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事務所概要・アクセス
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<目次>
1. はじめに
2. クロスボーダー収納代行の「為替取引」該当性
3. 「為替取引」から除外される類型
(1) 銀行や資金移動業者に資金を受け入れさせるクロスボーダー収納代行
(2) エスクローサービスにおけるクロスボーダー収納代行
(3) 取引プラットフォームの提供者によるクロスボーダー収納代行
(4) 同一の企業グループに属する他の会社等を受取人とするクロスボーダー収納代行
(5) 他の法令に基づき受取人が有する金銭債権に係るクロスボーダー収納代行
(6) その他(一定の者から委託を受けた者のクロスボーダー収納代行)
4. 「利用者の保護に欠けるおそれが大きい取引」として為替取引規制が適用される類型
(1) 代理受領権が付与されていないクロスボーダー収納代行
(2) 受取人への資金の円滑な引渡しが阻害されるおそれのあるクロスボーダー収納代行
(3) 賭博資金に係るクロスボーダー収納代行
(4) 投資事案に係るクロスボーダー収納代行
(5) 法令違反等のクロスボーダー収納代行
5. おわりに
金融庁が、2025年12月16日、2025年資金決済法改正に係る政令・内閣府令・事務ガイドライン等の改正案を公表し、パブリックコメントが開始されました(以下「本パブコメ」といいます。)。2025年6月6日に成立した「資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第66号。以下「2025年資金決済法改正」といいます。)の施行に伴い、関係政令・内閣府令等の規定の整備を行うものです。
2025年資金決済法改正においては、国境を跨ぐ収納代行(以下「クロスボーダー収納代行」といいます。)について、資金移動業登録が必要となる「為替取引」に該当することとなる要件(下記2.)とともに、一定の除外類型に該当すれば「為替取引」に該当しない旨が規定されました(※)。
本パブコメに際して公表された内閣府令等の改正案は、上記の除外類型やその例外等を具体的に定めることにより、2025年資金決済法改正におけるクロスボーダー収納代行に関する規制内容を明らかにするものです。 (※)2025年資金決済法改正におけるクロスボーダー収納代行に関する規制内容については2025年6月30日付け「クロスボーダー収納代行に関する2025年資金決済法改正」もご参照ください。
2025年資金決済法改正により、概要以下の要件をみたすクロスボーダー収納代行が「為替取引」に該当するものとされました(改正後の資金決済法2条の2柱書及び同条2号)。
なお、クロスボーダー収納代行として例えば以下が想定されています(2024年11月7日付け金融庁「第4回 金融審議会資金決済制度等に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」8頁)。
前述のとおり、改正後の資金決済法2条の2第2号は、上記2.の要件を満たす行為が「為替取引」に該当すると規定するとともに、「当該行為の態様その他の事情を勘案し、利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定めるものを除く」と規定しています。
本パブコメに付された資金移動業に関する内閣府令の改正案(以下「改正内閣府令案」といいます。)は、以下のとおり、「為替取引」から除外されるクロスボーダー収納代行の類型を概要以下のとおり示しています(※)。
ただし、下記4.で述べる「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」(改正内閣府令案1条の3第1項柱書)に該当する場合には、「為替取引」に該当し得ることに留意が必要です。
(※)詳細については本パブコメに付されている改正内閣府令案等の原文をご参照ください。
まず、「受取人が有する金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を銀行等又は資金移動業者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為」が「為替取引」から除外されます(改正内閣府令案1条の3第1項1号)。同規定については、「二以上の段階にわたる収納代行において、銀行等又は資金移動業者に収納代行を再委託して行う収納代行」が同号に該当するとされているところ、同号に該当するためには、銀行等や資金移動業者に収納代行を再委託していることが必要であり、「単に銀行等に開設した預金口座や資金移動業者に開設したアカウントに対して債務者等に送金させるのみである場合」は同号に該当しないとされています(「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係14 資金移動業者関係)」の改正案(以下「改正事務ガイドライン案」といいます。)I-2-2-2(1))。
いわゆるエスクローサービスも「為替取引」から除外される類型とされています(改正内閣府令案1条の3第1項2号)。2025年資金決済法改正以前から為替取引に該当する旨が規定されている一定の収納代行(受取人(債権者)が個人のもの)との関係でも、エスクローサービスは除外されており(資金移動業に関する内閣府令1条の2第3号イ)、同趣旨の規定と考えられます(2025年1月22日付け金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ報告」(以下「2025年WG報告」といいます。)9頁も参照)。
次に、「受取人が有する金銭債権の発生原因である契約の締結の方法に関する定めをすることその他の当該契約の成立に不可欠な関与」を行う場合のクロスボーダー収納代行についても、一定の要件の下で「為替取引」から除外される類型とされています(改正内閣府令案1条の3第1項3号)。金銭債権の発生原因の成立に関与するプラットフォーマー等が想定されているものと考えられます(2025年WG報告9頁)。エスクローサービスと同様に、2025年資金決済法改正以前から、受取人(債権者)が個人の場合の収納代行について同趣旨の除外規定が設けられています(資金移動業に関する内閣府令1条の2第3号ロ)。
クロスボーダー収納代行を扱う事業者と同一の企業グループに属する他の会社等を受取人とする場合も、「為替取引」から除外される類型とされています(改正内閣府令案1条の3第1項4号)。2025年WG報告が、「資本関係がある場合等、受取人との経済的一体性が認められる者が行うクロスボーダー収納代行」については為替取引規制を適用する必要性が高くないとしたことを受けた規定と考えられます(同報告10頁)。
もっとも、受取人が、為替取引規制の「適用を免れる目的」で金銭債権を取得したような場合には、本除外規定は適用されません。例えば、「第三者から金銭債権を譲り受けて受取人となった者が、受領した当該金銭債権の弁済相当額を譲渡人に支払っている場合」がこれに当たります(改正事務ガイドライン案I-2-2-2(4))。
他の法令に基づき受取人が有する金銭債権に係る収納代行についても、「為替取引」から除外される類型とされています(改正内閣府令案1条の3第1項5号)。2025年WG報告が、「他法令が規律する分野における主体や行為でクロスボーダー収納代行を実施することが想定されているもの(クレジットカードのイシュア・アクワイアラ間の清算業務等)」は為替取引規制を適用する必要性が高くないとしたことを受けた規定と考えられます(同報告10頁)。
具体的には、クレジットカードに係る国際ブランドが行う第三者型前払式支払手段等の利用に係る債権債務の清算に伴う収納代行(同号イ)、クレジットカード加盟店を受取人とする収納代行(同号ロ)及び国内で登録を受けた第三者型発行者が発行する第三者型前払式支払手段の加盟店を受取人とする収納代行(同号ハ)が除外類型に該当します(改正事務ガイドライン案I-2-2-2(5)ないし(7))。
エスクローサービス又は取引プラットフォームの提供者から委託を受けた者が行うクロスボーダー収納代行(改正内閣府令案1条の3第1項6号)(※)や、銀行等又は資金移動業者からの委託を受けた者が行うクロスボーダー収納代行(改正内閣府令案1条の3第1項7号)も、為替取引から除外される類型とされています(2025年WG報告10頁脚注37参照)。
(※)後述の4.(2)も参照。
もっとも、改正内閣府令案は、概要以下の「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」が上記3.の除外類型から除かれると規定しています(同1条の3第1項柱書、同条第2項)。そのため、以下のいずれかに該当するクロスボーダー収納代行(上記2.の要件を満たすもの)は「為替取引」に該当することになります。
まず、「受取人が有する金銭債権に係る債務者等…から弁済として資金を受け入れた時…までに当該金銭債権に係る債務者の債務が消滅しないもの」(改正内閣府令案1条の3第2項第1号、同1条の2第1号)が「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」とされています。
受取人から事業者に代理受領権が適切に付与されていれば、債務者から弁済として資金を受け入れた時に当該債務者の債務は消滅することになりますので、本号では、代理受領権限が適切に付与されていないクロスボーダー収納代行が想定されているものと考えられます(2025年WG報告8頁脚注24、同9頁脚注32)。
上記3.(6)のとおり、エスクローサービス又は取引プラットフォームの提供者から委託を受けた者が行うクロスボーダー収納代行は「為替取引」から除外されますが(改正内閣府令案1条の3第1項6号)、「国外にある債務者等から国内にある受取人等へ向けて資金を移動させる行為」については、事業者において当該資金移動を「適切に行うことができない事態が生じた場合に受取人等への資金の円滑な引渡しが阻害されるおそれのある行為」が「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」とされています(改正内閣府令1条の3第2項2号)。
具体的には、「取引プラットフォーム提供者が他の事業者に資金の受け入れ又は引き渡しを再委託する収納代行を行う場合」において、「取引プラットフォーム提供者が受取人等に対して負う責任を当該他の事業者の選任・監督に限定する場合」が本号に該当するとされています(改正事務ガイドライン案I-2-2-2(9))。
「賭博をする者又は他の者相互間で賭博を行わせる者が受取人である場合」に、債務者等から弁済として賭博に係る資金を受け入れる等する場合も「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」とされています(改正内閣府令案1条の3第2項第3号)。
改正事務ガイドライン案は、「当事者の一方が勝敗の結果を知っている片面的賭博をする者又は他の者相互間で片面的賭博を行わせる者が受取人である場合」に、「債務者等から弁済として当該片面的賭博に係る資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為」が本号に該当するとしています(改正事務ガイドライン案I-2-2-2(10))。
2025年WG報告が、海外オンラインカジノの賭金の収納代行について、為替取引規制が適用されるべきとしていたことを受けた規定と考えられます(同報告10頁)。
また、受取人が有する金銭債権が、「新たに発行される有価証券…の取得を目的とする行為、有価証券の売買又はデリバティブ取引…により発生したものである場合」の、当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れる等する場合が「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」とされています(改正内閣府令案1条の3第2項第4号)。
2025年WG報告において、海外出資金詐欺等の事案でクロスボーダー収納代行が用いられている事案が存在するなどとして、海外投資事案の収納代行に為替取引規制が適用されるべきとされていたことを受けた規定と考えられます(同報告8頁及び10頁)。
最後に、上記(3)及び(4)に類する行為であって、法令の規定又は公の秩序若しくは善良な風俗に反するものも「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」とされています(改正内閣府令案1条の3第2項第5号)。
本パブコメに際し公表された改正内閣府令案等により、2025年資金決済法改正の枠組みが概ね明らかとなりましたが、同改正の具体的内容や当局による規制動向及びこれらへの対応については、本パブコメの結果や当局の対応等を注視していく必要があると考えられます。
本ニューズレターは、掲載時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではないことにご留意ください。また、本ニューズレター中意見にわたる部分は、執筆担当者個人の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではありません。
以 上