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2023.07.26

企業法務の観点から注目される最近の主な裁判例(2023年7月号)

牛島総合法律事務所 訴訟実務研究会

<目次>
1. 商事法
2. 民事法・民事手続法
3. 労働法
4. その他(知的財産法・経済法・税法等)

裁判所ウェブサイトや法務雑誌等で公表された最近の裁判例の中で、企業法務の観点から注目される主な裁判例を紹介します(2023年7月)。

7月に下された2件の最高裁判例が世間の注目を集めています。

下記3(1)は、定年退職後の再雇用の際の基本給の減額について、最高裁が、基本給の性質や目的を踏まえて引き下げの合理性を評価すべきだとする初めての判断を示したものであり、今後、差戻審で具体的にどのような判断がなされるかも含め、企業の実務に大きな影響を与えるものと考えられます。

下記4(1)は、トランスジェンダーの経産省職員に対する職場の女性用トイレの使用制限を巡り、最高裁が、国の対応は違法であるとして使用制限を認めない判断を示したものであり、性的マイノリティーの職場環境に関する公的機関や企業の対応にも影響を与えるものと考えられます。

1. 商事法

(1) 福岡高判令和4年12月27日(金融・商事判例1667号16頁)

丙株式会社の前任の代表取締役の甲が、退任後に丙から退職慰労金の支給を受けることができなかったのは後任の代表取締役の乙が善管注意義務ないし忠実義務に違反して甲に対する退職慰労金の支給に関する議題を株主総会に付議しなかったことによるものであるなどと主張して、乙に対し、丙の役員退職慰労金規定に従って算定した退職慰労金相当額4,536万円ならびにこれに対する遅延損害金の支払いを求める請求を棄却した第1審判決が控訴審において取り消され、控訴審で拡張された同請求を同規定を考慮して算定した退職慰労金相当額1,000万円および弁護士費用相当額100万円の合計1,100万円ならびにこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度で認容した事例

(2) 大阪高決令和4年7月21日(金融・商事判例1667号30頁)〔三ッ星新株予約権無償割当差止仮処分命令申立事件〕

差別的な行使条件および取得条項が付された新株予約権の無償割当てが著しく不公正な方法によるものであるとして、新株予約権の当該無償割当てが仮に差し止められた事例

(3) 東京高判令和4年7月21日(金融・商事判例1669号24頁)

譲渡制限株式贈与の事実があり、その贈与は詐欺によるものではなく、当該株式の譲渡が会社との関係でも有効であるとされた事例

(4) 大阪高判令和4年3月24日(金融・商事判例1668号39頁)

いわゆるデッドロックの状態にある閉鎖会社において、株式会社の解散請求に係る会社法833条1項1号所定の事由が認められないとされた事例

2. 民事法・民事手続法

(1) 東京高判令和4年12月8日(金融・商事判例1670号36頁)

分譲マンションの販売業者が顧客から手付金を取得した後、その保全措置を講ずることなく代表者の個人資産の確保のために費消して、その後に破産手続開始決定を受けた場合に、手付金に関する債務を保証した者との関係で、販売業者の代表者による「悪意で加えた不法行為」(破産法253条1項2号)が成立すると判断された事例

(2) 大阪地判令和4年11月24日(金融・商事判例1670号44頁)

民事再生手続開始後の脱退により生じた信用組合に対する出資金返戻請求権を受働債権とする相殺が民事再生法92条1項により許容されないとされた事例

(3) 大阪地判令和4年11月17日(金融法務事情2211号38頁)

1 ループを形成する操作コードの付属した上げ下げロール網戸につき、製造物責任法3条の「欠陥」があるとは認められないとされた事例
2 リフォーム工事の請負契約等につき、特定商取引に関する法律26条6項1号の請求訪問販売に該当せず、契約締結の際に交付された書面は同法5条の書面に該当しないと認め、クーリングオフによる解除の主張が権利の濫用に当たらないとして、請負契約等の解除が認められた事例

(4) 東京地判令和4年10月28日(判例時報2555号15頁、裁判所ウェブサイト

1 人の肖像を無断で使用する行為が肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となる場合
2 路上で人物を撮影した動画を同人に無断でYouTubeに投稿する行為が肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となるとされた事例

(5) 最一判令和4年10月6日(金融法務事情2212号80頁、裁判所ウェブサイト

マンション建替事業の施行者がマンションの建替え等の円滑化に関する法律76条3項に基づく補償金の供託義務を負う場合において、上記補償金の支払請求権に対して複数の差押命令が発せられて差押えの競合が生じたときに上記施行者がすべき供託

(6) 最一決令和4年10月6日(判例時報2552号16頁、裁判所ウェブサイト

民事執行法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることの許否

(7) 名古屋地判令和4年10月5日(判例タイムズ1508号183頁、裁判所ウェブサイト

1 書証として提出された電磁的記録について、裁判所が、デジタルデータそのものを解析し、その結果を踏まえて、当事者に対して釈明を求めた事例
2 民事訴訟における当事者の訴訟追行態度を慰謝料及び訴訟費用の算定に際して考慮した事例

(8) 東京地判令和4年7月19日(判例時報2552号44頁、裁判所ウェブサイト

1 人の肖像を無断で使用する行為が肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となる場合
2 著名人を被写体とする写真を同人に無断で週刊誌に掲載する行為が肖像権を侵害するものではなく不法行為法上違法とはいえないとされた事例

(9) 大阪地判令和4年6月23日(判例タイムズ1508号195頁、裁判所ウェブサイト

コンビニエンスストア本部によるフランチャイズ契約の解除は、加盟店側の異常な接客対応やSNS上での本部に対する誹謗中傷を理由とするものであり、加盟店側が時短営業(非24時間営業)を強行したことを理由とするものではなく、優越的地位の濫用にも当たらないとして、建物の引渡し及び約定の損害賠償金等の支払を求める本部側の請求を認容し、契約上の地位確認等を求める加盟店側の請求を棄却した事例

(10) 大阪高判令和4年5月27日(判例タイムズ1508号54頁)

両替機管理運営委託契約に基づき受託者が両替機内から回収し保管していた金員について、金銭の所有権者は占有者と一致すると解されるから、委託者が当該保管金の所有者ということはできず、委託者が両替準備金を振り込んだ口座は受託者の他の業務のためにも用いられており、振り込まれた両替準備金は他の金銭と混然一体となっていた等という事情のもとでは、両替準備金が信託財産であるとも認められないとされた事例

(11) 東京地判令和4年3月31日(金融法務事情2213号48頁)

他社株償還可能債(EB債)の販売に際し、証券会社の社員が、顧客に対して、EB債のリスクを適切に理解し、自己責任をもって投資することができる程度に説明を尽くさなかったとして、証券会社に不法行為責任が認められた事例

3. 労働法

(1) 最一判令和5年7月20日(裁判所ウェブサイト)〔定年後再雇用の基本給格差訴訟〕

無期契約労働者と有期契約労働者との間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違の一部が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断に違法があるとされた事例

(2) 仙台高判令和5年1月25日(労働判例1286号17頁)〔国立大学法人東北大学(雇止め)事件〕

雇用通算期間8年の時間雇用職員の雇止めの適法性

(3) 東京高判令和4年11月29日(労働判例1285号30頁)〔国・札幌中央労基署長(一般財団法人あんしん財団)事件〕

療養補償給付支給処分等の取消訴訟における事業主の原告適格

(4) 東京地判令和4年11月16日(労働判例1287号52頁)〔アイ・ディ・エイチ事件〕

在宅勤務者に対する懲戒処分・出社命令等の有効性

(5) 東京高判令和4年8月19日(判例時報2552号92頁)

1 職場内での社員同士の諍いの際に上司に発した言葉について口頭による退職の意思表示と認めなかった事例
2 職場内での私的な話題を契機に他の社員から受けた暴行について使用者責任を否定した事例
3 事業主が社員の厚生年金の加入手続を一定期間しなかったために生じた将来の年金受給額の逸失利益の賠償請求につき、その額の立証が著しく困難であるとして民事訴訟法248条を適用して相当な損害額を認定した事例

(6) 大阪地判令和4年4月28日(労働判例1285号93頁)〔吉永自動車工業事件〕

最低賃金額を下回る条件の賃金債権放棄合意の効力等

(7) 東京地判令和4年4月22日(労働判例1286号26頁)〔Ciel Bleuほか事件〕

就業規則のない会社における賃金減額・配転命令の成否等

(8) 福岡地判令和4年3月18日(労働判例1286号38頁)〔国・北九州東労基署長(TOTOインフォム)事件〕

過去にトラブルのあった上司との業務による心理的負荷

(9) 東京地判令和4年1月18日(労働判例1285号81頁)〔国・所沢労基署長(埼九運輸)事件〕

給付基礎日額の算定における固定残業代の有効性

(10) 広島高判令和21225日(労働判例128668頁)〔田中酸素(継続雇用)事件〕

継続雇用拒否の適法性と労働条件

4. その他(知的財産法・経済法・税法等)

(1) 最三判令和5年7月11日(裁判所ウェブサイト)〔経産省トイレ利用制限訴訟〕

生物学的な性別が男性であり性同一性障害である旨の医師の診断を受けている一般職の国家公務員がした職場の女性トイレの使用に係る国家公務員法86条の規定による行政措置の要求を認められないとした人事院の判定が違法とされた事例

(2) 東京地判令和4年10月28日(判例時報2554号92頁、裁判所ウェブサイト

1 競争関係にある者が、裁判所が知的財産権侵害に係る判断を示す前に当該判断とは異なる法的な見解を事前に告知し又は流布する場合に、当該見解は、不正競争防止法2条1項21号にいう「虚偽の事実」に含まれるか(積極)
2 特許権を侵害している旨の通知書を送付した行為が、不正競争防止法2条1項21号にいう不正競争行為に該当するとされた事例

(3) 知財高判令和4年3月29日(判例時報2553号28頁、裁判所ウェブサイト

データの書換制限をした電子部品を取り付けたトナーカートリッジを製造販売していた複写機メーカーが、当該電子部品を取り換えた再生トナーカートリッジを製造販売していたリサイクル事業者に対して、特許権侵害による差止め、廃棄、損害賠償を請求した事案において、特許権の行使は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に抵触するものとはいえず、権利濫用に当たらないとして、請求を認容した事例

(4) 東京地判令和31029日(判例時報255255頁)

上場企業の株式買付けの時には未だ当該上場企業の業務執行を決定する機関が業務上の提携を行うことについての決定をしたとは認められないとして、当該株式買付けがインサイダー取引に当たるとしてされた課徴金納付命令が取り消された事例

(5) 東京地判令和385日(判例時報255275頁)〔世紀東急工業(アスファルト合材)事件〕

不当な取引制限(価格カルテル)に係る課徴金納付命令の算定基礎となった対象商品について、違反行為を行った事業者が明示的又は黙示的に違反行為の対象から除外するなど当該商品が違反行為による相互拘束から除外されていることを示す特段の事情は認められないとされた事例

以 上

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