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事務所概要・アクセス
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<目次>
1. はじめに
2. 化学物質管理体系の見直しについての改正点
(1) リスクアセスメント対象物・事業者の義務の拡大
(2) その他の規制について
3. 化学物質管理に係る実施体制の確立
(1) 化学物質管理者の選任の義務化
(2) 労働者の教育
4. 情報伝達の強化
5. 第三管理区分の事業場に対する措置の強化
(1) 第三管理区分に区分された場合の義務
(2) 改善困難と判断した場合、または濃度測定評価の結果が第三管理区分に区分された場合の義務
(3) 前記(2)の事業場の評価結果が改善するまでの間の義務
6. 罰則
7. まとめ
国内で輸入、製造、使用されている化学物質の種類の増加や化学物質を原因とする労働災害増加等の状況を踏まえ、新たな化学物質規制の制度の導入等を内容とする労働安全衛生法(以下「安衛法」といいます。)の改正法(労働安全衛生規則(以下「安衛則」といいます。)、労働安全衛生法施行令(以下「安衛令」といいます。)を含む。)が令和4(2022)年5月31日に公布され、段階的に施行されることとなりました。かかる段階的施行は、令和6(2024)年4月1日にも行われることになっています(以下令和4(2022)年5月31日に公布された労働安全衛生規則を「改正安衛則」、労働安全衛生法施行令を「改正安衛令」といいます。)。
以下は、改正の内容について、特に重要と思われるポイントのみに絞って紹介します。
※厚生労働省ウェブサイト「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について~労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号(令和4年5月31日公布))等の内容~」
※厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法の新たな化学物質規制」
規制項目 | 本稿該当箇所 | |
---|---|---|
化学物質管理体系の見直し | ラベル表示・通知をしなければならない化学物質の追加 | 2(1) |
ばく露を最小限度にすること(ばく露を濃度基準値以下にすること) | 2(1) | |
ばく露低減措置等の意見聴取、記録作成・保存 | 2(1) | |
皮膚等障害化学物質への直接接触の防止(健康障害を起こすおそれのある物質関係) | 2(2) | |
衛生委員会付議事項の追加 | 2(2) | |
化学物質労災発生事業場等への労働基準監督署長による指示 | 2(2) | |
リスクアセスメントに基づく健康診断の実施・記録作成等 | 2(2) | |
実施体制の確立 | 化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任義務化 | 3(1) |
雇入れ時等教育の拡充 | 3(2) | |
情報伝達の強化 | SDS等による通知事項の追加および含有量表示の適正化 | 4 |
第三管理区分事業場の措置強化 | 5 |
安衛法においては、①化学物質についてのラベル表示・安全データシート(以下「SDS」(※)といいます。)等による通知義務、②「リスクアセスメント対象物」(安衛法57条の3条に基づきリスクアセスメントの実施が義務付けられている危険・有害物質)に暴露される濃度の低減措置の実施義務が課されています。
※SDSとは、安全データシート(Safety Data Sheet)の略語であり、化学物質および化学物質を含む混合物を譲渡または提供する際に、その化学物質の物理化学的性質や危険性・有害性および取扱いに関する情報を、化学物質等を譲渡または提供する相手方に提供するための文書をいいます。
本改正により、①について、ラベル表示・通知をしなければならない化学物質の追加(安衛法57条および57条の2、ならびに、改正安衛令18条および別表第9)、また、②について、「リスクアセスメント対象物」に関する事業者の義務の追加が行われました。
上記①については、ラベル表示、SDS等による通知とリスクアセスメント実施の義務の対象となる物質に234物質が追加されました。
また、上記②の事業者の義務としては、
(a)労働者が、「リスクアセスメント対象物質」にばく露される程度を、一定の方法(代替物の使用等)によって最小限度にする義務(改正安衛則577条の2第1項)、
(b)屋内作業場で労働者が、「濃度基準値設定物質」(一定程度のばく露に抑えることで労働者に健康障害を生ずるおそれがない物質として厚生労働大臣が定める物質)にばく露される程度を、厚生労働大臣が定める濃度の基準(濃度基準値)以下とする義務(改正安衛則577条の2第2項)、
(c)(a)および(b)の実施に伴う労働者の意見聴取、記録作成・保存義務(改正安衛則577条の2第10項および同条11項)
が追加されています。
なお、令和5(2023)年4月1日に施行された改正内容として、リスクアセスメントの結果と健康障害を防止するための措置の内容等を労働者に周知し、記録を作成し一定期間保存することが求められることになりましたので、あわせて確認してください。
上記(1)以外にも、③皮膚等に健康障害を起こすおそれのある物質の取扱い等に労働者を従事させる際の障害等防止用保護具の使用義務(改正安衛則594条の2。令和5(2023)年4月1日に一部施行済み。)、④衛生委員会の付議事項の追加(改正安衛則22条11号。令和5(2023)年4月1日に一部施行済み。)、⑤がん等の遅発性疾病の把握強化措置の実施義務(安衛則97条の2。令和5(2023)年4月1日に施行済み。)、⑥労働基準監督署長による改善指示がなされた場合の報告・改善措置実施義務(改正安衛則34条の2の10)、⑦リスクアセスメントの結果に基づく健康診断の実施および診断記録の保存義務(改正安衛則577条の2第4項および同条5項)、および、⑧がん原性物質の作業記録の保存(改正安衛則577条の2第3項。令和5(2023)年4月1日に施行済み。)等、様々な改正がなされており、注意が必要です。
本改正により、業種や規模の大小にかかわらず、「リスクアセスメント対象物質」を製造、取扱い、または譲渡提供をする事業場については、化学物質に関わるリスクアセスメントの実施管理等を行う、化学物質管理者の選任が義務化されました(改正安衛則12条の5)。選任要件としては、「化学物質の管理に関わる業務を適切に実施できる能力を有する者」とされており、リスクアセスメント対象物を製造する事業場においては専門的講習を受けた者またはこれと同等以上の能力を有すると認められる者を選任する必要があります(同条3項2号イ)。
なお、化学物質管理者とは別途、保護具着用管理責任者の選任も義務化された(改正安衛則12条の6)ことから、注意が必要です。
改正前においては、雇入時等において実施する教育のうち、特定の業種では一部教育項目の省略が認められていました(安衛法59条1項、安衛則35条1項柱書但書)。しかし、本改正により、当該省略規定が廃止され、危険性・有害性のある化学物質を製造し、または取り扱う全ての事業場で、化学物質の安全衛生に関する必要な教育を行わなければならなくなりました(安衛法59条1項、改正安衛則35条1項)。
また、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者に対し、安全衛生教育(いわゆる職長教育)を行う義務が課されていますが、当該義務を負う対象業種に、以下①および②の業種が追加されました(安衛法60条、改正安衛令19条)。
① 食料品製造業
② 新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業
安衛法においては、労働者に危険もしくは健康障害を生ずるおそれのある物として定められる物を譲渡または提供する際に、かかる物の①名称、②成分およびその含有量、③物理的および化学的性質、④人体に及ぼす影響、⑤貯蔵または取り扱い上の注意、⑥流出その他の事故発生時に講ずべき応急の措置等の事項を通知する義務が課されています(安衛法57条の2第1項)。そして、かかる事項を通知するためにSDS(※)が用いられています。
改正法においては、SDSの通知事項に新たに、「(譲渡提供時に)想定される用途および当該用途における使用上の注意」が追加されました(改正安衛則24条の15第1項10号)。
また、SDSの通知事項である成分の含有量の記載について、従来は10%刻みでの記載方法でしたが、重量パーセントの記載が必要となります(改正安衛則34条の2の6)。
なお、令和5(2023)年4月1日に施行された改正内容として、SDS等の通知事項である「人体に及ぼす作用」の内容の定期的な確認・見直し・通知が求められ、また、ラベル表示対象物を他の容器に移し替えて保管する場合なども内容物の名称や危険性・有害性情報を伝達することが求められることになったため注意してください。
安衛法においては、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて作業環境測定を実施することが求められますが(安衛法65条)、作業環境測定の評価結果が第三管理区分(※)に区分された場合の義務が課されていました。
本改正においては、以下のとおり、規制内容が強化されています。
具体的には、作業場が第三管理区分に指定された場合、新たに、改善の可否について作業環境管理専門家(日測協認定オキュペイショナルハイジニスト、作業環境測定インストラクターのうち日測協が定める講習を修了した者、作業環境測定士)の意見を聴くことが求められるようになりました。また、かかる作業環境管理専門家の意見に基づき、改善措置の実施や呼吸用保護具の着用が義務付けられることとなりました。以下、詳しくご説明します。
※第三管理区分とは、作業場所での有機溶剤等の作業環境測定の結果による区分で、空気中の有機溶剤等の濃度の平均が管理濃度を超えるなど、作業環境管理が適切でないと判断される状態をいいます(昭和63年9月16日基発第605号第二・一・(三))。
安衛法においては、作業環境測定の評価結果が第三管理区分に区分された場合、作業場所の作業環境の改善をすることが求められます(安衛法65条の2)。
改正法においては、上記の改善措置を講じたものの、
① 再度の作業環境測定の評価結果がなおも第三管理区分に区分された場合、(i)作業場所の作業環境の改善の可否、および(ii)改善できる場合の改善方策について、外部の作業環境管理専門家の意見を聴くことが義務付けられました(特定化学物質障害予防規則36条の3の2第1項、有機溶剤中毒予防規則28条の3の2第1項、鉛中毒予防規則52条の3の2第1項、粉じん障害防止規則26条の3の2第1項)。
また、
② 上記①の結果、当該場所の作業環境の改善が可能である場合には、必要な改善措置を講じ、その効果を確認するための濃度測定を行い、結果を評価することが義務付けられました(改正安衛則36条の3の2第2項・3項、有機溶剤中毒予防規則28条の3の2第2項・第3項、鉛中毒予防規則52条の3の2第2項、第3項、粉じん障害防止規則26条の3の2第2項、第3項)。
前記(1)①で作業環境管理専門家が改善困難と判断した場合、または前記(1)②で改善措置を講じたにもかかわらず、再度の濃度測定評価の結果がなおも第三管理区分に区分された場合、以下の①ないし⑤の義務が課されます(特定化学物質障害予防規則36条の3の2第4項、有機溶剤中毒予防規則28条の3の2、鉛中毒予防規則52条の3の2、粉じん障害防止規則26条の3の2)。
① 個人サンプリング測定等による化学物質の濃度測定を行い、その結果に応じて労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。
② ①の呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること。
③ 保護具着用管理責任者を選任し、呼吸用保護具の管理、作業主任者等の職務に対する指導等を担当させること。
④ 作業環境管理専門家の意見の概要と、改善措置と評価の結果を労働者に周知すること。
⑤ 上記措置を講じたときは、遅滞なくこの措置の内容を所轄労働基準監督署に届出をすること。
前記(2)の事業場の評価結果が改善するまでの間、以下の①および②の義務が課されます(特定化学物質障害予防規則36条の3の2第5項、有機溶剤中毒予防規則28条の3の2第5項、鉛中毒予防規則52条の3の2第5項、粉じん障害防止規則26条の3の2第5項)。
① 6か月以内ごとに1回、定期に、個人サンプリング測定等による化学物質の濃度測定を行い、その結果に応じて労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。
② 1年以内ごとに1回、定期に、呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること。
以上の改正点については、事業者がこれに対応しないことにより、以下のとおり罰則の対象となります。
以上の改正点は、令和6(2024)年4月1日から施行されますので注意が必要です。
また、本改正は段階的に施行されており、既に令和4(2022)年5月31日、令和5(2023)年4月1日に施行されているものがありますので、それらの改正対応が未了の場合には、早急に対応する必要があります。
化学物質の管理規制については、下記も参照してください。
以 上