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事務所概要・アクセス
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<目次>
1. 商事法
2. 民事法・民事手続法
3. 労働法
4. 知的財産法
5. その他(情報公開法、不正競争防止法等)
裁判所ウェブサイトや法務雑誌等で公表された最近の裁判例の中で、企業法務の観点から注目される主な裁判例を紹介します(2025年5月・6月)。
東京地決令和6年5月10日〔ニデック対牧野フライス事件〕(下記1(1))は、ニデック(X)が、牧野フライス製作所(Y)と事前に協議することなく、Yの普通株式を対象とする公開買付け(TOB)を開始したことに対し、Yが対抗措置(新株予約権無償割当て)(以下「本件無償割当て」といいます。)の導入を決定し、これに対しXが本件無償割当ての差止めを求めて仮処分命令申立てを行った事案です。東京地裁は、本件無償割当てについて、競合提案の受領・検討等のために合理的に必要な時間を確保することを目的とした対応であり、Yの株主が企業買収に伴う正当な利益を享受する機会を確保するために必要かつ相当な取扱いであるなどと判示し、Xの申立を却下しました。
東京地裁は、いわゆる同意なき買収が行われた場合に企業買収に伴う正当な利益を対象会社の株主が享受する機会を確保するとの観点から、対抗措置に必要性及び相当性が認められるかを検討しており、従来の判例の判断枠組みや経済産業省の「企業買収における行動指針」の考え方に沿うものです。本判決は、同意なき買収に直面した対象会社が講じうる対応策を検討するうえで、実務上示唆に富むものといえます。
東京地判令和6年11月26日(下記2(1))は、電子書籍の販売等を行う日本法人Xらが、インターネット上の電子書籍販売サイトを運営する米国法人Yに対し、同サイトの利用契約に基づき、Xらの販売した電子書籍に係るロイヤリティの支払等を求めた事案です。これに対し、Yは仲裁合意が成立しているとして訴えの却下を求めました。東京地裁は、Xらが仲裁条項を含むYの利用規約の内容を理解した上で、同サイトの利用契約を締結したと推認するのが相当であるとして、仲裁合意の成立を認め、Xらの訴えを却下しました。
近年、海外企業との契約や約款において仲裁条項が設けられるケースが増加しています。本判決は、Xらが仲裁条項の存在を認識していなかった、またはその内容を理解できなかったとする主張を退け、仲裁合意の成立を認めました。仲裁合意の成立が認められた場合、当事者は裁判所に訴訟を提起することができず、仲裁によって紛争解決を図らなければならなくなります。海外企業と契約を締結する際には、仲裁条項の存否及びその内容を十分に確認・理解した上で対応する必要があります。
東京高判令和5年11月30日(下記2(6))は、学校法人A女子大学の理事であったXが、同大学の理事会において理事長代行の解任決議等を主導したことに関し、弁護士3名(Yら)で構成される第三者委員会が、公平公正な調査等を行うことなく、Xに忠実義務違反が認められるとの提言をA大学に行ったことにより、Xが精神的苦痛を受けたと主張し、不法行為に基づく慰謝料の支払を求めた事案です。これに対し、Yらは、Xが訴え提起の記者会見でYらの名誉を毀損する発言などをしたとして、不法行為に基づく慰謝料の支払を求めました。
東京高裁は、本件の第三者委員会による判断に明白な誤りがあるとはいえないとして、Xの請求を棄却しました。一方、Xの記者会見における、Yらが独立性を欠くとの指摘については、客観的・中立的立場からXの責任を分析することが期待されている第三者委員会の本質を否定する批判であり、しかもさしたる根拠もなく行われたことから、意見論評の域を逸脱する不法行為に当たるとし、Yらの請求を一部認めました。
昨今、企業等において不祥事が発生した場合に、企業等から独立した第三者委員会が調査を実施し、その結果を公表することが増えています。第三者委員会による調査の対象となる不祥事においては、調査対象者や関係者の利害が錯綜することが多く、最近も、第三者委員会の調査報告書における事実認定の適否が調査対象者との関係で問題となっていることが大きく報道されています。本判決は、第三者委員会委員が調査対象者に対しどのような場合に法的責任を負うか、また、第三者委員会の判断を公に批判した者が、どのような場合に法的責任を負うかについて、裁判所の判断枠組みを示すものとして、実務上参考になります。
ニデックによる牧野フライス製作所新株予約権無償割当差止仮処分命令申立事件
取締役会の承認を受けた利益相反取引に関して取締役の任務懈怠責任が肯定された事例
1 合同会社の社員権の取得契約に係る投資の勧誘が、組織的な違法行為に当たり、不法行為を構成するとされた事例
2 会社による投資の勧誘が組織的な違法行為に当たる場合において、合同会社の代表社員らが共同不法行為責任を負うとされた事例
3 他の役員による違法行為について認識していた合同会社の業務執行社員が、会社法597条により賠償責任を負うとされた事例
日本法人と外国法人との間のインターネット上の電子書籍販売サイトの利用契約に係る訴訟につき、仲裁合意の成立を認め、訴えを却下した事例
ブログに掲載された原告の社会的評価を低下させる記事について、掲載の時点では公共の利害に関する事項に当たるものであったが、その後11年以上が経過した口頭弁論終結日の時点においては公共の利害に関する事項に係るものとはいえないとして、削除請求が認容された事例
譲渡制限株式を譲り受けて、当該株式の発行会社に対して譲渡承認請求をし、売買価格の決定の申立てをすることなどによってその権利の実行をすることを業とする行為が、弁護士法73条に違反するとされた事例
生産物賠償責任保険の保険者らが、エアバッグ・インフレータの不具合に起因する事故の被害者に対する損害賠償責任に係る保険金の支払義務を負うものとは認められないとされた事例
日本の裁判所が管轄権を有する外国法人に対する請求と主観的併合の関係にある請求のうち、当該法人の法人格の否認を主張する請求に係る訴えについて、民事訴訟法3条の6により日本の裁判所の管轄権を認めた一方、同法3条の9により却下した事例
1 学校法人の外部有識者委員会(第三者委員会)が理事に忠実義務違反が認められるとの提言書をまとめたことが、同理事に対する不法行為には当たらないとされた事例
2 学校法人の理事が外部有識者委員会(第三者委員会)の委員に不法行為責任が認められるとする記者会見をしたことが、同委員の名誉を毀損する不法行為に当たるとされた事例
盗撮行為への社会的非難の高まりや事業の公共性等を踏まえると、従業員の職場外での盗撮行為を理由とする懲戒解雇は社会通念上相当であり有効
完全歩合制とする合意を受け入れたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいえず、合意の成立は認められない
解雇撤回後の地位確認・賃金等請求と反訴
賃金支払いミスに関する対応を問い詰める言動は、パワハラとは直ちに言い難いが、パワハラを禁止する就業規則違反に準じる行為として、懲戒処分事由に当たる
有期契約の部長にかかる退職年金等相違の高年法・旧労契法20条違反該当性
パソコンの私的利用等を理由とした解雇の有効性
精神障害発覚による退職勧奨の違法性等
先発医薬品に係る特許権者等がパテントリンケージにおいて先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触がある旨の虚偽の回答をする行為は、パテントリンケージの趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認められる特段の事情がある場合には、競争関係にある後発医薬品の製造販売承認を申請する者の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知するものとして、不正競争防止法2条1項21号に掲げる不正競争に該当するとした事例
同一特許及び同一製品に係る特許権侵害差止等請求事件及び仮処分命令申立事件が並行審理された場合において、いわゆるレビュー期日における侵害論の心証開示後に、仮処分認容決定が発令された事例
国が風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条7項1号所定の無店舗型性風俗特殊営業を行う事業者に対して持続化給付金給付規程(中小法人等向け)(令和2年8月1日付けのもの)及び家賃支援給付金給付規程(中小法人等向け)(同年10月29日改正前のもの)に定める各給付金を給付しないこととしていることは、憲法14条1項に違反しない
機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業の報告書に記録された情報が情報公開法(平成28年法律第51号による改正前のもの)5条6号柱書き及び同号イ所定の不開示情報に該当するとした原審の判断に違法があるとされた事例
将棋の指し手の表示を含む動画についての動画配信プラットフォーム運営事業者に対する著作権侵害の申告行為が、不正競争防止法2条1項21号にいう不正競争にあたるとした事例
以 上