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2023.12.20

特設注意市場銘柄制度の概要と上場会社の内部管理体制等の改善の実効性向上に向けた見直し

<目次>
1. 経緯等
2. 特設注意市場銘柄制度の概要について
3. 本見直し等の背景
4. 本見直し等の概要について
5. 実務への影響について

1.経緯等

2023年10月26日から同年11月25日まで、株式会社東京証券取引所(以下「東証」といいます。)により「上場会社の内部管理体制等の改善の実効性向上に向けた特設注意市場銘柄制度の見直し等について」(以下「本見直し等」といいます。)のパブリックコメント手続きが実施されました。本見直し等は、特設注意市場銘柄制度について、指定期間の短縮等の見直しが行われた2013年以降の状況を踏まえ、証券市場の更なる信頼性向上のために、上場会社の内部管理体制等の改善の実行向上に向けて、所要の制度整備を行うものです。2024年1月を目途に実施される予定となっております。

なお、札幌証券取引所及び福岡証券取引所においても、同様の見直しが行われる予定で、パブリックコメント手続きが実施されております。

以下においては、特設注意市場銘柄制度の概要を確認するとともに、本見直し等の概要及び実務への影響について解説いたします。

2. 特設注意市場銘柄制度の概要について

東証は、上場会社について、有価証券報告書等の虚偽記載、監査報告書等の不適正意見、適時開示に係る規程違反、上場契約違反等の事由があり、かつ、当該上場会社の内部管理体制等について改善の必要が高いと認めるときは、当該上場会社が発行者である上場株券等を特設注意市場銘柄に指定することとしております。

「内部管理体制等の改善の必要性」が高いかどうかの確認は、虚偽記載または不適正意見等の原因となった行為(取引スキームや手口又は手法等)や会社関係者の関与状況(組織的に行われていたかどうか等)、内部管理体制等の整備・運用の状況(適切な規程類に従った社内手続が行われていたか等)等を総合的に考慮して行われるとされています(東証「特設注意市場銘柄の積極的な活用等のための上場制度の見直しについて」)。

特設注意市場銘柄に指定されている場合には、その指定期間中、ノンコミットメント型ライツ・オファリングに係る新株予約権証券の上場が公益又は投資者保護の観点から適切でないとされているほか、再度不適切な会計処理が判明するなどして過去に訂正した過年度の決算短信の再度の訂正を行った場合に上場契約違約金の適用対象となりうるとされております。

特設注意市場銘柄へ指定されている上場株券等の発行者である上場会社は、当該指定から1年経過後速やかに、内部管理体制の状況等について記載した「内部管理体制確認書」を提出することが義務付けられます。この「内部管理体制確認書」は、「新規上場申請のための有価証券報告書(IIの部)」に準じて作成することが義務づけられています。東証は、上場会社より提出された内部管理体制確認書の内容等に基づき審査を行い、内部管理体制等に問題があると認められない場合には、その指定の解除を行うこととしています。

なお、特設注意市場銘柄に指定された上場会社につき、その内部管理体制等について改善の見込みがない、改善の見込みがなくなった、又は改善がなされなかったと取引所が認める場合には、当該上場会社は上場廃止となります。

3. 本見直し等の背景

東証は、現在の特設注意市場銘柄制度において以下の事例が生じていることから、所要の制度整備を行うものとしています。

  • 2013年の見直し以降に特設注意市場銘柄へ指定された銘柄の状況をみると、内部管理体制等の改善は従前よりは早期に完了している傾向にありますが、体制整備すら未了のまま1年経過後の審査を迎え、指定を継続する事例
  • 解除審査の時点においては、内部管理体制等の改善が認められるものの、事業の継続性や収益性等の問題により、今後においても、整備された内部管理体制等が維持され、適切に運用されるかどうかについて継続的な確認が必要と考えられる事例

4. 本見直し等の概要について

(1) 特設注意市場銘柄制度の見直し

① 指定解除要件の明確化

現在は、内部管理体制等に問題があると認められない場合に指定を解除することとされておりますが、本見直し等により、内部管理体制等が適切に整備及び運用されていると取引所が認める場合に、指定を解除することが明確化されます。

② 整備に係る期間の厳格化

現在は、指定から1年経過後の審査において、内部管理体制等が適切に整備されていると認められない場合であっても、今後の改善の見込みがなくなったと東証が認める場合を除き、6か月指定を継続することとされております。本見直し等により、内部管理体制等の整備に係る期間が1年に厳格化され、1年以内に内部管理体制等が適切に整備されていると認められない場合には、上場を廃止されることとなります。

なお、本見直し等の後も、指定から1年経過後の審査において、内部管理体制等が適切に整備されているものの、適切に運用されていると認められない場合は、2回目の審査まで、指定を継続できる点に変更はないとされておりますが、2回目の審査については、1年経過後の審査による指定継続後に到来する事業年度の末日から3か月以内に、上場会社が提出する内部管理体制確認書に基づき行うこととされております。

③ 経過観察期間の新設

現在は、審査時点で内部管理体制等に問題があると認められない場合には、指定が解除されることとなっておりますが、2回目の審査までに内部管理体制等が適切に整備及び運用されていると認められた上場会社のうち、(a)事業の継続性及び収益性が確保されていると認められない場合及び(b)上場維持基準に適合していない場合には、最長で3事業年度の間、指定を継続し、内部管理体制等の整備・運用状況について継続的に審査が行われることとなります。

④ その他

現行の「特設注意市場銘柄」について、「特別注意銘柄」へ呼称が変更されます。

取引所は、指定が解除された上場会社に対して、指定解除から5年が経過するまでの間、改善状況報告書の提出を求めることができることとなります。

  (2) その他

スタンダード市場への市場区分の変更審査に関しては、そのコンセプトを踏まえればプライム市場やグロース市場への市場区分の変更審査と比較して相対的に確認項目が少なく、会社としての実績も考慮可能であることから、審査プロセスの円滑化の一環として、上場プライム市場又はグロース市場の上場会社がスタンダード市場への市場区分の変更を行おうとする場合には、幹事取引参加者による上場適格性調査を受けていなくても、当取引所による市場区分の変更審査の対象とされることとなるほか、その他所要の改正を行うこととされております。

5. 実務への影響について

これまでも、特設注意市場銘柄に指定された上場会社は、内部管理体制等について新規上場申請に準じる審査を受ける必要があり、審査期間内に内部管理体制等に改善が認められないと判断された場合には上場廃止となるとされておりましたが、内部管理体制等の整備について、今後は審査期間について6か月間の指定の継続がされないことで、審査期間が実質的に1年6か月から1年に短縮されることとなります。

また、最長3事業年度の経過観察期間が新設されるほか、指定解除から5年が経過するまでの間、東証が改善状況報告書の提出を求めることが可能となりますので、今後、有価証券報告書等の虚偽記載等により特別注意銘柄に指定された場合、対応がこれまでよりも長期間にわたるおそれがあります。

そのため、上場会社においては、虚偽記載等の不祥事を予防することの重要性をより一層認識する必要があります。

また、今後、特別注意銘柄に指定された上場会社は、特別注意銘柄が将来の上場廃止の可能性を留保した措置であることを十分理解し、指定期間内に早期に内部管理体制等を改善することが求められることに、より一層留意する必要があります。

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