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セミナー
事務所概要・アクセス
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1. はじめに
2. 証券訴訟の特徴
3. 最高裁の判断枠組み
4. 証券訴訟への具体的対応
5. おわりに
2023年8月8日、国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)をはじめとする国内連合による東芝へのTOB(株式公開買い付け)が開始されました。TOBが成立すれば、東芝は、年内にも上場廃止となる見込みとされています。東芝は、これを機に、不正会計事件の発覚に端を発した経営の混乱の解消を目指し、再出発を図ることとなります。
2015年に発覚した東芝の不正会計事件をめぐっては、東芝に対し、課徴金として過去最高の73億7000万円余りの納付が命じられたほか、株価の下落で損害を被ったと主張する多数の株主らによる損害賠償請求訴訟が全国の裁判所で相次いでいます(以下「東芝関連訴訟」といいます。)。東芝関連訴訟における原告株主らの請求額の合計は、既に終結した訴訟を含めると、約1800億円に上るとも報じられています(※1)。
このような東芝関連訴訟については、近時、株主らの請求の一部を認める判決が出てきています(東京地判令和3年5月13日、福岡地判令和4年3月10日、高松地判令和5年3月28日)。これらの判決では、従来の証券訴訟では判断が示されていない論点や、判断を示した裁判例が少ない論点についても、新たな判断が示されており、注目を集めています。
東芝のような上場会社において一旦粉飾決算や不正会計が発覚すると、刑事責任を問われるリスク、課徴金納付命令等の行政処分を課されるリスク、上場廃止となるリスクのほか、民事上も、虚偽記載のある有価証券報告書等に基づく株式取引によって株価下落の損害を被ったと主張する多数の株主から、全国各地の裁判所で訴訟を提起されるリスクがあります。
平成16年(2004年)の証券取引法の改正以降、株主による証券訴訟(有価証券報告書等の虚偽記載に基づく損害賠償請求訴訟)の提起は増加傾向にあります。会社及びその役員等は、かかる訴訟により莫大な損害賠償責任を負う潜在的なリスクを負うこととなり、かつ、長期間にわたり、その対応に当たらなければならないこととなります。会社としては、個別の訴訟を解決(和解、判決等)することに注力するばかりでなく、当該訴訟の解決が、他の株主が提起した関連訴訟の帰趨に影響を与え得ることを見据え、慎重に対応することが求められます。
本ニューズレターでは、東芝関連訴訟をはじめとして近時増加傾向にある証券訴訟の特徴や具体的対応について説明します。
(※1)日本経済新聞2023年3月23日記事
有価証券報告書等の開示書類に虚偽記載があった場合、これにより損害を被った株主は、提出会社及びその役員等に対し、民法上の不法行為責任(民法709条等)を追及することができます。
しかしながら、民法上の不法行為責任を追及するためには、株主が損害や因果関係等について立証しなければならないところ、上場会社の株価は様々な要因により変動するため、株主が虚偽記載等により被った損害及びその金額を立証するのは非常に困難です。そのため、以前は、有価証券報告書等の虚偽記載に起因する株価の下落で損害を被った株主による訴訟の提起は、それほど多くはありませんでした。
平成16年(2004年)の証券取引法(当時)の改正により、株主(投資家)保護と不実開示の抑止の観点から、流通市場における提出会社の損害賠償責任に関する株主の立証責任を軽減する民事責任の特則が設けられました。当該改正によって株主が提出会社等(※2)に対する損害賠償請求訴訟を提起しやすくなったことを契機として、会計不正が発覚した場合に株主による証券訴訟が提起されるケースが増加するようになりました。証券取引法に定められた民事責任の特則は、流通市場における提出会社の責任を過失責任化するなどの一部改正を経て、現行金融商品取引法(金商法)に引き継がれています(※3)。
金商法21条の2は、流通市場において株式を取得した者の提出会社に対する損害賠償請求権を定めた規定です。同条は、民法上の不法行為責任の特則として、原告株主が被告である提出会社の故意又は過失の立証責任を負うのではなく、被告である提出会社が、故意又は過失がなかったことの立証責任を負うこととし、立証責任を転換しています(同条2項)。また、金商法においては損害額及び因果関係の推定規定も設けられ(同条3項)、原告株主の立証の負担を軽減しています。一方で、金商法21条の2に基づく請求については、損害賠償額の上限も定められています(同条1項本文、19条1項)。
有価証券報告書等の虚偽記載については、民法や金商法などに基づく損害賠償請求が可能であるところ、株主は、いずれの法律を根拠として請求を行うかを任意に選択することができます。金商法に基づく請求は、上述した立証責任の軽減というメリットがある一方、提出会社の賠償額の上限も定められているため、金商法に基づく請求と同時に民法上の不法行為責任を追及することにより、金商法上の賠償額の上限を超える金額の損害賠償請求を行う余地が出てくることになります。実務上は、株主が金商法に基づく請求と民法上の不法行為に基づく請求とを同時に行うことも多くなっています。
(※2)金商法は、提出会社のほか、その役員、売出人、監査法人、元引受人に対する民事責任の特則を規定していますが、本ニューズレターでは、紙幅の都合上、主として、実務上問題となることの多い提出会社に対する民事責任の追及を念頭に置いて説明しています。
(※3)提出会社等に対する民事責任の追及については、民法や金商法に基づく責任追及のほか、会社法350条に基づく責任追及の余地もあります。
上場会社においては、国内外の機関投資家や金融機関といった大口の株主のほか、多数の個人株主が存在するのが通常です。これらの株主は、提出会社の本店所在地のほか、株主自身の住所地で訴訟を提起することも可能なため、ある特定の会計不正事件について証券訴訟を提起される可能性のある裁判所は、全国各地に及ぶこととなります。また、会計不正事件が発覚すると、原告側訴訟代理人となる弁護士が多数の個人株主を募って、提出会社等に対する訴訟を提起することもしばしば見られます。
多数の株主から各地の裁判所で証券訴訟を提起された場合、各株主の性質、持株数の推移や株式取得・処分の時期も株主ごとにそれぞれ異なることから、個別の株主の状況に応じて慎重に対応する必要があります。
また、株主は、虚偽記載に基づく損害賠償請求権が消滅時効にかかるまでの間は、時期を選んで訴訟を提起することができるため、未だ証券訴訟を提起していない株主であっても、当該株主の有する損害賠償請求権が消滅時効にかかるまでの間は、常に新たな訴訟提起の可能性があるという潜在的リスクがあります。その間に、他の株主の提起した訴訟が和解や判決といった一定の解決に至った場合、これを契機として、様子見をしていた株主が新たな訴訟を提起する可能性があります。また、ある株主との間の和解や判決の内容が、事実上、他の株主との間の訴訟における解決のベースとなる場合があるため、ある訴訟について和解で解決しようとする際には、他の株主への影響を加味した慎重な検討が必要となります。
証券訴訟は、株主らの請求の少なくとも一部が認められた和解や判決の形で終わることが多く、株主の請求が全部棄却される場合が少ないことがその特徴として挙げられます。これは、会計不正事件が発覚すると、証券取引等監視委員会による調査を経て金融庁により課徴金納付命令が発令された後に、株主らが証券訴訟を提起することが多いため、会社側は、証券訴訟において改めて専門機関である証券取引等監視委員会の認定した虚偽記載の存在を覆すのが事実上困難な場合が多いためです。
したがって、会社側としては、まずは虚偽記載の存在を争う余地があるか否かを検討すべきですが、これが難しい場合、証券訴訟では虚偽記載によって株主が被った損害額の算定方法が主な争点となり、会社側は、裁判所の認定する損害額をできるだけ少額に抑えるべく、具体的な損害の算定方法についての反論とその立証を検討することになります。
有価証券報告書等の虚偽記載に基づく株主の損害の算定方法については、リーディングケースとなる最高裁の判例がいくつか出されています。しかしながら、最高裁は、大まかな判断枠組みを示してはいますが、具体的な損害の算定方法については、最高裁が判断を示していない多数の論点が残っており、その後の下級審で争われることも多くなっています。また、各株主による株式取引の時期や虚偽記載の認識等については、個々の株主において固有の事情があることから、証券訴訟を提起された会社側としては、各株主の固有事情に応じた個別の対応を検討する必要があります。
有価証券報告書の虚偽記載をめぐり、最高裁は、以下に説明する西武鉄道事件及びライブドア事件の各判決において、多数の論点に関する判断枠組みを示し、これらの判決は証券訴訟のリーディングケースとして、その後の裁判実務に多大な影響を与えました。
これらの判決において最高裁が示した判断枠組みは多岐にわたります。以下では、損害額の算定方法を中心に、最高裁の示した判断枠組みを説明します。
西武鉄道事件は、有価証券報告書等に東京証券取引所の上場規程に定める少数特定者持株数基準に違反している事実を隠蔽する虚偽記載があったことから上場廃止となったことによって損害を被った同社株主が、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。
この事件は、証券取引法(金商法)の適用が問題となった事案ではないものの、虚偽記載によって株主に生じた損害額の算定方法について、最高裁が初めて判断を示したリーディングケースです。
西武鉄道事件最高裁判決において示された損害額の算定方法に関する判断枠組みは、その後、金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求が問題となったアーバンコーポレイション事件最高裁判決(最判平成24年12月21日判タ1386号169頁(②事件))でも引用され、その後の実務に大きな影響を与えています。
西武鉄道事件において、最高裁は、まず、同事件の原告となった株主について、虚偽記載がなければ株式を取得することはなかったとみるべき場合であると認定しました。そのうえで、当該虚偽記載により株主に生じた損害の額について、以下のように算定すべき旨を示しました。
① 既に株式を処分した株主の場合
損害額=(取得価額-処分価額)-虚偽記載に起因しない市場価額の下落分
② 未だ株式を保有し続けている株主の場合
損害額=(取得価額-事実審口頭弁論終結時の評価額)-虚偽記載に起因しない市場価額の下落分
また、最高裁は、損害額から控除される「虚偽記載に起因しない市場価額の下落分」とは、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等が含まれると判示しました。
一方、虚偽記載が公表された後、いわゆる「ろうばい売り」が集中することによる過剰な市場価額の下落は、虚偽記載が判明することによって通常生ずることが予想される事態であるとして、損害から控除することを認めませんでした。
ライブドア事件は、有価証券報告書に実際は経常赤字であったのに経常黒字である旨の虚偽記載がなされたことにより損害を被ったと主張する株主が損害賠償請求を行った事案です。同事件は、金商法21条の2第3項(平成26年金商法改正前の同条第2項。以下同じ。)の定める損害額の推定規定の適用が問題となったはじめての最高裁判決であり、西武鉄道事件最高裁判決と並んで、証券訴訟のリーディングケースとして扱われています。
金商法21条の2第3項は、虚偽記載の事実の公表日前1年以内に株式を取得し、当該公表日において引き続き当該株式を所有する者は、①「公表日前1ヶ月間の当該株式の市場価額の平均額」と、②「公表日後1ヶ月間の当該株式の市場価額の平均額」との差額をもって、虚偽記載により生じた損害の額とすることができる旨を規定しています(※4)。
また、同第6項(平成26年金商法改正前の同条第5項。以下同じ。)は、株主が受けた損害の全部又は一部が、当該虚偽記載によって生ずべき当該株式の値下がり以外の事情によって生じたことが認められるが、損害の性質上その額を証明することが極めて困難な場合、裁判所が、提出会社が賠償責任を負わない損害額として相当な額を認定できる旨を定めています。
ライブドア事件において、最高裁は、金商法21条の2第1項にいう「損害」とは、一般不法行為の規定に基づく場合と同様に、虚偽記載等と相当因果関係のある損害を全て含むと解すべきことを前提に、同条第3項の損害は、取得時差額に限定されず、虚偽記載と相当因果関係のある損害すべてを含むと判断し、また、同条第6項の「当該虚偽記載によって生ずべき株式の値下がり」は、虚偽記載と相当因果関係のある値下がりのすべてをいうものと判断しました。
かかる判断を前提に、最高裁は、当事者間で争いのあった様々な具体的事情について「当該虚偽記載によって生ずべき株式の値下がり以外の事情」に該当するか否かを判断し、結論として、同条第3項の推定損害額から1割の減額を認めた原審の判断を是認しました。
このほか、ライブドア事件において、最高裁は、「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」(金商法21条の2第4項(平成26年金商法改正前の同条第3項))の意義、株主が当該株式を複数回にわたってそれぞれ異なる価額で取得、処分した場合の損害額の算定方法、損害賠償債務が遅滞に陥る時期など、多岐にわたる論点について最高裁の判断枠組みを示しています。
(※4)金商法の条文上は「当該有価証券」とされていますが、本ニューズレターでは、便宜上、「当該株式」と記載しています。
株主から証券訴訟を提起された場合、会社としては、まず、株主の請求の全部棄却を目指し、どのような主張立証をすべきかを検討することになります。仮に株主の請求の全部棄却が認められない場合であっても、認容される損害賠償の額を可能な限り限定するための主張立証手段を検討することになります。
以下では、株主から証券訴訟を提起された場合に主な争点となることの多い損害の有無及びその範囲について、会社が検討すべき具体的な主張立証手段について説明します。
有価証券報告書等の虚偽記載により損害を被った株主は、提出会社等に対し、虚偽記載と相当因果関係のある損害の存在及びその金額の主張立証を試みることとなります。実務では、株主は、上述の最高裁判例の判断枠組みをベースに、①取得自体損害、②高値取得損害(取得時差額損害)、③金商法の推定規定に基づく損害のいずれか、あるいはその複数を組み合わせて損害の主張立証を試みることが多くなっています(※5)。
上記①~③のいずれの損害を主張立証する場合でも、最終的には虚偽記載と相当因果関係のある全ての損害が賠償の対象となるため、結論に変わりは無いはずですが、主張立証の対象となる事項や主張立証責任の所在は個別の事案で変わってくるため、実際の訴訟においては、原告株主にとって主張立証の容易なものから損害として主張されることが多いといえます。
西武鉄道事件最高裁判決では、虚偽記載がなければ西武鉄道株式は上場廃止となっていたはずであり、原告株主が西武鉄道株式を取得することはなかったことを前提に、株式の取得価額をベースとした損害が認められました。
取得自体損害が主張された場合において、原告である株主は取得価額をベースとした損害の主張立証を行い、虚偽記載と相当因果関係の認められない市場価額の下落分(損害額から控除されるべき部分)については、被告となる会社が主張立証責任を負うこととなるため、損害の立証の点で原告株主に有利といわれています。
原告株主が取得自体損害を主張立証した場合、会社としては、まず、原告株主が、虚偽記載がなければ株式を取得することはなかったとはいえないことの主張立証を試みることになります。また、会社としては、原告株主が主張する損害に、虚偽記載と無関係の事情による損害(株価の下落)が含まれていることを主張立証することになります。この点、西武鉄道事件最高裁判決は、経済情勢、市場動向、当該会社の業績に基づく下落は、虚偽記載と無関係の事情による損害であるとして、損害額からの控除を認めています。
原告株主は、虚偽記載がなければ、株式を取得することはなかったとまではいえないとしても、より低い価格で株式を取得できたはずだから、株式を不当な高値で取得したことが損害である(高値取得損害)と主張することもできます。
この場合、原告株主は、株式取得時における現実の取得価額と、虚偽記載がなかった場合の想定市場価額との差額をベースに、当該差額を超える市場価額の下落分についても虚偽記載と相当因果関係のある損害であると主張立証することが考えられます。この場合、高値取得を超える市場株価の下落分について、まず原告株主が虚偽記載と相当因果関係のある損害である旨を積極的に主張立証しなければならない点において、①取得自体損害の場合よりも主張立証責任の点で原告に不利といわれています。
これに対し、会社としては、原告株主が主張する損害に、虚偽記載と無関係の事情による損害(株価の下落)が含まれていることを主張立証することになります。
金商法21条の2第3項は、同項の要件を充たす株主が、以下の方法により算定された損害額を虚偽記載により生じた損害額と推定することを認めています。
虚偽記載の事実の公表日前1年以内に株式を取得し、当該公表日において引き続き当該株式を所有する株主は、以下の方法により損害額を算定することができる
推定損害額=公表日前1ヶ月間の当該株式の市場価額の平均額-公表日後1ヶ月間の当該株式の市場価額の平均額(※6)
ただし、金商法の推定規定を適用する場合でも、以下の方法により算出した金額が損害賠償額の上限となります(金商法21条の2第1項、19条1項)。
① 損害賠償請求時に株主が株式を所有している場合
損害額の上限=取得価額-損害賠償請求時の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)
② 損害賠償請求時までに株主が株式を処分していた場合
損害額の上限=取得価額-処分価額
原告株主が金商法の推定規定(金商法21条の2第3項)による損害を主張してきた場合、会社としては、推定損害額の全部又は一部が当該虚偽記載以外の事情により生じたことを主張立証し、損害額の減額を求めることになります(金商法21条の2第5項)。この場合、会社が推定損害額の全部又は一部が当該虚偽記載以外の事情(経済情勢、市場動向、当該会社の業績等)により生じたことの立証に成功すれば、当該事情による具体的な下落額まで証明できなくても、裁判所の裁量で相当な額の減額を認めることができます(同条6項)。
また、虚偽記載の事実の公表日がいつかによって推定損害額が大きく変わりうるので、会社としては、公表日と推定損害額の関係を検討し、必要であれば適切と考える公表日の時点を主張立証することになります。
(※5)他にも、虚偽記載の発覚によって生じた株価下落分を損害と捉えて請求する場合もあります。
(※6)市場価額がないときは、処分推定価額に読み替えて適用されます。
①株主が会社に対し民法上の一般不法行為規定(民法709条等)に基づいて損害賠償請求権を行使しようとする場合、株主が損害及び加害者を知った時から3年間経過したときは、株主の損害賠償請求権は時効消滅するとされています(不法行為の時から20年経過したときも同様です。)(民法724条)。
また、②株主が会社に対し金商法21条の2に基づいて損害賠償請求権を行使しようとする場合、株主が有価証券報告書等に虚偽記載等があることを知った時又は相当な注意をもって知ることができる時から2年間経過したときは、株主の損害賠償請求権は時効消滅するとされています(有価証券報告書の提出時から5年経過したときも同様です。)(金商法21条の3、20条)。
したがって、株主から有価証券報告書等の虚偽記載に基づく損害賠償請求を受けた会社としては、当該株主の主張する損害賠償請求権が、民法ないし金商法に定める消滅時効期間を経過したものでないかを検討し、必要であれば原告の請求権の時効消滅を主張立証することになります。
近時、株主からの証券訴訟は増加傾向にあり、リーディングケースとなる上記最高裁判例をベースに、裁判所の判断が徐々に積み重なりつつあるのが現状です。
仮に不正会計が発覚した会社において、株主から証券訴訟を提起された場合、その対応については関連法令や裁判例等についての専門的知識が必要となり、その対応の仕方により訴訟の帰趨が大きく変わることとなるため、慎重な対応が求められることとなります。