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セミナー
事務所概要・アクセス
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<目次>
1. はじめに
2. 事業会社によるスタートアップ投資のスキームの概要
(1) LP出資方式
(2) 直接投資方式
(3) CVC子会社方式
(4) CVCファンド方式(自社GP)
(5) CVCファンド方式(他社GP)
3. スキーム選択のポイント
政府は、2022年1月に「スタートアップ創出元年」を宣言し、同年6月の骨太の方針において「スタートアップへの投資」を重点投資分野の柱の1つとしました。2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」が公表され、スタートアップへの投資額の拡大等のため、様々な取組が実施されてきています。なかでも、ベンチャーキャピタルなどによる投資だけでなく、既存の大企業(事業会社)によるスタートアップへの投資(Corporate Venture Capital。以下「CVC」といいます。)は、オープンイノベーションを推進という観点からも重要性が認識されています。
以下では、事業会社が実際にスタートアップへの投資を検討するに際して、どのようなスキームで投資を行うかという観点から、各スキームの概要と選択のポイントを解説いたします。
まず、LP出資方式、すなわち、ベンチャーキャピタルが組成するファンドにLP(Limited Parter。有限責任組合員)として投資を行う方法が考えられます。ファンドが投資するスタートアップの選定等はファンドを運営するGP(General Partner。無限責任組合員)が行います。この方式の一般的なメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・事業会社が自ら投資先を選定する必要がない ・投資を通じて財務的なリターンを得るという目的に適している | ・LPはファンドの投資運用を基本的にGPに任せるため、事業会社が投資先のスタートアップと事業上のシナジーを実現することが難しい |
事業会社が自社で直接スタートアップに投資する方法もあります。この方式の一般的なメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・スタートアップ投資のために新しいビークルを準備する必要がない ・事業会社が自ら投資先を選定して直接投資するため、スタートアップとの事業上のシナジーを得るという目的に適している | ・事業会社本体での意思決定を迅速に行うための事前準備が必要 ・CVC担当者の報酬を検討する際に、事業会社本体の報酬体系との整理性を図る必要が出てくる可能性 |
事業会社が親会社としてスタートアップ投資のための子会社(CVC子会社)を設立し、当該子会社を通じて投資を行う方法です。この方式の一般的なメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・事業会社本体の意思決定プロセスを経ることなく子会社内の手続で意思決定が可能 ・CVC担当者の人事・報酬について柔軟な制度設計が可能 ・CVC投資へのコミットメントを対外的に示しやすい | ・直接投資方式と比較すると、事業会社本体がスタートアップと連携をとりにくい ・子会社の設立・運営・清算等のコストがかかる。ただし、後述のファンドの組成・運用と比較するとシンプルな設計となる。 ・CVC子会社にも課税されるため二重の課税となる |
事業会社がGPとなってファンド(投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、任意組合、匿名組合等)を組成する方法です。典型的には、事業会社(有価証券残高が10億円以上の法人)が金融庁長官への届出により適格機関投資家(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令10条1項23号イ)となり、CVC子会社が適格機関投資家等特例業務の届出(金融商品取引法63条)を行うことにより、CVC子会社をGP(無限責任組合員)とし、事業会社をLP(有限責任組合員)とする投資事業有限責任組合を組成することがあります。この方式の一般的なメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・CVC子会社方式の税務上のデメリットに対応可能 ・自社がGPとなるため事業上のニーズを踏まえた投資先の選定が可能 | ・金融商品取引法上の運用・勧誘に関する行為規制、法定帳簿の作成・保存や事業報告の提出等の各種義務を負担することになる ・他社がLPとしてファンドに参加することも考えられるが、金融商品取引法における規制対応(投資家対応の負担)が生じる。限定されたファンドの運営期間内にリターンを実現させるという制約も生じる |
ファンドを組成するが事業会社ではなく他社(Venture Capital等)がGPとなる方法です。LP出資方式と類似しますが、この方法では、典型的には事業会社が唯一のLPとなってファンドを組成する方法を想定しています。この方式の一般的なメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・投資先の選定やファンド運用等について他社(VC)の知見を活用できる ・自社がGPとなるため事業上のニーズを踏まえた投資先の選定が可能 ・事業会社の事業上のシナジーが期待できるスタートアップに投資することが可能 | ・他社GPが事業会社のニーズを正確に理解して適切な投資先を選定するには、事業会社とGPが適切に意思疎通して関係を構築する必要 |
以上のとおり、事業会社がスタートアップ投資を行う際のスキームには様々なバリエーションがありますので、例えば以下のような要素を考慮して、自社が投資を行う目的や置かれた状況を踏まえて総合的に判断する必要があります。
検討要素 | 検討の方向性 |
スタートアップ投資に関する経験の程度 | 経験がそれほどない場合には、LP出資方式で知見を得たり、シンプルな手法である直接投資方式等の採用が考えられる |
事業上のシナジーを重視する程度 | 投資先のスタートアップとの事業上のシナジーを重視する場合には直接投資方式やCVC子会社方式、ファンド方式のうち自社GP方式の採用が考えられる。財務的リターンを重視する場合にはLP出資方式の採用が考えられる |
想定する投資金額の規模 | 投資金額が大きい場合には事業会社本体の意思決定を経ることになる直接投資方式の採用が考えられる |
想定する投資期間 | 非常に長期の投資を想定する場合には投資期間に制約のない方式(直接投資方式等)の採用が考えられる |
その他 | 子会社設立やファンドの設立・運営にかかる費用や税務上の負担等 |
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以 上