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事業を行う上で発生した不要な物について、単に廃棄物として処理または処理を委託するだけではなく、新たな製品としてリサイクルするための原料として処理または処理を委託することはよくあります。しかしながら、近時、産業廃棄物の不法投棄や土壌汚染の不適切な処理がなされるケース、その他数多くの不祥事が報道されています。

以下では、事業上発生した廃棄物をリサイクル目的で処理または処理委託する場合の実務的な留意点について、いわゆる「逆有償」問題を中心に解説します。

 

本ニューズレターは、2020年6月5日時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではないことに留意してください。また、本ニューズレター中意見にわたる部分は、執筆担当者ら個人の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではありません。

 

1. 廃棄物の処理に関する規制

(1) 廃棄物の定義

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、特に指定のない限り「法」または「廃棄物処理法」といいます。)において、「廃棄物」とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの」をいいます(法2条1項)。

事業活動に伴って生じた「廃棄物」のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物(ゴムくず、金属くず、ガラスくず、コンクリートくず等)を、「産業廃棄物」といいます(法2条4項)。

 

(2) 廃棄物処理法上求められる廃棄物の処理・処理委託

事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないとされ(法3条1項)、廃棄物の不法投棄は禁じられています(法16条)。

廃棄物処理法に違反して廃棄物を不法投棄した者は、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金か、これらの両方が科されます(法25条1項14号)。企業の場合には、3億円以下の罰金が科されます(法32条1項1号)。

自らが産業廃棄物の運搬または処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬および処分に関する基準に従わなければならないとされています(法12条1項)。他方、産業廃棄物の運搬または処分を他人に委託する場合には、政令で定める基準に従い、産業廃棄物収集運搬業者、産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならないとされています(法12条5項、6項)。

 

(3) 条例による規制 

なお、法律上の規制のほか、各事業所に適用される自治体の条例による規制がかかる可能性がありますので、留意すべきです。
 
2. リサイクルを目的とする廃棄物処理についての規制

廃棄物処理法においては、産業廃棄物の「再生」(廃棄物から原材料等の有用物を得ること、または処理して有用物にすること)も最終処分(埋立処分、海洋投入処分又は再生をいう。法12条5項)の一態様として挙げられていますので、再生されるまでの間は、上記と同様の規制を受けることになります。

この点については、後述の環境省の平成25年通知[1]において、「再生後に自ら利用又は有償譲渡が予定される物であっても、再生前においてそれ自体は自ら利用又は有償譲渡がされない物であることから、当該物の再生は廃棄物の処理であり、法の適用がある」と説明されています[2]

なお、特別法において、再生(再商品化、再資源化、再生利用)についての取扱いが定められている場合もあります。

 

(1) 容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)
「容器包装」とは、商品の容器及び包装であって、当該商品が費消され、又は当該商品と分離された場合に不要になるものをいう(2条1項)
(2) 家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)
「特定家庭用機器廃棄物」とは、特定家庭用機器が廃棄物となったものをいう(2条5項)
(3) 建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)
「建設資材廃棄物」とは、建設資材が廃棄物となったものをいう(2条2項)
(4) 食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)
「食品廃棄物等」とは、次に掲げる物品をいう(2条2項) ① 食品が食用に供された後に、又は食用に供されずに廃棄されたもの

② 食品の製造、加工又は調理の過程において副次的に得られた物品のうち食用に供することができないもの
(5) 自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)
「使用済自動車」とは、自動車のうち、その使用を終了したものをいう(2条2項)

 

3. 廃棄物処理法が適用される「不用物」かどうかの判断基準

事業者がリサイクルを目的として処理または処理委託をする対象物が、廃棄物処理法上の「不要物」なのか、そうではないのかは必ずしも明らかではありません。

この点については、参考となる行政解釈と裁判例があります。

 

(1) 廃棄物性についての行政解釈
ア.   厚生省の通知
昭和52年の厚生省通知[3]において、「廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきもの」であることが明確にされました。このような考え方を総合判断説といいます。

環境省の平成17年通知[4]・平成25年通知[5]においては、総合判断の内容について、詳細に規定されています(以下、抜粋等しています)。

– 廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものである
– 以下は各種判断要素の一般的な基準を示したものであり、物の種類、事案の形態等によってこれらの基準が必ずしもそのまま適用できない場合は、適用可能な基準のみを抽出して用いたり、当該物の種類、事案の形態等に即した他の判断要素をも勘案するなどして、適切に判断されたい

ア 物の性状
利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境の保全上の支障が発生するおそれのないものであること

イ 排出の状況
排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や品質管理がなされていること

ウ 通常の取扱い形態
製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと

エ 取引価値の有無
占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること
実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること

オ 占有者の意思
客観的要素から社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思として、適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思が認められること、又は放置若しくは処分の意思が認められないこと。
なお、占有者と取引の相手方の間における有償譲渡の実績や有償譲渡契約の有無は、廃棄物に該当するか否かを判断する上での一つの簡便な基準に過ぎない

 
イ. 「逆有償」の問題
実務上特に問題となるのは、上記ウやエの点です。

廃棄物(不要物)といえるのかどうかの判断基準に関し、対象物(産業廃棄物であるかどうかが問題となっている物)を第三者に有償で売却していても、当該第三者の支払う輸送料や引取料の方が高額な場合は、廃棄物(不要物)とみるとする「逆有償」という考え方があります。

この考え方は、たとえば、リサイクル製品・再生製品(例:再生砂・改良土)を10万円で販売していたとしても、その輸送料や引取料が20万円だった場合、当該製品の販売者は購入者に対してその差額の10万円で当該製品を引き取ってもらっている(不要なものとして処理してもらっている)のと変わりないという発想に基づくものです。

逆有償の考え方は、行政実務においても採用されています[6]

 

(2) 判例の考え方(特に「逆有償」の問題に関して)

裁判例において、廃棄物(不要物)といえるのかどうかについて判断がなされたリーディングケースにおいては、「『不要物』とは、自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物をいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当」であると判断しています(最高裁第2小法廷決定平成11年3月10日・判例タイムズ999号301頁)。

前記の行政解釈はこの最高裁判所の判断に従っているようにも見えますが、実際には必ずしも同一でないと考えられます。実際にも、裁判所は、行政庁の解釈を尊重するとは考えられるものの、あくまで裁判所の解釈に従って判断するため、事案によっては行政庁と異なる判断をする可能性もあります。

たとえば、下記の裁判例では、行政解釈とは異なる判断があり得る(逆有償であっても直ちに廃棄物(不要物)と判断されるわけではない)ことを示しています。
● 「再生利用を予定する物の取引価値の有無ないしはこれに対する事業者の意思内容を判断するに際しては、有償により受け入れられたか否かという形式的な基準ではなく、当該物の取引が、排出業者ないし受入れ業者にとって、それぞれの当該物に関連する一連の経済活動の中で価値ないし利益があると判断されているか否かを実質的・個別的に検討する必要があると解される。」(水戸地裁判決平成16年1月26日・判例秘書L05950124)、

●「廃棄物に該当するかの判断における有償譲渡可能性の要件については、他の合理的な理由がある場合等においては、絶対的、画一的な基準ということまではいえず、その可能性があるという程度でも足りると考えられ、又は、総合判断における一事情としての考慮要素とすれば足りると解するのが相当である。」(名古屋高裁判決平成17年3月16日・LEX/DB28105236)

4. 不適切な廃棄物処理・処理委託を行った場合の法的リスク

法令に従った適切な処理を行わなかった場合には、行政処分を受けるほか刑事責任を問われる可能性があります(前記2(2)参照)。

その他、取締役その他の役員は、これによって当該企業が被った損害について賠償する責任を負うこともあります[7]

実際にも、廃棄物のリサイクル製品(埋戻し材)について成分を偽装して認定を受けたうえで販売・不法投棄したケースで、株主代表訴訟が提起された例があります。第1審は、元役員ら3名の責任を認め、そのうち1名に対しては請求額のほぼ全額である485億8400万円の支払いを命じました(大阪地裁平成24年6月29日判決・裁判所ウェブサイト)。

 

5. リサイクルを目的とする廃棄物処理の実務上の留意点

産業廃棄物にあたるかどうかは、都道府県や政令市の個別判断に委ねられている面があり、必ずしも明確ではありません。また近時、環境法令をはじめとして関係法令やガイドライン・業界指針がめまぐるしく改定されていますが、適切なアップデートがなされないと、少し前までは問題がなかった(=適法であった)にもかかわらず、法令違反とされてしまうことがあります。

実際にも、ある自治体や官庁から処理について問題ない旨の見解が提示されたにもかかわらず、他の自治体や官庁・捜査機関から当該見解に従った処理が違法であると指摘され、処分までなされるケースも見られることに特に注意が必要です(京都市内に本店を置く産廃処理会社が、土砂の混合物を汚泥とともに固化処理した再生製品を宅地造成地に使用していたところ、当該製品は産業廃棄物であるとして、同社社長が廃棄物処理法違反容疑で京都府警に逮捕された事案)[8]

そのため、リサイクルを目的とする廃棄物処理を行うにあたっては、環境有害物質や産業廃棄物の処理の規制の対象となるのか、どのような規制がかかるのか等、法的な判断が難しいものについては、最新のガイドライン・通知や規制動向・裁判例も踏まえて慎重に検討のうえで、必要に応じて適切に弁護士その他の専門家の意見を踏まえて対応することが必要となります[9]

以 上

[1] 平成25 年3月29 日環廃産発第1303299 号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知『行政処分の指針について(通知)』

[2] 大阪府ウェブサイト『廃棄物処理法の対象となる廃棄物か?(FAQ)』
http://www.pref.osaka.lg.jp/jigyoshoshido/report/faq_2.html》なども同旨。

[3] 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正について」(昭和52 年3月26 日環計第37 号厚生省環境衛生局水道環境部計画課長通知)

[4] 平成17年7月25日環廃産発第050725002号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知『建設汚泥処理物の廃棄物該当性の判断指針について』

[5] 平成25 年3月29 日環廃産発第1303299 号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知

[6] 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長「『規制改革・民間開放推進三か年計画』において平成16年度中に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について」(平成17年3月25日環廃産発1303299)。大阪府ウェブサイト『廃棄物処理法の対象となる廃棄物か?(FAQ)』《http://www.pref.osaka.lg.jp/jigyoshoshido/report/faq_2.html》なども同旨。

[7] 猿倉健司『産業廃棄物の不法投棄事案から考える、不正発覚後の対応・再発防止策策定のポイント』(BUSINESS LAWYERS 【連載】近時の不祥事ケースと危機管理・リスク予防 第2回)《https://www.businesslawyers.jp/articles/503》

[8] 猿倉健司『Business Lawyers実務解説Q&A 環境有害物質・廃棄物の処理について自治体・官庁等に対する照会の注意点』(BUSINESS LAWYERS 実務解説 Q&A)《https://www.businesslawyers.jp/practices/1238》

[9] 井上治・猿倉健司『Business Lawyers実務解説Q&A 所有地から発見された石綿(アスベスト)に関する法令上の規制』(BUSINESS LAWYERS 実務解説 Q&A)《https://business.bengo4.com/category14/practice501》、井上治・猿倉健司『Business Lawyers実務解説Q&A 所有地にPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物がある場合にとるべき対応』(BUSINESS LAWYERS 実務解説 Q&A)《https://business.bengo4.com/category13/practice482