国際裁判管轄の合意が無効とされるリスクについて

2017.1.6

国際裁判管轄の合意が無効とされるリスクについて

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1. 対象につき限定を付さない国際裁判管轄の合意は無効とされるリスクがある
日本企業と海外企業との契約には、国際裁判管轄を定める条項(又は仲裁条項)を設けるのが一般的ですが、「両当事者間における一切の紛争については、当該紛争が本契約に起因ないし関連して生じているかどうかにかかわらず、(○国の)○○裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。」といった、管轄合意条項の対象となる紛争について限定を付さない条項も見受けられます。
そのような限定を付さない条項は、国際裁判管轄の合意として認められず、無効とされるリスクがあることが、以下に紹介する「島野製作所vs.アップル 訴訟」中間判決で明らかになりました。
企業の法務担当者においては、今後締結する契約については勿論、既に締結済みの契約についても、かかるリスクがないかについて留意する必要があると考えられます。

 

2. 「島野製作所vs.アップル 訴訟」中間判決[1]

(1) 概要
アップル(本社:カルフォルニア州)は、島野製作所(本社:東京都)に対して、パソコン用部品の製造・供給を継続的に委託していたところ、島野製作所は、アップルが島野製作所に対して代金減額やリベート支払いを要求したことは独占禁止法に違反するなどと主張して、アップルに対し、約15億円及び約7800万ドルの損害賠償を請求する訴えを日本の東京地方裁判所に提起しました。
これに対し、アップルは、島野製作所との間の基本契約において、カリフォルニア州の裁判所を専属的裁判管轄とすることが合意されているため、本件訴えはかかる合意に反して提起された不適法な訴えであると主張しました。
東京地方裁判所は、中間判決において、当該合意は「一定の法律関係に基づく訴えについて定められたもの」と認めることはできないから無効であるとして、日本の裁判所に裁判管轄があると判断しました。

 

(2) 判示内容

東京地方裁判所は、国際裁判管轄の合意については、管轄合意の当事者の予測可能性を担保する必要があることから、条理上[2]、一定の法律関係に関して定められたものである必要がある旨判示しました。

そのうえで、カリフォルニア州の裁判所において訴訟を開始できるとの条項は、単に「両当事者間に紛争が生じる場合」に適用されるとのみ定められており、「紛争が本契約に起因もしくは関連して生じているかどうかにかかわらず」適用される旨が規定されていることから、当該合意は、一定の法律関係に基づく訴えについて定められたものと認めることはできないとして、当該合意を無効と判断しました。

なお、アップルは、基本契約に関連する訴訟が当該条項の対象となる訴訟であることは明らかであり、本件訴えについて当該条項を適用しても原告(島野製作所)の予測可能性を害しない旨を主張しましたが、同判決は、「具体的事案において、実際に原告の予測可能性を害する結果となるかどうかとは関わりが無い」として、かかる主張を排斥しました。

以 上

[1] 東京地裁平成28年2月15日中間判決

[2] 国際裁判管轄の合意が「一定の法律関係に基づく訴えに関」するものである必要があることは、平成23年の民事訴訟法の改正により、明文化されている(民事訴訟法第3条の7第2項)。もっとも、島野製作所vs.アップル訴訟では、同改正前の事案が問題となっているため、平成23年改正民事訴訟法の適用はない(同改正民事訴訟法附則第2条第2項参照)。

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