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1. はじめに
2021年10月8日、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が公表された[1](以下「本ガイドライン」という。)。
かかるガイドラインは、2021年5月20日に、国土交通省が公表していた「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」の案(以下、「本ガイドライン案」という。)[2]及びこれに係る意見募集の結果(以下「パブリックコメント」という)[3]を踏まえて策定されたものである[4]。
本稿では、本ガイドライン概要及び実務上の留意点について紹介する。なお、本稿は、2021年10月20日時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではなく執筆担当者個人の見解を示すにとどまるものであることに留意されたい。
2. 本ガイドライン制定の趣旨・背景
(1) 本ガイドライン制定の背景(本ガイドライン1~2頁)
不動産取引の対象物件における人の死の告知については、裁判例において、取引目的、事案の内容、事案発生からの時間の経過、近隣住民の周知の程度等を考慮して、信義則上、これを取引の相手方等に告知すべき義務の有無が判断されてきた(高松高判平成26年6月19日判時2236号101頁、東京地判平成22年3月8日WestlawJapan、大阪高判平成26年9月18日判時2245号22頁等)。
不動産取引における人の死の告知の現状としては、「住宅」における人の死の告知がとりわけ問題にされており、その告知の要否、告知の内容についての判断基準が明確ではないことから、対応の負担が過大となり[5]円滑な流通・安心できる取引の阻害要因となっているほか、死亡事故全ての告知が必要となるのではないかとの疑念から単身高齢者の入居を敬遠する傾向がみられることが指摘されている。
告知すべき範囲を判断するには、人の死がいわゆる心理的瑕疵に該当するか否かや、それが取引の判断にどの程度の影響を及ぼすかについて検討しなければならないが、これらは事案の態様・周知性等や当該物件の立地等の特性によって異なり、時代や社会の変化に伴い変遷する可能性もある難しい問題である。
本ガイドラインは、このような背景の下で宅地建物取引業者における告知などの対応の判断に資するよう一定の考え方を示すものであり、可能な範囲で現時点において妥当と考えられる一般的な基準をまとめたものとされている。
なお、本ガイドライン制定のために設置された国土交通省の「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」[6]の資料をみれば、上記の現状を前提として、今後における孤独死・在宅死の増加の見込み[7]を背景に、中古物件市場を活性化しようとする意図も見受けられるところである[8]。
(2) 本ガイドラインの位置づけ(本ガイドライン2~3頁)
「1.本ガイドライン制定の趣旨・背景」「(2) 本ガイドラインの位置づけ」に記載されているとおり、宅地建物取引業者の義務として、「過去に人の死が生じた不動産の取引に際し、宅地建物取引業者が本ガイドラインで示した対応を行わなかった場合、そのことだけをもって直ちに宅地建物取引業法違反となるものではないが、宅地建物取引業者の対応を巡ってトラブルとなった場合には、 行政庁における監督に当たって、本ガイドラインが参考にされることとなる」とされている。
また、民事上の責任については個別に判断され、「宅地建物取引業者が本ガイドラインに基づく対応を行った場合であっても、当該宅地建物取引業者が民事上の責任を回避できるものではない」とされている。なお、国土交通省「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」の議事概要を見ると、原状回復ガイドラインがその「公表以降、裁判規範でも利用されるようになっている。心理的瑕疵に関するガイドラインの内容が社会通念上受け入れられるものであれば、判断基準として有用になるのではないか。」と述べられている[9]が、本ガイドラインが裁判においてどのように扱われるかは今後の判例の集積を待つほかはないと思われる。
3. 本ガイドラインの適用範囲(本ガイドライン3頁)
本ガイドラインは、その適用範囲について、「取引の対象となる不動産において生じた人の死に関する事案を取り扱う」と限定している。適用範囲を限定した趣旨については、不動産業界からの要望等も考慮されているものとも推測されるが[10]、裁判例や不動産業者ら自身による様々なケースの類型化によってある程度の一般的な判断基準ができつつあることも背景としてあるように思われる[11]。
また対象とする不動産の種類は居住用不動産とし、「オフィス等として用いられる不動産において発生した事案については、それが契約締結の判断に与える影響が一様でないことから本ガイドラインの対象外としているものであり、これらの不動産の取引においては、取引当事者の意向を踏まえつつ、適切に対処する必要がある」としている。
なお、本ガイドライン案の段階では、「隣接住戸や前面道路など、取引の対象となる不動産以外」は、本ガイドラインの対象外とし、かつ、マンション等の集合住宅については「買主・借主が居住の用に供する専有部分・貸室」のみならず、「買主・借主が日常生活において通常使用する必要があり、集合住宅内の当該箇所において事案が生じていた場合において買主・借主の住み心地の良さに影響を与えると考えられる部分」についても適用範囲に含めると記載されていた(本ガイドライン案4頁)。この段階では、一戸建ての前面道路や隣接住戸は個別事情が強いために基準を提示することが適当でないと判断されたようである[12]。
本ガイドラインにおいては、前面道路がガイドラインの対象外となると明確に表現した記載は削除され[13])、戸建て隣接住戸や一定範囲の集合住宅の共用部分については、「告げなくてもよい場合」として後述5.のとおり対応することとされた。
なお、人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱い、搬送先の病院で死亡した場合の取扱い、転落により死亡した場合における落下開始地点の取扱いなど、一般的に妥当と整理できるだけの裁判例等の蓄積がないものは、今後の事例の蓄積を踏まえて、適時にガイドラインへの更新を検討することとされている[14]。
4. 宅地建物取引業者の調査義務(本ガイドライン3~5頁)
宅地建物取引業者が実施すべき調査の対象・方法については、販売活動・媒介活動に伴う通常の情報収集を行うべき業務上の一般的な義務を負っていることを前提に、「人の死に関する事案が生じたことを疑わせる特段の事情がないのであれば、人の死に関する事案が発生したか否かを自発的に調査すべき義務までは宅地建物取引業法上は認められない」、他方で、「販売活動・媒介活動に伴う通常の情報収集等の調査過程において、売主・貸主・管理業者から、過去に、人の死に関する事案が発生したことを知らされた場合や自ら事案が発生したことを認識した場合に、この事実が取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、宅地建物取引業者は、 買主・借主に対してこれを告げなければならない」として、告知義務の範囲が示されている。
上記でいう「通常の情報収集」についても、以下のように一定の基準を示しているといえる。
①「媒介を行う宅地建物取引業者においては、売主・貸主に対して、告知書(物件状況等報告書)その他の書面(略)に過去に生じた事案についての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。この場合において、告知書等に記載されなかった事案の存在が後日に判明しても、当該宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、人の死に関する事案に関する調査は適正になされたものとする」
⇒ここでいう「重大な過失」の内容・判断基準は示されていないが、調査に当たっての留意事項として、「告知書等により、売主・貸主からの告知がない場合であっても、 人の死に関する事案の存在を疑う事情があるときは、売主・貸主に確認する必要がある」こと、また「取引の対象となる不動産において 過去に人の死が生じた事実について、媒介を行う宅地建物取引業者は、契約後、引渡しまでに知った場合についても告知義務があるとする裁判例[15]があることに留意すべき」ことに留意すべきである[16]。
②「調査の過程において、照会先の売主・貸主あるいは管理業者より、事案の有無及び内容について、不明であると回答された場合、あるいは回答がなかった場合であっても、宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、照会を行った事実をもって調査はなされたものと解する」
③「取引の対象となる不動産における事案の有無に関し、宅地建物取引業者は、 原則として、 売主・貸主・管理業者以外に自ら周辺住民に聞き込みを行ったり、インターネットサイトを調査するなどの自発的な調査を行ったりする義務はない」
⇒ただし、事案の存在を疑う事情があるときは例外とされることに注意すべきである。
④「仮に調査を行う場合であっても、近隣住民等の第三者に対する調査や、インターネットサイトや過去の報道等に掲載されている事項に係る調査については、正確性の確認が難しいことや、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要であることから、特に慎重な対応を要することに留意が必要である」
なお、上記については、「媒介を行う宅地建物取引業者」が行うべき「通常の情報収集」を示したものであるが、「売主である宅地建物取引業者」が行うべき「通常の情報収集」についての基準もこれに従うべきとするものかどうかは必ずしも明確ではないとも言える[17]。
5. 宅地建物取引業者の告知義務
(1) ガイドライン案における告知すべき事案の検討
本ガイドライン案の段階では、「告げるべき事案」として、「宅地建物取引業者が業務の中で人の死に関する事案を認識した場合」には、「当該事案の存在を買主・借主に告げる必要があるかを判断しなければならない」と記載されているように(本ガイドライン案4頁)、原則として告げなくてはならない事案の判断基準を示すことが試みられていたが、パブリックコメントの結果等を踏まえて、本ガイドラインにおいては、「ガイドラインの全体構成を再検討した結果、告げなくてよい範囲を明確化する」こととしたとのコメントが公表されている[18]。
(2) 告げなくてもよい場合(本ガイドライン5~7頁)
人の死がいわゆる心理的瑕疵に該当するかは流動性があり、また取引の判断への影響が当事者ごとに異なることから、本ガイドラインは、「裁判例等も踏まえて、可能な範囲で、現時点で宅地建物取引業者による告知の範囲として妥当と考えられる一般的な基準」を示すものであると断ったうえで、「宅地建物取引業者が告げなくてもよい場合」について、以下のとおり①~③のケースを列挙する。
①「賃貸借取引及び売買取引の対象不動産において自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合」
⇒このほか、事故死に相当するものであっても、自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、同様とする。
⇒事案発覚からの経過期間の定めはない。
⇒ただし、これらの場合でも、過去に人が死亡し長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合は、例外的に告げなければならない事案に該当し得る。
②「賃貸借取引の対象不動産において①以外の死が発生又は特殊清掃等が行われることとなった①の死が発覚して、その後概ね3年が経過した場合」
⇒借主が日常生活において通常使用する必要があり、借主の住み心地の良さに影響を与えると考えられる集合住宅の共用部分(例えば、ベランダ等の専用使用が可能な部分のほか、共用の玄関・エレベーター・廊下・階段など)も同様とする[19]。
⇒特段の事情がない限り、これを認識している宅地建物取引業者が媒介を行う際には、上記の場合には借主に対してこれを告げなくてもよい。
⇒ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は、例外的に告げなければならない事案に該当し得る。
③「賃貸借取引及び売買取引の対象不動産の隣接住戸又は借主若しくは買主が日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分において①以外の死が発生した場合又は①の死が発生して特殊清掃等が行われた場合」
⇒事案発覚からの経過期間の定めはない。
⇒ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は、例外的に告げなければならない事案に該当し得る。
(3) 上記(2)①~③以外の場合(本ガイドライン7頁)
上記(2)①~③のケース以外の場合において、宅地建物取引業者は、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、買主・借主に対してこれを告げなければならないとされている。
この場合に告げるべき内容については、上記4で述べた調査を通じて判明した点について実施すれば足りるものとされ、具体的には以下のとおりとされている。
売主・貸主・管理業者から不明であると回答された場合、あるいは無回答の場合には、その旨を告げれば足りる
(4) 買主・借主から問われた場合及び買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合(本ガイドライン7頁)
さらに、上記(2)及び(3)において告げなくてもよい場合に該当しても、買主・借主から問われた場合及び買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等については、なお告げる必要がある例外的な場合として、以下の事情を挙げている。
なお、この場合においても、調査先の売主・貸主・管理業者から不明であると回答されたとき、あるいは無回答のときには、その旨を告げれば足りるとされている。
(5) 告げる場合の留意事項(本ガイドライン7頁)
なお留意事項として、「告げる際には、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない」としている。この点は、前記パブリックコメントの結果を踏まえて明記された部分である[20]。
以 上
[1] 国土交通省令和3年10月8日「「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました」
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html
別紙2令和3年10月「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf
[2] 令和3年○月国土交通省「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000225429
[3] 「「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)に関する意見募集の結果について」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=155210315&Mode=1
「パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000225468
[4] 令和3年5月20日国土交通省報道発表資料「『宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン』(案)に関するパブリックコメント(意見公募)を開始します」
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00017.html
e-GOVパブリック・コメント「『宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン』(案)に関する意見募集について」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000225428
[5] 中には、人の死に関する事案の全てを買主・借主に告げているようなケースもあり、人の死の告知に関する対応の負担が過大であると指摘されることもある(本ガイドライン1頁)。
[6] 国土交通省「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」
[7] 前掲「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」第1回検討会資料3「不動産取引をめぐる社会情勢」7頁「少子高齢化・人口減少の進展」、同8頁「単身世帯の増加」、同9頁「在宅医療の推進」、同10頁「死亡者数の増加と死亡場所の推移」、同11頁「死亡した場所別の数」、同12頁「終末期の療養・最期を迎える場所への希望」、同14~16頁「孤独死に関する統計データ①~③」参照。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405332.pdf
[8] 前掲「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」第1回検討会資料3「不動産取引をめぐる社会情勢」4頁「今後の持家への住み替え方法(新築・中古)に関する意向(全世帯)」、同5頁「既存住宅流通量の推移と国際比較」、同6頁「首都圏における中古マンションの成約件数と新築販売戸数(年度)」参照。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405332.pdf
[9] 「第1回不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会議事概要」2頁「(ガイドラインの位置づけ・検討の方向性について)」参照。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405329.pdf
[10] 第1回「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」資料5「令和2年2月5日(公社)全国宅地建物取引業協会連合会『心理的瑕疵に係る現状と課題について』」5頁「基準作成の必要性」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405334.pdf
同資料6「2020年2月5日公益社団法人全日本不動産協会理事田代雅司『不動産取引における心理的瑕疵について』」15頁「心理的瑕疵の説明に関する要望/ガイドラインの策定を要望」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405335.pdf
[11] 第1回「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」資料4「国土交通省『心理的瑕疵に係る検討の方向性(案)』」6頁「4.心理的瑕疵に該当するか否かの判断要素(例)」では、「裁判例では、死亡事故等が心理的瑕疵に該当するか否かは、複数の要素を総合して判断されている。」とする。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405333.pdf
なお、同資料7「令和2年2月5日不動産適正取引推進機構『心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について』」では、人の死にかかる心理的瑕疵についての裁判例が多数まとめられている。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405336.pdf
[12] 本ガイドライン案をまとめるにあたっての意見と国土交通省の考え方を集約したとみられる資料に、「隣接する住戸や前面道路など、取引の対象となる不動産以外において発生した事案については、取引の対象となる不動産との距離・位置関係等に応じて、買主・借主の判断に影響を及ぼす度合いが変化すると思われるものの、これを一律に示すことは困難であると考えているところであり、本ガイドラインの対象外としたいと考えております。」と記載されている(前記「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」第5回検討会資料4国土交通省作成「ガイドライン案に対するご意見と考え方」1頁参照)。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405363.pdf
これに対し、パブリックコメントにおいては、「隣接住戸の場合、土地取引の場合、取り壊された場合、病院で亡くなった場合等の考え方を示してほしい。工事中の物件における事故に関する考え方を示してほしい(青田売りの場合含む)」との質問に対する回答としては、「ご意見を踏まえ、隣接住戸において発生した事案は、原則として告げなくともよいとしました。その他の事例については、個々の取引ごとに判断をお願いします。」と回答している(「パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答」54番)。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000225468
[13] 前面道路で発生した事案が本ガイドラインの対象外であることの明記した部分を削除した点については、「前面道路の概念は人によってかなり異なる。宅建業者等は、物件の目の前で接道している道路と認識するだろうが、 例えば家から駅までの道のり等と広く捉える方もいるのではないか。」「前面道路の記載は とったほうがスムーズだと思う。本文中に 書いてあることで様々な意見が出ることも懸念される。」、「前面道路で人が亡くなったという事実が、 売買の目的物である物件の 瑕疵にあたるかというと、 一般的には、瑕疵や 契約不適合となるようなものではないと思う。あまり考えられないので、ガイドラインとしては差しあたり削除でいいのではないだろうか。」等の意見(「第7回 不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会 議事概要」2頁参照)が採用されたようである。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001427703.pdf
[14] 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」概要版4頁
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001427709.pdf
[15] 本ガイドライン案では、高松高判平成26年6月19日判時2236号101頁を掲げる。
[16] パブリックコメントにおいて、「周辺住民への聞き込みや、インターネットサイトの調査について、自発的な義務はないとされているが、新聞やインターネットで公になっている情報を調べなくても重大な過失と認定されないのか。借主・買主からの調査依頼で事故の事実がなかったか調べた時でも、周辺への聞き取りまでは不要と理解してよいのか。それともその場合は、調査義務の程度が高まるのか。死亡事案が疑われるが、時期が不明である場合、どの程度まで遡って時期を調査しなければならないのか。」との質問に対する回答として、「売主・貸主に告知書等に記載を求めることに加えて、例えば、人の死に関する事案が生じたことを疑わせる特段の事情があることから、買主・借主から特別な調査を依頼され、引き受けた場合には、調査を行う必要があります。」との見解が示されている(「パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答」13番参照)。
また、「近隣住民への調査は不要と理解してよいか。調査が必要になる場合はどのような場合か。その際の場所的範囲はどこまでなのか。大島てるより情報を仕入れた場合、他のインターネットサイトを確認する必要があるのか。新聞記事での調査や国会図書館まで調査する必要があるのか。」との質問に対する回答としても同様に、「売主・貸主に告知書等に記載を求めることに加えて、例えば、人の死に関する事案が生じたことを疑わせる特段の事情があることから、買主・借主から特別な調査を依頼され、引き受けた場合には、調査を行う必要があります。」との見解が示されている(「パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答」14番参照)。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000225468
[17] 国土交通省は、検討会資料の中で、「宅地建物取引業者による、取引の対象となる不動産における心理的瑕疵の有無の確認については、特別な事情がない限り、売主等への聴取によって行うものと整理しております。」 「本ガイドラインにおいては、売主・貸主への確認を通じて判明した事実関係を買主・借主に告知することが宅地建物取引業者の基本的な責務と整理している」と明言しているが、「売主等への聴取」、「売主・貸主への確認を通じて」という部分は、宅地建物取引業者が売主である場合を想定していないように思われる。前記「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」第5回検討会資料4国土交通省作成「ガイドライン案に対するご意見と考え方」4頁参照。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405363.pdf
[18] 「パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答」4、5、30~34、36、47、50、53、58、61、62、64、69番参照
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000225468
[19] なお、パブリックコメントにおいては、「非日常利用の共有部に、賃借人が居住するフロアには止まらないエレベーター、管理人室、ゲストルーム、居住室とは反対側の通路、屋上(居住者が出入り可能なもの)は含まれるのか。」との質問に対する回答として、「個々の取引ごとに判断をお願いします。」との見解が示されている(「パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答」52番参照)。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000225468
[20] 「パブリックコメントにて寄せられた意見概要と回答」66~71番参照
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000225468