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2021.04.02

デジタル市場における競争政策に関する研究会報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」の公表について

1. デジタル市場における競争政策に関する研究会の報告書の概要

2021年3月31日、公正取引委員会は、デジタル市場における競争政策に関する研究会の報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」(以下「本件報告書」)を公表した。
本件報告書は、アルゴリズム/AIと競争政策を巡る課題・論点についての横断的な検討結果をとりまとめたもので、公正取引委員会においてアルゴリズム/AIに関連する競争法上のリスクに適切に対処できるようにするためのものとされている。
本件報告書において検討された事項は以下のとおりであり、各事項についてアルゴリズム/AIに関連した独占禁止法の解釈などが議論されている。

1 アルゴリズム/AIと協調的行為 アルゴリズムを利用した協調的行為についての不当な取引制限や支配型私的独占の可能性など
2 アルゴリズム/AIと単独行為 ランキング操作、パーソナライズド・プライシング(消費者個人の特徴等に基づく価格差別)による不公正な取引方法等の独占禁止法上の問題点など
3 アルゴリズム/AIと競争力 アルゴリズム/AIの競争力を支え得る要因としてのデータ、AI技術階層に関する整理など
4 デジタルプラットフォームとアルゴリズム/AIの課題 デジタルプラットフォームが、一部の問題について顕在化しやすい構造を有することなど

 2. 本件報告書に記載される独占禁止法の解釈と企業における対応

本件報告書に記載される独占禁止法の解釈は、これまで培われてきた独占禁止法の解釈をアルゴリズム/AIの特徴等に応じた整理をして当てはめたものといえる。
例えば、アルゴリズム/AIと協調的行為[1]については、不当な取引制限の要件である「意思の連絡」の成否が明らかでない場合があるが、この点については、「複数の利用事業者がアルゴリズムの働きを理解し、互いに価格が同調するようなアルゴリズムを利用していることを認識して、お互いの価格が同調することを認容した上で当該アルゴリズムを用いているような状況においては、各事業者が独立して行動しているとはいえないため、意思の連絡があると評価できる」とし(本件報告書22頁)、主としてアルゴリズム/AIを用いる事業者の認識・認容から不当な取引制限の成立可能性を導いている。
もっとも、アルゴリズム/AIによる協調行為に関して言えば、競争事業者とのコミュニケーションが明らかでない場合や、競争事業者間の情報交換等が行われない場合があるなど[2]、(競争業者が一同に集まり協議するといった)典型的な不当な取引制限とは異なるところもあり、実際に問題になった際に対応できるかといった懸念も生じる。
本件報告書において示された独占禁止法の解釈等は、今後、公正取引委員会により執行されることが想定される。企業においては、競争事業者との接触がないから大丈夫といった安易な発想に起因した問題が生じることのないよう、コンプライアンス・マニュアルの修正や関係する社員への情報提供等、本件報告書の内容を受けた適切な対応をとることが必要である。

以 上

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[1] アルゴリズムによる協調的行為については、①監視型アルゴリズム、②アルゴリズムの並行利用、③シグナリングアルゴリズム、④自己学習アルゴリズムの4類型に分けた検討がなされている。

[2] 本件報告書においては、複数の競争事業者が、同一の事業者団体などが提供する価格設定アルゴリズムを利用することによって相互に価格が同調することを認識しながら当該アルゴリズムを用いる場合や、価格設定アルゴリズムを提供するプラットフォーム事業者が全ての利用事業者の販売価格に同じ割引率の上限を課すことを利用事業者に周知し、利用事業者がそれを認識しながら利用する場合などについては、これらアルゴリズムを利用する事業者間において直接・間接の情報交換がない場合であっても、価格が同調することの共通の認識があると考えられ、不当な取引制限が成立し得るとする(本件報告書23頁)。