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事務所概要・アクセス
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<目次>
1. 廃掃法
(1) 廃棄物
(2) 一般廃棄物と産業廃棄物
(3) 廃棄物処理業の許可を必要としない場合
(4) 廃掃法上の罰則
(5) リサイクルを行う上での法律上の認定制度(廃掃法上の許認可を不要とする特例)
2. 古物営業法
(1) 古物
(2) 古物営業
(3) 古物商(古物営業法2条3項)の遵守事項
(4) 古物商に対するその他の規制
昨今、循環型社会実現に向けた社会的動向の高まりに伴い、販売製品にかかる使用済み・不用品の回収リサイクルスキームを検討する企業が増えています。
不用品のリサイクルにおいては、不用品の回収・運搬・処理等の過程で様々な事業者が関わることが多く、法令等の規制対象となるかどうかや、許認可・登録・届出の要否等が不明確である場合も多くなっています。また、リサイクルスキーム全体として法令を遵守するためには、関連する事業者すべてにおいて法令の規定内容を把握することが必要となります。もっとも、規則・通知・ガイドライン等が数多く存在しており、さらに自治体ごとに条例・規則も存在するなど、理解しなければならない規制の内容(許認可・登録・届出、定期報告義務等)も多く、その範囲が極めて広範でありかつ複雑であり、弁護士や行政への事前相談等を踏まえてリサイクルスキームを検討することが必須となっております(※)。
※冨川実優「曖昧な「廃棄物」定義、リサイクルの壁に悩む企業」(日本経済新聞電子版・2024年8月11日)、「曖昧な「廃棄物」エコの壁」猿倉健司コメント(日本経済新聞朝刊 Business Law and Taxation・2024年8月12日)
本稿では、不用品の回収リサイクルスキームの検討において問題となる法令のうち、特に、リサイクル対象物が廃棄物と判断される場合における廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」といいます。)、リサイクル目的で対象物の有償買取を行う場合における古物営業法について、解説します。
なお、廃掃法の概要その他廃棄物リサイクルの実務上のポイントについては、下記の関連記事もあわせて参照してください。
※猿倉健司「事業上生じる副生物・廃棄物を他のビジネスに転用・再利用する場合の留意点」(Business & Law・2023年9月14日)、「新規ビジネスの可能性を拡げる行政・自治体対応 ~事業上生じる廃棄物の他ビジネス転用・再利用を例に~」(牛島総合法律事務所特集記事・2023年1月25日)、「廃棄物・環境法規制と行政処分への対応(不要物の転用・リサイクル目的での再生利用を例に)」(牛島総合法律事務所ニューズレター・2023年9月23日)
廃掃法において、「廃棄物」とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの」をいいます(廃掃法2条1項)。
廃掃法においては、産業廃棄物の「再生」(廃棄物から原材料等の有用物を得ること、又は処理して有用物にすること)も最終処分(埋立処分、海洋投入処分又は再生をいう。廃掃法12条5項)の一態様として挙げられていますので、再生されるまでの間は、廃掃法上の規制を受けることになります。なお、廃棄物に該当するのか(廃棄物ではないと整理することはできないのか)というご相談・ご質問は日々なされていますが、実際の判断はケースバイケースであり他の事例も踏まえた慎重な検討が必要となり、その判断が極めて難しいことについては「廃棄物のリサイクルを目的とする処理(廃棄物処理)の実務的な留意点」(牛島総合法律事務所ニューズレター・2020年6月5日)をご参照ください。
事業活動に伴って生じた「廃棄物」のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物(ゴムくず、金属くず、ガラスくず、コンクリートくず等)を、「産業廃棄物」といいます(廃掃法2条4項)。
これに対し、「産業廃棄物以外の廃棄物」を、「一般廃棄物」といいます(廃掃法2条2項)。
一般廃棄物は行政が処理することが原則とされていますが、一部の行政においては、2021年度以降、一般廃棄物収集運搬業の許可を行わない方針とされています(東京都千代田区等)。このように、現在、一般廃棄物処理業の許可の取得が制限されていることから、企業が一般廃棄物処理業の許可を取得することは相当難しく、また、リサイクル対象物が産業廃棄物なのか一般廃棄物なのかによって利用できる特例や各種認定制度の利用に制約がでてくる場合もあるため、リサイクルスキームの対象となる不用品が「一般廃棄物」に該当する場合には特に、注意が必要です。
「専ら再生利用の目的となる廃棄物」(再生利用の目的となる古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維。以下「専ら物」といいます。)については、事業者が産業廃棄物の処理等を行うにあたって、廃棄物処理業の許可は不要となります(※)。
もっとも、どのような製品が「専ら物」に該当するかは各自治体によって判断が分かれていることから、リサイクルスキームの検討においては、事前に対象地域の自治体に相談することが望ましいと考えられます。
※環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課及び同廃棄物規制課「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて(事務連絡)」(事務連絡・2023年4月10日))
また、「下取り」、すなわち、「新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為」については、下取り回収者が排出事業者として、「自ら」対象物を収集運搬する場合に産業廃棄物収集運搬業の許可が不要とされております(※)。
「下取り」に該当するかどうかは、①新しい製品を販売する際に使用済みの製品を引き取ること、②同種の製品で使用済みのものを引き取ること、③無償で引き取ること、④当該下取り行為が商慣習として行われていること、の4要件に基づき判断されています。
4要件のうち、「①新しい製品を販売する際に使用済みの製品を引き取ること」については、商品の販売と引き取りのタイミングに社会通念上許容されるタイムラグがあってもよいとされています。また、「②同種の製品で使用済みのものを引き取ること」については、同種製品であれば引取りの対象は自社製品である必要はなく、また、販売した製品のうち未使用の部分のみを引き取ってもよいとされています。
「③無償で引き取ること」については、取引明細上、「下取り料金」と解釈される項目がないことが必要であり(形式的な名目は関係がない)、また、製品の販売価格に使用済み製品の処理料金を上乗せするような脱法的な行為は認められません。
さらに、「④当該下取り行為が商慣習として行われていること」については、顧客が販売事業者に対して製品購入時に使用済み製品の下取りを強制している場合には、商慣習として成立したものとは言えないとされています。
なお、「下取り」に該当する場合であっても、下取り回収者が使用済みの製品を運送業者等といった第三者に回収させる場合、当該第三者は産業廃棄物収集運搬業の許可が必要となる可能性がある点には注意が必要です。
※環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(環循規発第2003301号・2020年3月30日)13頁
リサイクルを行う事業者が、廃棄物の処理を許可のない事業者に委託した場合や、産業廃棄物の収集運搬を許可なく業として行った場合、5年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(両罰規定あり。廃掃法25条1項1号及び6号、32条1項1号及び2号)が課される可能性があります。
事業者がリサイクルを行うにあたっては、以下のように廃掃法上の許認可を不要とする特例があります(※)。
① 広域認定制度(廃棄物処理業に関する地方公共団体ごとの許可を不要とする、廃掃法上の特例制度。)
② プラスチック資源循環促進法上の自主回収・再資源化事業計画認定制度(製造事業者等が行う使用済み製品廃棄物(プラスチック製品)の回収・リサイクル業務に関して、廃掃法に関する許可を不要とする特例制度。)
③ 再資源化事業等高度化法上の高度再資源化事業に係る認定制度(プラスチック製品以外の製品についても、廃掃法に関する許可を受けずに再資源化に必要な行為を業として実施し、廃棄物処理施設を設置することが可能となる特例制度。)
※猿倉健司「プラスチック資源循環促進法(2022年4月施行)において排出事業者の盲点となる実務的措置」(BUSINESS LAWYERS・2022年6月28日)、猿倉健司・上田朱音・加藤浩太「Client Alert 2024年5月17日号(8. 環境法:資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案)」(牛島総合法律事務所ニューズレター・2024年5月31日)、猿倉健司「2022年プラスチック資源循環促進法の制定と事業者・企業に求められる責任・義務」(牛島総合法律事務所ニューズレター・2022年2月8日)
古物営業法において、「古物」とは、「一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み・・・)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」をいいます(古物営業法2条1項)。
「古物営業」(古物営業法2条2項1号)とは、古物を「売買」又は「交換」する営業(委託を受けて行うものを含む)であって、以下の①~③に該当しない営業をいい、「古物営業」を営もうとする者は、都道府県公安委員会の許可を受ける必要があります(古物営業法3条)。
① 古物を売却することのみを行う営業(古物営業法2条2項1号)
② 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行う営業(同号)
③ 新品の販売に伴う下取り行為が「『サービス』としての値引き」に該当する場合(※)
※警察庁生活安全局生活安全企画課長「古物の下取りに伴う商品の値引きの古物営業該当性に係る質疑応答について」(警察庁丁生企発第199号・2022年4月1日)別紙
上記①~③の営業は、盗品等が混入するおそれが乏しい点から、古物営業法の規制の対象外となっています。
なお、物品の買取り等の対価が金銭である場合に限らず、対価としてクーポン券やポイントを付与する場合であっても、クーポン券やポイントが財産権と評価される場合には、「交換」に該当する点に注意が必要です。
これらの要件に該当するのかというご相談・ご質問も非常に多いですが、こちらもケースバイケースであり他の事例も踏まえた慎重な検討が必要となります。
物品の買い取りが、上記②の要件に該当するためには、盗品等の混入を防止する点から、自己が売却(交換)した物品と当該売却(交換)の相手方から買い受ける(交換で取得する)物品が同一であることを確認できる必要があります。具体的には、ロット番号やシリアルナンバー等を用いるなどして同一性を確認する方法等が考えられます。
新品の販売に伴う下取り行為が、以下の要件を満たす場合には、「『サービス』としての値引き」(上記③)に当たり、「古物営業」に該当しません(※)。
ア. 下取りした古物の対価として金銭等を支払うのではなく、販売する新品の本来の売価から一定金額が差し引かれる形での経理上の処理が行われていること
イ. 下取りが、顧客に対する「サービス」の一環であるという当事者の意思があること
ウ. 下取りする個々の古物の市場価格を考慮しないこと
※警察庁生活安全局生活安全企画課長「古物の下取りに伴う商品の値引きの古物営業該当性に係る質疑応答について」(警察庁丁生企発第199号・2022年4月1日)別紙
なお、実務上問題となりやすいのは上記ウの点であり、物品の型・仕様等の違いを理由に下取価格もしくはクーポン券又はポイントの価値に差異を設ける場合、市場価格を考慮していると評価されやすく、「『サービス』としての値引き」に該当しないと考えられます。
古物商(許可を受けて「古物営業」を営む者)は、①営業所における標識の掲示・ホームページにおける必要事項の掲示(古物営業法12条1項及び2項)、②営業所ごとの管理者の選任(同13条1項)、③相手方の住所、氏名等の確認(同15条1項)、④取引の記録(同16条)、⑤帳簿等の備付け又は取引記録の保存(同18条1項)等の事項を遵守する必要があります。
なお、上記①③④⑤については、遵守しなかった場合に罰則が課されることがあるため、注意が必要です。
古物商又は古物市場主の名義貸しは、欠格事由に該当する者が他人名義で古物営業を営むのを防止するために、禁止されています(古物営業法9条)。古物商又は古物市場主による名義貸しは、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象となります(両罰規定あり。古物営業法31条3号、同38条)。
以上