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事務所概要・アクセス
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<目次>
1. 商事法
2. 民事法・民事手続法
3. 労働法
4. 知的財産法
5. その他(米国連邦海外腐敗行為防止法等)
裁判所ウェブサイトや法務雑誌等で公表された最近の裁判例の中で、企業法務の観点から注目される主な裁判例を紹介します(2025年7月・8月)。
東京高判令和7年3月19日〔東芝事件〕(下記1(1))は、2015年に発覚した東芝の不正会計問題をめぐり、旧経営陣の責任を問う訴訟の控訴審判決です。原判決(東京地判令和5年3月28日)(※)が、旧経営陣に対し、連帯して2億円の損害賠償を命じたのに対し、控訴審である東京高裁は、問題となった会計処理の違法性や、有価証券報告書等における重要事項の虚偽記載の存在を否定し、原判決を取り消して東芝による損害賠償請求を棄却しました。
東京地判令和6年10月31日(下記1(3))は、非公開会社を対象とした二段階買収に関する事案です。一段階目の取引として、買収会社の株式及び金銭と対象会社株式との任意交換を行い、二段階目の取引として、スクイーズアウトを実施することが提案されましたが、実際には、一段階目の取引のみが実施され、スクイーズアウトは実施されませんでした。これに対し、一段階目の取引に応じなかった株主が、スクイーズアウトの実施を信頼したために損害を被ったと主張し、損害賠償を求めて提訴しました。東京地裁は、特段の事情がない限り、支配株主又は対象会社がスクイーズアウトを実施する義務を負うものではなく、スクイーズアウトについての説明等も、それが確実に実施されるという少数株主の正当な信頼を惹起するものとはいえないと判示し、株主の請求を棄却しました。
東京地判令和7年4月22日〔ジェットスター・ジャパン事件〕(下記3(1))は、航空運送事業を営むジェットスター・ジャパン(Y社)の客室乗務員として勤務していたXらが、労働基準法(労基法)34条1項所定の休憩時間が付与されない勤務を命じられ、精神的苦痛を受けたとして、Y社に対し、損害賠償の支払及び上記勤務命令の差止を求めた事案です。東京地裁は、便間時間(前便が駐機場に入り停止する時刻から次便が駐機場を離れて滑走路に向かい始める時刻までの時間)やクルーレスト(運航中、客室サービスが終了した時点で与えられる休息時間。ただし、乗客からの要望・質問、急病人の発生等への対応を要する場合あり)は、実際に乗務しない時間と同程度に精神的肉体的に緊張度が低いと認められる時間に当たらず、休憩時間を付与しないことができる例外に当たらないこと等を理由として、Y社の安全配慮義務違反を認定し、Xらに対し、各11万円の慰謝料等の支払を認めるとともに、労基法所定の休憩時間を付与しない勤務命令の差止めも認めました。
東京高判令和6年6月19日判例タイムズ1534号105頁〔バンドスコア事件〕(下記4(2))は、楽譜の出版・販売等を目的とするX社が、同社が制作・販売するバンドスコアをY社が無断で模倣しウェブサイトで無料公開したことにより営業上の利益を侵害されたと主張し、Y社及び同社代表取締役らに対し、不法行為等に基づく5億円の損害賠償を請求した事案です。東京高裁は、バンドスコアの模倣行為は、採譜にかける時間、労力及び費用並びに採譜という高度かつ特殊な技能の修得に要する時間、労力及び費用に対するフリーライドにほかならず、営業妨害により他人の営業上の利益を損なう行為であるとして、原判決(東京地判令和3年9月28日)を取り消し、Y社らに対し、約1億6900万円の支払を命じました。本判決は、著作権法6条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は、特段の事情がない限り不法行為を構成しないとする従来の最高裁判例(最判平成23年12月8日(北朝鮮映画事件))の判断枠組みを前提としつつ、著作権法上の著作物に該当しないバンドスコアの模倣行為について「特段の事情」を認め、約1億6900万円という高額の賠償を命じたものとして注目されます。企業実務においては、著作権の有無にかかわらず、第三者コンテンツの利用が不法行為リスクを伴う可能性に留意する必要があります。
(※)U&Pニューズレター「企業法務の観点から注目される最近の主な裁判例(2023年9月・10月)」
1 メーカーが外部企業に部品を供給して完成品の製造を委託し、これを買い取るという取引につき、各四半期末に部品取引の利益のうち、完成品として買い取らなかった部品に係る利益を消去しなかったことが違法ではないとされた事例
2 有価証券報告書等の記載につき、引当金の計上につき誤りがある可能性および誤りがあるが、重要な事項につき虚偽の記載をしたものということができないとした事例
1 会社によるファンドの取得の勧誘行為が不法行為に当たるものとして、会社ならびにその代表取締役やその他の役員等について、不法行為責任や会社法429条1項に基づく損害賠償責任が認められた事例
2 会社の代表取締役がその妻に対してした不動産の贈与が詐害行為に当たるとしてその取消しが認められた事例
1 外国法人および日本法人に対する共同不法行為を理由とする損害賠償請求について、外国法人に対しても併合請求の裁判籍により国際裁判管轄が肯定された事例
2 二段階買収において、買収者または対象会社が少数株主に対し、スクイーズアウトを実施する義務(対象会社については買収者に実施させる義務)を負わない場合
3 買収者(支配株主)または対象会社が少数株主に対して二段階買収に関する提案ないし説明を行ったことが、スクイーズアウトが確実に実施されるという少数株主の正当な信頼を惹起するものではないとされた事例
別荘地内に土地を所有する者が当該別荘地の管理会社に対し管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負うとされた事例
別荘地の分譲を受けるに当たり締結が義務付けられた、分譲地所有者を委任者とし、管理者を受任者とする分譲地の管理等を目的とする管理契約につき、受任者の利益のための契約とはいえないとして、委任者からの解除の効力を肯定した事例
共同事業契約終了後に事業を清算する旨の黙示の合意の成立が否定された事例
特定適格消費者団体が原告となって提起した共通義務確認訴訟において、米国ニューヨーク市で開催予定の合唱フェスティバルが新型コロナウイルス感染症の影響により延期されたことで、同フェスティバルの主催者の演奏参加費を支払った対象消費者に対する債務が履行不能となり、同主催者が演奏参加費相当額を法律上の原因なく利得したと判断した事例
転落防止用のベッドガードにつき、指示・警告上の欠陥があるとして、同ベッドガードを輸入、販売する被告が製造物責任法上の損害賠償責任を負うとされた事例
インターネット上の投稿につき、意見ないし論評の域を逸脱したものとはいえず、真実性の抗弁が成立するなどとして、名誉毀損及び名誉感情侵害による不法行為がいずれも成立しないとされた事例
1 コンピュータシステム開発の業務委託契約におけるシステムの瑕疵を理由とする注文者による契約の解除が、解除の原因となるバグの存在を認めることができないとして、認められなかった事例
2 コンピュータシステム開発の業務委託契約において、業務が完成していなくても出来高分の報酬支払を請求できるとして、6割の限度で請負人の報酬請求が認められた事例
CAの勤務体制の違法性
特殊業務手当廃止の適法性
思想信条を理由に昇級昇格差別を受けたとして同期同学歴従業員との間に生じた賃金・退職金差額相当の損害賠償と慰謝料請求が時効消滅していない範囲で認められた事例
コンピテンシー評価による降給は、評価の根拠とされた事実の基礎を欠き、権利濫用により無効
経歴詐称による内定取消しの適法性
労働契約申込みみなしによる労働契約の労働条件と雇止め
執行役員における休職期間満了後退職の有効性
共同著作者性及び職務著作性の法律関係につき、ベルヌ条約5条2項に基づき日本の著作権は日本法、米国の著作権は米国法が適用されるとされた事例
著作権法6条各号所定の著作物に該当しないバンドスコアを無断で模倣しウェブサイトにおいて無料で公開したことが不法行為を構成するとして損害賠償請求が認容された事例
米国連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)、不正競争防止法18条1項および公益通報者保護法5条1項の違反に係る役員の法令遵守義務違反等を理由とする任務懈怠責任が否定された事例
以上