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2021.09.10

下請代金支払遅延等防止法の適用対象となる委託取引を定める「業として」の内容

本稿では、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」といいます。)でしばしば問題となる「業として」の解釈について解説します。

1. 下請代金支払遅延等防止法の適用対象となる委託取引の要件

下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」といいます。)の適用対象となる委託取引には、①親事業者が、親事業者の顧客に対して業として提供している製品等や役務の製造等の全部又は一部を下請業者に対して外注する委託取引と、②親事業者が、親事業者自らが利用する製品等や役務を業として製造・提供している場合に、その全部又は一部を下請業者に外注する委託取引があります(下請法2条の定義ご参照)。これらのうち②については、下請法が適用される委託取引であるかに関して「業として」を充足するかがしばしば問題となります。

例えば、親事業者が顧客に対して無償で提供する製品などについては、「親事業者の顧客に対して業として提供している業務」とは解されません(すなわち、①に該当するものとは解されません。)。これは、親事業者が顧客に対して無償で提供する製品などの外注については、親会社が自ら利用する製品などの外注と同視できることによるものです。そのため、かかる場合には上記②への該当性が問題となります。しかしながら、事業者が顧客に対して有償で提供している製品や役務については、当該事業者が「業として」顧客に提供していることが明らかであるのに対して、無償で提供するものや自ら利用するものについては、「業として」として行っているかが明確でないため、いかなる場合に親事業者において「業として」製造等しているのかが問題となるのです。

なお、下請法の委託取引には、「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」があります。このうち「役務提供委託」には、自らが利用する役務についての委託が下請法の適用対象外とされていることから、上記②の委託類型はありません。そのため、上記の議論は、残りの委託取引、すなわち「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」について妥当するものとなります。

2. 「業として」の解釈
「業として」とは、簡単に言えば反復継続して行っている場合をいいます。下請法は、親事業者が反復継続して行う業務についての下請取引に問題が生じ易いとの観点から規制をしているため、自ら利用する製品や役務に関する委託取引についても、それが「業として」行われている場合には規制対象としています。

かかる観点から、「業として」行っている場合とは、親事業者において、社内に内製部門を設けるなどして業務の遂行とみることができる程度に行っている場合でなければならないと解されています。また、親事業者において現に内製等している場合に限られ、潜在的に内製等の能力があるに過ぎない場合や、そもそも自社で製造等を行う能力がないような場合には「業として」行っているとはいえないと解されています。

この点については、公正取引委員会・中小企業庁「令和2年11月 下請取引適正化推進講習会テキスト」においても以下のとおりとされています。

(1) 同テキスト8ページ(修理委託の類型2(事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託すること)の説明として)

事業者が、「その使用する物品の修理を業として行う場合」、つまり、他の事業者から請け負うのではなく、自家使用する物品の修理を反復継続的に行っており、社会通念上、事業の遂行とみることができる場合に、その物品の修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。

例えば、自社の工場で使用している機械類、設備機械に付属する配線・配管等の修理を社内に部門を設けて行っている場合は、「その使用する物品の修理を業として行う場合」に該当する。

(中略)
修理を行うことができる設備があったり、修理に必要な技術を持った従業員がいたとしても、他の事業者に委託している修理と同種の修理を行っていない場合は、「その使用する物品の修理を業として行う場合」に該当しない。

(2) 同テキスト22ページ

Q16: 当社で使用するソフトウエアを社内のシステム開発部門で作成しているが、当社では作成できない特殊な知識を必要とする部分があり、その部分について専門のシステム開発会社に外注する場合には、本法の対象となるか。

A: 自社で使用する情報成果物について日頃自ら作成していても、外注する部分を自社で作成する能力がないような場合には、当該外注部分の作成を自社で業として行っているとは認められないことから、当該外注部分の取引については情報成果物作成委託に該当しない。

なお、自社が日頃自ら作成している部分を外注する場合には、当該外注部分の取引については情報成果物作成委託(類型3)に該当する。

そのため、例えば、顧客に無償で配る物品についての製造委託に関して言えば、委託事業者においてその製造を行う部門を有しておらず、また、実際に同種の物品の製造を行っていないのであれば、当該製造委託は下請法の適用対象になりません。逆に、通常は内製している物品の製造を下請業者に委託したような場合には、それが無償で顧客に提供する物品についてのものであったとしても、当該製造委託は下請法の適用対象となります。なお、例えば、商品に添付されて提供されるもののように、有償で提供する商品の一部として物品が提供される場合も、当該物品の製造委託は下請法の適用対象となる製造委託となりますのでご注意ください[1]

以 上

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[1] 公正取引委員会・中小企業庁「令和2年11月 下請取引適正化推進講習会テキスト」21ページ(Q10の回答)参照