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2025.11.19

無人航空機(ドローン)法制の最新動向

<目次>
1. はじめに
2. 最近の主な制度改正
(1) レベル3.5飛行制度の新設
(2) カテゴリーⅡ飛行に関する許可・承認申請手続の簡素化
(3) 無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドラインの制定
(4) 総重量25kg以上の無人航空機を飛行させる場合の第三者賠償責任保険の加入
3. おわりに

 

1. はじめに

 2025年11月13日の新聞報道によると、警察庁は、近年のドローンの性能向上に伴うテロの脅威の高まりに対応し、小型無人機等飛行禁止法(※1)において飛行が禁止される範囲について、重要施設(※2)の周囲概ね300m以内とする現行の規制を改め、1000m以内に拡大することや、飛行禁止の対象施設を追加することなど、同法の規制範囲を拡大する方向で検討を開始し、2026年の通常国会への改正法案の提出を目指す旨が報じられています(※3)。
 小型無人機等飛行禁止法をめぐっては、2024年10月に、航空自衛隊基地の上空で会社役員の男性がドローンを飛行させ、書類送検された事案が報じられています。この男性は、周辺に重要施設があることを知らず、誤って侵入してしまった旨を述べています。今後、同法の改正法案が成立し、規制範囲が重要施設の周囲300m以内から1000m以内へと拡大された場合には、ドローン飛行における同法違反のリスクはより一層高まるものと考えられます。
 このように、無人航空機(ドローン)の飛行を行おうとする場合には、コンプライアンスの観点から、航空法を中心とした最新の法規制について十分に確認し、慎重な検討を行うことが求められます。
無人航空機(ドローン)をめぐる法制度について、日本では、2015年以降、必要な制度整備に向けて官民一体となった検討が進められ、累次の航空法改正等を通じて、飛行の許可・承認制度、機体の登録制度、機体認証制度・操縦ライセンス制度等が創設されました。これらの制度により、2023年3月には、無人航空機の有人地帯(第三者上空)における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)が可能となりました。これら制度整備の概要については、「ドローン・無人航空機の法規制は?航空法や電波法等の概要を解説」(※4)及び「ドローン・無人航空機の飛行に必要な航空法上の手続を解説」(※5)において解説しておりますので、ご参照いただけると幸いです。
 以下では、その後の無人航空機を巡る制度改正の概要について、留意すべきポイントを解説します。

※1 正式名称は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(平成28年法律第9号)
※2 国会議事堂、首相官邸、外国公館、防衛関係施設、空港、原子力事業所等
※3 2025年11月13日日本経済新聞朝刊
※4 2023年12月6日付けBUSINESS LAWYERS掲載記事
※5 2023年12月11日付けBUSINESS LAWYERS掲載記事

2. 最近の主な制度改正

(1) レベル3.5飛行制度の新設

 2023年12月27日、無人航空機による物資輸送やインフラ点検業務等の事業化促進を目的として、カテゴリーⅡ飛行(※6)に関する許可・承認の審査要領の改正により、レベル3.5飛行の制度が新設されました。
 レベル3.5飛行とは、以下の①~③の条件を満たすことを前提に、従来のレベル3飛行(※7)で必要とされていた立入管理措置(補助者の配置、看板の配置等)を撤廃し、道路、鉄道又は船舶航路を一時的に横断する飛行(移動中の車両、列車又は船舶の上空を通過する場合を含む。)を可能としたものです。

機上カメラと地上に設置するモニター等の設備により、進行方向の飛行経路の直下及びその周辺に第三者の立ち入りが無いことを確認できることを事前に確認していること
移動車両等との接触や交通障害等の不測の事態に備え、十分な補償が可能な第三者賠償責任保険に加入していること
操縦者が無人航空機操縦者技能証明(目視内飛行の限定解除を受けたもの)を保有していること

 ただし、レベル3.5飛行は、あくまでもレベル3飛行の一部に該当するものであり、レベル4飛行(※8)ではありません。すなわち、レベル3.5飛行は、上記①~③の要件を満たすことにより、一時的な道路等の横断に限って、移動車両等(自動車、鉄道車両、船舶)の上空や、第三者の出入りのない一時的な住宅等の上空の飛行を可能とするものですが、歩行者等の第三者の上空(有人地帯上空)の飛行を認めるものではありません。
 また、レベル3.5飛行は、従来のレベル3飛行で求められていた要件のうち、補助者の配置や看板の設置等による立入管理措置を機上カメラによる確認に代替するものですが、立入管理措置そのものが不要になるわけではありません。従来のレベル3飛行で求められていたその他の要件(山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地等の第三者が立ち入る可能性が低い場所の選定等)についても、引き続き必要とされている点に注意が必要です。

※6 カテゴリーⅡ飛行とは、特定飛行(国土交通大臣の許可や承認が必要となる空域及び方法での飛行)のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行う飛行をいいます。
※7 レベル3飛行とは、無人地帯での目視外飛行をいいます。
※8 レベル4飛行とは、有人地帯での目視外飛行をいい、第一種機体認証及び一等無人航空機操縦者技能証明が必要とされるなど、厳格な要件が求められています。

(2) カテゴリーⅡ飛行に関する許可・承認申請手続の簡素化

 2024年5月31日に内閣府の規制改革推進会議が取りまとめた「規制改革推進に関する答申」は、ドローンの事業化の促進に向けた環境整備の一環として、無人航空機の飛行申請に対する許可・承認手続期間の1日化を目指すべき旨を示しました。
 これを踏まえ、国土交通省は、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」を改正し(令和7年2月公布、3月施行)、カテゴリーⅡ飛行に関する許可・承認の申請手続の簡素化及び審査の迅速化を図りました。
 具体的な審査要領の改正内容は、以下のとおりです。

従来の申請・審査内容改正後の申請・審査内容
「機体並びに操縦者に関する基本基準/追加基準の適合性」に関し
・基準への適合性を説明・申請者自らにおいて、機体や取扱説明書等をもとに基準への適合性を確認し、その確認結果を「適・否」で申請
・適合性の内容が確認できる資料(機体の写真、取扱説明書等)の添付が必要・適合性の内容を確認できる資料(機体の写真、取扱説明書等)の添付は不要

 この改正により、カテゴリーⅡ飛行に関する許可・承認の申請手続について、提出する申請書類が大幅に簡素化され、審査期間の短期化が図られることとなりました。

(3) 無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドラインの制定

 前述のとおり、累次の航空法改正等により、レベル4飛行を実現する制度が整備されました。一方、無人航空機の事業化や社会実装をより一層進めるためには、少人数で多数の無人航空機を運航できるようになることで運航の効率化や事業採算性の向上をもたらす、多数機同時運航の普及拡大が必要であるとの意見が高まっていました。
 こうした状況を踏まえ、2024年10月に設置された「多数機同時運航の普及拡大に向けたスタディグループ」での検討を経て、2025年3月28日、無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン(第一版)(以下「本ガイドライン」といいます。)が制定・公開されました。本ガイドラインは、航空法に基づく無人航空機の規制体系下において、安全に多数機同時運航を行うための要件等を指針(ガイドライン)としてまとめたものです。
 本ガイドラインは、レベル3又は3.5飛行により各機体独立形態で1:5(操縦者1人に対して無人航空機5機、操縦者2人に対して無人航空機10機など)までの飛行を行うものを対象範囲としており、今後、随時見直しを図り、対象範囲を拡大していくことが予定されています。
 本ガイドラインでは、許可・承認申請の前提として、以下の事項に留意すべき旨を定めています。

(1) 機体の要件・自動操縦により飛行させることができる無人航空機の基準に適合すること
・自動操縦システムを装備し、機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できること、等
(2) 操縦者の要件①知識の要件:次に掲げる知識を有すること
・多数機同時運航固有のリスク(1:1による遠隔自動運航と比較して、異なるリスク)
・多数機同時運航に伴い増加するリスク(1:1による遠隔自動運航と比較して、増加するリスク)
②能力の要件:次に掲げる能力を有すること
・異常が発生した機体への対応と、他の機体の運航監視を両立させること
・複数機で異常が発生しても当該不具合に同時に対応できること
③訓練の要件:次に掲げる項目について、机上訓練と実機訓練を実施すること
・同時運航の機体数を段階的に増加させて、判断と操作に十分に慣熟すること
・正常な運航時の操作に加えて、緊急時の判断と操作に十分に慣熟すること
(3) 運航管理の要件①組織の要件:次に掲げる要件を満たす組織であること
・異常発生時の対応可能性を予め検証できること
・組織体制、無人航空機の飛行に直接的に関与している者(直接関与者)の役割分担を予め明確化しておくこと
・ヒヤリハット等も含めた情報を運航者が内外に共有する体制を有すること
②運航システムの要件
・運航状況の把握や運航判断を容易とする操作画面や監視画面の配置とすること

 そのほか、本ガイドラインは、多数機同時運航を行うにあたり、各運航者においてリスクの検証を行い、リスク対応策である不具合等の発生を防止する予防策と、発生時の影響を回避・低減する回復策の両方を行うことや、許可・承認申請を行う際に追加で作成すべきマニュアル類を示すなどしています。

(4) 総重量25kg以上の無人航空機を飛行させる場合の第三者賠償責任保険の加入

 2025年10月1日以降、総重量25kg以上の無人航空機を飛行させる飛行許可・承認申請を新たに行う場合、第三者賠償責任保険への加入が必要となります。
 大型機は、墜落時の損害規模がホビー用・個人向けのものと比較して甚大であることや、近時の無人航空機の事故等の発生状況も踏まえると、大型機の飛行により第三者の負傷や交通障害等の不測の事態が発生した場合、被害者等に十分な補償が行われる必要があります。
 そのため、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」が改正され、総重量25kg以上の大型機の飛行について、第三者賠償責任保険への加入が必須とされました。

3. おわりに

 以上のとおり、無人航空機(ドローン)を巡る法制度については、レベル3.5飛行制度の創設、カテゴリーⅡ飛行に関する許可・承認手続の簡素化、多数機同時運航ガイドラインの制定、大型機についての第三者賠償責任保険の加入の要請など、技術の進展への対応や社会実装の促進を目的とした制度整備が継続的に進められています。今後も、冒頭で触れた小型無人機等飛行禁止法の改正など、関連法令・通達の改正や運用の見直しが引き続き行われるものと考えられます。
 無人航空機(ドローン)を活用する事業者や個人は、コンプライアンスの観点から、航空法を中心とした最新の法規制について十分にフォローし、日常のオペレーションやマニュアルに迅速に反映させるなど、変化に即応できる体制を構築することが不可欠と考えられます。

以上

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