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<目次>
1. はじめに
2. 事案の概要
3. 大正製薬に対する行政処分の内容
4. 留意点

1.はじめに

 令和6年11月13日、消費者庁は、大正製薬株式会社(以下「大正製薬」といいます。)に対し、同社が供給する「NMN taisho」と称するサプリメントに係る表示について、景品表示法のいわゆるステルスマーケティング規制(ステマ規制)に違反するとして、行政処分(措置命令)を行いました。
 令和5年10月に施行された景品表示法のいわゆるステマ規制に基づいて行政処分が行われたのは、①令和6年6月の医療法人社団祐真会の事例(※1)、②同年8月のRIZAP株式会社の事例(※2)に続き、今回が3例目となります。
 景品表示法によるステマ規制の内容については、2024年6月17日付けニューズレター「ステルスマーケティング規制(ステマ規制)に基づく初の行政処分事例~景品表示法の執行状況~」において詳細に説明していますので、ご参照いただければ幸いです。

 以下、大正製薬に対する今回の行政処分の内容及び留意点等について、ご説明します。

※1 2024年6月7日「医療法人社団祐真会に対する景品表示法に基づく措置命令について」(消費者庁)2024年6月17日付けU&Pニューズレター「ステルスマーケティング規制(ステマ規制)に基づく初の行政処分事例~景品表示法の執行状況~」
※2 2024年8月9日「RIZAP株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(消費者庁)

2.事実の概要

 今回問題となったのは、大正製薬が広告を依頼したインフルエンサーの投稿を、広告であることの表示をせずに、自社のウェブサイトに転載した行為です。
 大正製薬は、複数のインフルエンサーに対し、同社が供給する「NMN taisho」と称するアンチエイジング効果を謳うサプリメント(以下「本商品」といいます。)の無償提供(30日分、約3万2000円相当)及び対価の提供(1万円の報酬)を条件に、本商品に関するInstagramへの投稿を依頼しました。かかる依頼を受け、令和5年6月に、インフルエンサーにより、本商品に関するInstagramへの投稿がなされました。かかるインフルエンサーによる投稿には、「#PR」などと、広告であることを示す表示がされていました。
 その後、大正製薬は、令和6年4月3日及び同月19日から同年5月22日までの間、「大正製薬ダイレクトオンラインショップ」と称する同社のウェブサイトにおいて、当該インフルエンサーによる本商品に関するInstagramへの投稿の内容の一部を抜粋及び転載し、下記①~④の表示(以下「本表示」といいます。)を行いました(※3)。しかしながら、本表示の際、広告であることを示す表示はされませんでした。

「Instagramで注目度上昇中⤴」、「品質にこだわりたい方には特許処方の大正製薬『NMN taisho』」
「■■■■■■■■■様」及び本商品を持つ人物の画像とともに、「いくつになっても自分らしく、“今が最高”ʼと思える活き活きとした日々を過ごしていきたいですね!
「■■■■■■様」及び本商品の画像とともに、「原料から製造まで徹底管理されてる国内製造!!体に入れるものは安心できるものが良いよね!」
「■■■様」及び本商品の画像とともに、「1日目安3粒ずつの個包装になっているので衛生的でとても便利!」

※3 実際の表示については、2024年11月13日「消費者庁による措置命令について」(大正製薬ウェブサイト)ご参照。

 3.大正製薬に対する行政処分の内容

 本表示につき、消費者庁は、大正製薬がステマ告示に該当する不当な表示を行っていたとして、令和6年11月13日、景品表示法第7条第1項に基づき、概要以下の内容の措置命令を行いました(※4)。

① 大正製薬は、次に掲げる事項を速やかに一般消費者に周知徹底すること
本表示は、大正製薬が自己の供給する本商品の取引について行う表示(事業者の表示)であると認められること
本表示は、第三者が投稿した表示について、大正製薬が第三者に対して依頼した投稿であることを明らかにしておらず、一般消費者が事業者(大正製薬)の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当すること
② 大正製薬は、本商品又はこれと同種の商品の取引に関し、再発防止策を講じ、これを役員及び従業員に周知徹底すること
③ 大正製薬は、今後、本商品又はこれと同種の商品の取引に関し、本表示と同様の表示を行わないこと
④ 大正製薬は、上記①に基づいて行った周知徹底及び上記②に基づいてとった措置について、速やかに消費者庁長官に報告すること

※4 令和6年11月13日「大正製薬株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(消費者庁ウェブサイト)

4.留意点

 冒頭で述べたとおり、昨年10月に導入されたいわゆるステマ規制に基づき、消費者庁は、今年6月以降、3件の行政処分を行っており、今後もステマ規制の執行を継続していくものと考えられます。
 今回、大正製薬は、ステマ規制違反と認定された本表示を行った経緯につき、「自社ウェブサイト上に表示しているものであることから、一般生活者においては、インフルエンサーの投稿部分についても当社の広告であることが判別できると考え、その投稿に表示されていた当社の広告である旨を表示せずに、以下のとおり表示しておりました。」と説明しています(※5)。
 しかしながら、「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(第3の2(2)オ(ア))には、以下のような指摘がみられます。

事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合…には、第三者の表示は、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。

 また、「ステルスマーケティングに関するQ&A」(消費者庁ウェブサイト)においても、以下のようなQ&Aがみられます。

Q16当社では、プロモーションのために、インフルエンサーに依頼をし、当社の商品についてSNSに投稿をして貰いました。この度、当該投稿を抜粋し、「お客様の声」として自社ウェブサイト内に掲載することを検討していますが、告示との関係で注意すべき点はありますか。なお、インフルエンサーの投稿が「事業者の表示」に当たることを前提としています。
A「お客様の声」という場合、通常、顧客の自主的な意思に基づく感想等が記載されていると理解されるため、「事業者の表示」に当たるインフルエンサーの投稿を、「お客様の声」として自社のウェブサイト上に掲載することは適当ではありません。
「事業者の表示」に当たるインフルエンサーの投稿を掲載する場合は、自社の依頼したインフルエンサーの投稿であることが、ウェブサイトを見た一般消費者にとって明瞭になる形で表示する必要があります。

※5 2024年11月13日「消費者庁による措置命令について」(大正製薬ウェブサイト)

 以上のような消費者庁が示す考え方によれば、今回大正製薬が行った本表示については、景品表示法のステマ規制に該当するリスクが高いと判断できる可能性が十分にあったように思われます。
 それにもかかわらず、冒頭でご紹介した本年8月のRIZAP株式会社の事例でも、今回と同様の違反行為で行政処分(措置命令)がなされており、従前と変わらない意識で安易に広告を行うとステマ規制違反となってしまうリスクが相応にあることが分かります。
 広告を行おうとする企業においては、当該広告の表示がステマ規制に違反するリスクが無いか、上記運用基準やQ&A等を参照して慎重に検討するとともに、弁護士に相談してかかるリスクの払拭に努める必要があると考えられます。

以上