観点からみると、この法律が適用される対象事業は、13種と限定されており、かつ、国が実施するか、国が免許等で関与する事業だけである。同法においては、事業者は、最終的な環境影響評価書を作成したことを公告するまでは、対象事業を実施しえないこととされている(同法31条)ので、M&A取引が対象事業に関連する場合には、場合により環境影響評価の手続きが履践されているか調査する必要もあろう。また、対象事業の免許等を行う行政機関は、環境影響評価書等に基づき、環境保全についての適正な配慮がなされているかを審査した上で、免許等を拒否し、又は必要な条件を付けることができるとされている(同法3335条等)から、免許等の調査の際には条件の内容等についても検討する必要があろう。環境影響評価法には罰則がないが、各事業を実施する場合は、該当する事業法に罰則が規定されているので注意を要する。

 

(3) 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(公害防止組織整備法)

公害防止組織整備法は、昭和461971)年610日に公布され、即日施行された(法3条ないし6条を除く)。本法は、平成162004)年526日に最終改正がなされている。

 

この法は、公害防止統括者等の制度を設け、「特定工場」における公害防止組織の整備を図り、公害の防止に役立てることを目的とする(法1条)。「特定工場」とは、製造業(物品の加工業を含む)、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の工場で、①「ばい煙発生施設」、「汚水等排出施設」又は「ダイオキシン類発生施設」が設置されている工場のうち、政令等で定めるもの、②「騒音発生施設」又は「振動発生施設」が設置されている工場のうち、指定された地域内にあるもの、③「特定粉じん発生施設」又は「一般粉じん発生施設」が設置されている工場をいう(法2条、令1条)。特定工場を設置している者(特定事業者)は、公害防止統括者、公害防止主任管理者(有資格者)、公害防止管理者(有資格者)及びこれらの代理人(以下、総称して「公害防止責任者等」という。)を選任し、30日以内に都道府県知事に届け出なければならない。都道府県知事は、公害防止責任者等が、この法律その他の関係法令の規定に違反したときは解任を命ずることができる(法3条ないし8条、10条)。

 

この法律は、製造業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の4業種のみに適用され、かつ、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法、振動規制法、ダイオキシン類対策特別措置法の特定な施設を設置している工場を有する事業者のみが規制される。そのため、悪臭、地盤沈下、土壌汚染等の公害を発生させるおそれのある工場や廃棄物処理施設関係は、この法律の対象になっておらず、それらについては個々の法律で対応している[30]

 

この法律には罰則の定めがある(法15条の2ないし第19条)。例えば公害防止責任者等の選任を怠った場合、50万円以下の罰金に処するものとされ(法16条)、違反行為者と法人又は使用者の両者が罰せられる両罰規定も存する(法18条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとしては、当該取引が特定工場に関するものである場合、公害防止責任者等の選任に関する事項、公害防止責任者等の職務遂行状況に関する事項、所轄官庁からの通知・命令等の有無・内容、命令等の違反の事実等について調査すべきこととなろう。

 

(4) 地球温暖化対策推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)

平成61994)年3月、平成41992)年6月の地球サミットで署名された「気候変動に関する国際連合枠組条約」が発効し[31]、それに基き平成91997)年12月に二酸化炭素等の温室効果ガスの削減についての法的拘束力のある約束等を定めた「京都議定書」が採択された[32]。この京都議定書を踏まえて、平成101998)年10月に地球温暖化対策推進法が制定された。さらに、平成142002)年213日、政府の地球温暖化対策推進本部は京都議定書の批准を決め、必要な国内担保法として地球温暖化対策推進法を、京都議定書の数値目標を的確かつ円滑に達成させるため全面的に改正した。本法は、平成142002)年67日に最終改正がなされている。

 

温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素等であり(法2条)、国、地方公共団体のほか、事業者についても法の規制対象とされている。但し、現状では産業界の反対もあり、規制的なものではなく責務規定となっている。ただ、数値目標が達成できないときは、施策を見直すことになっている[33]。政府は2005年までにこの法律の施行状況を検討し、必要な措置を講ずるとされている(附則3条)[34]。なお、現在、この法律に罰則の定めはないが、京都議定書の発効を控え今後の動きには注意を要する。

 

リーガル・デュー・デリジェンスの内容としては、従前、特段の問題とはならなかったが、今後は規制されることが予想される[35]。近い将来の動きとして、京都議定書が来年初旬に発効する見込みであることを踏まえ、日本政府は大企業を中心に温暖化ガスの排出量を国に報告することを義務付け、公表する方針であるとされる[36]。さらに、日本政府は代替フロンガスやメタンガスなど二酸化炭素以外の温暖化ガスを追加的に削減する方針を出しているとされる[37]。この意味でも、今後の動向には注意を要する。なお、場合により将来の規制を予想し、あるいは温暖化ガス排出権取引等の新たなビジネスに関連する事項として温室効果ガスの発生状況や排出権の取引規制等について調査する必要等もでてくるであろう。

 

(5) 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)

オゾン層保護法は、オゾン層破壊物質の生産を削減し、機器からの漏洩を防止するため、昭和631988)年520日に公布され、同日から施行された。最終改正が、平成122000)年531日になされている。

 

オゾン層を破壊するフロン、ハロン、臭化メチル等の物質(特定物質)を製造する者、輸入しようとする者、輸出を行った者、業として使用する者が対象となる(法4条、6条、17条、19条)。特定物質の製造、輸入、輸出に関しては、経済産業大臣からの許可・承認の取得、同大臣に対する届出等の規制を受けることになる(法4条ないし19条、24条)。特定物質の使用事業者は、一定の努力義務を負い、主務大臣から指導・助言を受ける(法19条、20条)。

 

本法には罰則が定められている(法30条ないし34条)。例えば、必要な許可を受けなかったり一定の指定に反したりして特定物質の製造を行った場合は3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が課される。両罰規定についての定めもある(法32条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとしては、オゾン層破壊物質の製造、輸入、輸出、貯蔵、排出、使用等の有無・内容、所轄官庁からの許可・承認・確認等の有無・内容、所轄官庁からの措置、処分、通知、指示、勧告、指導、助言等の有無・内容、監督官庁への通知・届出等の有無・内容等について調査する必要があろう。

 

(6) 特定製品にかかるフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)

フロン類については、もともと、オゾン層破壊物質として国際的に問題となり、モントリオール議定書により、世界的にフロン類の生産等は規制され、日本においてもオゾン層保護法)によって、クロロフルオロカーボン(CFC)は既に1996年から生産全廃となり、今後ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)についても生産規制が予定されている[38]。かかる背景のもと、オゾン層の破壊や地球温暖化を招くフロンを大気中にみだりに放出することを禁止するとともに、機器の廃棄時における適正な回収及び破壊処理の実施等を義務づけたフロン回収破壊法が平成131999年)6月に制定され、平成142000年)41日に施行された[39]。本法は、平成162004)年62日に最終改正がなされている。

 

フロン類とは、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)の3種類をいう(法2条)[40]。冷媒としてフロン類が充填されている業務用のエアコンディショナー及び業務用の冷蔵機器及び冷凍機器(自動販売機を含む。)(第一種特定製品)並びに冷媒としてフロン類が充填されている自動車に搭載されているエアコンディショナー(第二種特定製品)が対象製品(特定製品)となる(法2条)。

 

事業者は、フロン類排出抑制の指針に従い、特定製品が廃棄される場合に、フロン類が適正かつ確実に回収され、破壊されるために必要な措置、その他、特定製品に使用されているフロン類の排出の抑制のための措置を講じなければならない(法4条)。第一種特定製品を廃棄するときは第一種フロン業者にフロン類を引き渡さなければならず(法19条、56条)、第二種特定製品を廃棄するときは、第二種特定製品取引業者に引き渡さなければならない(法35条)。フロン類回収業者、特定製品引取業者、自動車製造業者、フロン類破壊業者、特定製品製造業者については所轄官庁への登録、所轄官庁による指導、助言、勧告、命令等の規制の対象となる。

 

家庭用エアコン・冷蔵庫・冷凍庫は、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の対象となっているので本法の対象から除外されている。なお、第二種特定製品からのフロン類の回収・破壊については、使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)のカーエアコン等からのフロン類の回収に関する規定の完全施行日(平成172005)年11日)に、自動車リサイクル法の枠組みに組み入れられることになる。

 

本法には罰則が定められている(法82条ないし87条)。例えば、業務の停止の命令に違反した者、許可を受けないでフロン類の破壊を業として行った者、特定製品に冷媒として充てんされているフロン類を大気中に放出した者などは1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するものとされる(法82条。直罰規定)。両罰規定も存する(法86条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとしては、M&A取引対象企業等がフロン類回収業者、特定製品引取業者、自動車製造業者、フロン類破壊業者、特定製品製造業者等の場合は所轄官庁への登録、所轄官庁による指導、助言、勧告、命令等の規制の対象となるので調査する必要がある。そうでない場合でも、M&A取引の対象にフロン類が含まれているか否か確認の上、含まれている場合には所定の措置、廃棄等がなされているのか等について調査する必要があろう。

 

(7) エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)

省エネ法は昭和541979年)年622日に公布され、同年101日から施行された。その後、日本が京都議定書の批准を決定したこともあり、平成142002)年1211日に改正された[41]

 

工場におけるエネルギー(燃料及びこれを熱源とする熱及び電気をいう。)使用量が一定量以上の事業者については、その使用量を経済産業大臣に届け出て指定を受けることや(法6条、12条の2)、当該工場毎にエネルギー管理者ないしエネルギー管理員を選任して、経済産業大臣に届け出ること(法7条ないし10条、10条の212条の3)などが要求される。建築物についても建築主の努力義務(法13条)のほか、一定の建物については所轄行政庁への届出等も要求され(法15条の21項)、届出に係る事項について指示に従わなかった場合は公表される(法15条の23項)。

 

本法には罰則が定められている(法27条の2ないし31条)。例えば、エネルギー管理士免状を受けているものからエネルギー管理者を選任していなかったり、主務大臣の命令に違反したりした場合、100万円以下の罰金が課される(法28条)。両罰規定もある(法30条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとしては、一定量以上のエネルギーを使用する工場や建築物が取引対象に含まれる場合、エネルギー管理者選任の有無・内容、所轄官庁からの措置、処分、通知、指示、勧告、指導、助言等の有無・内容についても調査する必要があろう。

 

(8) その他の環境一般関連法令

上記のほか、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法、エネルギー政策基本法、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法、環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律などが存する。事案に応じ、これらに関する調査も必要となろう。

 

2 大気保全

(1) 大気汚染防止法

大気汚染防止法は、公害対策基本法の実施法として、昭和371962)年に制定された「ばい煙の排出の規制等に関する法律」の再検討のうえにたって昭和431968)年610日公布された後、大気汚染の悪化に従い規制が度々強化され、今日まで数多くの改正がなされている。平成16200469日に最終改正が行われている。

 

この法律は、①工場及び事業場における事業活動並びに建築物の解体等に伴うばい煙並びに粉じんの排出等を規制し、②有害大気汚染物質対策の実施を推進し、③自動車排出ガスに係る許容限度を定めること等により、④大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、⑤大気の汚染に関して人の健康に係る被害を生じた場合の事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とするとされる(法1条)。

 

規制は多岐にわたるが、リーガル・デュー・デリジェンスとの関係で問題となるのは、主にM&A取引対象企業等が以下に該当する場合である。

燃料等の燃焼に伴い発生するいおう酸化物、燃料等の燃焼又は熱源としての電気の使用に伴い発生するばいじんその他の有毒物質(カドミウム、鉛、塩素及び塩化水素、フッ素、フッ化水素及びフッ化珪素、窒素酸化物等。法2条、令1条)(ばい煙)を大気中に排出する者(法6条)

物の合成、分解等の化学的処理に伴い発生する物質のうち、人の健康又は生活環境に係る被害を生じるおそれがあるものとして政令で定める特定物質(アンモニア、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、ベンゼン等28物質[42])を発生する施設(ばい煙発生施設を除く。)を工場・事業場に設置している者(法17条、令10条)

一般粉じん(物の破砕・選別等の機械的処理又はたい積に伴い発生し、又は飛散する物質であって、特定粉じん以外のもの)を大気中に排出し、又は飛散させる者(法18条)

特定粉じん(粉じんのうち、石綿(アスベスト)等人の健康に係る被害を生じるおそれがある物質で政令で定めるもの)を大気中に排出し、又は飛散させる者(法18条の6

特定工事(特定粉じん排出等作業を伴う建設工事)を施工しようとする者(法18条の15

特定工事の注文者(法18条の19

事業者(法18条の21

事業活動に伴う健康被害物質(ばい煙、特定物質、粉じん)の大気中への排出により、人の生命又は身体を害した事業者(無過失責任。法25条ないし25条の6

指定物質(政令で定めるベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン)排出施設を設置している事業者(附則9条)

 

上記①ないし⑤に該当する場合、所定事項の都道府県知事への届出、通知が要求され、都道府県知事は一定の必要な措置等を命じることができる(法6条ないし18条の18)。上記⑥について注文者は施工者に対し作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮すべきものとされる(法18条の19)。上記⑦について、事業者は、その事業活動に伴う有害大気汚染物質の大気中への排出・飛散の状況を把握し、排出・飛散を抑制するための措置を講ずるようにしなければならないとされる(法18条の21)。上記⑧の賠償責任は無過失責任であるので注意を要する(法25条ないし25条の6)。上記⑨について、当該事業者はその指定物質の排出・飛散を早急に抑制すべきものとされ、都道府県知事は、必要な勧告を行うことができる(附則9条ないし13条、令附則3条ないし6条)。

 

本法には罰則が定められている(法33条ないし37条)。例えば、一定の命令違反の場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される(法33条)。両罰規定も存する(法36条)。なお、排出基準違反のばい煙排出禁止(131項)、特定工場等における総量規制基準違反の指定ばい煙排出の禁止(13条の21項)違反の処罰は「直罰規定」であり、都道府県知事による改善命令等の手続きを経ず、排出基準違反の排出がそのまま処罰対象とされている(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)。また、都道府県が政令に定めるところによって条例で定める上乗せ排出基準は、国の排出基準に代えて適用されるもので、上乗せ基準違反に対しては、上記直罰規定、改善命令等の規定が直接適用される[43]

 

リーガル・デュー・デリジェンスとしては、M&A取引の対象企業等が上記①ないし⑤に該当する場合には、都道府県知事への届出の状況、措置の有無等について調査すべきことになるし、上記⑥ないし⑨に該当する場合は各所定の義務の履行状況について調査すべきことになろう。

 

(2) その他の大気保全関連法令

自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOxPM法)などがある。事案に応じて、これらに関する調査も必要となろう。

 

3 水質保全

(1) 水質汚濁防止法

日本における水質公害の歴史は古く、明治初期に足尾銅山の坑内排水が渡良瀬川に流出して水稲に被害を与えたことが社会問題化した。その後、昭和301955)年ころから水俣病、イタイイタイ病などの公害事件が発生した。昭和331958)年12月に「公共用水域の保全に関する法律」と「工場廃水等の規制に関する法律」が制定されたが、昭和451970)年の公害国会においてこれら2法が統合されて同年1225日水質汚濁防止法が制定された。なお、最終改正は平成16200469日になされている。なお、この法律の規定は、放射性物質による水質の汚濁及びその防止については適用しない。鉱山施設、電気工作物、海洋施設等については、鉱山保安法、電気事業法、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の定めるところによる。

 

この法律には罰則が定められている(法30条ないし35条)。例えば、排出基準に関する命令違反には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される(法30条)。また、排水口での排出基準違反は、過失の有無にかかわらず罰せられる(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金。法31条)。しかも直罰規定で、両罰規定(法34条)である。総量規制基準の遵守義務(法12条の2)違反、特定地下浸透水の浸透禁止(法12条の3)違反に対しては、直罰規定はない。

 

リーガル・デュー・デリジェンスの観点からみると、水質汚濁防止法によって規制の対象となるのは、主にM&A取引対象企業等が以下に該当する場合である。

特定施設を設置する工場又は事業場から公共用水域に水を排出する者(特定事業場の設置者)(法5条)。なお、特定施設とはカドミウムその他の人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める26の有害物質[44]を含むか、化学的酸素要求量その他の水の汚染状態(熱によるものを含む)を示す項目として政令で定める生活環境項目に関し、生活環境に係る被害を生じるおそれがある程度である汚水又は排水を排出する施設で政令で定めるもの(100以上の施設が指定されている。)とされる(法2条、令1条ないし3条)。

工場又は事業場から地下に有害物質使用特定施設に係る汚水等を含む水を浸透させる者(法5条)。

貯油事業場等の設置者(法14条の2

 

上記①ないし③に該当する場合、所定事項の都道府県知事への届出、通知が要求され、都道府県知事は一定の必要な改善、措置等を命じることができる(法5条ないし14条の3)。上記①、②について、当該事業者は有害物質を含む汚水等を排出し、地下への浸透により人の生命又は身体を害したときはその損害を賠償する無過失責任を負うものとされる(法19条ないし20条の5)。

 

排水基準は、特定事業場からの排水の規制を行うに当たって排出水の汚染状態について汚染指標ごとに定められた許容限度であり、すべての公共用水を対象とし、国が環境省令で定め、一律に適用される基準(一律基準)と、都道府県が適用する水域を指定して条例で定める上乗せ基準がある(法33項)[45]

 

(2) 下水道法

高度経済成長期の産業の発達と都市人口増加による、河川や海などの公共用水域の汚染を防止するために下水道の整備を促進するよう、昭和331958)年424日に下水道法が制定された。平成152003)年7月24日に最終改正がなされている。工場や事業場からの排水を、河川や海域などの公共用水域でなく、下水道に排除している場合は、水質汚濁防止法ではなく、下水道法が適用される。その場合であっても、排出水の地下浸透や地下水の汚染に関しては、水質汚濁防止法が適用される。条例で上乗せ、横出し基準があるので注意を要する[46]

 

本法には罰則が規定されている(法45条ないし51条)。例えば、公共下水道、流域下水道又は都市下水路の施設を損壊し、その他公共下水道、流域下水道又は都市下水路の施設の機能に障害を与えて下水の排除を妨害した場合、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されうる(法45条)。一定の命令違反の場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されうる(法46条)。両罰規定も存する(法50条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスの観点からみると、下水道法によって規制の対象となるのは、主にM&A取引対象企業等が以下に該当する場合である。

公共下水道の排水区域内の土地所有者、使用者、占有者(法10条)

継続して政令で定める量50/日以上)又は水質の下水を排除して、公共下水道又は流域下水道を使用する者(法11条の225条の10、令8条の2

特定施設(水質汚濁防止法第2条第2項に規定する特定施設又はダイオキシン類対策特別措置法第12条第1項第6号に規定する水質基準対象施設)の設置者(法11条の2

処理区域内で、くみ取り便所が設けられている建築物を所有する者(法11条の3

都市下水路又はその地下に施設等を設ける者(法29条)

政令で定める量(100/日)以上等の下水を同一都市下水路に排除する工場、事業所等(法30条、令21条)

 

前述のように、工場や事業場からの排水を下水道に排除している場合であっても、排出水の地下浸透や地下水の汚染に関しては水質汚濁防止法が適用され、人の生命・身体を害した時は、事業者の過失の有無にかかわらず無過失責任を負う。

 

(3) 浄化槽法

昭和451970)年の公害国会において、水質汚濁防止法の制定、下水道法の改正がなされ下水道の整備が推進され、公共用の水域や海域の水質の保全が進められたが、さらにその保全のためには浄化槽の排水の管理が必要とされ、昭和581983)年518日に浄化槽法が制定された。なお、本法は平成162004)年62日に最終改正がなされている。

本法には罰則が定められている(法59条ないし67条)。両罰規定も存する(66条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスの観点からみると、浄化槽法によって規制の対象となるのは、主にM&A取引対象企業等が以下に該当する場合である。

浄化槽を使用する者(法3条)

浄化槽を設置し、又はその構造・規模の変更をしようとする者(法5条)

浄化槽管理者(法10条)

浄化槽製造業者(法13条)

浄化槽工事業者(法21条)

浄化槽清掃業者(法35条)

条例による浄化槽保守点検業者(法48条)

 

浄化槽保守点検業者を条例によって定めていない都道府県では、浄化槽の保守点検を浄化槽管理士に、又は浄化槽の清掃を浄化槽清掃業者に委託することになる(法103項)。また、水質に関する検査は、指定検査機関で受けなければならない(法7条、11条)[47]

 

4 土壌・農薬

(1) 土壌汚染対策

昭和501975)年、東京都における六価クロム鉱さい埋立てによる土壌汚染の環境汚染が大きな社会問題となったことから、昭和511976)年、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正により廃棄物の最終処分基準等が整備された。さらにトリクロロエチレン等有機塩素系化合物による土壌経由の地下水汚染が問題となったことを受け、平成元(1989)年6月水質汚濁防止法の一部改正により有害物質の地下浸透が禁止された。主にこれらの法制度により土壌汚染の未然防止が図られていた。その他、環境庁による行政指導により土壌汚染対策が進められてきたが、近年、企業の工場跡地等の再開発等に伴い重金属、揮発性有機化合物等による土壌汚染が顕在化してきており、特に最近における汚染事例の判明件数の増加は著しい。土壌汚染対策に関する法制度がなかったことから、対策確立への社会的要請が強まっていた。かかる背景の下、土壌汚染対策法が平成142000)年529日に公布され、翌15215日から施行されるに至った。

 

なお、土壌汚染対策については、米国のスーパーファンド法[48]がよく知られているが、同法によれば、汚染施設の現在の所有者・管理者は責任当事者として浄化責任を負うので、企業買収に際しては環境汚染に関する情報を正確に知り、対処することが必要となっている[49]。日本における土壌汚染対策法は、都道府県知事に、土地の所有者等(所有者、管理者、占有者)に対する汚染の除去等の措置を命じることができる旨規定するに至っているが(法71項)、その意味でスーパーファンド法と軌を一にしているといえる。これにより日本においてもM&A取引に際して土壌汚染に関するリーガル・デュー・デリジェンスの重要性も増している。既に、産業界では、汚染対策ビジネスに乗り出す企業が現れる一方で、土地所有者の側でも自主的に土壌調査を行う動きが広がっている[50]。多面、不動産鑑定評価実務の現場からは、土壌汚染地評価の問題は「底なし沼。できれば踏み込みたくない」[51]とか、土壌汚染は不動産の新規かつ大きな減価要因となっており不動産鑑定評価の現場においては動揺と混乱が広がっているとの[52]、悲鳴に近い声も聞かれる。

 

法の対象となる物質(特定有害物質)は、土壌に含まれることに起因して健康被害を生ずるおそれがある物質であり、鉛、砒素、トリクロロエチレン等の25物質[53]が指定されている(法2条1項、令1条)。これらの25物質は、土壌に含まれることにより、地下水に溶出してその飲用等に伴う健康被害を生ずるおそれがある。また、このうち、カドミウム、六価クロム、シアン、水銀、セレン、鉛、砒素、ふっ素、ほう素の9物質については、汚染土壌を直接摂取(摂食又は皮膚摂食)することによる健康被害のおそれも認められる。

 

本法には罰則が定められている(法38条ないし42条)。例えば、所定の都道府県知事の命令に違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられうる(法38条)。両罰規定も存する(42条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスの観点からみて、土壌汚染対策法によって規制の対象となるのは、主にM&A取引対象企業等が以下に該当する場合である。

使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者、管理者又は占有者(所有者等)(法31項)

土壌の特定有害物質による汚染により、人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準に該当する土地の所有者等(法41項、71項)

土壌の特定有害物質による汚染行為を行った者(相続、合併又は分割によりその地位を承継した者を含む。)(法71項但書)

 

上記の具体的事案への適用に関しては様々な論点が存する。例えば、「所有者等」の具体的内容についてみると、まず「所有者」については、共有者の全てがこれに該当するほか、土地の所有権を譲渡担保により形式上譲り受けた場合の債権者や、所有権留保売買における売主等も本法上の所有者に該当するとされる。但し、所有者は現在の所有者に限られており、過去のある時点で所有者であった者は、汚染原因者に該当しない限り、本法上の義務の主体とはならない。「占有者」には、土地の賃借人、使用借主、受寄者、質権者等も含まれる。また、土地の所有権を譲渡担保により債権者に形式上譲渡したが、従前どおりの使用・占有形態を維持している債務者等は占有者にあたるであろうとされる[54]。建物の借家人が土地の占有者に該当するかどうかについては争いがあるが、「占有者」に含まれると解する見解もある[55]

 

「管理者」の定義は、必ずしも明らかでない。典型的には、土地の所有者が破産した場合に、当該破産者の財産を管理する管財人がこれに該当すると説明されているが、これ以外にどのような者が「管理者」に含まれるかは立法段階で必ずしも明らかにされてこなかった。本法において管理者を含む「所有者等」が第一次的な責任主体とされたのは、それが土地の掘削等を実施するために必要な権原を有し、調査・措置義務の主体として適切であると考えられたためであるが、一定の権原に基づき、当該土地の保存、変更、処分等に事実上又は法律上の支配力を行使しうる者であれば、所有者や占有者に該当しない場合であっても、かかる命令を実施することが可能かつ適切な場合がある。以上からみて「管理者」とは、契約関係や管理の実態等から判断して、土地の掘削等を伴う調査その他の措置を実施するに足る権原を有するものと理解できるとの指摘もある。なお、以上の要件に加えて当該管理・支配を及ぼす者において、当該土地の利用に関し、自らの利益のためにする意思が必要かどうかという点について見解が分かれている。しかし、本来の利益帰属主体が迅速に対応できない場合に、当該利益の帰属主体に変わって必要な調査・措置等を構図べき場合があることも否定できない以上、少なくとも自己の責任において物の保存、変更、処分等の支配力を行使する者は、たとえ直接の利益を自らに帰する意思がない場合にも「管理者」としての責任を問われる可能性があると思われるとの指摘もある[56]

 

M&A取引との関係においては、都道府県知事が、指定区域内の土地の土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあると認めるときは、当該土地の所有者等に対し、汚染の除去等の措置を構ずべきことを命ずることができるとされた点が特に重要である[57]。但し、汚染原因者が明らかな場合であって、汚染原因者に措置を講じさせることにつき所有者等に異議がないときは、都道府県知事は、汚染原因者に汚染の除去等の措置を構ずべきことを命ずることができる(法7条)。また、土地の所有者等が除去等の措置を講じたときは、汚染原因者に対して汚染の除去等の措置に要した費用を請求することができる(法81項)[58]。但し、除去等の措置を実施し、かつ、汚染原因者を知ったときから3年間又は措置を講じたときから20年間で権利が消滅するので注意すべきである(法82項)。

 

上記のほか、土地の譲渡・移転を伴うM&A取引の当事者において想定されるリスクとしては以下のようなものが考えられる[59]

汚染された土地を購入した土地所有者については、その善意・悪意を問題とせずに本法によって責任を負担することになりうる。

予め除去等の措置を講じても、問題となる基準値を下回らないとき、あるいは、取引後に基準値が変更されたときは、将来再度必要措置を講ずる命令を受ける可能性がある。

取引時に調査をしなかったため汚染物質が後に判明することがある。

取引時に調査をしたが汚染物質が判明しないことがある。

売主が排出していた物質とは異なる排出物質が買主となったものによって排出されることがある。

取引の際には問題となる基準に達していなかったが、その後の汚染物質の蓄積によって、基準値に達してしまうケースも想定される。

宅地に転用するなど利用形態が変更される場合、売主が想定していない厳しい基準が適用される可能性がある。

 

土壌汚染対策法は、汚染の可能性のある土地についての調査を要求している(法3条、4条)。すなわち、使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者等は、当該土地の土壌汚染の状況について、環境大臣が指定する者(指定調査機関)に調査をさせて、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。また、都道府県知事は、土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあると認めるときは、当該土地の土壌汚染の状況について、当該土地の所有者等に対し、指定調査機関に調査させて、その結果を報告すべきことを命じることができる(法4条)。

 

また、本法のみならず、地方自治体の条例が調査義務・汚染除去義務を課していることがある。今後さらに条例の制定や基準の厳格化が進む可能性もあるので検討が必要となりうる。

 

5 騒音

(1) 騒音規制

騒音被害は局地的であることから当初は地方自治体が独自に条例を制定し、規制を行ってきた。しかし、都市化が進行するにつれ全国的な問題へと発展していった。かかる背景のもと昭和421967)年に制定された公害対策基本法の精神にのっとり、昭和431968610日に騒音規正法が制定され、工場騒音、建築作業騒音について一元的な騒音対策が進められることになった。なお最終改正は平成162004)年69日である。

 

騒音、振動、悪臭は周辺住民からの苦情が多い公害であり、たとえ法的基準以下であっても一度苦情が発生すると周辺の共生上問題となるため、未然予防が重要となる。法的には測定は事業者の義務となっておらず、市町村長が行うことになっているが、基準を遵守するためには遵守状況を確認する必要があり、そのために事業者による測定が必要となる。規制基準を超過する遵守義務違反をしても直ちに罰則にはかからず、市町村長が周辺の生活環境が損なわれると認めたときに改善勧告を出し、これに従わない場合に改善命令を出す(法12条、15条)。命令違反には罰則がある(法29条、30条)。また、騒音に係る環境基準が定められている[60]

 

本法には罰則の定めがある(法29条ないし33条)。例えば、改善命令違反があった場合、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科されうる(29条)。その他、両罰規定の定めもある(32条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスについてみると、本法によって規制の対象となるのは、主にM&A取引対象企業等が以下に該当する場合である。

指定地域内に著しい騒音を発生する施設であって政令で定めるもの(特定施設)を設置する工場又は事業場(特定工場等)を設置している者(法5条)

指定地域内において特定建設作業(建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音を発生する作業であって政令で定めるもの)を施工しようとする者(法14条)

 

上記①ないし②に該当する場合、当該事業者は、騒音の基準を遵守しなければならず(法5条、12条、13条、15条)、特定施設を設置しようとする場合は工事開始前30日前まで、特定建設作業をしようとする場合は作業開始7日前までに市町村長に届け出なければならない(法6ないし11条、14条)。

 

6 振動

(1) 振動規制法

振動規正法についても公害対策基本法の精神にのっとり立法された法律の一つであり、昭和511976)年610日に公布され、同年121日から施行された。平成162004)年69日に最終改正がなされている。

 

騒音同様、振動は周辺住民からの苦情が多い公害であり、たとえ法的基準以下であっても一度苦情が発生すると周辺の共生上問題となるため、未然予防が重要となる。法的には測定は事業者の義務となっておらず、市町村長が行うことになっているが遵守するためには遵守状況を確認する必要があり、そのために事業者による測定が必要となる。規制基準を超過する遵守義務違反をしても直ちに罰則にはかからず、市町村長が周辺の生活環境が損なわれると認めたときに改善勧告を出し、これに従わない場合に改善命令を出す(法12条、15条)。また、騒音に係る環境基準が定められている[61]

 

本法には罰則の定めがある(法25条ないし29条)。例えば、改善命令違反について1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されうる(法25条)。両罰規定も定められている(28条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとの関連でみると、振動規制法によって企業が規制の対象となるのは、主にM&A取引対象企業等が以下に該当する場合である。

指定地域内に著しい振動を発生する施設であって政令で定めるもの(特定施設)を設置する工場又は事業場(特定工場等)を設置している者(法5条)

指定地域内において特定建設作業(建設工事として行われる作業のうち、著しい振動を発生する作業であって政令で定めるもの)を施工しようとする者(法14条)

 

上記①ないし②に該当する場合、当該事業者は、振動の基準を遵守しなければならず(法5条、12条、13条、15条)、特定施設を設置しようとする場合は工事開始前30日前まで、特定建設作業をしようとする場合は作業開始7日前までに市町村長に届け出なければならない(法6ないし11条、14条)。

 

7 地盤沈下

(1) 工業用水法

日本は地下水が豊富で、井戸水として大量に汲み上げられ、家庭用、農業用、工業用に利用されてきた。しかし、日本の経済発展につれその使用量が著しく増加し、地盤沈下が次第に拡大し、典型的な公害の一つとなっていた。かかる背景のもと、昭和311956)年6月に工業用水法が制定された。最終改正は平成122000)年531日である。

 

本法には罰則の定めがある(法28条ないし30条)。本法違反については直罰規定があるほか、改善命令違反の場合、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科されうる(28条)。両罰規定も存する(法30条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとの関連でいえば、例えば指定地域内の井戸により地下水を採取してこれを工業(製造業、電気供給業、ガス供給業及び熱供給業者)の用に供しようとする者は、都道府県知事に対して所定の申請をなし、許可・変更許可をとる必要がある(法3条ないし13条)ので、MA取引が右記に関連する場合には、申請、許可・変更許可等について検討する必要があろう。

 

(2) 建築物用地下水の採取の規制に関する法律

本法は昭和371962)年5月に制定され、最終改正は平成122000)年平成12531日である。本法による地下水採取の規制の枠組みは、工業用水法による規制の枠組みと全く同じであり、①一定規模以上の揚水設備、②建築物用、③指定地域、④許可制の4点に集約することができ、規制の方法も工業用水法とほぼ同じである。具体的事案に応じて調査されるべきである。

 

8 悪臭

(1) 悪臭防止法

悪臭も昭和421967)年に制定された公害対策基本法の典型7公害の一つとされ、立法が待たれていたが、昭和461971)年6月に制定に至り、最終改正は平成122000)年517日である。

 

本法の目的は①工場その他の事業所での事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行い、②その他の悪臭防止対策を推進し、③生活環境を保全し、国民の健康の保護に役立てることを目的とする(法1条)。

 

特定悪臭物質とは、アンモニア、メチルメルカプタンその他の不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質であって政令で定めるもの(22物質)をいい、臭気指数とは、人間の嗅覚でその臭気を感知できなくなるまで気体又は水の希釈をした場合におけるその希釈の倍数を基礎にして排出されるものをいう(法2条、規則1条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスにおいて問題となるのは、主にM&A取引対象企業等が以下に該当する場合である。

規制地域内に事業場を設置している者(法7条)

汚水が流入する水路又は場所を管理する者(法16条)

 

本法には罰則が定められている(法25条ないし31条)。例えば、命令違反の場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されうる(法25条)。両罰規定の定めもある(31条)。

 

9 廃棄物・リサイクル

(1) 循環型社会形成推進基本法

本法は、深刻な社会問題となっている廃棄物問題の解決に向けて、廃棄物・リサイクル対策を総合的、計画的に推進するための基板となるものとして、平成122000)年6月に制定された。本法とほぼ時を同じくして、①廃棄物処理法及び②資源有効利用促進法が改正されるとともに、③食品循環資源の再利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)、④建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)、⑤国等による循環物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)が制定されている。本法に罰則の定めはない。

 

「循環型社会」とは、①第一に廃棄物等の発生を抑制し、②第二に排出されたものはできるだけ資源として循環的に利用し、③最後にどうしても利用できないものは適正に処分されることが徹底されることにより、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷が低減される社会のことである(法21項)。つまり、ごみを出さないこと、出たごみは資源として循環的に利用すること、利用できないごみは適正に処分することを基本として成立する社会である。

 

本法では、リサイクル対策の優先順位、すなわち①発生抑制、②再使用、③再生利用、④熱回収、⑤適正処分という優先順位を定めて法制化した(法5条ないし7条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとの関係でいえば、事業者との関連において、「排出者責任」と「拡大生産者責任」の点が重要である。「排出者責任」とは、廃棄物等を排出する者が、その適切なリサイクルや処理に関して責任を負うべきであるとの考え方である。具体的には、事業者の排出者責任として、排出業者が、その循環資源について自らの責任において適正に循環的な利用又は処分を行う責務を定めている(法111項)。さらに国として、①排出事業者に対する規制などの適切な措置を講ずること(法181項)、②不法投棄等により環境保全上の支障が生じた場合に、排出事業者等にその支障の除去等をさせるために必要な措置を講ずること(法22条)を定めている。

 

拡大生産者責任とは、製品の生産者等が、その生産等した製品が使用され、廃棄された後においても、当該製品の適正なリサイクルや処分について一定の責任を負うという考え方である。具体的には廃棄物等の発生抑制、循環資源の循環的な利用や適正処分がしやすくなるように、①製品の設計を工夫すること、②製品の材質又は成分の表示を行うこと、③一定の製品について、それが廃棄された後、国民、地方公共団体等との適切な役割分担の下で、生産者が引取りやリサイクルを実施すること等が挙げられる。本法は生産者の責務として、その製造する製品の耐久性の向上、設計の工夫、材質や成分の表示等を行う責務(法112項)、適切な役割分担の下での製品の特性等に応じた引取り・循環的な利用を行う責務(法113項)を定めている。さらに、国として、①適切な役割分担の下で、製品の特性等に応じて、生産者に製品の引取り・循環的な利用を行わせるために必要な措置を講ずること(法183項)、②生産者等が耐久性の向上や設計の工夫等の各種工夫を行うように技術的支援等の措置を講ずること(法201項)、生産者等に製品の材質又は成分等の情報を提供させるために必要な措置を講ずること(法202項)を定めている。

 

本法第23条第1項で経済的な助成措置(補助金、税制優遇措置、低利融資等)を、同条第2項で経済的な負担を課す措置(ごみ処理手数料の徴収、税・課徴金、デポジット制度等)を定めている。特に、経済的な負担を課す措置については、国がその効果や経済に与える影響を適切に調査・研究し、国民の理解と協力を得るよう努めることと規定されており、その導入に際しての道筋が明らかにされている。

 

(2) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

廃棄物の処理に関する法規制としては、汚物の衛生的処理を目的とした「汚物掃除法」が明治331900)年に最初に制定され、昭和291954)年に「清掃法」制定に至った。その後、昭和451970)年の公害国会において全面改正され「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が制定され、事業者の廃棄物の処理責任が明確にされ、産業廃棄物の処理体系が確立された。さらに数度の改正を経た後、不法投棄の未然防止とリサイクル促進を目的とする廃棄物処理法改正案が平成152003)年618日に公布され、同年121日に施行された[62]。さらに最終改正が平成162004)年428日になされている[63]

 

平成15年改正により、罰則の強化、国の関与の強化、悪質な処理業者への対応の厳格化及び事業者が一般廃棄物の処理を委託する場合の基準等の創設等がなされている。例えば、不法投棄又は不法焼却の未遂行為を罰することとされた(法252項。なお、不法投棄又は不法焼却は5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金の対象となる(法2519号及び10号))。法人が一般廃棄物の不法投棄に関与した場合の罰則を、産業廃棄物についての罰則と同様、1億円以下の罰金に引き上げることとされた(法321号)。また、例えば事業者が一般廃棄物の処理を委託する場合の基準を定めるとともに(法6条の26項及び7項)、措置命令の対象者として、委託基準に違反した委託業者を加えることとされた(法19条の512号。なお、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金の対象となる。法2514号。)。

 

「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く)をいう(法21項)。「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう(法22項)。「特別管理一般廃棄物」とは、一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるものをいう(法23項、令1条)。「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じる廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物(20種類)、及び輸入された廃棄物(航行・携帯廃棄物を除く)をいう(法24項、令2条)。「特別管理産業廃棄物」とは、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるものをいう(法25項、令2条の4)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとの関連では、M&A取引対象企業等が廃棄物処理業者等に該当するようなケースにおいて各規制内容について調査すべきは勿論であるが、それ以外の事業者でも、例えば以下の義務を負うとされているので注意を要する。

① 一般廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合は、その許可を受けた者、その他環境省令で定める者に、委託の基準に従い、それぞれ委託しなければならない(法6条の26項及び7項、令4条の4)。

② その産業廃棄物を自ら処理しなければならない(法11条第1項)。

自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、産業廃棄物処理基準に従わなければならない(法121項)。

産業廃棄物の運搬がされるまでの間、産業廃棄物保管基準(周囲の囲い・排水溝、掲示板、底面被覆、保管上の注意等)に従い、保管しなければならない(法122項、規則8条)。

産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合は、その許可を受けた者、その他環境省令で定める者に、委託の基準に従い、それぞれ委託しなければならない(法123項ないし5項、令6条の2)。

自らその産業廃棄物を処理するために産業廃棄物管理施設を設置している事業者は、事業場ごとに産業廃棄物処理責任者を置かなければならない(法126項)。また、産業廃棄物の処理について、帳簿に記載し、5年間保存しなければならない(法1211項、同715項及び16項、規則8条の5)。

多量排出事業者は、産業廃棄物処理計画を作成し、都道府県知事に提出し、実施状況を報告する。都道府県知事はそれを公表する(法127項ないし9項、令6条の3)。

自らその特別管理産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、特別管理産業廃棄物処理基準に従わなければならない(法12条の21項)。

その特別管理産業廃棄物が運搬されるまでの間、特別管理産業廃棄物保管基準(周囲の囲い・排水溝、掲示板、底面被覆、保管上の注意等)に従い、保管しなければならない(法12条の22項、規則8条の13)。

その特別管理産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合は、その許可を受けた者、その他環境省令で定める者に、委託の基準(業者の許可条件、委託契約書等)に従い、それぞれ委託しなければならない(法12条の23項ないし5項、令6条の6)。

その事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、事業場ごとに有資格者である特別管理産業廃棄物処理責任者を置かなければならない。(法12条の26項)。また、特別管理産業廃棄物の処理について、帳簿に記載し、5年間保存しなければならない(法12条の212項、同715項及び16項、規則8条の18)。

多量排出事業者は、特別管理産業廃棄物処理計画を作成し、都道府県知事に提出し、実施状況を報告する。都道府県知事はそれを公表する(法12条の28項ないし10項、令6条の7)。

その産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合は、産業廃棄物引渡しと同時に受託した者に、所定の事項を記載した産業廃棄物管理票(マニフェスト)[64]を交付しなければならない。管理票交付者は、管理票の写しの送付を受けたときは、運搬又は処分が終了したことを確認し、その写しを所定の期間保存しなければならない。管理票交付者は、所定の期間内に写しの送付を受けないときは適切な措置を講じなければならない。また、虚偽の記載をして管理票を交付してはならない。電子情報処理組織を使用した場合は、管理票を交付する必要はない。都道府県知事は、必要なとき、勧告することができる(法12条の3ないし12条の6、規則819ないし38)。

 

上記の事業者についての一般的規定のほか、土地又は建物の占有者・管理者等(法5条)、一般廃棄物を排出する土地又は建物の占有者(法6条の2)、一般廃棄物処理業者(法7条ないし7条の4)、一般廃棄物処理施設の設置者(法8条ないし9条の229条の4ないし7)、一般廃棄物の再生利用者(法9条の8)、一般廃棄物を輸出しようとする者(法10条)、産業廃棄物処理業者(法14条ないし14条の33)、特別管理産業廃棄物処理業者(法14条の4ないし7)、産業廃棄物処理施設の設置者(法15条ないし15条の4)、産業廃棄物の再生利用者(法15条の42)、産業廃棄物を輸出入しようとする者(法15条の43ないし6)、ふん尿を肥料として使用する者(法17条)、廃棄物再生事業者(法20条の2)等については、格別に規制ないし罰則の対象となる。

 

本法には詳細かつ厳格な罰則規定があり(法25条ないし33条)、かつその厳格化が図られていることは前記のとおりである。両罰規定も存する(法32条)。

 

(3) 資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)

廃棄物の排出量が増大し、省資源と資源の再利用を折り込んだ経済社会への転換が必要となった。かかる背景の中、「再生資源の利用の促進に関する法律(リサイクル法)」が平成31991)年426日に公布され、同年1025日から施行された。平成111999)年7月、産業構造審議会が、報告書「循環型経済システム構築に向けて」を公表し、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄の経済社会から脱却し、環境と資源の制約のもとで持続的成長を達成するためには、従来の廃棄物・リサイクル対策を抜本的に変革する必要があると提案した。これを踏まえて、「資源の有効な利用の促進に関する法律」が平成122000)年67日公布され、平成132001)年41日に施行された。最終改正が平成142000)年28日になされている。

 

本法には罰則の定めがある(法42条ないし44条)。例えば、所定の命令違反について50万円以下の罰金が科されうる(法42条)。両罰規定も存する(法44条)。

 

(4) 容器包装に係る分別回収及び再商品化の促進に関する法律(容器包装リサイクル法)

最終処分場や焼却施設の設置が困難な状況となる中、家庭から排出された一般廃棄物の重量で約2割から3割、容積で約6割を占める容器包装廃棄物について、その発生を抑制すると共に、リサイクルを促進することにより、資源の有効活用を図るため平成71995)年6月に制定された。平成152003)年618日に最終改正がなされている。本法では、一般廃棄物について市町村が全面的に処理責任を担うという従来の考え方を改め、容器包装廃棄物のリサイクルを促進するため、容器包装の中身の商品の製造事業者や容器の製造事業者等に一定の役割を担わせることにしたものである。

 

次の事業者は再商品化義務を負う。

特定容器利用事業者:その事業において、その販売する商品について、特定容器を用いる事業者(輸入業者を含む)(法11条、同211項)。

特定容器製造等事業者:特定容器の製造等の事業を行う者(輸入業者を含む)(法12条、同212項)。

特定包装利用事業者:その事業において、その販売する商品について特定包装(包装紙など)を用いる業者(輸入業者を含む)(法13条、同213項)。

但し、中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模事業者等であって、政令で定めるもの等は除かれる(法211項ないし13項)。

 

本法で再商品化義務を有する事業者は、再商品化義務を果たすため、次の方法を選択することができる。

(ア) 自主回収:利用又は製造等した容器包装を自ら又は他の者に委託して回収する事業者は、主務大臣に申し出て、その容器の回収方法が主務大臣が定める回収率(概ね100分の90とする。規則20条)を達成するために適切なものである旨の認定を受けることができる(法18条)。

(イ) 指定法人への委託:再商品化義務を適正かつ確実に行うことができると認められるものとして、主務大臣の指定を受けた民間法人(指定法人)に再商品化を委託した場合、再商品化をしたものとみなす(法14条)。

(ウ) 認定を受けて行う再商品化:特定事業者が自ら申請して認定を受けることにより、自ら、又は指定法人以外の者に委託して再商品化を行う方法(法15条)

 

事業者は、全国の分別収集見込み量と再商品化見込み量を踏まえて定められる再商品化義務総量のうち、容器包装の使用量に応じて,市町村が分別収集したものを引き取って一定の方法で再商品化する義務を負う。事業者は義務履行を代行する機関(指定法人(日本容器包装リサイクル協会))に委託し費用負担することによって義務を履行することができる(法14条)。

 

本法には罰則が定められている(法46条ないし49条)。所定の命令違反については50万円以下の罰金が科されうる(法46条)。両罰規定も存する(法49条)。

 

(5) その他

廃棄物・リサイクル等に関する法律としては、他に特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法などがある。事案によりこれらについても調査する必要があろう。

 

10 化学物質

(1) 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)

昭和431968)年にカネミ油症事件が発生し、急性毒性を問題とする毒物及び劇物取締法の対象物質になっていないPCBのような、安定しており分解されにくく、長期間にわたって人体に残留し、長期毒性のある物質が問題となった。そこで昭和481973)年に化審法が制定され、PCB類似の化学物質を特定化学物質(現在の第一種特定化学物質)として規制した。昭和611986)年には、トリクロロエチレンなどによる環境汚染に対応するため、第二種特定化学物質、指定化学物質の枠組みを作り、化審法が改正された[65]。平成152003)年530日に最終改正がなされ、平成162004)年41日に施行されている[66]

 

本法は、化学物質を製造・輸入する前に、その安全性を審査するもので、世界で初めて制定された。但し、試験研究のため等で製造・輸入する場合は除外されている。

 

本法は難分解性の性質を持ち、かつ、人の健康を損なう等のおそれがある化学物質の製造、輸入、使用等について規制するものである。PCBDDTなど13物質が第一種特定化学物質(自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、生物の体内に蓄積されやすいもので、継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるもの等)に指定され製造・輸入及び使用が事実上禁止されており、トリクロロエチレンなど23物質が第二種特定化学物質(自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるもの等であって、かつ、その製造、輸入、使用等の状況からみて相当広範な地域の環境において当該化学物質が相当程度残留している等により、人の健康に係る被害等を生ずるおそれがあると認められるもの等)として規制が行われている。また、第一種特定化学物質に該当するか否か明らかでないもの等が第一種監視化学物質として、第二種特定化学物質に該当する疑いのあるものが第二種監視化学物質(クロロホルムなど739物質[67])として、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ動植物の生息又は生育に支障を及ぼすおそれがあるもの等が第三種監視化学物質として規制されるほか、新規化学物質(新規化学物質として公示された化学物質、第一種・第二種特定化学物質、第二種・第三種監視化学物質、既存化学物質名簿に記載されている化学物質以外の化学物質)について規制が行われている(法2条、令1条、1条の2)。

 

第一種特定化学物質については、何人も政令で定める製品で、第一種特定化学物質が使用されているものを輸入してはならないとされ、第一種特定化学物質ごとに政令で定める用途以外の用途では使用できないものとされる13条及び14条)。第一種特定化学物質の製造の事業を営もうとする者は、経済産業大臣に申請し、第一種特定化学物質及び事業所ごとに許可・変更許可を受けなければならず、また、必要な届出をしなければならない(法6条ないし10条、16条、20条、31条)。第一種特定化学物質を輸入しようとする者は、経済産業大臣に申請し、許可を受けなければならならず、また、必要な届出をしなければならない(法11条、12条、16条、21条、31条)。第一種特定化学物質を業として使用しようとする者は、事業所ごとに、あらかじめ、主務大臣に届けなければならず、また、必要な届出をしなければならない(法15条、16条、20条)。

 

第二種特定化学物質については、第二種特定化学物質又はその使用製品ごとに、毎年度、製造予定数量、輸入予定数量又は使用製品輸入予定数量等を、経済産業大臣に届け出なければならない(法26条)。第二種特定化学物質の取扱事業者は、第二種特定化学物質ごとに、主務大臣が公表する技術上の指針を遵守しなければならない(法27条)。

 

第一種・第二種・第三種監視化学物質については、これらの監視化学物質を製造又は輸入した者は、毎年度、前年度の製造量又は輸入量等を経済産業大臣に届け出ること(法5条の323条、25条の2)、厚生労働大臣等は、一定の場合、これらの監視化学物質の製造・輸入事業者に対して有害性の調査を行い、その結果を報告すべきことを指示することができる(法5条の424条、25条の3)などの規制がある。

 

新規化学物質については、新規化学物質を製造又は輸入しようとする者は、各省令で定める事項を厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣に届け出なければならず、第一種特定化学物質等に該当するか否かが判定され、必要な規制を受けることになる(法3条ないし5条の2、令2条及び2条の2)。

 

本法には罰則の定めがある(法42条ないし48条)。例えば、所定の許可を得ないで第一種特定化学物質の製造の事業を営んだ者、本法に違反して第一種特定化学物質を輸入した者、命令に違反した者などについては3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処され、又はこれを併科するするものとされる(法42条)。両罰規定も存する(法46条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスについてみると、M&A取引対象企業等において所定の化学物質の製造、使用、輸入等の有無、及び、該当する場合の届出その他の義務の履行状況について調査すべきことになろう。

 

(2) 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)

1992年の地球サミットで採択されたアジェンダ21で、PRTR制度の導入が推奨され、19962月、OECDは、加盟国がPRTR制度を導入するよう勧告した[68]。平成101998年には化学品審議会及び中央環境審議会が法制化の必要性を提言している。本法はこれらの点を踏まえ、有害性が判明している化学物質について、人体等への悪影響との因果関係の判明の程度に係わらず、事業者による管理活動を改善・強化し環境の保全を図るため平成111999)年7月に制定されるに至った。平成142000)年1213日に最終改正が行われている。

 

本法は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とする。このためPRTRPollutant Release and Transfer Register:環境汚染物質排出移動登録)[69]制度とMSDSMaterial Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)[70]制度を導入している。

 

リーガル・デュー・デリジェンスについてはM&A取引対象会社がPRTR対象事業、MSDS対象事業に該当する場合に調査が必要となろう。

 

PRTR対象事業者として、第一種指定化学物質(法22項)を製造、使用その他業として取り扱う等により、事業活動に伴い当該物質を環境に排出すると見込まれる事業者であり、次の(a)(c)の要件全てに該当する事業者を政令で指定している。

(a) 次の事業に属する事業を営んでいる事業者

全ての製造業

金属鉱業、電気業、ガス業、下水道業、燃料小売業、洗濯業、自動車整備業、廃棄物処理業、高等教育機関

(b) 常用雇用者数21人以上の事業者

(c) いずれかの第一種化学物質の年間取扱量が1トン以上(発がん物質は0.5トン以上)の事業所を有する事業者等

 

本法に基づく届出をせず、又は虚偽の届出をした事業者は、20万円以下の過料が科される(法241号)。

 

MSDS対象事業者は、一定の対象物質を環境に排出する可能性がある製品を他の事業者に譲渡又は提供する全ての事業者であり、業種、常用雇用者数、取扱量等の要件はない。対象物質は、PRTR制度の対象物質と同じ354物質(第一種指定化学物質)に加え、第一種指定化学物質と同様の有害性はあるが、暴露の可能性はそれより低い物質として選定された81物質(第二種指定化学物質。法23項)を含む。

 

経済産業大臣は、本法に基づくMSDSの提供を行わない事業者に対して勧告を行うことができ、当該事業者が勧告に従わなかった場合はその旨を公表することができる(法15条)。その他、報告徴収とその違反の場合の罰則についても規定されている(法242号)。

 

(3) ダイオキシン類対策特別措置法(1999716日)

ダイオキシン類[71]は、昭和401965)年のベトナム戦争の際に米国軍が使用した枯葉剤の中に含まれていたといわれている。ダイオキシン類は、発がん性があり、生殖機能や免疫機能の低下を引き起こすといわれ、ごみ焼却場の焼却灰や排煙に多く含まれ、土壌汚染も起き、世界的にも大きな問題となった。そのため平成91997)年8月に、大気汚染防止法でダイオキシン類が指定物質に指定され、その抑制基準が定められた。本法は、平成111999)年7月に制定されるに至った。最終改正は平成162004)年69日である。

 

事業者はその事業活動に伴って発生するダイオキシン類による環境汚染の防止又はその除去等のために必要な措置を講じるとともに、国又は地方公共団体の施策に協力しなければならない(法4条)。特に工場又は事業場に設置される、製鋼用の電気炉、廃棄物焼却炉等であって、ダイオキシン類を発生し及び大気中に排出し、又はダイオキシン類を含む汚水又は廃液を排出する施設で政令で定めるもの(特定施設。法22項、令1条)を設置・変更等しようとするものは都道府県知事に届け出ることとされ、規制の対象となる(法12条ないし28条)。

 

なお「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」によって、特定施設が設置されている特定工場(公害防止整備法27号)ではその施設の種類・規模、有害物質発生の有無により定められた公害防止統括者、公害防止管理者(有資格者)、公害防止主任管理者(有資格者)等を選任し、都道府県知事に届け出なければならない(公害防止整備法3条ないし10条)。また、鉱山施設、電気工作物、ガス工作物、海洋施設等については、鉱山保安法、電気事業法、ガス事業法、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の相当規定の定めるところによることになる。

 

本法には罰則が定められている(法44条ないし49条)。例えば、所定の命令違反については1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される(法44条)。両罰規定も定められている(法48条)。

 

リーガル・デュー・デリジェンスとの関連では、M&A取引対象企業等においてダイオキシン類が発生しているケースで問題が生じうる。例えば、特定施設があるか否か、また、本法上の指定地域、対策地域に該当しないか否か等に注意し、該当する場合には必要な調査を行うこととなろう。

 

(4) ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の促進に関する特別措置法(PCB特措法)

日本では、ポリ塩化ビフェニル(PCB)については、昭和291954)年から国内で生産が開始されたが、昭和431968)年カネミ油症事件[72]を契機にしてその毒性が社会問題化し、昭和471972)年に行政指導により、そして昭和491974)年には化審法によってPCBの製造・使用が禁止された[73]。そのため、PCB廃棄物の処理施設を整備し、早急に適切に処理することが不可欠となり、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」と「環境事業団法の改正案」が、平成132001)年622日に公布され、前者は同年715日から、後者は公布の日から施行された(環境事業団は、平成162004)年41日をもって解散し、日本環境安全事業株式会社及び独立行政法人環境再生保全機構に業務が承継された)。これらの法律の施行により、PCB廃棄物を所有する事業者等には、保管状況等を届出しなければならない他、一定期間内に処分することが義務付けられている。但し、現状では、住民の理解が得られない等の理由により十分な処理施設が建設されておらず、PCB廃棄物の処理施設の整備が課題となっている[74]。最終改正は平成152003)年618日である。

 

PCB廃棄物を保管する事業者は、そのPCB廃棄物を、自らの責任において確実かつ適正に処理しなければならない(法3条)。

 

PCB廃棄物を所有する事業者には概要以下の規制が課される[75]

 

保管及び処分状況の届出

事業者(その事業活動に伴ってPCB廃棄物を保管する事業者。法22項)及びPCB廃棄物を処分する者は、毎年度、そのPCB廃棄物の保管及び処分の状況に関して都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長。以下同じ。)に届け出なければならない(法8条)。なお、都道府県知事は、毎年度、事業者から提出された上記保管等の届出書について、PCB廃棄物の保管及び処分の状況を一般に公表することになっている(法9条)。届出を行わなかったもの、また虚偽の届出をした者は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される(法25条)。

 

期間内の処分

事業者は、法律が施行された日(平成132001)年715日)から15年の期間内に、PCB廃棄物を自ら処分するか、若しくは処分を他人に委託しなければならない(法10条、令3条)。なお、環境大臣又は都道府県知事は、事業者が上記期間内の処分に違反した場合には、その事業者に対し、期限を定めて、PCB廃棄物の処分など必要な措置を構ずべきことを命ずることができる(法16条)。この改善命令に違反すると、3年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科される(法24条)。

 

譲渡及び譲受けの制限

何人も、環境省令で定める場合のほかPCB廃棄物を譲り渡し、又は譲り受けてはならないこととされている(法11条、規則8条)。この義務に違反すると3年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科される(法24条)。

 

承継

事業者について相続、合併又は分割があったときは、相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割によりその事業の全部を承継した法人は、その事業者の地位を承継するものとされている(法121項)。事業者の地位を承継した者は、その承継があった日から30日以内に、その旨を都道府県知事に届け出ることになっている(法122項)。届出を行わなかった者、また虚偽の届出をした者は30万円以下の罰金に処される(法26条)。

 

特別管理産業廃棄物管理責任者の設置

PCBを生じる事業所を有する場合その廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるために、事業所ごとに廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基く「特別管理産業廃棄物管理責任者」を置かなければならない(廃棄物処理法12条の26項、25項、令2条の45号イないしハ)。この義務に違反すると30万円以下の罰金に処される(同法304号)。

 

一部前記したが、本法には罰則の定めがある(法24条ないし27条)。例えば、本法に違反してPCB廃棄物を譲り渡し、又は譲り受けた者、所定の命令に違反した者は3年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するものとされる(法24条)。両罰規定も存する(法27条)。

 

本法によりPCBは環境省令で定める場合のほか譲渡できないものとされている(法11条、規則8条)。この点をM&A取引に関してみると、本法に反し、株式売買の売買の場合に対象会社からPCBを他者に移転できないこと、及び、営業譲渡の場合に譲受対象財産にPCBを含んではならないことを意味する。

 

(5) アスベスト(石綿)に関する規制

アスベストはM&A取引においてしばしば問題とされるが、その規制は複数の法律によって規律されている。具体的には、アスベストに関する法的規制には、アスベストを取り扱う労働者の健康確保を目的として、労働安全衛生法、じん肺法、作業環境測定法等の規制が存在し、一般環境への汚染防止を目的として、大気汚染防止法、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、PRTR法等の規制が存在する[76]

 

リーガル・デュー・デリジェンスに関してみると、各法のポイントは概要次のとおりである。

 

アモサイト及びクロシドライト等の製造・輸入・譲渡等の禁止

労働安全衛生法55条、令1614号及び5号、同11号により、石綿のうち、アモサイト及びクロシドライト、並びにこれらをその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物は、製造、輸入、譲渡、提供、又は使用が禁止される。但し、平成71995)年41日より前に製造、輸入されたものについては適用除外される。従って、例えば営業譲渡財産において同日以後にアモサイト、クロシドライトについて所定量以上が使用された財産が含まれる場合、当該財産の譲渡が禁止されることになる。また、平成162004)年101日から、アモサイト及びクロシドライト以外の石綿を含有する製品で、令別表第82に掲げる製品[77]で、その含有する石綿の重量が当該製品の重量の1パーセントを超えるものについても、製造、輸入、譲渡、提供、又は使用が禁止されることとなった(法55条、令1619号)。

 

アスベストの除去に伴う法的規制

M&A取引の対象企業等においてアスベストの除去が必要となる場合には以下のような点についても問題となる。必要に応じ、除去作業をどちらの当事者が行うか、その費用負担をどうするかといった取り決めも必要となる。

 

(a) 労働安全衛生法

建築基準法第2条第9号の2に規定する耐火建築物又は同条第9号の3に規定する準耐火建築物で、石綿が吹き付けられているものについて石綿の除去作業を行う場合、事業者は、その計画を当該作業の開始の日の14日前までに、労働基準監督署長に届け出なければならない(労働安全衛生法884項、規則905号の2)。

 

(b) 特定化学物質等障害予防規則

石綿を塗布、注入又は張り付けた物の破砕、解体等の作業を行う際は、あらかじめ、石綿が使用されている箇所及び使用の状況の調査、記録を行うこと(特定化学物質等障害予防規則38条の10)が要求されるほか、作業時の規制が定められている(同38条の8及び93811など)。

 

(c) 大気汚染防止法

建物に特定建築材料(大気汚染防止法28項、令3条の4が規定する吹付け石綿)が用いられている場合であって、同建物につき特定粉じん排出等作業(①建築基準法第2条第9号の2に規定する耐火建築物又は同条第9号の3に規定する準耐火建築物で延べ面積が500平方メートル以上のもの(「特定耐火建築物等」)を解体する作業であって、その対象となる建築物における特定建築材料の使用面積の合計が50平方メートル以上であるもの②特定耐火建築物等を改造し、又は補修する作業であって、その対象となる建築物の部分における特定建築材料の使用面積の合計が50平方メートル以上であるもの。法28項、令3条の4。)が行われる場合、これを施工しようとする者は、同作業の開始の日の14日前までに、都道府県知事に届け出なければならない(法18条の15)。また、当該作業を行うに際しては、同施行令の定める基準に従わなければならない(法18条の14)。

 

(d) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律

石綿を吹き付けられ、又は含む建材の除去を行う事業に伴い除去された建材等は、特別管理産業廃棄物に該当し(廃棄物の処理及び清掃に関する法律25項、令2条の45号、規則1条の27項)、事業者は、これを自ら処理しなければならず(法111項)、その運搬、処分を他人に委託する場合には、特別管理産業廃棄物収集運搬業者、特別管理産業廃棄物処分業者等に委託しなければならない(法12条の23項)などの規制がある。

 

(6) その他

化学物質関連では他に消防法、高圧ガス保安法及び遺伝子組換え生物等の使用の規制による生物の多様性の確保に関する法律による規制等も問題となりうる。

 

六 最後に

以上の内容から明らかなとおり、環境関連法は多岐にわたり[78]、かつ、内容も技術的なものが多く、限られた時間の中での作業を要求されることの多いM&A取引のためのデュー・デリジェンスの際に十分な検討を行うことは必ずしも容易なことではない。多面、企業各社においてもCSR経営への取り組み、ISO14001の積極的な取得、さらには排出権取引への進出等の例からも明らかなように企業によるビジネス活動と環境は極めて密接な関連を有する状況となってきており、環境関連法のリーガル・デュー・デリジェンスに求められる内容も高度化しているように思われる。さらに、リーガル・デュー・デリジェンスの内容をいかにM&A取引契約のドラフティングに反映させるべきか等についても検討される必要があろう[79]。環境法分野は、地球規模での環境問題への関心の高まりがみられる中、近年新法の成立や球法改正が頻繁に行われており、非常に変化の激しい法分野でもある[80]M&A取引に関わる法律実務家にとっても、かかる変化に応じて高度化する要求に答える努力を継続することが肝要と思われる。

以 上

 


[1]ドネラ・H・メドウズ外「成長の限界―ローマクラブ『人類の危機』レポート」(1972年)。本書は、人口、食糧生産、工業化、汚染、再生不可能な天然資源の消費等の地球環境に影響を与える諸要素について、それらの相互作用も含めた全体として世界に与える影響についてマサチューセッツ工科大学で開発されたコンピュータプログラムによる分析を行ない、その結果に基き採るべき選択肢についての示唆を与える内容となっている。その続編であるドネラ・H・メドウズ外「限界を超えて―生きるための選択」(1992年)及び成長の限界「人類の選択」(2004年)は、1972年に発表したレポートの事後検証を行ったものであり同じく示唆に富むものである。

[2]前掲メドウズ外「成長の限界―ローマクラブ『人類の危機』レポート」17頁。

[3]2005624日現在世界の人口は、推計で644,9650,542人である(米国国勢調査局ホームページ<http://www.census.gov/main/www/popclock.html>)。なお、日本の総人口は平成192007)年に1億2,778万人でピークに達した後減少に転じ、2050年には約1億人にまで減少することが予想されているが(国立社会保障・人口問題研究所ホームページ<http://www.ipss.go.jp/Japanese/newest/newesti91.html>)、世界人口は今後も増加を続け、2050年において89億人を超えると予想されている(国際連合人口部会ホームページ<http://esa.un.org/unpp/p2k0data.asp>)。

[4]世界の専門家が集まる気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2001年の予測では21世紀末までに世界の平均気温は最大5.8度上昇するとされている。南極の氷が溶けることによる海面上昇、洪水、熱波等の異常気象、旱魃の増大、マラリヤ等の感染症の拡大等の可能性が指摘されている(中央環境審議会「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しに関する中間取りまとめ 平成168月」3頁、日本経済新聞2004926日朝刊31面)。

[5] 90人を超える死者・不明者を出した台風23号をはじめ、今年は日本に上陸する台風が異常に多かった。定説はないが、地球規模の気候パターンの微妙な揺らぎが台風のコースを大きく変えさせたことは確かとされ、地球温暖化が進むと気候パターンのぶれが大きくなるという見方が有力と指摘されている(日本経済新聞朝刊20041028日)。事実、地球温暖化は、長期的な気温や降水量の変化となって現れるとともに、短期的な異常気象の発生頻度の変化となって現れ、自然生態系や社会経済システムに様々な影響を及ぼすことが予想されると指摘されている(国立環境研究所ホームページ<www.nies.go.jp/>)。

[6] 1990年から毎年世界で約600万ヘクタールが砂漠化していると報告されている(国連砂漠化防止条約ホームページ<http://www.unccd.int/publicinfo/menu.php>)。

[7]気象庁の観測速報によると2003年の南極上空のオゾンホールは観測史上最大のレベルに達しており、拡大のスピードは鈍くなったものの、年々オゾンホールは大きくなっている。2003年までの日本上空におけるオゾン全量の長期的変化傾向は、札幌、つくば、鹿児島の3箇所でオゾン量の減少が確認されており、特に札幌で減少傾向が顕著である(気象庁オゾン層観測報告2003)。

[8]国立環境研究所ホームページ<www.nies.go.jp/>等参照。

[9]既に相当数の企業が温暖化ガス排出権ビジネスに参入してきていることが報告されている(日本経済新聞20041023日朝刊、日本経済新聞2004910日朝刊、週刊東洋経済臨時増刊200498日「環境・CSR経営」52頁以下等参照)。政府も海外で省エネルギー事業を実施して温暖化ガス排出権を取得する企業に対して補助金を交付する方針を決めたことが報じられている(日本経済新聞2004111日朝刊)。また、民間企業が集まり、海外からの温暖化ガスの排出権を購入する初めての基金が発足する(日本経済新聞2004118日朝刊)。さらに経済産業省と国土交通省は、製造業を中心とする荷主、小売業、物流専門業者を対象とし、二酸化炭素の排出量を一定量以上減らすことを条件に補助金や税制で支援することなどを内容とする新法の来年の通常国会への提出を目指している(日本経済新聞2004119日朝刊)。

[10]近年企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)は、この23年で企業経営において急速に取り上げられる機会が増えた言葉であるが、その概念は必ずしも新たに生じたものではなく、ここにきてCSRという言葉がブームのように使われだしたのは社会の重要な構成要素である企業がその影響力を増大させるにつれ、企業に対して、社会的・環境的問題に対処するように求める社会的圧力が強くなるなど企業と社会との関係が変化しつつあることが大きな要因である旨指摘されている(KPMGビジネスインシュアランス「CSR経営と内部統制」1頁等参照)。日本においてもCSRに関する報告書を発行する動きが本格化しており、欧米並みに関心の高まってきている現状が見られる(日経新聞2004923日朝刊11面)。もっともCSR経営の定義は必ずしも一義的に明確ではなく、その対象は、顧客や供給者などへの経済的影響から、環境、労働慣行及び公正な労働条件、人権、社会、製品責任など多岐にわたるが、その中でも環境は重要な一要素である(週刊東洋経済臨時増刊200498日「環境・CSR経営」8頁以下、36頁以下、インターリスク総研「実践CSR―持続可能な発展に向けて―」12頁以下等参照)。一方、日本における現状がCSRブーム化していることを懸念する見解もある(足立英一郎「何が変わったのか、変わろうとしているのか―CSRブームを危惧する―」国際ビジネス法務室第211頁(20049月))。日本においてもCSR経営の定着することが強く望まれる。

[11]前掲「環境・CSR経営」12頁以下。なお、米国におけるSRIの投資残高は230兆円に達し、欧州では50兆円弱の規模であり、日本ではまだ1,300億円程度で今後の伸張が期待されるといわれている(菱山隆二「社会的責任投資:その基本と日米欧の現況」国際ビジネス法務室第226頁(20049月))。

[12]淵辺善彦外「M&Aにおける環境汚染・社会保険等のリスクへの対応」ビジネス法務200412月号43頁等参照。

[13]放射性物質関連規制等についても本稿では触れていない。

[14]日本における立法の動きは環境問題に対する国際的な問題意識の高まりとも連動するものである。1960年代には海洋、大気、淡水が希少な資源として認識され、地球生態系の危機に対する国際社会の関心が増大した。1970年代以降、多くの環境条約が締結されているが(なお、環境条約の数は、間接的に環境を扱ったものを含めると、900を超えるといわれている(大塚直他「環境法学の挑戦」210頁))、その先鞭を切ったのが1972年にストックホルムで開催された国連人間環境会議で採択された人間環境宣言であり、これにより国際社会は環境問題に取り組む姿勢を始めて明らかにした。1980年代になると、地球規模の環境破壊が認識されるようになった。国連環境計画(UNEP)ナイロビ宣言では、オゾン層の破壊、二酸化炭素濃度の上昇、酸性雨、海水・淡水の汚染、有機廃棄物の処分に伴う汚染、動植物の種の絶滅など、地球環境に対する脅威が広範囲にかつ現実の問題として確認されるに至った。一方、環境保護と途上国の開発の権利を両立すべきことも確認された(北京宣言、クアラルンプール宣言)。なお、1985年にオゾン層の保護のためのウィーン条約が採択され、1987年にはオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書が採択されている。1992年にリオデジャネイロで開催されたいわゆる環境と開発に関する地球サミットで採択されたリオ宣言とその行動計画(アジェンダ21)が採択された。これを受けて、翌1993年に日本における環境基本法が制定されるに至っている。なお、1992年に気候変動枠組条約が採択され、1997年にこの枠組条約の京都議定書が採択されている。2002年に、アジェンダ21を検証し、持続可能な開発の実現を目指す世界サミットにおいて持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言が採択されている。

[15]前掲松村「環境法[2]96頁。

[16]株式会社日本環境認証機構「ISO環境法(改訂第1版)」26頁、35頁。

[17]循環型社会の形成のためには、再生品等の供給面の取組に加え、需要面からの取組が重要であるという観点から、平成122000)年5月に循環型社会形成推進基本法の個別法のひとつとして国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)が制定された。同法は、国等の公的機関が率先して環境物品等(環境負荷低減に資する製品・サービス)の調達を推進するとともに、環境物品等に関する適切な情報提供を促進することにより、需要の転換を図り,持続的発展が可能な社会を構築を推進することを目指している。また、国等の各機関の取組に関することのほか、地方公共団体、事業者及び国民の責務などについても定めている(環境省ホームページ<http://www.env.go.jp/policy/hozen/green/g-law/index.html>)。

[18]都道府県レベルの環境関連条例は、①環境基本条例、②公害防止条例、③自然環境保護条例(2000年時点で、②と③で53都道府県、50政令指定都市)、④その他の環境関連条例(環境影響評価条例を含む。)、市町村レベルでは、①総合的環境条例(2000年時点で442件)、②公害防止条例(同641件)、③自然環境保全条例(同317件)と報告されている(環境庁「平成13年版環境白書第3章第13 地方公共団体の環境保全対策」)。

[19] ISOは、1947223日、電気分野を除くあらゆる分野において、国際的に通用させる規格や標準類を制定するための国際機関としてジュネーブに本部を置いて設立された。現在、130カ国以上が参加しており、日本では国家規格のJIS(日本工業規格:Japan Industrial Standards)の審議をしているJISC(日本工業標準調査会、事務局は経済産業省工業技術院標準部)が加盟している。

[20]1990年代半ばよりISOの環境管理規格ISO14000シリーズが制度化された。これは英国の基準であるBSをベースにして規格化されたものである。ISO14000シリーズ以外の環境マネジメントの国際基準として代表的なものとして環境先進国である欧州で導入されたEMASがある。EMASは、1995年に導入されて以来、登録される企業の事業所数が増え続け、2001年の改正により公益事業体などの非製造業も対象に含まれたため、全体の登録件数は飛躍的に伸びた。しかし、EMAS登録はヨーロッパ以外に拡大せず、ISOが比較的簡単に取得できることなどの理由により、日本も含め現在では世界的にISO14001を取得することが趨勢となっている。なお、米国では、ISOの取得だけでなく、取得した後の行動を評価する動きが加速している。

[21] ISOのマネジメントシステム規格には、環境管理(ISO14000シリーズ)の他に、品質管理(ISO9000シリーズ)、安全衛生管理、危機管理、個人情報保護管理などの規格が発行又は検討されている。なお、日本では19961020日に、JIS Q14001として制定されている。

[22]世界のISO14001の審査登録件数は61,287件(平成16224日現在。ISO Worldホームページ <http://www.ecology.or.jp/isoworld/iso14000/registr4.htm>)で、そのうち日本は16,417件(平成169月末日現在。日本規格協会ホームページ<http://www.jsa.or.jp//iso/graph/graph1.pdf>)で世界一多い。

[23]法令は、最新版を入手し、参照できることがISO140013.3.2項で求められている。

[24]通常、環境監査に関するマニュアル、管理規定等を作成して環境監査の過程が文書に記録されている。

[25] ISOでは第1世代の製品企画、第2世代のマネジメント規格に続き、2007年を目処に第3世代のCSR規格の作成も進んでいるので、今後の動きにも注意する必要がある。

[26]日本経済新聞2004923日朝刊11面。

[27]淵辺善彦外「M&Aにおける環境汚染・社会保険等のリスクへの対応」ビジネス法務200412月号46頁等参照。

[28]企業買収や営業譲渡に当たり土壌対策汚染対策費用の負担についての考慮等が十分になされていなかった事実についての指摘もある(蒲生豊郷「土壌汚染の問題に直面して」NBL79235頁)。土壌汚染対策法の制定後、実務も変わってきていると思われるが、例えば譲渡を受けた工場を廃止して他の用途に変更するなど、問題が顕在化したときに予想外に高額の費用を負担しなければならなくなる場合もありうるから、十分な措置をとる必要があろう。

[29]汚染除去費用について数十億から百億円単位まで要することも指摘されている。淵辺善彦外「M&Aにおける環境汚染・社会保険等のリスクへの対応」ビジネス法務200412月号43頁等参照。

[30]株式会社日本環境認証機構「ISO環境法(改訂第1版)」37頁。

[31]この条約は、温暖化防止が全ての締約国の義務であるとして、大気中の温室効果ガス濃度を危険なレベルにならないよう安定化することを目的に、先進締約国には、温室効果ガスの排出レベルを1990年レベルに戻すよう必要な措置を採ることを求め、開発途上締約国にも温室効果ガスの排出を抑制することを求めている。

[32]気候変動枠組条約には法的拘束力がないため、199712月に京都で開催した第3回締約国会議で、法的拘束力のある「京都議定書」を採択した。京都議定書では、先進締約国は、温室効果ガスの排出量を1990年比で、2008年から2012年に全体で少なくとも5%削減するが、EUは8%、米国は7%、日本は6%削減するものとし、各国の法的拘束力のある数値を定めた(環境省ホームページ<http://www.env.go.jp/earth/cop6/3-2.html>)。日本は2002年に批准しており、政府は6%は世界公約に等しいものとの立場をとってきた(中央環境審議会「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しに関する中間取りまとめ 平成168月」8頁等参照)。一方、米国は離脱し、ロシアも批准を留保していたためこれまで発効に至っていなかったが、最近ロシアが批准を決めて注目を集めた。ロシアの批准により、批准した先進国の排出量(1990年時点)が先進国全体の55%以上になるため20052月ころに発効に至る見込みとなった。但し、京都議定書が発効しても例えば米国は離脱しており、中国も排出抑制義務がないことから、日本やEUが目標を達成しても世界全体の総排出量の2%程度しか温暖化ガス排出の削減ができないとの指摘もある(日本経済新聞20041028日朝刊)。なお、京都議定書は温室効果ガス削減について自国・域内の実施だけでなく、①共同実施、②クリーン開発メカニズム、③排出権取引という3つの形態を認めている。京都議定書が発効すれば、企業に排出権削除義務や環境税といった新たな負担を生じる自体が現実味を増すことになる(前掲日経新聞2004101日朝刊3面)。既に温室効果ガス排出権に関する取引の事業化の流れがあり(日本経済新聞2004924日朝刊23面等参照)、今後排出権獲得競争が始まる気配もある。

[33]株式会社日本環境認証機構「ISO環境法(改訂第1版)」41頁。

[34] 2002年度における国内の温暖化ガス排出量は京都議定書における削減目標より約13.6%増加しており(中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会施策総合企画小委員会「温暖化対策税制とこれに関連する施策に関する中間とりまとめ 平成168月」3頁等参照)、現行の対策では目標の達成は不可能と言われている(日本経済新聞20041021日朝刊3面)。

[35]地球温暖化対策推進大綱の見直しを行っていた中央環境審議会が20048月に中間とりまとめを発表し、現在の対策だけでは京都議定書の削減約束を達成できず、2010年における温室効果ガスの排出量が最大になるとの評価を下した。今後、国内排出取引制度及び温暖化対策税等についての検討が進められるものと考えられる(日本経済新聞2004924日朝刊23面等参照)。また、環境税は温室効果ガス排出抑制の有力手段と目され、環境相の諮問機関である中央環境審議会の地球温暖化対策税制専門委員会で具体化が論議されており、近い将来に導入される可能性もある(中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会施策総合企画小委員会「温暖化対策税制とこれに関連する施策に関する中間とりまとめ 平成168月」等参照)。さらに環境省が課税方式や税率、税収の使途について具体案をまとめ政府税務調査会での審議も開始される予定である(日本経済新聞20041111日朝刊)。

[36]全国約14000か所の工場や事業所ごとの排出量を毎年報告させる方針のようであるが、産業界からの反発も予想される。これまでに企業に排出量の報告・公表を義務付ける制度はなく、自主的に公表しているのは上場会社の2割にとどまるといわれている。工場・事業所の排出量を正確に把握すれば、各企業に温暖化ガスの排出上限枠を設けて国内で排出権を売買する排出権取引の制度作りにも役立つと指摘されている(日本経済新聞20041021日朝刊1面)。

[37]日本経済新聞2004114日朝刊。

[38]さらに、フロン類についてはオゾン層破壊効果に加え、非常に強い温暖化効果を持っている(CFCで二酸化炭素の4000倍から9000倍程度、HCFC90倍から2000倍程度)。また、オゾン層破壊物質ではないが、カーエアコンの冷媒等に用いられている代替フロンのハイドロフルオロカーボン(HFC)も強い温暖化効果を持っている(二酸化炭素の140倍から1万倍程度)。地球温暖化の観点からもフロン類の放出防止は重要な課題となっている。

[39]環境省ホームページ<http://www.env.go.jp/earth/ozone/cfc/law/index.html>。なお、業務用冷凍空調機器のフロン回収等については、平成142000)年4月1日から、カーエアコンのフロン回収等については、平成142000)年1011日から施行されている。

[40]フロン類は、オゾン層破壊物質であるクロロフルオロカーボン(CFC)とハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、オゾン層破壊物質ではないが温室効果ガスであるハイドロフルオロカーボン(HFC)の3つに区分される。CFCの主なものとしてR12及びR502HCFCの主なものとしてR22、並びにHFCの主なものとしてR134aR404AR407C及びR410Aがある(経済産業省製造産業局オゾン層保護等対策室、環境省地球環境局環境保全対策課フロン等対策推進室「フロン回収破壊法・フロン類の破壊に関する運用の手引き(第5版)3頁(平成1648日)。

[41]さらに日本政府は、京都議定書発効を踏まえ、省エネ法の改正により、これまで規制のなかった運送業者や家庭での省エネを強化する方針であることが報じられている(日本経済新聞2004115日朝刊)。

[42]具体的には、アンモニア、弗化水素、シアン化水素、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、メタノール、硫化水素、燐化水素、塩化水素、二酸化窒素、アクロレイン、二酸化硫黄、塩素、二硫化炭素、ベンゼン、ビリジン、フェノール、硫酸(三酸化硫黄を含む。)、弗化珪素、ホスゲン、二酸化セレン、クロルスルホン酸、黄燐、三塩化燐、臭素、ニッケルカルボニル、五塩化燐、メルカプタンからなる28物質である(大気汚染防止法施行令10条)。

[43]株式会社日本環境認証機構「ISO環境法(改訂第1版)」132頁。

[44]カドミウム及びその化合物、シアン化合物、有機燐化合物(ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト(別名パラチオン)等に限る。)、鉛及びその化合物、六価クロム化合物、砒素及びその化合物、水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1・2―ジクロロエタン、1・1―ジクロロエチレン、シス―1・2―ジクロロエチレン、1・1・1―トリクロロエタン、1・1・2―トリクロロエタン、1・3―ジクロロプロペン、テトラメチルチウラムジスルフイド(別名チウラム)、2―クロロ―4・6―ビス(エチルアミノ)―s―トリアジン(別名シマジン)、S―4―クロロベンジル=NN―ジエチルチオカルバマート(別名チオベンカルブ)、ベンゼン、セレン及びその化合物、ほう素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物をいう(水質汚濁防止法施行令2条)。

[45]一律基準は、カドミウム、シアン、有機リン等の26物質と生物化学的酸素要求量、科学的酸素要求量等15項目について原則として最大値で定められており、全特定事業につき一律に適用されることになっている。都道府県が定める上乗せ基準は排出水の量に比して排出される水域の流量が少ないこと等の自然的、社会的条件から判断して一律基準によっては水質汚濁防止が不十分と認められる水域について、政令で定める基準に従い、条例でより厳しく排水基準(上乗せ基準)が設定できることになっているので注意を要する(法33項)。

[46]株式会社日本環境認証機構「ISO環境法(改訂第1版)」168頁。

[47]株式会社日本環境認証機構「ISO環境法(改訂第1版)」174

[48] 1978年のラブ・カナル事件(ニューヨーク州の学校内と隣地の土壌から有毒化学物質が発見され大問題となり、国家非常事態宣言が行われた。)を契機に、米国連邦政府は、総合環境対策補償責任法(CERCLAComprehensive Environmental Response, Compensation and Liability Act of 1980)を制定し、有害化学物質で汚染された土壌を浄化するために、「スーパーファンド」と呼ばれる巨額の基金(16億ドル)を創設した。その後1986年に、スーパーファンド修正及び再認可法(SARASuperfund Amendments and Reauthorization Act)が制定され、基金も16億ドルから85億ドルに引き上げられるなど、大幅に修正された。スーパーファンド・プログラムの内容・日本政策投資銀行ニューヨーク駐在事務所「米国スーパーファンド・プログラムの概観―その経験から学ぶもの―」(200211月)<http://www.dbj.go.jp/japanese/download/br_report/ny/75.pdf>。赤羽貴「米国連邦環境法(スーパーファンド法)上の貸付者責任に関する最近の動向」国際商事法務2411頁(1996年)。

[49]米国においては2002111日、土地の買収における買主の責任軽減策を定める法律を制定し(Browns Field Law: Small Business and Revitalization Act of 2002)、総合環境対策責任法(スーパーファンド法)を一部改正した点が注目に値しよう。Browns Field Lawでは、土地の買収の際に買主がその責任を負わないようにするためになすべき適切な質問事項についての規定を米国環境省(EPA)が用意することを要求しており、米国環境省は、2004826日、Standards and Practices for All Appropriate Inquiries and Notices of Public Meeting To Discuss Standards and Practices for All Appropriate inquries; Proposed Rulusを発表した(米国環境省ホームページ<www.epa.gov/cgi-bin/epaprintonly.cgi>参照)。日本においても、土地所有者等の調査義務・汚染除去義務の内容等についての明確な基準が設けられることが期待される。

[50]日本経済新聞平成142002)年523日朝刊)。

[51]蒲生豊郷「土壌汚染の問題に直面して」NBL79232頁。土壌汚染対策法の施工後1年数ヶ月の間に一般の民事事件、民事執行事件、倒産手続事件における不動産評価に携わってきた不動産鑑定士において、「土壌汚染は長年の企業活動の『残滓』であり、地中に染み込んでいる。したがってこれを目視することは困難である。このため、一度足を踏み込むと、どこまで汚染の影響が広がっているのかわからず、まるで底なし沼に足を捕られたような気持ちになる。」とも指摘されている。

[52]前掲蒲生39頁。

[53]特定有害物質は、水質汚濁防止法に規定する26の有害物質と比べると、硝酸性窒素(及び亜硝酸性窒素)が含まれていない点を除けば同じものである(土壌汚染対策法施行令1条)。

[54]赤羽貴外「土壌汚染対策法をめぐる法的諸問題(上)」金融法務事情167474頁。

[55]小澤英明「土壌汚染対策法」49頁(白揚社、20033月)。

[56]前掲赤羽貴外74ないし75頁。

[57]山口芳泰「土壌汚染対策法の成立とM&A実務への影響」MARR20027月号20頁参照。

[58]「企業買収や営業譲渡に当たり土壌汚染対策費用を考慮した話は、実は聞いたことがない。企業買収や営業譲渡では、従前の工場を同じ工場として形態を変えずに利用するので、汚染の調査義務がなく汚染の有無が顕在化しないためと考えられる。」との指摘がある(前掲蒲生35頁)。今後はM&A取引の場面においてより厳格な土壌調査、土壌汚染対策費用についての取り決め等が要求されていくことになろう。

[59]前掲山口芳泰22頁。

[60]特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準及び特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準参照。

[61]特定工場等において発生する振動の規制に関する基準参照

[62]廃棄物処理法制研究会「廃棄物処理法改正のポイント」6頁。

[63]平成16428日改正においては、廃棄物処理施設を巡る問題の解決を図ったほか、特に危険な廃棄物(硫酸ピッチ)を基準に従わない方法で処理した者や、不法投棄又は不法焼却の罪を犯す目的で廃棄物の収集又は運搬をした者を処罰するなと罰則の強化がはかられている。

[64]マニフェストの管理では、事業者による委託業者から送付された写しの内容、送付期限、最終処分の確認義務など産業廃棄物の発生から処分に至るまでの一連の処理工程におけるマニフェストに係る注意義務が重要であり、マニフェストの不交付、虚偽の記載等は直罰の対象となっている。不法な処分が行われ、生活環境の保全上の支障を生じ、又はそのおそれがあるときには、それにかかわった処分者等に対し、その支障の除去等(原状回復)の措置が命じられる。しかし、処分者のみでは原状回復措置が困難で、かつ、排出者が適切な措置を怠ったときに、排出者にその支障の除去等の措置が命じられる(排出者責任の原則)。

 

[65]株式会社日本環境認証機構「ISO環境法(改訂第1版)」188頁。

[66]化学物質への動植物への影響に着目した審査・規制制度を導入するとともに、環境中への放出可能性を考慮し、一層効果的かつ効率的な措置等を講じることを内容とする(環境省ホームページ<www.env.go.jp/chemi/kagaku/index.html>)。

[67]平成152月現在(環境省ホームページ<www.env.go.jp/chemi/kagaku/index.html>)。

[68]海外では、米国では1987年からTRI(有害化学物質排出目録)によって実施し、企業秘密を除き、個別企業の情報も含め公表している。その他、カナダ、英国、オランダ、オーストラリア等で実施済みである。

[69]PRTR制度とは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、事業所からの環境への排出量及び廃棄物に含まれての事業所外への移動量を、事業者が自ら把握し国に届け出るとともに、国は届出データや推計に基き、排出量・移動量を集計し、公表する制度である。対象物質は、人や生態系への有害性(オゾン層を破壊する性質を含む。)があり、環境中に広く存在すると認められる物質として選定されたもの(第一種指定化学物質:政令で354物質を指定)であり、以下の物質を対象としている。

揮発性炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等

有機塩素系化合物:ダイオキシン類、トリクロロエチレン等

農薬:臭化メチル、フェニトロチオン、クロルピリホス等

金属化合物:鉛及びその化合物、有機スズ化合物等

オゾン層破壊物質:CFCHCFC

その他:石綿(アスベスト)等

[70] MSDS制度とは、事業者による化学物質の適切な管理を促進するため、対象化学物質を含有する製品を他の事業者に譲渡又は提供する際には、その化学物質の性状及び取扱いに関する情報を事前に提供することを義務付ける制度である。

[71]ダイオキシン類とは、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)、コプラナポリ塩化ビフェニル(コプラナ-PCB)の3物質をいう(法21項)。

[72] 1968年、九州を中心に発生したPCBによる大規模な中毒事件であり、福岡県下で多発した皮膚病を発端に、深刻な健康被害が相次ぎ、疫学調査の結果、カネミ倉庫社製の米ぬか油(ライスオイル)に製造工程中に混入したPCBが原因物質であることが分かった。裁判では、カネミ及びPCBを製造した金淵化学工業は、同製品と保管中のPCB合わせて約5,500トンを、自社高砂事業所で焼却処分とした。

[73]20015月に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」が外交会議で採択され、PCBDDT、ダイオキシン等の残留性有機汚染物質の製造・使用の禁止、その適正管理・処理等が決められた。ほとんどの先進国では処理が進んでいる。

[74] 環境省「ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の適正な処理に向けて」1頁。環境省ホームページ<http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb-pamph/index.html>

[75]環境省「ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の適正な処理に向けて」7頁。環境省ホームページ<http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb-pamph/index.html>

[76]社団法人日本石綿協会「石綿に係る法規等」<http://www.jaasc.or.jp/>。

[77]石綿セメント円筒、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディング、クラッチフェーシング、クラッチライニング、ブレーキパッド、ブレーキライニング、接着剤

[78]近年、国際的には環境関連法について単一法化を目指す傾向が窺える。1990年イギリス環境保護法(Environmental Protection Act)、1990年スイス環境保全法(Umweltschtzgesetz)、1993年オランダ環境管理法(Milieubeheerwet)、ドイツ環境法典草案等はこの例であるとされる(松村弓彦「環境法(第2版)」12頁)。環境法の分野は、将来的に一層整備されることが要求されると思われるが、将来的な課題としてより一元的に分かり易い法体系とするための一方策として単一法化についても検討すべきではないかと思われる。

[79]例えば、土壌汚染対策法に関する契約条項の分析として赤羽貴外「土壌汚染対策法をめぐる法的諸問題(上)」金融法務事情167481頁以下、表明・保証条項、環境保険加入義務条項等について淵辺善彦外「M&Aにおける環境汚染・社会保険等のリスクへの対応」ビジネス法務200412月号43頁等参照。

[80]既に述べたとおり京都議定書の発効を控え新たな地球温暖化防止のための新たな規制がなされることが予想される。地球温暖化に限らず、将来的に環境負荷を増大する行為に対する規制強化や厳罰化、逆に環境負荷を軽減させる行為に対する優遇措置、奨励策が採られることなどが予想される。例えば、近年における変化としては、土壌汚染防止法における土地所有者、管理者等の責任強化は前者の一例であるし、自動車のグリーン税制導入などは後者の一例である。また、新聞報道などでみられるように最近硫酸ピッチの不法投棄に関して逮捕者が続出しているのも環境問題についての法的環境変化の一環のように思われる。

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