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1. はじめに

J-REIT(投資法人)は、過熱気味ともいわれる日本の不動産市況に比べて、投資口価格の低迷が続いているものがあり、割安感があるとされる。そのようなJ-REITの割安感に着目し、J-REITが保有する優良な不動産を取得するため、資産運用会社やスポンサーの意に反してでも、敵対的にでもJ-REITを買収しようとする気運が高まっており、実際に提案されている事例もあるといわれている。
そこで、本稿ではJ-REITの敵対的買収についてその方法や対応策等について検討する。

2. J-REITの買収防衛の特殊性・困難性

J-REITが、J-REITの役員会、資産運用会社またはスポンサーの意に反する敵対的な買収を仕掛けられた場合、事業会社の敵対的買収に比べ、買収防衛は困難なものとなりうる。まず、提示価格が高い買収提案を拒否し難いという点がある。事業会社と異なり、投資法人は、資産運用会社に資産運用業務を外部委託し、保有する不動産の利益を投資家に分配するビークルであり、商品の開発など資産運用以外の行為を営業とすることはできないし、開示資料によりJ-REITの保有する不動産の価値が公表されている。したがって、J-REITの場合、投資口価格よりも高い価格の買収提案がなされた場合に、価格を理由として提案を拒否することは困難であり、むしろ一般の投資主としては高く売れるなら売るべきであると考えるのが通常ではないかと思われる。さらに、J-REITは必ずしも資産や顧客等が有機的一体として機能しているわけではなく、個々の資産を売却してその利益が投資主に分配されるのであれば、むしろ買収者に売る方が良いという見方もできる。その上、投資法人は従業員を雇用することができないため、雇用の保護という点も買収防衛の理由とすることもできない。

3. J-REITの敵対的買収の方法 

J-REITの敵対的買収の方法としては、具体的には次のような方法が考えられる。まず、J-REITが保有する不動産を売却して利益を得るために、J-REITとその資産運用会社に対して、J-REITが保有する全ての不動産を購入することを希望する提案を行う。その際、保有資産の全部譲渡は実質的な解散であり、不動産の売却利益を得ることを目的とする買収者においてはJ-REITを存続させる必要もないことから、J-REITの解散を前提として保有資産の全部譲渡を求める提案を行うことが通常であると思われる。そして、J-REIT側が提案に応じなければ、J-REITの解散を議案とする投資主総会の招集を求め、招集された投資主総会において委任状勧誘等により議案を可決させることでJ-REITを解散させ、保有資産を全部譲渡させるという方法が想定される。

(1) J-REITの投資主総会における買収提案
ア 投資主総会の招集
J-REITの投資主総会では、通常の事業会社と同様、発行済投資口の1%以上の投資口を6か月前から引き続き有する投資主は、投資主総会において一定の事項を投資主総会の目的とすることを請求し(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号。その後の改正を含む。以下「投信法」という。)第94条第1項、会社法(平成17年法律第86号。その後の改正を含む。以下「会社法」という。)第303条第2項)、また、議案の要領を投資主総会の招集通知に記載することを請求することができる(投信法第94条第1項、会社法第305条第1項)。
J-REIT側による投資主総会の開催がなければ、買収者は、J-REITの解散や資産運用委託契約の解約等を投資主総会で決議するため、投資主総会招集請求をしなければならないケースが多いと思われる。
なお、事業会社の株主と同様、J-REITの投資主も、発行済投資口の3%以上の投資口を6か月前から保有していれば、投資主総会の招集を請求することができる(投信法第90条第3項、会社法第297条第1項)。

イ 委任状勧誘(みなし賛成制度)
投資主総会においても、通常の事業会社と同様、自己の提案する議案への賛成票を集めるために、提案に賛成する旨の委任状を投資主から取得する委任状勧誘を行うことができる。この際、J-REIT側が買収提案に反対であれば、J-REIT側との委任状争奪戦になることが想定される。
J-REITの委任争奪戦においては、みなし賛成制度に留意する必要がある。すなわち、J-REITの場合、通常の事業会社とは異なり、規約によって、投資主が投資主総会に出席せず、かつ、議決権を行使しないときは、当該投資主はその投資主総会に提出された議案について賛成するものとみなす旨を定めることができる(投信法第93条第1項)。実務上は、J-REITの投資主は議決権行使に積極的でないため、買収者により提案された解散等の議案についても、通常はこのみなし賛成により可決となりやすい。

ウ FCレジデンシャル投資法人の事例[1]
J-REITの解散を議案とする投資主総会招集請求がなされた事例がある。2010年11月24日、FCレジデンシャル投資法人の投資主であるエスジェイ・セキュリティーズ・エルエルシーが、同投資法人を解散して全資産を売却させるため、投資主総会招集請求を行った。
招集請求の理由は、「本投資法人を解散し、本投資法人の全資産を売却する手続を通じて、本投資法人の投資主に対して、早期に投下資本回収の機会を与えることは、全投資主との関係においても唯一最善の策である」ということである[2]。同投資法人は、投資主総会で解散を承認して全資産を譲渡することを内容とする提案も受けている。
同投資法人の資産運用会社は、投資法人の解散と全資産の売却を内容とする提案について、将来の投資口価格上昇による投資主価値の更なる向上の可能性を完全に否定するものであるとして提案を慎重に検証し、諸事情を総合的に勘案して、提案を受けることが適切である旨の意見は表明できないとした。
同投資法人は、大口投資主2社から解散を目的とした議案に反対する意向表明を受領し、発行済投資口総数の3分の1を超える反対が見込まれ、解散を目的とする決議が成立する可能性が非常に低いものとなった。そこで、同投資法人は投資主総会の招集を行わないことを決定したのである。

(2) 公開買付け
J-REITの買収の方法としては、買収者が買収対象のJ-REITの投資口を買い集めることも考えられる。投資口を取得する方法としては、投資口を市場で買い集める方法のほか、公開買付けを行う方法等がある。J-REITの公開買付けの手続については、基本的に事業会社の場合と同様である。

4. J-REIT買収の留意事項
(1) 導管性要件の喪失
J-REITにおいては、租税特別措置法(昭和32年法律第26号。その後の改正を含む。以下「措置法」という。)第67条の15第1項に定める一定の要件(以下「導管性要件」という。)を満たした場合、課税所得の計算上、投資主へ支払う配当等の額を損金に算入することができる。これにより、J-REITの投資主は、事業会社の株主に比べてより多くの分配金を得ることができるため、導管性要件の維持はJ-REITにおいて重要なことである。
しかし、投資主総会の決議によってJ-REITの解散や保有資産の全部譲渡をした場合や、公開買付けをして50%超の株式を取得した場合、導管性要件を喪失するリスクがある。
導管性要件を満たさず投資主への配当等の額について損金算入ができなくなると、投資主の分配金が減少するため、投資主にとって不利益となる。投資主の分配金が減少するにもかかわらず、それを考慮せずに保有資産を全部譲渡したり、J-REITが公開買付けに賛同意見を表明したりした場合、役員は投資主から善管注意義務・忠実義務違反を問われるリスクがある[3]

(2) 上場廃止による課税の増加
J-REITが解散することは上場廃止事由(有価証券上場規程第1218条第1項第1号a(a))となっている。そのため、保有資産を全部譲渡して投資法人を解散した場合、株式会社東京証券取引所不動産投資信託証券市場での上場が廃止される。
上場廃止となった場合、源泉徴収税率の上昇等によって投資主への課税が増加する。課税が増加する結果、投資主は手取りの分配金が減少するなどの不利益を被る。

(3) 保有資産の全部譲渡に関する手続
J-REITが買収者に保有資産を全部譲渡する場合、以下の点に留意する必要がある。
まず、J-REITの規約を変更する必要がある。J-REITは、不動産等の資産を譲渡する場合、規約に定める資産運用の対象及び方針に従わなければならない(投信法第193条)。規約には、通常、中長期にわたり安定した収益の確保と運用資産の着実な成長を目指すことなどが資産運用の方針として定められている。J-REITが解散を予定して資産の全部を譲渡することは、当該方針に従っているものといえず、投信法第193条に違反するおそれがある。そこで、投資主総会の特別決議により規約における資産運用の方針等を変更する必要がある。
また、保有資産の全部譲渡は実質的な解散であり、解散と同様に投資主総会の特別決議を経るべきである[4]。そもそも、J-REITの投資主は安定的に中長期的な利益を得るために投資していることが通常であり、解散等により投資先を失い、分配金を得られなくなることは想定していない。そこで、投資主総会において、譲渡価格の妥当性や前述した課税の問題を含め、投資主への影響等を説明して投資主の理解を得るべきである。

(4) 公開買付け後にスクイーズアウトをする場合の留意事項[5]
公開買付け後、買収者は、公開買付けに応じなかった少数投資主を排除(スクイーズアウト)することも考えられる。
J-REITにおけるスクイーズアウトは、以下の方法により、少数投資主の有する投資法人の投資口を端投資口にして換金することで行うことができると考えられている。

端投資口交付合併 買収対象の投資法人を消滅投資法人として他の投資法人と吸収合併させ、合併の対価として端投資口を交付する方法
投資口の併合 買収者以外の投資主の投資口が端投資口となるように併合割合を定める方法

合併と投資口の併合のいずれについても投資主総会の特別決議が必要となる。投資主への対価が不公正であれば、合併や投資口の併合を承認した投資主総会決議の取消しにより合併・投資口の併合自体が無効となったり、投資主から公正な対価との差額について損害賠償請求をされたりするリスクがある。また、投資口の併合については、事業会社の場合と異なり、投資口の併合について反対する投資主が投資口の買取りを請求する権利はなく、少数投資主の保護が不十分であり、公正さに疑義が生じる[6]
その他、スクイーズアウトについては、公開買付けの強圧性の問題等、いくつかの問題点がある。

5. 敵対的買収への対応
(1) 買収提案の妥当性の検討
解散を前提とする保有資産の全部譲渡の提案や公開買付けがなされた際に、妥当性のない価格で保有資産を譲渡したり、公開買付けに賛同したりした場合、役員の善管注意義務・忠実義務違反が問題となりうる。買収防衛策を導入していない場合でも、買収者が提示した価格の分析に当たっては、提示価格を一口当たりの投資口価値で評価して当該投資法人の投資口価値と比較するなどして、妥当な価格であるかを慎重に検討する必要がある。
さらに、事業会社における一般的な実務と同様に、意思決定の公正性を担保し、慎重に検討するため、法務や税務のアドバイザーの助言を得たり、独立した委員会を組成したりする方法も考えられる。委員会の組成にあたっては、中立的な立場にある監督役員や、投資委員会等の外部委員、外部の専門家を委員とすることで独立性を確保すべきである。
保有資産の全部譲渡の提案については、譲渡の条件や必要性、投資主への影響等を踏まえ、丁寧に検討すべきである。

(2) 買収防衛策について
ア 買収防衛策の導入
事業会社のような買収防衛策を導入しているJ-REITは見当たらない。前述した導管性要件の存在等によりJ-REITの買収自体が少ないことや、事業会社で導入される差別的な新株予約権の無償割当てに相当する防衛策は導入できないこと[7]などがその要因として考えられる。もっとも、理論的にはJ-REITにおいても買収防衛策を導入することは敵対的買収への対応策の一つとなる。

 イ 第三者割当増資
前述のとおり、割安感のあるJ-REITほど買収を受けるリスクがあるところ、資産規模の拡大等によりJ-REITの価値を向上させることで、買収を受けるリスクを軽減する方法が考えられる。例えば、スポンサーなどに新投資口の第三者割当てを行うなどして資金調達を行い、その資金で不動産を購入することが考えられる。
もっとも、第三者割当てには、以下のとおり投資口発行の差止めや損害賠償請求のリスクがあることには留意する必要がある。
すなわち、(a)投資口の発行が法令又は定款に違反する場合や、(b)投資口の発行が著しく不公正な方法により行われる場合において、投資主が不利益を受けるおそれがあるときは、投資主は、投資口発行の差止めを請求することができる(投信法第84条第1項、会社法第210条)。上記(a)(b)に当たる投資口発行をした場合、J-REITの役員等は、善管注意義務・忠実義務違反を理由としてJ-REITや第三者から損害賠償請求をされるリスクもある(投信法第115条の6第1項、第115条の7第1項、民法第709条)。

 ウ 自己投資口取得
保有資産を主として不動産等資産に対する投資として運用することを目的とするJ-REITは、投資主との合意により当該J-REITの投資口を有償で取得することができる旨を規約に定めた場合、投資主との合意により自己投資口を取得することができる(投信法第80条第1項第1号)。この自己投資口取得により発行済投資口数が減少し、1口当たりのJ-REIT価格の上昇が期待できる。

(3) 対抗的な公開買付け
公開買付けを仕掛けられた場合は、事業会社における一般的な実務と同様に、J-REIT側でも対抗として公開買付けを行い、スポンサーなど友好的な第三者を公開買付者にして投資口を取得してもらう方法もある。この場合は買収者の提示価格とどちらが高い価格になるかという価格の争いにならざるをえない。

(4) 委任状勧誘等による買収提案への反対票の確保
投資主総会において買収に関する議案が提案された場合、その買収提案が否決となる可能性を高めるためには、買収提案に反対する旨の委任状を集める方法(委任状勧誘)により、買収提案への反対票として投資口を確保することが考えられる[8]。また、大口投資主に投資主総会で買収提案に反対してもらうことも考えられる。

 6. 終わりに
本稿では、J-REITの敵対的買収についてその方法や対応策等について説明してきた。妥当性や合理性のないものについては、当該J-REITひいてはJ-REIT市場の発展のためにも買収提案を拒否すべきであるが、他方で、投資口価格が低迷している状況では、敵対的買収等によって投資法人のガバナンスを効かせることができるという良い面もある。各J-REITやその資産運用会社としては、近時の動向を踏まえ、敵対的買収への対応策を十分に準備していくことが求められる。

以 上

[1] FCレジデンシャル投資法人ほか(2011年2月8日)「投資主総会の招集請求書受領後の一連の経緯と今後の方針について」(いちごオフィス)<https://www.ichigo-office.co.jp/oldsite/fcric/cms/press/2011-0208-00000.pdf>、

FCレジデンシャル投資法人ほか(2011年2月18日)「投資主総会の招集請求に関する本投資法人の決定事項のお知らせ」(いちごオフィス)<https://www.ichigo-office.co.jp/oldsite/fcric/cms/press/2011-0218-00000.pdf>

[2] FCレジデンシャル投資法人ほか(2010年11月24日)「投資主による投資主総会の招集の請求に関するお知らせ」(いちごオフィス)<https://www.ichigo-office.co.jp/oldsite/fcric/cms/press/2010-1124-00000.pdf>

[3] 投資法人の執行役員及び監督役員は投資法人に対して善管注意義務・忠実義務を負っており(投信法第97条・第109条第5項・第111条第3項、会社法第355条)、その任務を怠ったときは投資法人に対して損害賠償責任を負う(投信法第115条の6第1項)。6か月前から引き続き投資口を有する投資主は、投資法人に対して、役員等の責任を追及する訴えの提起を請求することができ、投資法人が請求の日から60日以内に訴えを提起しないときは、自ら訴えを提起することができる(投信法第116条、会社法第847条)。

[4] 投資法人の解散は投資主総会の特別決議事項である(投信法第93条の2第2項第4号)。

[5] 新家寛ほか編『REITのすべて(第2版)』558頁~572頁(民事法研究会、2017)

[6] 経済産業省「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」(2007年9月4日)(以下「MBO指針」という。)13頁では、事業会社のスクイーズアウトについて、「反対する株主に対する株式買取請求権又は価格決定請求権が確保できないスキームは採用しないこと」とされている。

[7] 新投資口予約権を発行することはできるが、ライツ・オファリング目的に限定されている(投信法第88条の4第1項・第88条の13)

[8] 上場株式会社の委任状勧誘規制はJ-REITに適用されない(金融商品取引法第194条参照)。