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2024.02.29

重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案の概要(2024.2.27閣議決定・国会提出)

<目次>
1. 法案の構成
2. ①「重要経済安保情報」の指定
3. ②信頼性確認(セキュリティ・クリアランス)
(1) 民間事業者
(2) 個人(従業者)
4. ③罰則

2024年2月27日、経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度に関する重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案(以下、「重要経済安保情報保護法案」又は単に「法案」といいます。)が閣議決定され、通常国会に提出されました(※1)。

本ニューズレターでは、民間事業者に関係のある部分に絞って、法案の概要を説明します。

(※1)内閣官房ウェブサイト「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案について」(令和6年2月27日)

1. 法案の構成

重要経済安保情報保護法案は、①保護の対象とする「重要経済安保情報」の指定、②信頼性確認(セキュリティ・クリアランス)を前提とした民間事業者及び個人(従業者)への重要経済安保情報の提供、及び③罰則という3つの構成からなっています。

2. ①「重要経済安保情報」の指定

行政機関の長によって重要経済安保情報として指定される可能性があるのは、(1)公になっていない重要経済基盤保護情報であって、(2)その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿する必要がある情報です(法案3条1項)。ただし、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法に定める特別防衛秘密と特定秘密保護法に定める特定秘密(※2)は除かれます。

「重要経済基盤」とは、要するに、重要なインフラや物資のサプライチェーンのことを指しており、「重要経済基盤保護情報」は、例えばサイバー脅威・対策等に関する情報やサプライチェーン上の脆弱性関連情報がこれに該当します。それぞれの具体的な定義は以下のとおりです。

【「重要経済基盤」(法案23項)】

・ 我が国の国民生活又は経済活動の基盤となる公共的な役務であってその安定的な提供に支障が生じた場合に我が国及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるものの提供体制
・ 国民の生存に必要不可欠な又は広く我が国の国民生活若しくは経済活動が依拠し、若しくは依拠することが見込まれる重要な物資(プログラムを含む。)の供給網

【「重要経済基盤保護情報」(法案2条4項)】

① 外部から行われる行為から重要経済基盤を保護するための措置又はこれに関する計画若しくは研究
② 重要経済基盤の脆弱性、重要経済基盤に関する革新的な技術その他の重要経済基盤に関する重要な情報であって安全保障に関するもの
③ ①の措置に関し収集した外国(本邦の域外にある国又は地域をいう。以下同じ。)の政府又は国際機関からの情報
④ ②、③に該当する情報の収集整理又はその能力

(※2)特定秘密保護法の概要については、小坂光矢「経済安保分野におけるセキュリティ・クリアランス制度の法制化に向けた最終とりまとめが公表(2024.1.19)」(牛島総合法律事務所ニューズレター・2024年2月16日)をご参照ください。

3.②信頼性確認(セキュリティ・クリアランス)

(1) 民間事業者

行政機関の長から重要経済安保情報の提供を受けることができる民間事業者(「適合事業者」)は、我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者(※3)であって、重要経済安保情報の保護のために必要な施設設備を設置していることその他政令で定める基準に適合する者とされています(法案10条1項)。どのような施設設備の設置が必要となるかといった具体的な基準の内容については、政令等を待つ必要があります。また、適合事業者の認定に関しては、政府により運用基準が定められる予定です(法案第18条1項)。

適合事業者が重要経済安保情報の提供を受けるためには、行政機関との間で、以下の内容を含む契約を締結する必要があります(法案10条3項)。

【契約に定める必要がある事項(法案103項)】

① 適合事業者が指名して重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる従業者の範囲
② 重要経済安保情報の保護に関する業務を管理する者の指名に関する事項
③ 重要経済安保情報の保護のために必要な施設設備の設置に関する事項
④ 従業者に対する重要経済安保情報の保護に関する教育に関する事項
⑤ 行政機関の長から求められた場合には重要経済安保情報を行政機関の長に提供しなければならない旨
⑥ 適合事業者による重要経済安保情報の保護に関し必要なものとして政令で定める事項

(※3)重要経済基盤の脆弱性の解消を図る必要がある事業者や脆弱性の解消に資する活動を行う事業者、重要経済基盤の脆弱性及び重要経済基盤に関する革新的な技術に関する調査及び研究を行う事業者やこれに資する活動を行う事業者、重要経済基盤保護情報を保有する事業者やその保護に資する活動を行う事業者などが例示されています(法案10条1項)。

(2) 個人(従業者)

重要経済安保情報の取扱いは、行政機関の長が下記の事項に関する調査(法案12条2項)の結果に基づいて行う適正評価において、重要経済安保情報を漏らすおそれがないと認められた者に限って行うことができます(法案11条1項)。適正評価の実施に関しては、政府により運用基準が定められる予定です(法案第18条1項)。

【調査内容(法案122項)】

① 重要経済基盤毀損活動(※4)との関係に関する事項(評価対象者の家族(配偶者、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子。)及び同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所を含む。)
② 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
③ 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
④ 薬物の濫用及び影響に関する事項
⑤ 精神疾患に関する事項
⑥ 飲酒についての節度に関する事項
⑦ 信用状態その他の経済的な状況に関する事項

適正評価は、適正評価の対象者(「評価対象者」)が適正評価を受けることに同意した場合に限って行われます(12条3項)。なお、適正評価の結果や、評価対象者の同意がないことを理由として適正評価が実施されなかったことは、適合事業者に対して通知されますが(法案13条2項)、適合事業者が重要経済安保情報の保護以外の目的で通知内容を利用又は提供することは禁止されています(法案16条2項)。

(※4)重要経済基盤毀損活動には、以下の活動が該当します。

  1. 重要経済基盤に関する公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動等の活動であって外国の利益を図る目的で行われ、かつ、重要経済基盤に関して我が国及び国民の安全を著しく害するおそれのある活動
  2. 政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で重要経済基盤に支障を生じさせるための活動

4. ③罰則

重要経済安保情報の取扱いの業務に従事し、又は従事していた者が、業務により知り得た重要経済安保情報を漏えいした場合、5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金(これらが併科される場合もあります)の対象となります(法案22条1項)。法人に対する両罰規定も設けられています(法案27条1項)。さらに、未遂罪も処罰の対象となるほか(法案22条3項)、漏えいが過失によるものである場合でも1年以下の拘禁刑又は30万以下の罰金の対象となります(法案22条4項)。なお、過失犯には両罰規定はありません。

以 上

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