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2024.05.28

企業法務の観点から注目される最近の主な裁判例(2024年3月・4月)

牛島総合法律事務所 訴訟実務研究会

<目次>
1. 商事法
2. 民事法・民事手続法
3. 労働法
4. 知的財産法
5. その他(不正競争防止法、国際私法)

裁判所ウェブサイトや法務雑誌等で公表された最近の裁判例の中で、企業法務の観点から注目される主な裁判例を紹介します(2024年3月・4月)。

下記1(1)(最二判令和6年4月19日)は、株券発行前にした株券発行会社の株式の譲渡について、会社との間では効力が生じないとしても、譲渡当事者間ではその効力が否定されることはないとの判断を最高裁が初めて示したものです。

下記1(2)(東京地判令和5年12月21日)は、東芝の不正会計問題をめぐる投資家からの一連の損害賠償請求訴訟の1つであり、海外の複数の投資家らが東芝に計約572億円の賠償を求めた事件です。東京地裁は、自らの名義で株式を取得した投資家に限って請求を認めましたが、委託機関名義で株式を保有していた投資家(いわゆる実質株主)の請求を認めませんでした。

下記3(1)(最二判令和6年4月26日)は、労働者と使用者との間に職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合に、使用者が一方的な配置転換を命じることができるかが争われた事案です。最高裁は、労働者本人の同意を得ることなく当該合意に反して配置転換を行うことは違法であるとする初めての判断を示しました。

下記5(1)(東京地判令和5年5月18日)は、デザインの企画・制作等を行う会社が受託した小冊子の作成において、写真家たる原告が著作権を有する写真を原告の許可を受けて掲載した後、自社の実績紹介として当該写真を自社のウェブページに掲載した行為が著作権法上の引用に該当するか等が争われた事案です。東京地裁は、引用該当性を否定し、同社に約400万円の損害賠償の支払を命じました。

1. 商事法

(1) 最二判令和6年4月19日(裁判所ウェブサイト)

1 株券発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては、株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはない
2 株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができる

(2) 東京地判令和5年12月21日(資料版商事法務480号122頁)〔東芝関連訴訟〕

振替株式の名義株主でない者を含む原告らによる東芝に対する有価証券報告書の虚偽記載等を原因とする損害賠償請求事件

(3) 東京高判令和5年8月9日(金融・商事判例1687号16頁)

議決権を行使することを除名対象社員に認めずになされた医療法人における除名決議が無効であるなどとされた事例

2. 民事法・民事手続法

(1) 最三決令和6年3月27日(裁判所ウェブサイト)

医療法人の社員が一般法人法37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできない

(2) 最三判令和6年3月12日(裁判所ウェブサイト)

消費者裁判手続特例法2条4号所定の共通義務確認の訴えについて同法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断に違法があるとされた事例

(3) 東京高判令和6年1月17日(資料版商事法務481号83頁)

開示文書内で前科等を記載された者からのナガホリに対する名誉毀損・プライバシー侵害を理由とする損害賠償請求事件控訴審判決

(4) 最一決令和5年10月19日(裁判所ウェブサイト、判例タイムズ1518号86頁)

1 共同して訴えを提起した各原告の請求の価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする場合において、訴え提起の手数料につき各原告に対する訴訟上の救助の付与対象となるべき額
2 共同して訴えを提起した各原告の請求の価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする場合において、各原告につき民訴法82条1項本文にいう「訴訟の準備及び追行に必要な費用」として考慮すべき訴え提起の手数料の額

(5) 東京地判令和5年1月27日(判例タイムズ1517号133頁)〔岡口判事事件〕

現職の裁判官において刑事事件判決書が掲載されたウェブサイトのURL及び同事件に対するコメントをSNS上に投稿した行為等が、同刑事事件の被害者遺族に対する不法行為に当たるか否かが争われた事例

(6) 大阪高判令和4年10月14日(裁判所ウェブサイト、判例タイムズ1518号131頁)

YouTubeに投稿された第三者の動画につき、YouTubeに対し著作権侵害通知を提出して対象動画を削除させた者らに不法行為責任が認められた事例

3. 労働法

(1) 最二判令和6年4月26日(裁判所ウェブサイト)

労働者と使用者との間に当該労働者の職種等を特定のものに限定する旨の合意がある場合において、使用者が当該労働者に対してした異なる職種等への配置転換命令につき、配置転換命令権の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例

(2) 最三判 令和6年4月16日(裁判所ウェブサイト)

外国人の技能実習に係る監理団体の指導員が事業場外で従事した業務につき、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例

(3) 東京高判令和5年10月25日(労働判例1303号39頁)〔医療法人社団Bテラスほか事件〕

妊娠等を理由とした言動・業務指示の違法性等

(4) 東京高判令和5年4月5日(判例タイムズ1516号88頁)

有期労働契約に設けられた試用期間中の解雇が有効と判断された事例

(5) 札幌地判令和5年3月31日(労働判例1302号5頁)〔久日本流通事件〕

売上げの10%を残業手当とする賃金規程の適法性等

(6) 大阪地判令和5年1月26日(労働判例1304号18頁)〔ふたば産業事件〕

中国労働法・労働契約法適用の可否と契約解除の有効性

4. 知的財産法

(1) 東京地判令和5年5月18日(裁判所ウェブサイト、判例時報2585号112頁)

商業的写真をウェブページに掲載した行為が著作権法32条1項にいう引用に該当しないとされた事例

(2) 東京地判令和4年12月20日(裁判所ウェブサイト、判例タイムズ1516号216頁)

1 商品の形態が取引の際に出所表示機能を有するものではない場合における不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」該当性
2 ジェネリック医薬品である気管支喘息用の医療医薬品が商品等表示に該当しないとされた事例

(3) 東京地判令和4年12月15日(裁判所ウェブサイト、判例タイムズ1517号147頁)

特許権者において販売等する製品が侵害品と市場において競合関係に立たない場合における特許法102条1項又は2項の適用の可否

5. その他(不正競争防止法、国際私法)

(1) 東京地判令和5年3月24日(裁判所ウェブサイト、判例時報2583号34頁)

靴製品の形態が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当するとされた事例

(2) 東京地判令和4年12月27日(金融法務事情2229号62頁)

1 アメリカ合衆国モンタナ州地方裁判所が専属的裁判管轄を有し、アメリカ合衆国モンタナ州法を準拠法とする合意が無効とされた事例
2 代表取締役が権限を濫用して締結した契約が会社につき効力を生じないとされた事例

以 上

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