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1. はじめに

 

不動産特定共同事業法(以下「法」といいます。)については、2013年の改正により倒産隔離型の不動産特定共同事業である特例事業が導入された後、2017年の改正によって、不動産クラウドファンディングの活用のための規定の整備のほか、小規模不動産特定共同事業の創設、特例投資家向け事業における約款規制の免除、特例事業における投資家の範囲拡大、適格特例投資家限定事業の創設がなされるなど、近時、実務に大きな影響を与える改正が行われてきました。

2019年3月29日、国土交通省(以下「国交省」といいます。)は、「未来投資戦略2018」(2018年6月15日閣議決定)を踏まえ、法及び法に基づく不動産クラウドファンディングの一層の活用促進等を図ることを目的として、不動産特定共同事業に関し、以下の施策を実施することを公表しました[1]

①「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」(以下「電子取引業務ガイドライン」といいます。)の策定

②不動産特定共同事業法施行規則(以下「規則」といいます。)の改正

③不動産特定共同事業への新設法人の参入要件の見直し

④不動産流通税の特例措置の延長・拡充

⑤特例事業者[2]の宅地建物取引業保証協会への加入解禁

本稿では、これらの施策の概要について述べます。

 

2. 各施策について

(1) 電子取引業務ガイドラインの策定について

電子取引業務ガイドラインは、不動産クラウドファンディングを実施しようとする者が備えるべき業務管理体制、取扱プロジェクトの審査体制及び情報開示項目を明確化することを目的として策定されました[3]

電子取引業務ガイドラインにおいては、①電子情報処理組織の管理(規則第54条第1号)、②適切な審査(規則第54条第2号)、③クーリング・オフ(規則第54条第3号)、④定期的な情報提供(規則第54条第4号)、⑤重要事項の閲覧(規則第55条)並びに⑥分別管理の徹底及び金銭の預託(規則第49条第2項)などについて、電子取引業務を行う不動産特定共同事業者又は小規模不動産特定共同事業者が遵守すべき内容が明確化されています[4]

電子取引業務ガイドラインは、2019年4月15日から適用が開始されています[5]

 

(2) 規則の改正について

今回の規則の改正は、不動産クラウドファンディングと対象不動産変更型契約(不動産の入替を行う不動産特定共同事業契約)を組み合わせることにより、個人等による長期・安定的な不動産クラウドファンディングへの参加を促進することを目的として行われました[6]

今回の規則の改正は、対象不動産変更型契約に係る規制の合理化を主な内容としていますが、その他にも、約款の内容の基準や契約成立前書面・契約成立時書面に記載すべき事項の改正なども行われていますので、留意する必要があります[7]

かかる規則の改正は、2019年3月29日に公布され、同年4月15日に施行されています。

 

(3) 不動産特定共同事業への新設法人の参入要件の見直し等について

「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」(以下「監督留意事項」といいます。)[8]の改正が行われ、クラウドファンディングを行う新設法人の不動産特定共同事業への参入要件が緩和されました[9]

不動産特定共同事業の許可の申請にあたっては、前事業年度における財産及び損益の状況が良好であることや、財産及び損益の状況が今後良好に推移することが見込まれることが審査され[10]、許可申請書の添付書類として、直前3年の各事業年度の計算書類の提出が必要とされています[11]。そのため、従前は、子会社を新設して不動産特定共同事業に参入することができるのか明らかではありませんでした。

この点、改正前の監督留意事項においても、財産的基礎の審査において、申請者の実績や実態等に即して実質的に判断することを妨げないとされていたところですが[12]、今回の監督留意事項の改正により、新設法人であっても不動産特定共同事業の許可を得ることができる例が明確化されました[13]

これにより、新設した子会社等による不動産特定共同事業への参入が活発化することが期待されます。

なお、監督留意事項については、その他、電子取引業務ガイドラインの策定や規則の改正を踏まえ、法や関係法令の解釈を明確化する内容の改正が行われています。

かかる監督留意事項の改正においては、「利害関係人」[14]の範囲や、不動産特定共同事業契約の解除や組合からの脱退の要件としての「やむを得ない事由」[15]など、これまでその解釈が必ずしも明らかでなかった点について国交省の考え方が示されたり[16]、契約成立前書面に、「契約の解除又は組合からの脱退に当たり事業参加者が出資の返還を受けることができる金額の計算方法及び支払方法」[17]として、事業参加者に償還する金銭を調達する方法を具体的に記載する必要があるとされるなど[18]、既存の不動産特定共同事業・小規模不動産特定共同事業に係る運用にも影響のある改正がなされていることに留意する必要があります。

かかる監督留意事項の改正は、2019年3月29日付けで行われ[19]、同年4月15日から適用されています[20]

 

(4) 不動産流通税の特例措置の延長・拡充について

特例事業者等に係る登録免許税・不動産取得税の特例措置について、2年間の延長が行われるとともに、登録免許税については、工事竣工後10年超のプロジェクトや借地上の建物についても特例の対象に追加されました[21]

すなわち、従前より、特例事業者、小規模不動産特定共同事業者、小規模特例事業者及び適格特例投資家限定事業者が、2019年3月31日までに不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる一定の不動産を取得した場合について、一定の要件の下、不動産流通税(登録免許税及び不動産取得税)の軽減特例措置が認められていましたが、今回、不動産特定共同事業を活用した民間不動産投資を一層推進するため、かかる特例措置の期限が2年間延長され、2021年3月31日までになるとともに、「対象不動産に係る工事の竣工後10年以内の譲渡」の要件の撤廃及び「土地及び建物」の取得要件の見直し(借地上の建物の追加)が行われました[22]

 

(5) 特例事業者の宅地建物取引業保証協会への加入解禁について

一定の要件を満たす特例事業者について、宅地建物取引業保証協会(以下「保証協会」といいます。)への加入が可能となりました[23]

特例事業者については、いわゆるみなし宅建業者として、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)第25条(第7項を除きます。)の適用があるため[24]、営業保証金1000万円[25]を最寄りの供託所に供託する必要があります。もっとも、特例事業者は、法第2条第4項第1号に掲げる行為を専ら行うことを目的とする法人である必要があり[26]、特例事業者は特別目的会社(SPC)であることが想定されています[27]。SPCごとに1000万円の保証金の供託をするとなると資金効率が悪くなりますので、かかる保証金の供託が特例事業の普及の妨げになっていたと考えられます。

今般、国交省と公益社団法人不動産保証協会及び公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会において、特例事業者が保証協会に加入できる方策を検討し、一定の要件を満たす特例事業者の保証協会への加入を認める措置がなされました[28]。かかる措置により、特例事業者は、保証協会に加入し、弁済業務保証金分担金60万円[29]を納付することで、営業保証金の供託を免れることができますので[30]、供託に関する経済的な負担が大幅に軽減されることになります。

かかる施策によって、特例事業を用いた不動産特定共同事業への参入や取組みが増加することが期待されます。

 

3. おわりに

以上のとおり、国交省の公表した施策は、不動産特定共同事業に関する法規制を明確化・合理化することで、不動産特定共同事業や不動産クラウドファンディングの利用を促進するためのものといえます。

近時の法に係る法令の整備及びかかる施策が相まって、不動産特定共同事業や不動産クラウドファンディングの普及が進み、個人の投資家向けの投資商品などの新たな市場が開拓され、不動産投資市場の成長につながることが期待されます。

 

 

以 上

 

[1] 国交省土地・建設産業局不動産市場整備課の2019年3月29日付プレスリリース「不動産クラウドファンディング 規制の明確化等により使いやすく~不動産クラウドファンディングに係るガイドラインの策定等~」(https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo05_hh_000169.html)(以下「本件プレスリリース」といいます。)。

[2] 「特例事業者」とは、法第58条第2項の規定による届出をした者、すなわち、特例事業を営むために、あらかじめ主務大臣へ特例事業開始の届出をした者をいいます(松本岳人『逐条解説 不動産特定共同事業法』(きんざい、2015年)30頁参照)。

[3] 本件プレスリリース。

[4] 本件プレスリリース別紙1。

[5] 電子取引業務ガイドライン第3項。但し、2019年4月15日において現に電子取引業務を行っていた不動産特定共同事業者又は小規模不動産特定共同事業者に対する適用時期は2019年7月15日であり、また、これらの者が同日より前に新たに許可又は変更認可を取得して電子取引業務を行う場合は、その許可又は変更認可を取得した日が適用時期になるとされています。

[6] 本件プレスリリース。

[7] 国交省土地・建設産業局不動産市場整備課「不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令案について(概要)」。

[8] 監督留意事項は、国交省のウェブサイトにおいて、「主務大臣が監督を行うに当たって指針としている事項」とされています(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000263.html)。

なお、金融庁は、監督留意事項と項目の番号を除き同内容の指針を「事務ガイドライン 第三分冊:金融会社関係 7不動産特定共同事業関係」として定めていますが、これについても監督留意事項と同様の改正がなされています(金融庁の2019年3月29日付プレスリリース「「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の改正について」(https://www.fsa.go.jp/news/30/20190329.html))。

[9] 本件プレスリリース。

[10] 法第7条第6号、規則第12条第1号。

[11] 規則第8条第2項第2号。

[12] 改正前の監督留意事項第3-2(2)。

[13] 本件プレスリリース別紙3、監督留意事項第3-2(2)②及び③。

[14] 規則第11条第2項第15号ホ(3)。

[15] 規則第11条第2項第7号。

[16] 監督留意事項第3-2(1)⑫、同第3-2(1)①。

[17] 規則第43条第1項第15号ハ。

[18] 監督留意事項第7-6(1)④。

[19] 国交省のウェブサイト(http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000272.html)。

[20] 本件プレスリリース別紙3。

[21] 本件プレスリリース。

[22] 本件プレスリリース別紙4。

[23] 本件プレスリリース。

[24] 宅建業法第77条の3第2項。

[25] 宅建業法第25条第2項、同法施行令第2条の4。

[26] 法第2条8項第1号。

[27] 松本岳人『逐条解説 不動産特定共同事業法』(きんざい、2015年)30頁。

[28] 本件プレスリリース別紙5。なお、具体的な要件等は各保証協会によって異なるとされています。

[29] 宅建業法第64条の9第1項、同法施行令第7条。

[30] 宅建業法第64条の13。