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2025.05.08

不動産特定共同事業の対象とすることができる不動産

<目次>
1. はじめに
2. 不動産特定共同事業の範囲
3. 「不動産」とは
(1) 田、畑、山林、原野、雑種地など
(2) 太陽光発電用地
(3) トレーラーハウス・コンテナハウス
(4) 海外不動産

1. はじめに

 近年、不動産クラウドファンディングを行う事業者が増加しており、その商品も多様となってきています。
 以下では、不動産クラウドファンディングで行われる不動産特定共同事業の対象とすることができる不動産について解説します。
なお、以下の意見にわたる部分は、執筆者の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではないことにご留意ください。

2. 不動産特定共同事業の範囲

 不動産クラウドファンディングにおいては、不動産特定共同事業法(以下「不特法」といいます。)第2条第4項第1号に係る事業(以下「1号事業」といいます。)及び同項第2号に係る事業(以下「2号事業」といいます。)が用いられる場合が多いと思われます。1号事業とは、「不動産特定共同事業契約を締結して当該不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う行為」を業として行うものをいい、2号事業とは、「不動産特定共同事業契約の締結の代理又は媒介をする行為」をいいます。不動産特定共同事業契約とは、不特法第2条第3項各号に掲げる契約をいいますが、概して、相手方からその財産の提供を受け、当該財産を不動産取引により運用し、それによって得られた収益等を分配する事業を行う契約といえます(不特法第2条第3項)。この点、このように金銭等の出資によって行われる事業から生じる収益等の分配を受ける権利は、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)において、原則として有価証券と定義されており(金商法第2条第2項第5号)、当該権利の売買や募集の取扱い等を業として行う場合、金商法の規制が適用されます。しかしながら、不動産特定共同事業契約に基づく権利は、有価証券から除外されており(金商法第2条第2項第5号ハ)(※1)、不特法によって規制されるものとされています。したがって、出資対象事業が「不動産取引」から生ずる収益等を分配する事業に該当するか否かは、適用される法律が金商法か不特法かという点において重要な判断要素の1つになります。

※1 但し、特例事業に係る権利及び電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示されるものは除外されていません。

3. 「不動産」とは

 不特法上、「不動産」とは、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)第2条第1号に掲げる宅地又は建物と定義されています(不特法第2条第1項)。
 宅建業法においては、「宅地」とは、建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法第8条第1項第1号の用途地域(※2)(以下「用途地域」といいます。)内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものと定義されています。この点、「建物の敷地に供せられる土地」とは、現在建物の敷地に供している土地のみならず、広く建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地も含まれると解されています。これをまとめますと以下のとおり整理できます。

土地の種類宅地該当性
用途地域内道路等の公共施設の用地非該当
上記以外の土地該当
用途地域外現に建物の敷地に供せられている土地該当
建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地該当
上記以外の土地非該当

 「建物」については、宅建業法上、特段定義規定は設けられていません。しかしながら、宅建業法では、「建物」は、一般に建築基準法(以下「建基法」といいます。)第2条第1号に規定される建築物と同じものと解されています。
 以下、具体的なものについて不動産特定共同事業の対象とすることができるか否か解説します。

※2 都市計画法第8条第1項第1号の用途地域とは、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域をいいます。

(1) 田、畑、山林、原野、雑種地など

 現況が、田、畑、山林、原野、雑種地などであっても、当該土地が用途地域内の土地であれば、道路などの公共施設の用地でない限り、「宅地」に該当し、不動産特定共同事業の対象となります(宅建業法第2条第1号後段)。
 また、当該土地が用途地域外の土地の場合、現に建物の敷地に供せられていなくとも、将来、建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地であれば「建物の敷地に供せられる土地」として「宅地」に該当します(宅建業法第2条第1号前段)。この場合、登記上の地目が宅地かどうかは問いません。したがって、農地や山林を宅地造成して建物を建築し運用する目的で購入する場合には、契約締結時の地目や現況が農地や山林のままであっても、「宅地」に該当し、不動産特定共同事業の対象となります。もっとも、「建物の敷地に供せられる土地」に当たるかどうかは、宅地としての区画割りの有無、区画街路の有無、電気・ガス・上下水道の施設状況、売却目的・購入目的、営業勧誘の内容、販売広告・パンフレットの表現、販売価格が宅地並みか、購入後の使用状況等を総合的に検討して判断する必要があるとされていますので、様々な事情を考慮し検討する必要があります。

(2) 太陽光発電用地

 上述のとおり、当該土地が用途地域内の土地であれば、道路などの公共施設の用地でない限り、「宅地」に該当し、不動産特定共同事業の対象となります(宅建業法第2条第1号後段)。
 他方、当該土地が用途地域にない場合、「建物の敷地に供せられる土地」に当たるかどうかが問題となります。この点、土地に自立して設置する太陽光発電設備については、太陽光発電設備自体のメンテナンスを除いて架台下の空間に人が立ち入らないものであって、かつ、架台下の空間を居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の保管又は格納その他の屋内的用途に供しないものについては、建基法第2条第1号に規定する建築物に該当しないものとされています(平成23年3月25日付け国土交通省住宅局建築指導課長通知(国住指第4936号))。このような態様の太陽光発電設備は「建物」には該当しないと解される可能性が高いものと考えられます。もっとも、太陽光発電設備付近に設備を管理するための施設が設置され、当該施設が建物に該当する場合もありえるため、具体的な事情に応じて判断していく必要があると考えます。
 また、上述のとおり、現に建物の敷地に供せられていなくとも、将来、建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地であれば「建物の敷地に供せられる土地」として「宅地」に該当します(宅建業法第2条第1号前段)。
 なお、太陽光発電用地が「宅地」に該当する場合であっても、発電事業を行い、売電収入を分配する事業は不動産取引から生ずる収益等を分配する事業には該当しないため、かかる事業は不動産特定共同事業の許可では行うことはできないと考えられます。したがって、太陽光発電用地を不動産特定共同事業の対象とする場合には、売電事業を行う企業等に当該用地を賃貸し、当該賃料収入を投資家に分配するといった事業を行うことになります。また、「建物」に該当しない太陽光発電設備については、民法上の動産と解されることになると思われますが、その場合には、当該太陽光発電設備を取得し、賃貸し、その賃料収益を分配することは不動産取引から生ずる収益等の分配に該当しないと思われますので、当該事業を不動産特定共同事業で行うこともできないものと考えられます。

(3) トレーラーハウス・コンテナハウス

 トレーラーハウスやコンテナハウスを不動産特定共同事業の対象とできるか否かはこれらが「建物」に該当するかが問題となります。この点、土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁があるもの並びにこれに類するものは、建基法第2条第1号に規定する建築物に該当します。「定着する」とは、必ずしも、物理的に強固に土地に結合された態様のみでなく、本来の用法上、定常的に定着された態様を含むとされています。また、コンテナについては、随時かつ任意に移動できないものについては、その形態及び使用の実態から建基法第2条第1号に規定する建築物に該当するものとされています(平成16年12月6日付け国土交通省住宅局建築指導課長通知(国住指第2174号))。以上からすると、トレーラーハウスやコンテナハウスについては、個別の事案に応じて判断する必要がありますが、随時かつ任意に移動できない態様のものについては、「建物」に該当する可能性が高いものと思われます。

(4) 海外不動産

 宅建業法第2条第1号の「宅地」とは外国の土地を含まないと解されています(東京高判昭和61年10月15日)。そうすると、不特法の不動産の定義が宅建業法上の「宅地及び建物」とされている以上、外国に所在する海外不動産は不動産特定共同事業の対象とできないとも思えます。しかしながら、国土交通省「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」第2-3(2)には、「法第2条第1項に規定する「不動産」には外国の不動産も含まれていることから(法第66条)、不動産取引の対象となる不動産が外国にある場合であっても、不動産特定共同事業契約から除外されるものではない」とされており、国土交通省は、外国の不動産も不特法第2条第1項の「不動産」に含まれ、不動産特定共同事業契約の対象となると解しているものと考えられます。

以上