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2021.11.09

重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律

業務分野

執筆弁護士

 

1. 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(重要土地等調査法。令和3年法律第84号。2021年623日公布。施行は公布から13月以内(一部1年以内[1])。)

 

2. 制定、目的等

(1) 制定の背景、目的

今年6月に、上記重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(「本法」)が公布された。安全保障上の懸念の高まりによるものである。例えば、2008年以降、国境離島の対馬で韓国資本による自衛隊基地周辺土地の買収や、北海道で航空自衛隊も利用する新千歳空港の周辺土地の中国資本による買収が発覚した。また、昨年には、稚内市の航空自衛隊レーダーサイトから1㎞程の土地を中国資本が買い取り、風力発電設備を設置していることが判明した[2]。その他水源の山林が中国資本に買収されるといった事態が起きている。そこで、重要施設及び国境離島等の機能を阻害する土地等の利用防止を目的として本法が制定された。

 

(2) 基本方針の決定

本法は、以下の基本方針を定めることを求めている。

①重要施設及び国境離島等の機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本的方向

②注視区域及び特別注視区域の指定に関する基本的な事項(経済的社会的観点から留意すべき事項を含む。)

③土地等の利用の状況等についての調査並びに利用者に対する勧告及び命令に関する基本的な事項(勧告及び命令に係る行為の具体的内容に関する事項を含む。)

他方で、留意事項として、本法に基づく措置は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、必要最小限度のものとなるようにしなければならないと定める。

 

3. 法律の概要

本法は、調査及び利用規制が及ぶ地域として対象区域を指定し、対象区域毎に種々の規制等を及ぼしている。本法の概要は以下のとおりである。

 

(1) 対象区域の指定

①注視区域

(a) 重要施設の敷地の周囲おおむね1000mの区域で、重要施設の施設機能阻害する行為の用に供されることを特に防止する必要があるもの(告示で個別指定)

ここに「重要施設」とは以下のとおりである。

(i) 防衛関係施設(自衛隊の施設並びに日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第2条第1項の施設及び区域)→防衛関係施設は全国約600か所存在

(ii) 海上保安庁の施設

(iii) 生活関連施設(国民生活に関連を有する施設であって、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められるもので政令で定めるもの)

なお、上記指定は、内閣総理大臣が関係行政機関の長に協議するとともに土地等利用状況審議会(内閣府に設置される審議会で、政令の制定・改廃、区域指定、勧告の実施等に関する意見を表明する)の意見聴取が必要となっている。

 

また「施設機能」とは以下のとおりである。

(i) 防衛関係施設の我が国を防衛するための基盤としての機能

(ii) 海上保安庁の施設の領海、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第1条第1項の排他的経済水域又は同法第2条の大陸棚の保全に関する活動の基盤としての機能

(iii) 生活関連施設の国民生活の基盤としての機能

 

更に、「を阻害する行為」とは具体的には、構造物の設置、侵入行為、電波障害準備行為、施設侵入準備行為等を指す。

 

(b) 国境離島等の区域内の区域で、離島機能を阻害する行為の用に供されることを特に防止する必要があるもの(告示で個別指定)

国境離島等」とは以下のとおりである。

(i) 領海及び接続水域に関する法律第1条第1項の海域の限界を画する基礎となる基線を有する離島

(ii) 有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法第2条第1項に規定する有人国境離島地域を構成する離島

 

また、「離島機能」とは以下のとおりである。
(i) 離島の領海及び接続水域に関する法律第1条第1項の海域又は排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第1条第2項の海域若しくは同法第2条第1号の海域の限界を画する基礎としての機能
(ii) 有人国境離島地域を構成する離島の領海等の保全に関する活動の拠点としての機能

 

②特別注視区域

(a) 特定重要施設(注視区域に係る重要施設のうち、施設機能が特に重要なもの又は阻害することが容易であるものであって、他の重要施設による施設機能の代替が困難であるもの)(告示で個別指定)である。例えば、司令部機能(防衛省市ヶ谷庁舎)、警戒監視機能を有する自衛隊の駐屯地(練馬駐屯地等)等をいうとされている。

(b) 特定国境離島(注視区域に係る国境離島等のうち、離島機能が特に重要なもの又は阻害することが容易であるものであって、他の国境離島等による離島機能の代替が困難であるもの)(告示で個別指定)[3]

 

(2) 内容

①注視区域(特別注視区域を含む。)

(a) 利用状況の調査:内閣総理大臣は、注視区域内の土地等(土地、建物)の利用状況についての調査を行う[4]

(b) 情報提供:内閣総理大臣は、注視区域内の土地等の利用状況について調査の必要がある場合、行政機関の長等に対して、利用者その他の関係者に関する情報のうち、氏名、名称、住所、国籍等その他政令で定める事項の提供を求めることができる。

(c) 報告徴収:内閣総理大臣は、情報提供を求めた結果、なお調査の必要があると認めるときは、注視区域内の土地等の利用者その他の関係者に対し、利用に関し報告又は資料の提出を求めることができる(刑事罰あり[5])。

(d) 勧告・命令:内閣総理大臣は、注視区域内の土地等の利用者が、土地等を、重要施設の施設機能…を阻害する行為の用に供し、又は供する明らかなおそれがあると認めるときは、土地等利用状況審議会の意見を聴いて、利用者に対し、当該土地等を当該行為の用に供しないことその他必要な措置をとるべき旨を勧告できる。また、正当な理由なく利用者が勧告に係る措置をとらなかったときは、当該措置をとるべきことを命ずることができる(命令違反に対し刑事罰あり[6])。

(e) 損失補償:内閣総理大臣は、上記勧告・命令を受けた者が当該勧告に係る措置をとったことにより、その者又は第三者が損失を受けた場合、通常生ずべき損失を補償する。まずは協議により、協議不成立の場合、双方は、収用委員会に土地収用法94条2項の裁決を申請できる。

(f) 権利の買入れ:内閣総理大臣は、注視区域内の土地等について、その所有者から勧告等に係る措置によって土地等の利用に著しい支障を来すため土地等に関する権利(所有権、賃借権等)の買入れの申出があった場合、特別の事情がない限り、時価により買い入れるものとする。

(g) 国による土地等の買取り:国は、注視区域内の土地等であって、重要施設の施設機能…を阻害する行為の用に供されることを防止するため国が適切な管理を行う必要があると認められるものについて、当該土地等の所有権又は地上権その他の使用収益を目的とする権利の買取りその他の必要な措置を講ずるよう努める。
 
②特別注視区域のみ

土地等の所有権移転等の事前届出:特別注視区域内の土地等[7]に関する所有権又はその取得を目的とする権利の移転又は設定をする契約(政令で一部除外)を締結する場合には、当事者は、一定の事項(当事者の氏名又は名称及び住所、国籍、法人の場合代表者、土地等の所在・面積、所有権等の種別・内容、利用目的その他政令で定める事項)を、内閣総理大臣に届け出なければならない(刑事罰あり[8])。内閣総理大臣は、届けられた事項について調査し、情報提供、報告徴収を行うことができる。
 
4. 本法の影響等

(1) 本法は、安全保障の点から土地利用等に関する規制を行うことを目的に掲げた日本で初めての法律である。現状、外為法上、非居住者による日本国内の不動産又はこれに関する権利の取得については事後報告を要する(居住用、非営利目的等の場合等除外、外為法55条の3第1項第12号、報告省令5条2項10号等)とされている。

(2) 近年、経済と安全保障を結び付けた規制の動きが顕著になっている。特に中国の経済発展や先端技術分野等における台頭を背景に、各国で経済安全保障関連の規制の動きが加速している[9]。政府は、軍事上のインテリジェンスの連携強化のため、第2段階として、大学研究者や企業の技術者の信頼度を評価する仕組みや、特許の公開を制限する制度等の創設を目指している[10]

(3) 外国人による国内不動産の取得に関する規制として、例えば、アメリカでは、外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)により、軍事関連施設周辺(周囲最大100マイル)での不動産取得に対し審査が必要である(別途、4割の州で州法による規制が存在。)。

(4) なお、本法については、個人情報の保護、私権制限のおそれについても注意が必要である[11]

 

[1] 基本方針、審議会等については1年以内。その他は1年3月以内。

[2] 特に2019年の1年間で、北海道内で、外国資本が買収した森林は約199ha(東京ドーム約42個分)

[3] 例:領海基線となる低潮線を有する無人国境離島等

[4] 現地・現況調査、不動産登記簿・住民基本台帳等の公簿収集等

[5] 30万円以下の罰金、両罰規定あり(以下同じ)

[6] 2年以下の懲役又は200万円以下の罰金

[7] 200㎡以上で政令が定める面積未満の土地等を除く。

[8] 6月以下の懲役又は100万円以下の罰金

[9] 「経済安全保障をめぐる各国の規制・制裁の最新動向と企業に求められる対応(上)」NBL-No.1202、53頁以下等

[10] 2021年6月17日付日本経済新聞朝刊
[11] https://niben.jp/news/opinion/2021/202107272999.html(第二東京弁護士会長意見書)