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2025.07.08

全面施行間近!物流関連法の改正-物流効率化法のポイント-

<目次>
1. はじめに
2. 荷主・物流事業者が物流効率化のために取り組むべき措置(※2025年4月施行)
(1) 荷主・物流事業者の努力義務
(2) 物流効率化措置に関する国の判断基準の策定
(3) 物流効率化措置に関する国の指導・助言・調査・公表
3. 特定事業者の指定・義務付け等の規制強化(※2026年4月頃施行予定)
(1) 特定事業者の指定
(2) 中長期計画の作成・定期報告の義務付け
(3) 物流統括管理者(CLO)の選任の義務付け(特定荷主・特定連鎖化事業者)
4. 関連記事

1.     はじめに

(1) 物流は国民生活や経済活動を支える社会インフラであり、EC(電子商取引)需要の高まりに伴う保管需要により、物流施設の需要が増えています(※1)。他方、こうした需要増加に対する輸送能力不足や人材不足、カーボンニュートラルへの対応等様々な課題が指摘されており、また自動車運送事業における時間外労働規制の見直しに伴う物流の停滞(いわゆる2024年問題)も懸念されています。令和7年6月13日に閣議決定がなされた「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)においても、現在検討が進められている2030年度に向けた次期「総合物流施策大綱」(検討会の状況については国土交通省のウェブサイト参照)に基づき、「物流拠点・ネットワークの機能強化、陸・海・空の新モーダルシフト、自動運転、物流DX・標準化、多重取引構造の是正等の商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容、改正物流法の執行体制の確保」を推進することとされ、今後、物流に関する施策・改革はより一層進められるものと考えられます。

(2) 昨年第213回通常国会で成立した「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和6年法律第23号)についても、令和7年4月1日より順次施行されています。本改正により、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」については、法律名が「物資の流通の効率化に関する法律」(以下「物流効率化法」といいます。)へと改められ、すべての荷主・物流事業者に物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務を課されるとともに、全面施行後には、一定規模以上の物流事業者に対し、中長期計画の策定や定期報告等が義務付けられることになりますので、注意が必要です。

(3) 本ニューズレターでは、本改正のうち、物流効率化法の改正のポイントを整理します(※2)。

2.     荷主・物流事業者が物流効率化のために取り組むべき措置(※2025年4月施行)

本改正により、荷主、物流事業者(トラック、倉庫、港湾運送、航空運送、鉄道)に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務が課されており、当該措置について国が判断基準を策定しています。

(1) 荷主・物流事業者の努力義務

荷主・物流事業者等の努力義務としては、例えば、以下の表のような事項が定められています。

物流業者物流効率化法上の名称物流効率化法上の努力義務の例
1.物流事業者(トラック)貨物自動車運送事業者等輸送網の集約、配送の共同化等
(物流効率化法34条)
2.荷主第一種荷主
+第二種荷主(注)
貨物の受渡しを行う日及び時刻又は時間帯を決定するに当たって、一時に多数の貨物自動車が集貨又は配達を行うべき場所に到着しないようにすること等
(物流効率化法37条)
3.物流事業者(倉庫、港湾運送、航空運送、鉄道)貨物自動車関連事業者荷役等に係る停留場所の拡張、荷役等に先行する貨物の搬出又は荷役等に後続する貨物の搬入の迅速な実施等
(物流効率化法41条)
4.いわゆるフランチャイズチェーンの本部
(フランチャイザー)
連鎖化事業者貨物の受渡しを行う日及び時刻又は時間帯を運転者に指示するに当たって、一時に多数の貨物自動車が集貨又は配達を行うべき場所に到着しないようにすること等
(物流効率化法45条)

(注)第一種荷主とは自らの事業(貨物の運送の事業を除く。)に関して継続して運送契約を締結し運送を委託する者をいい、第二種荷主とは自らの事業(貨物の運送及び保管の事業を除く。)に関して継続して貨物を運転者から受け取る者又は他の者をして運転者から受け取らせる者、あるいは、自らの事業(貨物の運送及び保管の事業を除く。)に関して継続して貨物を運転者に引き渡す者又は他の者をして運転者に引き渡させる者をいいます(物流効率化法30条7号乃至9号)。

(2) 物流効率化措置に関する国の判断基準の策定

物流事業者、荷主及び連鎖化事業者において講ずべき物流効率化措置に関しては、主務省令(※3)において判断基準が定められ(物流効率化法35条、38条、42条、46条)、判断基準については解説書や事例集が公表されています(※4)。

(3) 物流効率化措置に関する国の指導・助言・調査・公表

主務大臣は、物流効率化措置の適確な実施を確保するために必要があると認めるときは、物流事業者、荷主又は連鎖化事業者に対して必要な指導及び助言をすることができます(物流効率化法36条、39条、43条、47条)。
また国は、貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化のために必要があると認めるときは、物流効率化措置に関する判断基準となるべき事項について調査を行い、その結果を公表するものとされています(物流効率化法49条)。

3.     特定事業者の指定・義務付け等の規制強化(2026年4月頃施行予定)

本改正により、一定規模以上の物流事業者等を特定事業者として指定し、物流効率化に関する中長期計画の作成、物流統括管理者の選任(特定荷主及び特定連鎖化事業者のみ)及び定期報告等が義務付けられます。

(1) 特定事業者の指定

特定事業者は、以下のいずれかに該当するものとして、主務大臣によって指定された物流事業者等です(改正後の物流効率化法37条、45条、55条、64条)。

特定事業者基準
特定貨物自動車運送事業者等年度末において保有する事業用自動車の保有車両台数が150台以上の貨物自動車運送事業者等
特定第一種荷主各年度において、運送契約を締結して運送を行わせた貨物の合計重量が9万トン以上の第一種荷主
特定第二種荷主各年度において、自らの事業に関して、運送契約を締結せずに、運転者から受け取り、又は運転手へ受け渡した貨物の合計重量が9万トン以上の第二種荷主
特定倉庫業者寄託を受けた物品を保管する倉庫において入庫された貨物の年度の合計の重量が70万トン以上の倉庫業者
特定連鎖化事業者各年度において、当該連鎖化事業者の連鎖対象者が運転者から受け取る取扱貨物の重量が9万トン以上の連鎖化事業者
※ なお、特定事業者の指定基準は現在検討されている最中のため、上記表中の数値は予定の数値となっています。(※5)

 (2) 中長期計画の作成・定期報告の義務付け

特定事業者は、物流効率化措置に関する中長期的な計画を作成し、主務大臣に提出しなければなりません(改正後の物流効率化法38条、46条、56条、65条)。なお、改正後の本法の施行後、2026年10月末に中長期計画の提出が求められる予定となっています(※6)。また、特定事業者は、指定を受けた翌年度以降は毎年度、物流効率化措置の実施状況を主務大臣に報告(定期報告)しなければなりません(改正後の物流効率化法39条、48条、57条、67条)。
物流効率化措置の実施状況が著しく不十分な特定事業者は、主務大臣による勧告、公表及び措置命令の対象となります(改正後の物流効率化法40条、49条、58条、68条)。

(3) 物流統括管理者(CLO)の選任の義務付け(特定荷主・特定連鎖化事業者)

特定事業者のうち特定荷主及び特定連鎖化事業者は、その指定を受けた後、速やかに物流効率化のために必要な業務を統括管理する者(物流統括管理者・CLO)を選任し、主務大臣に届け出なければなりません(改正後の物流効率化法47条、66条)。
物流統括管理者は物流全体の持続可能な提供の確保に向けた業務全般を統括管理する役割が求められます。その業務を遂行するため、中長期計画の作成に加え、運送(輸送)、荷役といった物流の各機能を改善することだけではなく、調達、生産、販売等の物流の各分野を統合して、流通全体の効率化を計画するため、関係部署間の調整に加え、取引先等の社外事業者等との水平連携や垂直連携を推進すること等が求められます。
また、物流統括管理者には特定の資格が要求されているわけではありませんが、経営管理の視点や役割も期待されていることから、基本的に、重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任される必要があるとされています(※7)。

4.     関連記事

井上正範・小山友太「物流施設の開発・投資における実務上の留意点」(2025.05.30 U&Pニューズレター)

(※1)国土交通省 物流・自動車局「物流拠点を取り巻く環境の変化や課題」(2024年10月30日)

(※2)物流効率化法の改正内容の詳細については、以下の国土交通省等のポータルサイトで公開されています。
https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/

(※3)


(※4)

 ※ 令和7年7月4日に「荷主」及び「連鎖化事業者」の「解説書」及び「パターン集」が更新されています。

(※5)交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議「合同会議取りまとめ」20頁

(※6)「新物効法の施行に向けた状況」(2025年2月)7頁

(※7)交通政策審議会 交通体系分科会 物流部会・産業構造審議会 商務流通情報分科会 流通小委員会・食料・農業・農村政策審議会 食料産業部会 物流小委員会 合同会議「合同会議取りまとめ」27頁
 
 本ニューズレターは、掲載時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではないことにご留意ください。また、本ニューズレター中意見にわたる部分は、執筆担当者ら個人の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではありません。

以 上