Episode

   - M u l t i l a w A c a d e m y -

パートナー弁護士

牧田奈緒  Makita Nao

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牧田奈緒  Makita Nao

Multilaw Academyとは

「Multilaw Academy」とは、世界各国の法律事務所を結ぶ国際的ネットワークのひとつであるMultilawが開催する、メンバーファームの中堅アソシエイトを対象とした1週間程度の研修プログラムです。「Multilaw」は、年々増加し複雑化するクロスボーダー案件に対処すること等を目的として1990年に組成され、今や世界65カ国を超える国々の法律事務所を結ぶ世界規模のネットワークとなっており、当事務所は日本で唯一のメンバーファームとなっています。

研修プログラムの内容

2015年8月2日から9日の1週間、マルタ共和国にてMultilaw Academy 2015が開催され、私は当事務所の代表としてこの研修プログラムに参加しました。当事務所の他、中国、マレーシア、タイ、ロシア、トルコ、ポーランド、チェコ、マルタ、ドイツ、フランス、イギリス、ポルトガル、ブラジル、チリ、コロンビア(16カ国)の法律事務所から、総勢25名(うち4名が教員陣)の弁護士が参加しました。1週間の研修期間のうち最も多くの時間を占めるのは、Workshop型の研修プログラムです。教員陣の進行のもと、参加者全員でひとつのテーマについてディスカッションを行うこともありますが、基本的には毎回2~5人程度のグループに分かれ、それぞれグループセッションを行ったあとにその結果を参加者全員の前で発表するという形式のものが多かったように思います。

現地でのイベント参加

具体的な事例をもとにより良い法的解決方法は何かを探るケーススタディ型のWorkshopが主になりますが、その中でも特に面白かったのは、実際の事件をモデルにつくられた事例を題材として、対立当事者のそれぞれの代理人になったものとして行う模擬交渉(mock negotiation)のプログラムです。
参加者は2人1組のペアになり、一方当事者(クライアント)の代理人になったつもりで、クライアント役の教員から事情を聞き取ることから始め、相手方当事者の代理人(こちらも2人1組のペア)との間で交渉成立に至るまで数回にわたり交渉を重ねます。交渉成立後は、チーム毎にその内容を発表し合うのですが、同じ題材でありながらチームによってかなり異なる結果となり、大いに盛り上がります。

世界各国の弁護士との交流

模擬裁判や模擬交渉などをロースクールや実務の研究会等で経験する機会はゼロではないと思いますが、クロスボーダー案件の模擬交渉を体験する機会は通常なかなかないのではないかと思います。しかし、異なる国の法令が多分野にわたって問題となり得るクロスボーダー案件においてこそ、ビジネスの交渉過程において弁護士が重要な役割を担うことが多いように思われます。そのような場面でビジネスの行方に大きな影響を与え得る弁護士間の交渉を、「模擬交渉」という形で他の国の若手弁護士とペアになって練習できる機会を持てることは大変貴重なことです。
しかも、Multilaw Academy参加者は、その出身国も専門とする法分野もバラバラですが、それぞれその国・専門分野において第一線で活躍している弁護士ばかりですので、「模擬交渉」における議論を通して各国の弁護士の「生の感覚」を体感することができ、大変勉強になります。各国の弁護士がクライアントの利益確保のためにどのような考え方・発想を持っているものなのか、実際にどのように相手方と交渉するのかといったことを肌で感じることができ、非常に刺激を受けます。こういった議論の中で、お国柄、地域柄というものがあることを知ったり、逆に日本特有の処理の仕方であることを理解するきっかけともなります。

また、具体的な事例を題材としたWorkshop以外にも、法律問題に直接は関わらない文化や習慣の違い(ビジネスマナー等)についてグループディスカッションを行うプログラムなどもあり、いろいろな側面から国際案件について学ぶ機会を得られます。