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2024.02.21

不動産特定共同事業(不特事業)に関する法律相談-約款変更の可否・変更認可の要否について-

<目次>
1. はじめに
2. よくあるご相談事項
(1) 不特契約は許可等に係る約款に「基づいて」行う必要がある
(2) 一定の限度で約款を修正して不特契約を締結することは可能である
(3) 約款変更の可否や変更認可の要否は具体的な修正内容によって異なる
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 本ニューズレターは、掲載時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではないことにご留意ください。また、本ニューズレター中意見にわたる部分は、執筆担当者個人の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではありません。

1. はじめに

 ここ数年、現物不動産(信託受益権化されていない不動産)を投資対象とする不動産特定共同事業法(不特法)に基づく投資(不動産小口投資)に関するご相談が増えています。
 近時の法改正により可能となったクラウドファンディング(CF)に関するご相談や、2023年11月20日に成立した不特法ST(セキュリティートークン)に係る法改正に関するご相談など、ご相談事項は多岐にわたりますが、この分野に関する実務的な見解が示された文献は未だ少ないように思われます。
 本ニューズレターでは、不動産特定共同事業(不特事業)を実際に行われている、あるいは、これから行われようとしている事業者様を念頭に、不特事業を進めるに当たってよくあるご相談事項とそれに対する法的規制や考え方をご紹介したいと思います。

2. よくあるご相談事項

<ご相談事項>
当社は、不動産特定共同事業法第2条第4項第1号に係る事業について当局の許可を受けて、一般投資家を相手方とする不動産特定共同事業を行っています。
今般当社が計画している不動産小口化商品においては、当社が許可申請の際に当局に添付して提出した不動産特定共同事業契約約款の内容を一部修正する形で契約を締結することを検討しています。
このような修正を行うことに法的な問題はないでしょうか。

(1) 不特契約は許可等に係る約款に「基づいて」行う必要がある

 不特事業を営もうとする者は、主務大臣又は都道府県知事の許可等を受ける必要があります(不特法第3条第1項、第41条第1項)。不特法第2条第4項第1号に掲げる行為に係る事業(第1号事業)の許可の申請に際しては、主務大臣又は都道府県知事に対し、不特法第5条第1項各号の事項を記載した許可申請書を提出する必要があり、この際、不動産特定共同事業契約約款(約款)等を添付する必要があります(不特法第5条第2項第4号)。(※1)(※2)(※3)
 不動産特定共同事業者(不特事業者)は、不動産特定共同事業契約(不特契約)の締結をする場合、許可等に係る約款に「基づいて」これを行う必要があるとされています(不特法第23条第1項)。(※4)
 そのため、上記のご相談にあるように約款の内容を一部修正して不特契約を締結しようとする場合、修正後の不特契約が約款に「基づいて」締結されたものといえるかが法的には問題となります。修正後の不特契約の内容が約款に基づくものといえない場合、不特法第9条第1項第2号に基づく約款の追加又は変更の認可を受けることを検討する必要があります。

(※1)許可申請書等の様式については国土交通省のウェブサイト上で公表されています(こちらのリンク)。
(※2)主務大臣又は都道府県知事による許可の基準として「不動産特定共同事業契約約款の内容が政令で定める基準に適合するものであること」が要件とされています(不特法第7条第5号、不特法施行令第6条、不特法施行規則第11条)。なお、特例投資家のみを相手方又は事業参加者として第1号事業を行おうとする場合については約款の提出及び審査は不要とされています(不特法第5条第2項、第7条)。
(※3)小規模不動産特定共同事業については、主務大臣又は都道府県知事の登録が必要となり、主務大臣又は都道府県知事に対し、約款を添付した登録申請書を提出する必要があります(不特法第42条第1項及び第2項第4号)。もっとも、約款に関する定めは不特法第50条第2項において不特法第23条第1項が準用されていますので、本ニューズレターでは「許可等に係る約款」として、小規模不動産特定共同事業の登録に係る約款を含む表現としています。
(※4)特例投資家のみを相手方又は事業参加者として不特契約を締結する場合であって、当該不特契約上の権利義務を他の特例投資家以外の者に譲渡することが禁止されているときについては不特法第23条第1項の適用はありません(不特法第68条第3項)。

(2) 一定の限度で約款を修正して不特契約を締結することは可能である

 国土交通省の公表している令和3年3月31日施行「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」(監督留意事項)第7-5(1)においては、不特事業者が締結する不特契約は、許可等に係る約款に基づいて締結する必要があるものの、「必ずしも不動産特定共同事業契約約款と一字一句同一の文言の契約である必要はなく、不動産特定共同事業契約において字句を修正する程度のものは法第23条に反するものではない」とされています(監督留意事項第7-5(1))。
 また、監督留意事項第7-5(2)においては、「令第6条及び規則第11条に規定する不動産特定共同事業契約約款の内容の基準に反しない範囲で、かつ、法第3条第1項の許可…に係る不動産特定共同事業契約約款の内容に反しない範囲個別に合意した内容を規定した不動産特定共同事業契約を締結することは法第23条に反するものではない」とされています(※5)。監督留意事項第7-5(3)においては、「規則第14条…に規定する軽微な追加又は変更に該当する事項についての不動産特定共同事業契約約款の変更については、法第9条第1項の認可…を受ける必要はない」とされています。(※6)(※7)(※8)
 したがって、不特契約を締結するに際し、上記のような限度で約款ないし不特契約の内容を一部修正することは問題ないものと考えられます。他方で、これを超える修正を行う場合には、不特法第23条第1項に反することになり、不特法第9条第1項第2号に基づき主務大臣又は都道府県知事から約款の追加又は変更について認可を受けることを検討する必要があるものと考えられます。

(※5)約款に定められなければならない事項(約款記載事項)は不特法施行令第6条第1項各号及び不特法施行規則第11条第1項各号に定めがあり、約款の内容の基準(内容基準)については不特法施行令第6条第2項及び不特法施行規則第11条第2項各号に定めがあります。内容基準については、約款記載事項ごとに詳細な基準が定められています。
(※6)「軽微な追加又は変更」とは、不特法施行令第6条第1項第1号から第8号までに掲げる事項及び同法施行規則第11条第1項に掲げる事項(第11条第1項第9号に掲げる事項のうち、不特契約に基づき営まれる不動産取引に係る業務の委託先の商号又は名称及び住所を除く)以外の事項の追加又は変更をいいます(不特法施行規則第14条)。
(※7)監督留意事項第7-5(3)は「不動産特定共同事業契約約款」の変更についての記載であるため、理論的には許可等に係る約款自体の修正に関するものと考えられます。
(※8)これらの項目はパブリックコメント(2013年12月20日公表)No.2の意見を踏まえて規定されたものと考えられます。

(3) 約款変更の可否や変更認可の要否は具体的な修正内容によって異なる

 上記のご相談事項からは約款について具体的にどのような修正を行うことを想定されているのか明らかではありませんが、例えば、修正を予定されている事項が、不特事業者の報酬に係る規定に関するものである場合には、報酬に関する記載は約款記載事項(不特法施行令第6条第1項第8号)であり、「軽微な追加又は変更」に該当する事項(不特法施行規則第14条)には当たりませんので、約款の定めと異なる定めを不特契約に設けるということであれば、不特法第23条第1項に抵触する可能性が高いものと思われます。そのため、そのような修正を行う場合には、不特法第9条第1項第2号に基づき主務大臣又は都道府県知事から約款の追加又は変更について認可を受ける必要があるものと考えられます。
 他方で、約款記載事項として法定されていない任意に約款に定められた事項の変更等については、「軽微な追加又は変更」に該当するものとして認可を受ける必要はないものと考えられます(不特法第9条第1項第2号括弧書)。
 以上のとおり、約款変更の可否や変更認可の要否は修正内容によって異なりますので、個別具体的な修正内容を踏まえた検討をする必要があります。実務的には「許可…に係る不動産特定共同事業契約約款の内容に反しない」か否かや「軽微な追加又は変更」に該当する事項といえるかの判断が難しい場合も多く、慎重な検討が必要となります。

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以 上

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