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事務所概要・アクセス
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<目次>
1. AI新法・附帯決議の要約
2. AI新法の趣旨・特徴
3. AI新法の規制内容
4. AI新法・附帯決議から読み取れる今後の規制の方向性
5. おわりに
AIに関する新法として、2025年2月28日、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」(以下「AI新法」)が閣議決定され、同年4月24日には衆議院にて可決されました。また、AI新法に対する附帯決議もなされています。
衆議院では、自民・公明両党に加え、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会等の野党の賛成も得られており、参議院でも可決されることがほぼ確実な情勢です。
そこで、AI新法の概要及び日本企業への影響等について、附帯決議も踏まえて解説します。
なお、AI新法をはじめとした最新動向を踏まえた、生成AIの社内ルールに関しては、「現場利用をできる限り邪魔しない!生成AIの社内ルールの解説(2025年の最新動向を踏まえた弁護士作成の雛形をベースに解説)」(U&Pリーガルセミナー)【無料:2025/6/3(火)】(後日の配信も予定)をご覧いただけますと幸いです。
AI新法及び附帯決議の内容のうち、日本企業との関連性が強いものを要約すると以下のとおりです。
①イノベーションの促進とリスク対応を両立させることを目指す
②そのために国はAIの動向、権利利益侵害のリスク等について調査し、指導等の必要な措置を行う
③事業者・国民は、上記②の国の調査等に協力する
④協力しないことその他AI新法への違反への罰則規定はない
⑤但し、悪質な事業者については、上記②の「必要な措置」として、事業者名の公表等がなされるリスクはある
⑥上記②の調査等の結果、新たなAIのリスクが確認されれば、リスクベースアプローチ(リスクの程度に比例した規制とするアプローチ)で新たな規制を行う
以下、これらの内容を含め敷衍して解説します。
AI新法は、内閣府の下に設置されたAI戦略会議・AI制度研究会が、AI新法の閣議決定(2月28日)の前(2月4日)に公表した「中間とりまとめ」を踏まえて立法されています。
「中間とりまとめ」は、以下の提言を行っています。
①日本を「最もAIを開発・活用しやすい国」とすることを目指すべきであり、このために、「イノベーションの促進とリスク対応を両立」させることが重要である
②「両立を確保するため、・・・基本的には、事業者の自主性を尊重し、法令による規制は事業者の自主的な努力による対応が期待できないものに限定して対応していくべき」
AI新法は、この提言に対応したものとなっていますので、その趣旨は上記①に対応するものと考えられます。規制は、上記②に対応し、事業者の自主的な努力による対応が期待できないもの(情報収集等への協力義務)に限定されております。
また、現時点では違反した場合の罰則も規定されておりません。
AI新法は、事業者は国等の施策に協力しなければならないと定めています(7条)(国民も協力する努力義務を負います(8条))。
そして、基本的施策を11条~17条で定めています。このうち、日本企業等に求められる協力の対象として主に想定される施策は以下のとおりです。
① 調査研究(情報収集、権利利益の侵害事案の分析、対策の検討等)(16条)
国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に資する調査及び研究を行うものとされ、その対象として以下が例示されています。
・国内外の人工知能関連技術の研究開発及び活用の動向
・不正な目的又は不適切な方法による人工知能関連技術の研究開発又は活用に伴って国民の権利利益の侵害が生じた事案
・対策
② 事業者・国民への指導・助言・情報提供その他の必要な措置(16条)
国は、上記①の調査研究の結果に基づき、事業者等に対する指導、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとされています。
AI新法に罰則規定はありませんが、悪質な事業者については、この規定に基づき、「必要な措置」として事業者名の公表等がなされることで、抑止力として機能する可能性があります。
日本企業等は、上記①②に関連する情報の提供等を求められる可能性があります。求められる協力の程度に関しては、AI新法に対する附帯決議9条が、「活用事業者等に対する調査、指導及び助言等に当たっては、当該事業者等の営業秘密や知的財産権の保護に配慮しつつ、過度に重い負担や情報開示を求めないように留意すること。他方で、重大なリスクが生じるおそれのある事項に関し、指導や助言等に応じない活用事業者等に対する実効性ある措置の在り方について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」としていることが参考となります。
上記2.①②記載のとおり、基本的には既存の法令・ガイドラインにより規制しつつ、事業者の自主的な努力による対応が期待できないリスクが、上記3.の調査研究等を通じて確認されれば、新たな法令等により規制を行うという方向性になると考えられます。具体的な規制のアプローチとしては、AI新法に対する附帯決議14条においても、「既存の法令やガイドライン等によっては対応が困難な新たなリスクが顕在化した場合においては、そのリスクの程度に応じて規制の度合いを変えるリスクベースアプローチに基づいた規制的措置の導入も含め検討し、その結果に応じて必要な措置を講ずる」とされていることから、リスクベースアプローチが採用される可能性が高いと思われます。
現状で認識されているリスクとしては、附帯決議4条で明示されているディープフェイクポルノが挙げられ、同条ではその対策強化を行うこととされています。
なお、AI新法に基づき、国は今後AIに関し以下の施策を実施することとされているため、今後注視していく必要があります。
① 国際規範の趣旨に即した指針(ガイドライン)の整備(13条)
今後は同条に基づき、必要に応じて、既存の「AI事業者ガイドライン」の改定や、新たなガイドラインの制定がなされていくことになると考えられます。
② 人工知能基本計画の作成(18条)
国は、今後の基本的な方針、政府が講ずる施策等について定めた、人工知能基本計画を作成することとされています。具体的な内容は現段階では不明ですが、作成期限は、AI新法の効力発生から3ヶ月以内とされておりますので(附則1条)、その内容が明らかになり次第、ニューズレターやフラッシュニュース等を通じてお伝えさせて頂きます。
③ 人工知能戦略本部の設置(19条~28条)
内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官及び人工知能戦略担当大臣を副本部長、その他の全閣僚を本部員とする人工知能戦略本部を設置することとされています。
④ 社会経済情勢の変化を勘案した改正等(附則2条)
国際的動向その他の社会経済情勢の変化を勘案して行うものとされ、時期については定められていません。
以上のように、AI新法は、「イノベーションの促進とリスク対応」の「両立」により、日本を「最もAIを開発・活用しやすい国」とすることを目指すための土台となる基本法と考えられます。
AIは日進月歩であることから、今後、上記3.の国の調査等により確認された新たなリスクの対応のために、AI新法の改正や、ガイドライン・個別法の制定がなされることも十分に考えられますので、今後も政府の動向等を注視し、必要に応じて、ニューズレターやフラッシュニュース等でお伝えさせて頂きます。
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以上