田村 幸太郎

不動産証券化の分野において弁護士に期待される役割戦後右肩上がりに成長してきた日本経済も、1989年をピークとしてバブルが崩壊。
以降、多くの金融機関は多額の不良債権処理をしなければならなくなりました。
不動産の証券化はそのために取り入れられた新たな金融手法の一つです。

開始後10年の新分野

不動産の証券化とは、不動産の価値に基づいて不動産を取引するというコンセプトに基づく新たな金融手法です。この金融手法が用いられ始めたのは、証券会社の破綻というニュースが話題になった1997年のこと。すなわち、不動産の証券化は、まだ10年しか経っていない新しい分野です。
従来、不動産の売買において弁護士が関与することは多くありませんでした。会社間における不動産売買は、宅地建物取引業者が売主と買主の仲を取り持ち、双方の信用力によって契約を締結することが一般的だったからです。しかし、不動産の証券化は、これまでとは異なる新しい金融手法であり、元々日本にはない仕組みであったため、これを日本の法令に適合させ、現実の取引に通用するスキームにするために、法律の専門家である弁護士の関与が不可欠となりました。
私たちに最も期待されているのが、このスキームの設計における法的観点からのサポートです。スキーム設計のプロセスの中で、法律や制度を作り直す必要が出てくることもあります。その場合には、どのような法律や制度が必要なのか検討し、公的な場において発言したり、間接的ですが立法過程に関与していったりすることもあります。

弁護士の役割はますます重要に

不動産証券化の基本的な制度が出来上がった今、弁護士の主な役割は、契約書作成業務です。金融商品取引法や信託業法、倒産関連法規、建築基準法などの法制度は、目まぐるしく変わっています。また、企業に目を向けると、コンプライアンスや内部統制に対する要求水準が、年々高まっています。つまり、目まぐるしく変わる法制度に対応した万全な仕組みを作るためには、企業の法務部だけでは難しく、外部の専門家である弁護士に依頼する方が経済的であるという見方が増えてきているのです。また、取引にかかわるレンダー、オリジネーター、SPC(特定目的会社)、信託受託者等の利害の対立する各当事者にそれぞれ弁護士が必要となってくるなど、弁護士に対する期待・需要が高まっています。
現在、サブプライム問題や、金融商品取引法改正などにより、不動産投資市場は新たな局面に移行しつつあります。その中で増えてきたのが紛争処理案件。不動産証券化をめぐる弁護士需要は今後も様々な形で増えていくことが予想されます。
今後、不動産の証券化は、投資商品として、金融のプロだけではなく一般の投資家にもますます広がっていくことが予想されます。その意味でも、私たちの役割はますます重要になっていくと自覚しています。

ドメスティックでありながらグローバルな世界

不動産の証券化は、民法や商法の体系にはなかった取引です。成立して10年しか経たない新しい分野ではありますが、前述のとおり広範な法律が関わることから、勉強をしなければならない範囲が非常に広いというのも特徴です。
また、不動産取引は、一見ドメスティックな印象がありますが、日本国内のみに留まるものではありません。
当事務所の依頼者の多くは、外国の投資家です。さらに、最近では、海外の不動産への投資も積極的に行われています。このように、不動産証券化は、グローバルな分野であり、外国の投資家やファンドマネジャーとコミュニケートする機会も数多くあります。このようなグローバルな取引においては、ドメスティックな案件以上に新しい制度を作り上げることに対する要請が強いため、我々はそのような要請に応えるべく日々研鑽しております。

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