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2025.06.26

「投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)」(令和7年版LPSモデル契約)を経済産業省が公表

<目次>
1. はじめに
2. 令和7年版LPSモデル契約の構成
3. アップデートのポイント(概要)
(1) 借入れ等に関する規定の追加
(2) 共同投資ファンドに関する規定の追加
(3) 財務情報の開示(四半期財務情報の作成・送付)
(4) 組合財産の分配(キャリード・インタレスト)

1. はじめに

 2025年6月23日、経済産業省より、「投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)」(以下「令和7年版LPSモデル契約」)が公表されました。(※1)
 投資事業有限責任組合(LPS)については、従前より、モデルとなる投資事業有限責任組合契約書(LPA)として、平成22年11月付「投資事業有限責任組合モデル契約」(以下「平成22年版LPSモデル契約」といいます。)及び平成30年3月付「投資事業有限責任組合契約(例)及びその解説」(以下「平成30年版LPSモデル契約」といいます。)が公表されていました。平成22年版LPSモデル契約は想定利用者となるファンドの類型を特定せずに作成されたものであり、平成30年版LPSモデル契約は専らベンチャー・キャピタル向けに作成されたものであるとされています。
 今般、平成22年版LPSモデル契約の作成から14年が経過し、国内外の実務との乖離が生じ始めていたことを踏まえ、その後継となる令和7年版LPSモデル契約が作成・公表されました。(※1)(※2)

(※1)出典:経済産業省ウェブサイト「『投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)』を策定しました
(※2)策定に当たって「新たなモデルLPAの作成等のための有識者検討会」が2025年2月10日(第1回)、2025年4月28日(第2回)に開催されています。

2. 令和7年版LPSモデル契約の構成

 令和7年版LPSモデル契約は、プライベート・エクイティ・ファンドを始めとする様々な類型のファンドにおいて広く活用されることを想定した汎用性の高いものとされ、以下の5分冊で構成されています。(※3)

①第一分冊:令和7年6月付「投資事業有限責任組合契約書例(和文版)
②第二分冊:令和7年6月付「逐条解説 投資事業有限責任組合契約書例(和文版)
③第三分冊:令和7年6月付「投資事業有限責任組合契約書例(和文簡易版)
④第四分冊:令和7年6月付「投資事業有限責任組合契約書例(英文契約書版)
⑤第五分冊:令和7年6月付「解説 投資事業有限責任組合契約書例(英文契約書版)

 第一分冊は、新たに投資事業有限責任組合(LPS)を利用してファンドを組成し、将来的に外国投資家からの出資の受入れも視野に入れている事業者を想定利用者とするものであり、第二分冊は第一分冊の逐条解説になります。第三分冊は、第一分冊をベースに一定の条項を削除・調整した簡易版です。
 第四分冊は英文のモデルLPS契約書です。これは、「単なる第一分冊の英訳ではなく、第一分冊の内容をグローバルで使用されている一般的なリミテッド・パートナーシップ契約の方式に従って書き起こしたもの」とされ、第五分冊はその解説になります。(※4)

(※3)出典:経済産業省ウェブサイト「投資事業有限責任組合(LPS)制度について
(※4)出典:経済産業省ウェブサイト「『投資事業有限責任組合契約書例及びその解説(令和7年版)』を策定しました

3. アップデートのポイント(概要)

 令和7年版LPSモデル契約は平成22年版LPSモデル契約から多数のアップデートが行われています。令和7年版LPSモデル契約(第一分冊)においてアップデートが行われたポイントとしては、例えば、以下の点が挙げられます。

(1) 借入れ等に関する規定の追加

 平成22年版LPSモデル契約においては組合による金銭の借入れや組合財産の担保提供を行うこと等は可能でしたが(同契約第14条第2項)、具体的な方法・条件に関する規定は置かれていませんでした。
 令和7年版LPSモデル契約(第一分冊)では、キャピタル・コール権への担保権の設定及び借入れ(サブスクリプション・ファイナンス)やキャピタル・コール権を除く組合財産への担保権の設定及び借入れ(NAVファイナンス)について具体的な規定が設けられています(同契約第15条第1項~第4項)。
 サブスクリプション・ファイナンスやNAVファイナンスは、ファンドの資金調達の幅を広げうるものとして実務上注目されています。

(2) 共同投資ファンドに関する規定の追加

 最大個別投資額(ポートフォリオ投資の1件あたりの金額の上限)を超える金額に係るポートフォリオ投資の機会に際して、当該機会におけるポートフォリオ投資を行うことのみを目的とする他のファンド(共同投資ファンド)を組成し、又は組成させることができることとされ、その条件に関する定めも設けられています(令和7年版LPSモデル契約(第一分冊)第19条第3項)。
 共同投資ファンドは、ファンドサイズの比較的小さいファンドがファンドサイズの大きいファンドに伍していく手段として、グローバルの実務で取り入れられています。(※5)

 (※5)出典:経済産業省「新たなモデルLPAの作成等のための有識者検討会 事務局説明資料」(令和7年4月28日付)12頁

(3) 財務情報の開示(四半期財務情報の作成・送付)

 投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)第8条第1項では、毎事業年度経過後3月以内に、その事業年度の貸借対照表、損益計算書及び業務報告書並びにこれらの附属明細書(以下「財務諸表等」といいます。)を作成することとされ、平成22年版LPSモデル契約では事業年度/半期ごとの組合員への送付が規定されていました(第25条第1項、第3項)。
 令和7年版LPSモデル契約(第一分冊)では、事業年度ごとの財務諸表等の作成に加え、有限責任組合員が合理的に必要とする情報を含む財務情報を記載した書面(四半期財務情報)を第1~3四半期に作成し、組合員に送付することとされています(令和7年版LPSモデル契約(第一分冊)第26条第2項)。

(4) 組合財産の分配(キャリード・インタレスト)

 令和7年版LPSモデル契約(第一分冊)では、組合財産の分配のうち無限責任組合員等が受領すべき部分を、その持分に基づくキャリード・インタレストと構成しています(令和7年版LPSモデル契約(第一分冊)第29条第2項、第4項等)。

本ニューズレターは、掲載時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではないことにご留意ください。また、本ニューズレター中意見にわたる部分は、執筆担当者個人の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではありません。

以 上