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2024.07.19

企業法務の観点から注目される最近の主な裁判例(2024年5月・6月)

業務分野

牛島総合法律事務所 訴訟実務研究会

<目次>
1. 商事法
2. 民事法・民事手続法
3. 労働法
4. 租税法

 裁判所ウェブサイトや法務雑誌等で公表された最近の裁判例の中で、企業法務の観点から注目される主な裁判例を紹介します(2024年5月・6月)。

 下記1(1)(大阪地判令和6年1月26日)は、TOYO TIRE(旧東洋ゴム工業)の株主が、同社取締役らに対し、同社子会社が建築基準法に基づく技術的基準に適合しない建築用免震積層ゴムを販売したことに関し、同社取締役らが善管注意義務を怠り、同社に損害を与えたとして、総額4億円の損害賠償を求めた株主代表訴訟です。大阪地裁は、同社取締役らの責任を認め、合計約1億5800万円の支払を命じました。子会社が出荷した製品の出荷停止及び欠陥の公表について、親会社取締役らによる経営判断の当否が問題となった事案として注目されます。

 下記2(4)(東京地判令和5年12月11日)は、タレントである原告が、芸能活動に関し専属契約を締結していた芸能プロダクションである被告に対し、当該契約が解除されたにもかかわらず、被告がホームページ上に原告の肖像写真及び氏名等を掲載し続けている行為について、肖像権及びパブリシティ権侵害を理由に、損害賠償や肖像写真等の削除等を求めた事案です。東京地裁は、原告の主張する肖像権及びパブリシティ権侵害を否定し、原告の請求を棄却しました。

1. 商事法

(1) 大阪地判令和6年1月26日(資料版商事法務482号130頁、裁判所ウェブサイト)〔TOYO TIRE免震ゴム品質不正に係る株主代表訴訟事件〕

TOYO TIRE免震ゴム品質不正に係る株主代表訴訟事件

(2) 東京地判令和5年12月7日(資料版商事法務483号155頁)

旧ドンキホーテHDからの元代表者に対する同人の新株予約権行使により生じた逸失利益相当額の損害賠償請求事件

2. 民事法

(1) 最一判令和6年6月24日(裁判所ウェブサイト)

地方住宅供給公社が賃貸する住宅の使用関係については、借地借家法32条1項の適用がある。

(2) 東京高判令和6年1月25日(金融・商事判例1692号32頁)

1 誤振込により成立した受取人の預金債権を受取人に対する貸金債権をもってシステム上自動的に相殺処理を行った被仕向金融機関の債権回収について、振込依頼人に対する不法行為の成立を否定した事例
2 誤振込により成立した受取人の預金債権を受取人に対する貸金債権をもってシステム上自動的に相殺処理を行った被仕向金融機関の債権回収について、振込依頼人との関係で不当利得の成立を否定した事例

(3) 東京地判令和6年1月24日(金融・商事判例1693号46頁)

銀行の融資担当者が資料の偽装による不正融資を看過した場合に、不正融資に加担した顧客との関係で銀行が不法行為責任を負うものではないとされた事例

(4) 東京地判令和5年12月11日(判例タイムズ1520号244頁、裁判所ウェブサイト)

1 芸能プロダクションが所属タレントの肖像写真をホームページに掲載した行為がパブリシティ権を侵害しないとされた事例
2 人の肖像を無断で使用する行為が肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となる場合

3. 労働法

(1) 最一判令和6年6月27日(裁判所ウェブサイト)

飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けて地方公共団体の職員を退職した者に対してされた大津市職員退職手当支給条例(昭和37年大津市条例第7号。令和元年大津市条例第25号による改正前のもの)11条1項1号の規定による一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例

(2) 最三判令和6年4月16日(WEB労政時報4078号14頁、裁判所ウェブサイト)〔協同組合グローブ事件〕

事業場外での勤務状況の報告内容につき、単に確認する方法があり得ることをもって「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとは判断できない

(3) 福岡地小倉支判令和6年2月13日(WEB労政時報4077号12頁)〔新星興業事件〕

作業現場の暑さ指数を把握しないまま作業員の体調確認や作業中止等の措置を講じなかった場合、熱中症予防に関する安全配慮義務に違反する

(4) 東京地判令和5年10月30日(判例タイムズ1520号65頁)

学校法人において、定期昇給及び特別昇給を行うことが労使慣行になっていたとは認められないと判断された事例

(5) 東京地立川支判令和5年8月9日(労働判例1305号5頁)〔サカイ引越センター事件〕

出来高払制の業績給の有効性

(6) 東京地判令和5年6月29日(労働判例1305号29頁)〔アメリカン・エアラインズ事件〕

再雇用拒否と定年後再雇用契約の成否

(7) 東京地判令和5年6月9日(労働判例1306号42頁)〔日本HP事件〕

非管理職への降格に伴う賃金減額の有効性

4. 租税法

(1) 最三判令和6年5月7日(裁判所ウェブサイト)

法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反しない

(2) 東京高判令和6年1月18日(金融・商事判例1693号36頁)

1 法人税法34条2項は憲法84条および41条に違反するか(消極)
2 内国法人が役員給与の全額を損金の額に算入したことにつき、役員給与に「不相当に高額な部分」があるとしてされた法人税等の更正処分およびこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分が適法であるとされた事例

以 上

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