不動産特定共同事業法の改正に伴う既存不動産特定共同事業者の実務対応について

2018.5.11

不動産特定共同事業法の改正に伴う既存不動産特定共同事業者の実務対応について

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1. はじめに

平成29年12月1日、不動産特定共同事業法(以下「不特法」といいます。)が改正され、これに伴い、不動産特定共同事業法施行令(以下「不特法施行令」といいます。)及び不動産特定共同事業法施行規則(以下「不特法施行規則」といいます。)も改正されました。

本稿では、当該改正の前から不動産特定共同事業を行う不動産特定共同事業者(以下「既存不動産特定共同事業者」といいます。)が不特法等の改正に伴い留意すべきと考えられる点について述べます。

 

2. 経過措置について

(1) 約款

今般の不特法の改正に伴い、不特法施行規則に定められる不動産特定共同事業契約約款(以下「約款」といいます。)の内容の基準が変更されました(不特法施行規則第11条)。改正後に新たに約款の作成をし、又は約款の追加若しくは変更を行うにあたっては、改正後の不特法施行規則第11条に定められる約款の内容の基準に適合させる必要があります[1]

もっとも、既存不動産特定共同事業者においては、不特法の改正後においても、既存の約款に従って不動産特定共同事業契約を締結することができます(不特法施行規則附則第3条)。

したがって、既存不動産特定共同事業者は、必ずしも改正後の不特法施行規則第11条に定められる約款の内容の基準に適合する約款を作成する必要はなく、既存の約款によって従前と同様の不動産特定共同事業を行うことができます。

 

(2) 契約成立前交付書面、契約成立時交付書面及び財産管理報告書

不特法施行規則の改正に伴い、契約成立前交付書面、契約成立時交付書面及び財産管理報告書に記載する必要のある事項も一部変更されています(不特法施行規則第43条、第47条及び第50条)。

既存不動産特定共同事業者は、契約成立前交付書面及び契約成立時交付書面の記載事項については、施行日(平成29年12月1日)から起算して6月を経過する日までの間は、改正前の不特法施行規則に従うことができますが(不特法施行規則附則第4条)、その後は改正後の不特法施行規則に従う必要があります。そのため、既存不動産特定共同事業者は、かかる期限後に初めてこれらの書面を交付するときまでに、これらの書面のフォーマット等における記載事項の見直しを行う必要があると思われます。 

財産管理報告書の記載事項については、契約成立前交付書面及び契約成立時交付書面とは異なり、経過措置の対象となっておりませんので、施行日以後に交付する財産管理報告書は改正後の不特法施行規則第50条に従って作成する必要があります。そのため、施行日以後に初めて財産管理報告書を交付するとき[2]までに財産管理報告書のフォーマット等における記載事項の見直しを行う必要があると思われます。

 

3. 特例投資家のみを相手方とする事業における約款規制の免除について

不特法における特徴的な規制の1つとして、約款に基づいて不動産特定共同事業契約を締結しなければならないというものがあります(不特法第23条)。

この点、今般の不特法改正により、特例投資家のみを事業参加者とする場合には、不動産特定共同事業契約に特例投資家以外への譲渡制限の規定を設ければ、かかる規制の適用を受けないことになりました(不特法第68条第3項及び第4項)。

かかる改正は、既存不動産特定共同事業者のみを対象とするものではありませんが、既存不動産特定共同事業者においても、特例投資家のみを事業参加者とする場合には、かかる適用除外によって、既存の約款の内容や不特法施行規則第11条に定められる約款の内容の基準にかかわらず、自由に商品設計をして不動産特定共同事業契約を締結でき、また、期中においても、事業参加者と合意することによって柔軟に不動産特定共同事業契約を変更することができるようになったといえます。

なお、不動産特定共同事業契約の締結が約款に基づかないでなされる場合には、不動産特定共同事業契約の締結の勧誘をするに際し、①不動産特定共同事業契約の締結が約款に基づかないでなされる旨及び②不動産特定共同事業契約上の権利義務を他の特例投資家に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨について告知義務が課されることに留意する必要があります(不特法第22条の2第1項及び第2項)。

 

4. 契約成立前交付書面、契約成立時交付書面及び財産管理報告書の電磁的方法による提供について

今般の不特法改正により、不動産特定共同事業者は、不特法施行令第8条に従って提供を受ける者の事前の承諾を得ることにより、契約成立前交付書面、契約成立時交付書面及び財産管理報告書を電磁的方法[3]によって提供することができるようになりました(不特法第24条第3項、第25条第3項及び第28条第4項)。

電磁的方法によって契約成立前交付書面、契約成立時交付書面及び財産管理報告書の提供を行うことができるのは、電子取引業務[4]を行う不動産特定共同事業者に限定されません[5]。そのため、電子取引業務は行わず、対面で不動産特定共同事業契約の締結を行う既存不動産特定共同事業者においても、電磁的方法によって契約成立前交付書面、契約成立時交付書面及び財産管理報告書の提供を行うことができることになります。 

電磁的方法によって契約成立時交付書面を提供する場合、クーリング・オフの起算日は、インターネットを通じて提供される場合には契約成立時交付書面に記載すべき事項が事業参加者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへ記載された日になり、記録媒体をもって提供される場合には事業参加者がファイルを受領した日になります[6]。電子取引業務を行う場合には、業務管理体制の要件の1つとしてこれらの日を特定するための措置をとる必要がありますが[7]、電子取引業務を行わない場合であっても、電磁的方法によって契約成立時交付書面を提供する場合には、クーリング・オフの起算日を立証できない事態を避けるため、電子取引業務を行う場合と同様にこれらの日を特定できるようにする必要があると考えられます。

 

5. 第三号事業について

特例事業における事業参加者は、特例投資家に限定されていましたが(改正前の不特法第2条第6項第4号)、今般の改正により、対象不動産について、一定規模[8]以上の宅地の造成や建物の新築等の工事[9]を行う場合を除き、特例投資家でない者(以下「一般投資家」といいます。)を事業参加者とすることができるようになりました(不特法第2条第8項第4号)。

もっとも、第三号事業を行う既存不動産特定共同事業者については、特例投資家のみを事業参加者とする事業を前提として許可を受けていますので[10]、その第三号事業に係る許可について、特例投資家のみを事業参加者とする特例事業者のみの委託を受けて行う旨の条件が付されているものとみなされ(不特法附則第2条第1項)[11]、一般投資家を事業参加者とする特例事業者からの委託を受けて第三号事業を行うことはできません。 

第三号事業を行う既存不動産特定共同事業者が一般投資家を事業参加者とする事業を行おうとする場合には、改正後の不特法施行規則に定める約款の内容の基準に適合する約款(一般投資家が事業参加者になることを想定した約款)について認可を受け(不特法第9条第1項第2号)、主務大臣に上記の条件を解除してもらう必要があります(不特法第4条)。

 

6. おわりに

上記のとおり、既存不動産特定共同事業者は、不特法の改正後においても引き続き既存の約款によって不動産特定共同事業を行うことができますので、従前と同様の事業を継続して行う限り、実務上対応が必要な点はあまりありません。もっとも、この場合であっても、契約成立前交付書面、契約成立時交付書面及び財産管理報告書の記載事項については、改正の影響があり得るところであり、従前同様の書面を交付し続けた場合には不特法違反となる可能性がありますので、速やかにこれらのフォーマット等の見直しを行う必要があるものと考えられます。

また、今般の不特法等の改正により、既存不動産特定共同事業者においても、特例投資家のみを事業参加者とすることで約款の規制を免れることにより商品を自由に設計することができるようになったり、クラウドファンディング(電子取引業務)に関する規定の整備がなされたりしており、その事業を従前より広げていくことができる基盤が用意されたものと思われます。 

今般の不特法改正においては小規模不動産特定共同事業や適格特例投資家限定事業という新たな事業類型も導入されているところであり、これらとあいまって、不動産特定共同事業が更に拡大していくことが期待されるところです。

以 上

 

[1] 国土交通省の「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」(以下「国交省事務ガイドライン」といいます。)第3-3(2)及び金融庁の「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 7 不動産特定共同事業関係)」(以下「金融庁事務ガイドライン」といいます。)7-2-3(2)。かかる約款の作成、追加又は変更にあたっては、改正後の不特法施行規則第11条に定められる約款の内容の基準を踏まえて作成された一般社団法人不動産証券化協会のモデル約款(平成29年度版)(https://www.ares.or.jp/action/relation/index.html)の内容が参考になります(国交省事務ガイドライン第3-2(1)及び金融庁事務ガイドライン7-2-2(1)参照)。

[2] 財産管理報告書は1年を超えない期間ごとに作成・交付する必要があります(不特法施行規則第50条)。

[3] 「電磁的方法」とは、情報通信の技術を利用する方法をいいます(不特法施行令第8条第1項)。具体的な方法は不特法施行規則第44条に規定されますが、ウェブサイトを通じてダウンロードさせる方法や電子メールで送付する方法(国土交通省土地・建設産業局不動産市場整備課「不動産証券化を活用した地方創生の推進-不動産特定共同事業法の改正の概要」時の法令2041号50頁)、CR-ROM等の記録媒体に記録した上で当該記録媒体を交付する方法などが想定されています。

[4] 今般の不特法改正により、クラウドファンディング(電子取引業務)に関する規定が整備されています。「電子取引業務」については、「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって主務省令で定めるものにより、勧誘の相手方に不動産特定共同事業契約の締結の申込みをさせる業務」と定義されています(不特法第5条第1項第10号)。既存不動産特定共同事業者が新たに電子取引業務を行おうとする場合には、許可を受けた主務大臣又は都道付置県知事の認可を受ける必要があります(不特法第9条第1項第3号)。

[5] 宮城栄司「改正不動産特定共同事業法の概要」金融法務事情2070号56頁。

[6] 国交省事務ガイドライン第7-9(2)②及び金融庁事務ガイドライン7-6-9(2)②、不特法施行規則第43条第1項第26号ヘ(1)及び(2)。

[7] 不特法第31条の2第2項、不特法施行規則第54条第3号、国交省事務ガイドライン第7-9(2)②及び金融庁事務ガイドライン7-6-9(2)②。

[8] 第三号事業者に業務を委託する場合には、工事の費用の額が対象不動産の価格(鑑定評価額、公示価格、路線価、販売公表価格その他これらに準じて公正と認められる価格)の1割に相当する額を超える場合が該当します(不特法施行規則第2条第2項)。

[9] 建物の改築、増築、移転、修繕及び模様替えを含みます(国土交通省土地・建設産業局不動産市場整備課「不動産証券化を活用した地方創生の推進-不動産特定共同事業法の改正の概要」時の法令2041号54頁(注11))。

[10] 第三号事業を行う既存不動産特定共同事業者の約款は、特例投資家のみを相手方にすることを前提とするものであり、改正後の不特法施行規則に定める約款の内容の基準を満たしていないものと思われます。

[11] 国土交通省土地・建設産業局不動産市場整備課「不動産証券化を活用した地方創生の推進-不動産特定共同事業法の改正の概要」時の法令2041号54頁参照。

 

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