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2026.03.16

「イモトのWiFi」運営会社に対する1億7000万円の課徴金納付命令~No.1表示について留意すべきポイント~

<目次>
1. はじめに
2. No. 1表示に関する近時の状況
3. No. 1表示に関する景品表示法の考え方とエクスコムグローバルによる違反行為
4. エクスコムグローバルに対する課徴金の額の算出根拠
5. 留意すべきポイント

1. はじめに

 2026年(令和8年)3月12日、消費者庁は、エクスコムグローバル株式会社(以下「エクスコムグローバル」といいます。)に対し、同社が供給する「イモトのWiFi」と称するモバイルルーターのレンタルサービスに係る、いわゆるNo. 1表示が景品表示法の規定に違反することを理由に、課徴金として1億7262万円を支払うべき旨の課徴金納付命令を発出しました(※1)。
 エクスコムグローバルに対しては、2024年(令和6年)2月28日付けにて、今回の課徴金納付命令の対象となった違反行為(優良誤認表示)についての措置命令(①No. 1表示の取りやめ、②当該表示が景品表示法に違反するものである旨の一般消費者への周知徹底及び③再発防止策を講じること)が行われていましたが(※2)、今回の課徴金納付命令は、当該違反行為について、景品表示法8条の規定に基づいて算出された課徴金の納付を命ずるものです。
 以下、エクスコムグローバルに対する今回の課徴金納付命令を踏まえ、No. 1表示を行うことを検討している企業が留意すべきポイントについて、ご説明します。

※1 令和8年3月12日「エクスコムグローバル株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」(消費者庁)
※2 2024年3月1日「エクスコムグローバル株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(消費者庁)

2. No. 1表示に関する近時の状況

 近時、事業者が行う広告等において、「顧客満足度 No.1」などの表示により、第三者の主観的評価を指標として商品等の内容の優良性又は取引条件の有利性を強調する、いわゆるNo.1表示が多く見られるようになっています。しかし、このようなNo. 1表示が、合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、景品表示法上不当表示として問題となるところ、近時、かかるNo. 1表示に関する措置命令が増加しており、2024年(令和6年)2月末から同年3月上旬の短期間に、集中的に11件の措置命令が行われたことが注目されます(※3)。
 かかる状況を踏まえ、消費者庁は、2024年(令和6年)9月26日に、「No. 1表示に関する実態調査報告書」を公表し、No.1表示等についての景品表示法上の考え方を整理しています。同報告書の概要と留意点については、2024年10月11日付けニューズレター「「No. 1表示に関する実態調査報告書」の公表―No. 1表示等についての景品表示法上の考え方―」にて詳細に説明していますので、ご参照いただければ幸いです。

※3 No. 1表示に関する実態調査報告書2頁脚注1。今回のエクスコムグローバルに対する課徴金納付命令の対象となった違反行為もここに含まれています。

3. No. 1表示に関する景品表示法の考え方とエクスコムグローバルによる違反行為

 顧客満足度などの第三者の主観的評価を指標とするNo. 1表示は、これが合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となります。
 ここで、No. 1表示が「合理的な根拠」に基づくと認められるためには、①No.1 表示の根拠とされる調査が、社会通念上妥当と認められる方法等で実施されていること、②表示内容が調査結果と適切に対応していること、という2つの要件を満たす必要があります(※4)。
 この点、消費者庁が認定した事実(※5)によれば、エクスコムグローバルは、旅行ガイドブック掲載の広告において、以下のように表示し、あたかも、当該サービスを実際に利用したことがある者に対して調査した結果、当該サービスの順位がそれぞれ第1位であるかのような表示をしていました。

・「お客様満足度No. 1 ※ 海外Wi-Fiレンタル」
・「海外旅行者が選ぶNo. 1 ※ 海外Wi-Fiレンタル」
・「顧客対応満足度No. 1 ※ 海外Wi-Fiレンタル」

 しかしながら、実際には、エクスコムグローバルが委託した調査会社による調査は、回答者が実際に当該サービスを利用したことがあるか否かを確認せず、同種のサービスを提供する事業者のウェブサイトの印象を問うに過ぎないものでした。
 これをもって、消費者庁は、エクスコムグローバルの行ったNo. 1表示は、客観的な調査に基づくものではなく、また、調査結果を正確かつ適正に引用しているものでもなかったため、景品表示法に違反すると判断し、措置命令を行っていました(※6)。
 すなわち、本件では、①調査対象者の選定及び調査方法自体に問題があり、②その調査結果と表示内容との対応関係も適切とはいえないとして、No.1表示が合理的根拠に基づくものではないと判断されたものといえます。

※4 No. 1表示に関する実態調査報告書17頁脚注2。上記①の要件の詳細は、2024年10月11日付けニューズレター「「No. 1表示に関する実態調査報告書」の公表―No. 1表示等についての景品表示法上の考え方―」をご参照ください。
※5 令和8年3月12日「エクスコムグローバル株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」(消費者庁)
※6 2024年3月1日「エクスコムグローバル株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(消費者庁)

4. エクスコムグローバルに対する課徴金の額の算出根拠

 上記景品表示法違反行為について、2026年(令和8年)3月12日付けで行われた課徴金納付命令は、エクスコムグローバルに対し、1億7262万円という高額の課徴金の納付を命じています。このような高額の課徴金は、法律上定められた算定方法に従い一律に算出されたものであり、具体的には、違反行為に係る売上額に一定割合(原則3%)を乗じて算定される仕組みとなっています。したがって、課徴金対象行為に係るサービスの対象期間中の売上額が大きい場合には、本件のように高額の課徴金が課されるリスクがあります。
 当該課徴金の額の具体的な算出根拠は、以下のとおりです(景品表示法8条)。

(1) 課徴金対象行為をした期間:令和2年2月12日~令和6年5月7日
(2) 課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日:令和6年6月21日
(3) 課徴金対象期間:令和3年6月22日~令和6年6月21日(※7)
(4) 課徴金対象行為に係る役務の売上額:57億5428万9344円
(5) 上記(4)の売上額の3%(1万円未満切捨て):1億7262万円

※7 課徴金対象期間が3年を超えるときは、当該期間の末日(令和6年6月21日)から遡って3年間が課徴金対象期間となります(景品表示法8条2項)。

5. 留意すべきポイント

 本件について、エクスコムグローバルは、外部の調査会社に調査を委託し、その結果に基づいて広告表示を行っていたこと、また、調査会社に対して表示の適法性について問い合わせるなど、注意を尽くしていたことを理由として、課徴金納付命令に対する法的対抗措置を検討する旨コメントしています。
 しかしながら、景品表示法上の規制の対象は当該表示を行った事業者(広告主)であり、調査会社の説明に依拠して表示を行った場合であっても、原則として広告主が責任を負う点に注意が必要です。また、課徴金の免除が認められる「相当の注意を怠ったものでないと認められるとき」(景品表示法8条1項ただし書)は、実務上そのハードルが高いと指摘されています。
 そのため、調査会社に依頼してNo.1表示を行う場合であっても、広告主自身が表示の合理的根拠を確認するという基本的な考え方が重要です。特に、①調査会社の選定を慎重に行うこと、②調査会社に任せきりにせず、調査対象者、調査方法、比較対象の設定、調査結果と表示内容との対応関係などについて広告主自身が確認することが必須です。

以 上

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