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2021.12.27

不動産デューディリジェンスにおける2021年民法改正の留意点(共有・所有者不明土地問題等)(前編)

業務分野

執筆弁護士

第1 はじめに(所有者不明土地問題に係る法改正)

我が国では、登記簿などの情報を参照しても所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地、いわゆる「所有者不明土地」「所有者所在不明土地」や、適正な利用・管理がなされないことで草木の繁茂や害虫の発生など周辺に悪影響を与える管理不全の土地が全国的に増加している(所有者不明土地の割合は、平成29年国土交通省の調査によると22%)。

これらの土地については、再開発その他の民間取引において、土地の利活用を阻害するだけでなく、管理不全化した土地が隣接する土地への悪影響を生じさせるなど、インフラ整備、防災上の重大な支障を生じさせ、生活環境の悪化の原因となる。高齢化の進展や死亡者数の増加等により、今後ますます深刻化するおそれがあり、所有者不明土地問題の解決は、喫緊の課題であった。

そこで、今回、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に法改正が行われることとなった[1][2]。かかる改正法の施行は令和5年(2023年)4月1日となることが公表されている(2021年12月14日)。

今回改正された民法の物権編は、財産法秩序の基礎をなすものであり、民法が制定されてからこれまでに担保物権に関する規律を除き大きな改正はなかったところである。そのため、今回の法改正は、2020年4月施行の債権法改正に並ぶ重要な改正であり、実務的に対応が必要となる。

不動産を取得するにあたり行うデューディリジェンスにおいては、取得不動産における使用制限・権利制限(共有不動産における権利制限を含む)・隣地との権利関係・使用制限等により、今後どのような紛争が起こりうるのか、不動産価値にどのような影響を与えるのかを適切に把握することが必要不可欠である。

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法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、 相続土地国庫帰属法のポイント」24頁(PDFご参照)
《https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf》

2 物権関係(共有関係)202341日施行)

1. 見直しの契機としての所有者不明土地問題

数次相続により相続人が多数に上ることや相続人の一部の所在等が不明となっているなど相続未登記状態にあるような土地は、土地の円滑な利用や管理が困難であるうえ、共有者が土地の所在地から遠く離れていたり、共有者間の人的関係が希薄化したりすることで、共有者間で決定を得ることが困難になることもある。

そこで改正後民法では、共有物の利用促進の観点から、共有物の変更・管理に関する見直し等がされている。また、共有関係の解消促進の観点からも所在等不明共有者の持分の取得・譲渡に関する制度の整備等がなされている。

2. 共有物の使用関係
(1) 改正の概要

改正前民法においては、合意なく共有物を使用する共有者は、他の共有者に対して賃料相当額の不当利得返還義務又は損害賠償義務を負うと考えられていたものの、他の共有者の了解(合意)を得て共有物を使用する共有者が対価償還義務を負うかは明確でなかった[3]。これに対して、共有物を使用する共有者は、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うことが明確にされた(改正後民法249条2項)。

(2) 実務での留意点

M&A等において共有不動産を保有する企業を取得する際には、当該企業が共有不動産を使用している場合には(明示的な合意がない場合にも)対価償還義務を負うことから、このことを踏まえてデューディリジェンスを行う必要があることに留意すべきである。

また、後述3(1)b.及び4(1)c.のとおり、所在等不明共有者がいる場合に、一定の要件のもとで裁判所の決定を得て共有物の変更または管理ができる制度が新設されたが、かかる裁判所の決定があったとしても、その決定後に所在等不明共有者が現れた場合には、その所在等不明共有者は、他の共有者が共有物を単独で使用しているのに対して自己の持分に応じて使用の対価の償還を請求することができ、また、共有物を使用している共有者が使用についての善管注意義務に違反すれば損害賠償請求をすることができる[4]。そのため、所在等不明共有者がいる場合の土地の取得については注意が必要である。

3. 共有物の変更

(1) 改正の概要

a. 改正前は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない」と定められており、変更の意義及び範囲については明文の規律は設けられていなかった。そのため、実務上は、「変更」に当たるか明確ではない行為については保守的に共有者全員の同意を得なければならないという支障が生じることがあった。改正後民法では、共有物の変更について、形状・効用に著しい変更をもたらさない場合は、通常の管理と同様に扱う(共有持分価格の過半数で決定可(改正後民法252条1項))ことが明確にされた(改正後民法251条1項括弧書)。

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法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、 相続土地国庫帰属法のポイント」30頁(PDFご参照)
《https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf》
 
b. 一部の共有者を「知ることができず、又はその所在を知ることができない」場合には、当該共有者以外の同意により共有物の変更ができる旨の裁判の制度が新たに設けられた(同条2項)。

(2) 実務での留意点

上記(1)b.に関し、改正前は、所在等不明の共有者がいる場合には共有物についての必要な変更を行うことができず、共有物の利用等に支障が生じていたが、改正により一部の共有者又はその所在が不明の場合において、裁判所の手続きにより共有物の変更を行うことが可能となった。これにより、再開発等において所有者不明土地が対象となる場合には、この制度を利用して土地の形質変更等を行うことが考えられる。もっとも、事案によっては、後記6の所在等不明共有者の持分取得制度などを利用し、共有関係を解消することも考えられる。

ここで言う「共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」ときとは、必要な調査(住民票の調査など)を尽くしても、共有者の氏名又は名称やその所在を知ることができないときをいうとされている[5]

これらの要件が認められるための探索方法については明文の規定がなく、裁判所が事案に応じて適切に判断すべきと考えられるが[6]、裁判所に対して変更の申立てをする共有者が、その他の共有者に対して確認してもその所在等を知り得なかったことなどを立証する必要がある[7]ほか、少なくとも登記簿上及び住民票上の住所に当該共有者が居住していないかどうかを調査することが必要になるものと考えられている[8]

また、「共有者を知ることができ」ないというためには、通常、所有権の登記名義人が死亡し相続人が不明となっているような場合が想定されるが、戸籍の調査をもっても共有者を確定できないという場合も生じる可能性があると考えられる[9]

4. 共有物の管理

(1) 改正の概要

a. 共有物を事実上使用する共有者がある場合にも、持分の価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定できることが明確にされた(改正後民法252条1項)。

b. 一定の期間内の賃借権(土地5年[10]、建物3年など)その他の使用及び収益を目的とする権利の設定は、共有物の管理として持分の価格の過半数でできることが明確にされた(同条4項)。ただし、借地借家法が適用される賃貸借は、約定期間での終了が確保されていないため原則として全員の同意が必要となるが、一時使用目的(借地借家法25条、40条)や存続期間が3年以内の定期建物賃貸借(同法38条1項)の設定については、持分の価格の過半数の決定により可能である[11]

c. 一部の共有者を知ることができない又はその所在を知ることができない場合、及び一部の共有者が共有物の管理に関する事項についての賛否を明らかにしない場合に、裁判所において共有物の管理に関する事項を決定する制度が新たに設けられた(改正後民法252条2項)。

(2) 実務での留意点

上記(1)a.に関し、改正前民法においては、本来は持分の価格の過半数で決することができる共有物の管理に関する事項(共有物を実際に使用する者を定めることなど)について、(a)共有者間の決定なく共有物を使用している共有者があるケースにおいて共有物の管理に関する事項を決する場合[12]、また、(b)共有者間の決定により共有物を使用している共有者があるケースにおいて決定した共有物の利用方法の定めを変更する場合[13]には、共有者全員の同意を得なければならないとする見解が有力であった。
これに対し、改正後民法においては、上記(a)(b)のいずれのケースにおいても、各共有持分の価格の過半数により、実際に共有物を使用している共有者の同意を得ることなく、持分の価格の過半数で決することにより別の共有者が共有物を独占的に使用することを定めることもでき、従前共有物を使用していた共有者に対して引渡しを求めることができることとなった。ただし、上記(b)の場合に共有物を使用する共有者に「特別の影響」を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得なければならないとされる(改正後民法252条3項)。例えば、A、B及びCが各3分の1の持分で土地(更地)を共有している場合において、Aが土地上に自己が所有する建物を建築して、当該土地を利用し、Aは、B及びCに対して利用料を支払うとの定めをした場合において、Aが建物を建築した後に、当該土地を使用する共有者をBに変更する場合には、Aに「特別の影響」を及ぼす場合に該当し得ると考えられる[14]

また、対象建物に配偶者居住権が成立する場合には、他の共有者は、配偶者居住権者の使用収益を受忍すべき立場になるため、別途、配偶者居住権の消滅の要件を満たさない限り(民法1032条4項、民法1038条3項参照)、他の共有者は、持分の過半数により使用者を決定しても、配偶者居住権を消滅させることはできないと考えられる[15][16]

上記(1)b.に関し、改正前民法においては、法令の規定はないものの下級審判例では、民法602条各号の期間を超えない賃借権の設定は管理行為として共有物の持分価格の過半数でできるが、同条の期間を超える賃借権の設定及び借地借家法が適用される賃借権の設定については、原則共有者全員の合意が必要とされていた[17]。改正後民法252条4項は、これを受けて、共有持分価格の過半数により民法602条各号の期間を超えない短期賃貸借権の設定が可能であることを明確にしたものである。

不動産開発の場面においては、これにより、対象地を通路、資材置場、駐車場等を設置することに利用することが考えられる。

ただし、短期賃貸借については、賛成した過半数の共有者のみで不動産登記を申請し、権利部乙区にその登記をすることは、現状の不動産登記手続では困難であり、何らかの規律整備等が必要であると考えられている[18]

上記(1)c.に関し、一部の共有者を知ることができない又はその所在を知ることができない場合、及び一部の共有者が共有物の管理に関する事項についての賛否を明らかにしない場合に、裁判所の決定を経ることで所在等不明共有者や賛否を明らかにしない共有者以外の共有者の持分価格の過半数で管理行為を行うことが可能となった。これにより、再開発等において所有者不明土地が対象となる場合には、この制度を利用して短期賃貸借権の設定等の共有物の管理に関する事項を行うことが考えられる。もっとも、事案によっては、後記6の所在等不明共有者の持分取得制度などを利用し、共有関係を解消することも考えられる。

ここで裁判所が行う決定は、実施する管理行為自体の決定ではなく、所在等不明共有者等を外して共有物管理に関する事項の決定を行ってよいとする決定であることに留意すべきである[19]

5. 裁判による共有物分割

(1) 改正の概要

a. 「共有者間に協議が調わないとき」だけでなく、「協議をすることができないとき」にも裁判による共有物分割をすることができるというこれまでの解釈を、改正法において明確化した(改正後民法258条1項)[20]

b. 裁判による共有物分割の方法として、最高裁判例は共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を金銭で支払わせる賠償分割(全面的価格賠償)を認めてきた。もっとも、賠償分割については明文の規定がなかったために、現物分割を基本として競売分割を補充的方法とする規定との関係でどのように位置づけられるのかが明らかでなかった。そこで改正後民法では、賠償分割(「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」)が可能であることを明文化(改正後民法258条2項2号)するとともに、競売分割は、①現物分割・賠償分割がいずれもできないとき、又は②現物分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがあり、賠償分割もできないときのみ可能となることを明らかにした(改正後民法258条3項)。

c. 賠償分割を行う際には、実務上、現物取得者の支払を確保するために、裁判所が現物取得者に対して取得持分に相当する金銭の支払を命ずるなどの措置が講じられているが、明文の根拠規定がなく運用の安定性を欠いていた。そこで裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができることを明文化した(改正後民法258条4項)。

d. 共有物の持分が相続財産に属している場合に、相続開始から10年が経過したときは、共有物分割訴訟を利用することができることとされた。ただし、遺産分割の請求を求める相続人からの異議の申出があった場合は、遺産分割によって分割を行うことになる(改正後民法258条の2第2項、3項)。

(2) 実務での留意点

上記(1)d.に関し、遺産共有[21]持分と通常の共有[22]持分とが併存する共有物について、両者の共有関係を解消する手続きは共有物分割訴訟によって行い、共有物分割訴訟によって共同相続人に分割された財産については、その共有関係を遺産分割により解消することとされていた[23]。したがって、改正前は、相続後どれだけ時間が経過しても共有物分割訴訟のみによって単独所有の状態を実現することができなかった。これに対して、改正後民法においては、判例の法理を維持しつつ、相続開始から10年経過後は、遺産共有持分と通常共有持分とが併存する共有物について共有物分割訴訟により単独所有の状態を実現することが可能となった。もっとも、相続開始から10年経過後であっても、①遺産分割の請求[24]があり、②相続人が、裁判所から共有物の分割の請求があった旨の通知を受けた日[25]から二か月以内に共有物分割訴訟に対する異議が出された場合には、遺産分割によって分割を行うことになるため留意が必要である。

一方、改正前民法において共有物全体が一つの遺産共有にある場合には、分割は、共有物分割訴訟ではなく遺産分割によるとされていた[26]が、改正後においても、相続開始から10年経過したとしても共有物分割訴訟による共有物分割を行うことはできない[27]ため注意が必要である。

もっとも、遺産の一部分割はそれにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には認められないため(民法907条2項)、特別受益の内容等を考慮しないまま、遺産の一部分割をすることはできないが、相続開始 10 年経過後は特別受益の内容等を考慮する必要がなくなり(改正後民法904条の3)、遺産の一部分割は基本的に認められることになると考えられている[28]。そのため、遺産に属する個々の財産の分割も、この遺産の一部分割を活用すれば、共有物分割の手続によらないで行うことができると考えられる。

法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、 相続土地国庫帰属法のポイント」48頁(PDFご参照)
《https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf》

6. 所在等不明共有者の持分の取得・譲渡

(1) 改正の概要

裁判所において、①所在等不明共有者の共有持分を取得して不動産の共有関係を解消する制度、及び、②所在等不明共有者以外の共有者全員が特定の者(譲受人)に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として、不明共有者の持分を当該譲受人に譲渡する権限を付与する制度が新たに設けられた(改正後民法262条の2、262条の3)。

上記①については、共有不動産の共有者の一部が所在等不明である場合に、他の共有者の請求により、裁判所は所在等不明共有者の共有持分を当該他の共有者に取得させる旨決定することができる。裁判所がかかる決定を行うには、申立人は裁判所が決定する金額を予め供託しなければいけない。

なお所在等不明共有者以外の共有者全員の同意を得る必要はない[29]が、共有物分割の請求があり、かつ所在等不明共有者以外の共有者が異議の届出をしたときは、持分取得の決定をすることができない(改正後民法262条の2第2項)。

この場合、所在等不明共有者は、持分を取得した共有者に対し、時価相当額の請求権を有することになる。所在等不明共有者は供託金の還付を受けて時価相当額請求権の弁済に充当されることになるものの、供託額が請求権の額に充たない場合には、その差額を請求することができる。

なお、持分の時価相当額の請求権は、請求をした共有者が持分取得の結果単独所有者となる場合には共有減価をしないが、持分取得をしてもそのほかに共有者がおり共有関係が完全には解消しない場合には、共有減価をすると考えられている[30]
 

法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、 相続土地国庫帰属法のポイント」36頁(PDFご参照)
《https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf》

上記②については、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分の全部を譲渡することを停止条件とし譲渡権限を裁判により付与するものであり(一部の共有者が持分の譲渡を拒む場合には、条件が成就せず、譲渡をすることができない)、不動産全体を特定の第三者に譲渡するケースでのみ行使可能となる点に注意が必要である。この場合、所在等不明共有者の持分は、直接譲渡の相手方に移転し、申立てをした共有者がいったん取得するものではない。裁判所がかかる決定を行うには、申立人[31]は裁判所が決定する金額を予め供託しなければいけない。所在等不明共有者は、譲渡権限を行使した共有者に対し、時価相当額の請求権を有する。

持分取得の制度と異なり、持分の時価相当額の請求権は、「当該共有者が取得した持分の時価相当額」(262条の2第4項)ではなく、「不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額」(改正後民法262条の3第3項)とされている。この制度では、共有持分が譲渡されるのではなく、共有物の全体が譲渡され、共有物全体の代金は共有減価を考慮せずに決定されると考えられるから、所在不明共有者に対して支払われるべき金額も共有減価を考慮しないことを前提とすべきと考えられているからである[32]

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法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、 相続土地国庫帰属法のポイント」37頁(PDFご参照)
《https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf》

(2) 実務での留意点

所在不明共有者が存在する場合、改正前民法においては、所在不明共有者との間の共有関係を解消する方法として、共有物分割請求が考えられる。もっとも、裁判による共有物分割の方法をとる場合には一定の時間や手続を要するうえ、具体的な分割方法は裁判所の裁量的な判断に委ねられているためどのような結論となるのかの予測が容易ではない[33]

これに対して、改正後民法においては、裁判所での非訟手続により比較的迅速に、不明共有者の持分を他の共有者が取得すること、不明共有者の持分も含めた不動産を第三者に譲渡させる制度を新設した。これにより、再開発等において所有者不明土地が対象となる場合には、その解消に資することになる。

所在等不明共有者がいる共有不動産の場合、本条に基づき変更などの行為を行うことは可能であるが、そのたびに裁判所の決定を経るのは非常に煩雑である。したがって、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得してしまった方がよい場合がある。これらの制度を使って事業者等が共有不動産を取得しようとする場合、共有者の一人が譲渡の権限の付与を受けて、第三者として取得する方法が考えられる。一方、共有者の一部から共有持分を買い取った上で、共有者の一人として主導的に関与していくことも考えられる。また、第三者譲渡の手法をとる場合であっても、関連法人等に一部の共有持分を取得させて行うことも考えうる。

この制度は、不動産の地上権・賃借権等の準共有持分にも準用される[34]

第3 おわりに(後編の概要)

以上においては、所有者不明土地問題に係る法改正のうち、共有関係について解説した。

後編においては、相隣関係や相続などについて解説を行う。

以 上

[1] 国土交通省ウェブサイト『土地・不動産・建設業:人口減少時代における土地政策の推進~所有者不明土地等対策~』
《https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000099.html》

[2] 法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(2021年12月)2頁
《https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf》

[3] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」15頁

[4] 第204回国会衆議院法務委員会議録第6号13頁(小出氏)

[5] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」44頁

[6] 法制審議会民法・不動産登記法部会資料30・14頁

[7] 法制審議会民法・不動産登記法部会資料59・8頁

[8] 法制審議会民法・不動産登記法部会資料30・7頁

[9] 法制審議会民法・不動産登記法部会資料56・10頁

[10] 植栽・伐採を目的とする山林の場合は10年

[11] 借地借家法が適用される借地権については、借地権の存続期間は、原則として30年とされる(借地借家法3条)ところ、仮に存続期間を所定の期間に制限したとしても、正当の事由があると認められる場合でなければ契約の更新についての異議を述べることができないため(同法6条)、事実上長期間にわたって継続する蓋然性があり、共有者に与える影響が大きいため、共有者全員の同意なく借地権を設定することはできないと考えられる(法制審議会民法・不動産登記法部会資料27・7頁)。また、借地借家法の適用のある建物賃貸借は、基本的に、その存続期間を所定の期間(3年)以内に制限したとしても、建物の賃貸人は、正当の事由があると認められる場合でなければ契約の更新をしない旨の通知又は建物賃貸借の解約の申入れをすることができず(同法28条)、事実上長期間にわたって継続する蓋然性があることから、共有者に与える影響が大きいため、共有者全員の合意が必要と考えられる(法制審議会民法・不動産登記法部会資料40・4頁)。これに対し、契約の更新がないこととする旨の定めを設ける定期建物賃貸借(同法38条1項)、取壊し予定の建物の賃貸借(同法39条1項)、一時使用目的の建物の賃貸借(同法40条)については、契約の更新に伴って事実上長期間にわたって継続するおそれがなく、共有者に与える影響が大きいとはいえないと考えられることから、その存続期間を所定の期間(3年)以内とする限りにおいて、共有持分の価格の過半数の決定により設定することが可能であると考えられる(法制審議会民法・不動産登記法部会資料40・4頁)。

[12] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」4頁

[13] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」5頁

[14] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」4~5頁

[15] 法制審議会民法・不動産登記法部会資料 51・7頁

[16] 法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」31頁
《https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf》

[17] 東京地判平成14年11月25日判時1816号82頁

[18] 法制審議会民法・不動産登記法部会第13回会議議事録20頁(山野目氏)

[19] 法制審議会民法・不動産登記法部会第24回会議議事録12頁(脇村氏)

[20] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」28頁

[21] 相続によって遺産に属する財産が相続人に共有されている場合を意味する

[22] 遺産共有を除く民法第2編第3章第3節の共有を意味する(法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」1頁参照)

[23] 最判平成25年11月29日民集67巻8号1736頁

[24] 遺産の分割の調停または審判の請求を言うものと考えられる(法制審議会民法・不動産登記法部会資料42・2頁参照)

[25] 訴状の送達を受けた日となることが想定されている。訴状の送達等の用語を用いない表現となっているのは、裁判による共有物の分割は、本質的には非訟事件であるものの伝統的に訴訟手続で処理する取扱いが確立しているが、民法上は、その旨が明確にされておらず、訴訟で処理することを前提とする文言が用いられていないからである(法制審議会民法・不動産登記法部会資料51・12頁)。

[26] 最判昭和62年9月4日集民151号645頁

[27] 民法258条の2第1項では「共有物の全部又はその持分」と定め、同条2 項では「共有物の持分」と文言が異なる。

[28] 法制審議会民法・不動産登記法部会資料31・5頁

[29] 法制審議会民法・不動産登記法部会資料41・7頁

[30] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」37頁~38頁

[31] ただし、譲受人も供託することができると考えられている(法制審議会民法・不動産登記法部会資料40・4頁)。

[32] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」39頁

[33] 法務省民事局参事官室・民事第二課「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」 35頁

[34] 法制審議会民法・不動産登記法部会資料30・20頁