取締役(代表取締役を含む)を退任させる場合の留意点[日・英]

2017.2.17

取締役(代表取締役を含む)を退任させる場合の留意点[日・英]

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1. はじめに
日本の株式会社の取締役を退任させる場合,どのような理由・手続きが必要であろうか。また,退職慰労金等の支払いは要求されるのであろうか。これらの問いに答えるためには,取締役の解任や報酬(退職慰労金を含む)についての会社法上のルールと,日本の労働法の適用範囲を正しく理解する必要がある。

 

2. 取締役を退任させる場合にいかなる理由・手続きが求められるか
会社法上,取締役の解任は,いつでも自由に株主総会の決議により行うことができるとされている(会社法339条1項)。ただし,取締役が従業員の地位を有すると認められる場合は,日本の労働契約法等の適用があり,従業員の地位を失わせる(=解雇する)ためには,客観的に合理的な理由と社会的相当性が必要とされ(労働契約法16条),これらを欠く解雇は無効となる。この客観的に合理的な理由や社会的相当性は容易には認められず,単にパフォーマンスが悪いといった理由では解雇することは難しい。
そこで,問題となっている取締役が従業員の地位を有するか否かが重要となる。一般に,従業員の地位は,使用者の指揮命令のもとで労務に服する者に認められるとされているが,取締役の場合,会社の業務執行に関する意思決定を行う者については従業員の地位が否定され,これを行わない者については肯定されるのが一般である。
取締役のうち代表取締役については,通常,業務遂行上,他者の指揮監督や拘束を受けることはなく,会社を内部的にも外部的にも代表するため,原則として従業員には当たらないとされている。しかし,外国企業の100%子会社である日本企業の代表取締役については,実質的には従業員に当たる場合も少なくないと考えられるため,注意が必要である。

 

3. 取締役を退任させる場合に退職慰労金等の支払いが必要になるか
会社法上,取締役に対して退職慰労金を支払う場合には,定款の定め又は株主総会決議が必要であるとされている(会社法361条1項)。そのため,仮にその会社において取締役の退職慰労金についての内規が存在し,退任取締役に対して退職慰労金を支払うことが慣例になっていたとしても,これらがない限り会社は退職慰労金の支払義務を負わないのが原則である。
ただし,取締役を株主総会の決議によって解任した場合,その解任について正当な理由がなければ(なお,その場合でも解任自体は有効である),当該取締役は,会社に対して,残存任期で得られたはずの報酬相当額等につき賠償を求めることができるとされている(会社法339条2項)。
取締役の任期は原則として2年間だが(会社法332条1項本文),非公開会社においては定款によって任期を10年まで伸長できるとされている(会社法332条2項)。そのため,解任される取締役の残存任期が10年近くになる場合もあり得るから,十分に注意が必要である。
また,取締役が従業員の地位を有すると認められる場合,従業員に適用される就業規則や退職慰労金規程等が当該取締役に適用され,これらに従った退職慰労金等の支払いが必要となるケースがある。

 

4. 実務的な対応策
取締役を退任させる場合,直ちに株主総会決議によって解任するのではなく,上記のようなポイントを念頭に置きながら,当該取締役と,退職にあたって金銭を支払うのか等について交渉し,合意を得たうえで退任してもらうのが一般的である。

以 上

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