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セミナー
事務所概要・アクセス
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<目次>
1. はじめに
2. 改正の背景
3. 改正案の概要
(1) 自然人である顧客の本人確認方法
(2) 法人顧客の本人確認方法
(3) 施行期日
警察庁は、2025年2月28日、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(以下「犯収法施行規則」といいます。)の一部を改正する命令案(以下「本改正案」といいます。)に対するパブリックコメントを開始いたしました。2025年3月29日までが意見募集期間です。
本改正案は、3.に記載するとおり、2018年の犯収法施行規則改正により導入されたオンラインで完結する本人確認方法(いわゆるeKYC)の内容等を大きく変更するものであるため、特に金融機関をはじめとした犯収法が規定する特定事業者に該当する企業においては、その改正内容を確認しておくことが重要です。
本改正案は、偽変造された本人確認書類を用いて他人になりすまして預貯金口座等が開設され、これが特殊詐欺等に悪用されている実態があることを背景として、犯行ツール対策の一環として、非対面で預貯金口座を開設する場合等の本人確認方法を見直して犯罪被害の防止対策を強化することを目的としています(2025年2月27日国家公安委員会委員長記者会見要旨)。
例えば、eKYCのうち、運転免許証等の写真付き本人確認書類と顧客の容貌の画像の送信を受け、これらを照合して行う本人確認の方法(現行の犯収法施行規則6条1項1号ホ)は、金融機関等において多く用いられていますが、本人確認書類の質感等を確認して偽造等を看破することが難しく、なりすましにより口座等が開設されるリスクが指摘されています。偽変造した運転免許証等を用いて口座を開設しようとした事例も報告されているところです(金融庁「マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題」(2023年6月))。
政府は、2023年6月の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、犯収法に基づく非対面の本人確認をマイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法(すなわち上記のeKYCの手法)を廃止する旨を公表していました。また、2024年6月の同計画及びその行程表においては、これに必要な法令改正等について、2024年度内にパブリックコメントのうえ改正内容を決定し、2025年度以降に十分な準備期間を確保して施行するとの計画を示していました(2024年6月の「国民を詐欺から守るための総合対策」も参照)。
本改正案は、上記において公表されていた政府の計画を具体化した施策と位置付けられます。
本改正案は、自然人である顧客の本人確認方法としてのeKYCのうち、顧客等の本人確認書類の画像情報の送信を受ける方法を廃止することとしています(現行の犯収法施行規則6条1項1号ホの削除)。これは本人確認書類の偽変造等によるなりすまし等のリスクに鑑みた改正とされています。かかる改正により、eKYCにおいて、金融機関等の特定事業者が多く用いていた本人確認書類等の画像を送信する方法は利用できなくなり、マイナンバーカードの公的個人認証や運転免許証等のICチップ情報の送信を受ける方法等に限られることになります。また、非対面での本人確認のうち、顧客等の本人確認書類の写しの送付を受ける方法も廃止されます(現行の犯収法施行規則6条1項1号リの削除)。
他方で、犯収法施行規則6条1項1号ヌの方法(顧客等の本人確認書類の写しの送付を受ける方法であり、給与振込口座の開設等の際に利用可能)はなりすまし等のリスクが低いことから本改正案においても引き続き認められています。また、ICチップが搭載された本人確認書類を保有していない顧客との関係で非対面での本人確認方法を確保しておくため、偽造防止措置が講じられた一定の本人確認書類(本改正案の規則7条1号ニに掲げる書類)であれば、その原本送付を受けるなどする方法での確認が引き続き認められます。同様に、顧客が非居住外国人等である場合は、本人確認書類の写しの送付を受ける方法(現行の犯収法施行規則6条1項1号リに相当する方法)等が引き続き利用可能としています。
法人顧客の本人確認との関係では、本人確認書類の原本又はその写しの送付を受ける方法について、本人確認書類の偽変造等によるなりすまし等のリスクに鑑み、その写しの利用を不可とし、原本に限り利用することができるとしています(現行の犯収法施行規則6条1項3号から、本人確認書類の写しに関する記載を削除)。ただし、顧客が外国法人である場合は、本人確認書類の原本に限らずその写しも引き続き利用可能としています(本改正案の規則6条1項3号かっこ書き)。
本改正案は2027年4月1日から施行される予定です。
以 上