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牛島総合法律事務所 環境法プラクティスチーム
<目次>
1. EU「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」
(1) 適用対象企業の範囲
(2) 規制の内容
(3) 罰則等
2. EU「企業サステナビリティデューデリジェンス指令(CSDDD)」
(1) 適用対象企業の範囲
(2) 規制の内容
(3) 罰則等
3. その他の海外規制
4. 日本における環境DD・開示

昨今、日本国外においてもESG関連の規制の制定が相次いでいるところ、海外で事業を行う企業はかかる規制の直接の適用対象となり、また、直接の適用を受けない企業も、取引先が海外規制の適用対象企業である場合には、間接的に影響を受けることがあるため注意が必要となります。

以下では、EUにおけるESG関連規制として近時制定されたものについて、簡単にご紹介します。
なお、国内のESG関連規制(環境規制)については、以下を参照してください。

1. EU「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」(※)

 EUが制定した「企業サステナビリティ報告指令」(Corporate Sustainability Reporting Directive(CSRD))が、2023年1月5日より発効しています。
 CSRDとは、概要、適用対象企業に対してサステナビリティ事項(sustainability matters)の開示等を求めるものです。また、サステナビリティ事項とは、環境、社会、人権、ガバナンス等を含む概念です(CSRD1条1(2)(b))。

 ※EUR-Lex「Corporate Sustainability Reporting Directive

(1) 適用対象企業の範囲

 CSRDの適用対象となる企業は、段階的に拡大され、最終的にはEUの域外適用となる企業を含めて約5万社になると見込まれています。具体的には、以下のとおりに順次適用範囲が拡大されていく予定となっています。

① 2024年会計年度から「非財務及び多様性情報の開示に関する改正指令」(Non-Financial Reporting Directive(NFRD))の対象企業(従業員500人以上の公益事業体及び従業員500人以上の大規模グループの親会社である企業)が開示義務を負います。
② 2025年会計年度からNFRD適用外の大規模企業(※1)が義務を負います。
③ 2026年企業会計年度からEU域内で上場する中小企業等(※2)が義務を負います。
④ 2028年会計年度から一定の要件を満たすEU域外企業(※3)が義務を負います。

※1 「大規模企業」とは、(i) 総資産が2000万ユーロ以上、(ii) 純売上高が4000万ユーロ以上、(iii) 従業員数が250人以上という基準のいずれか2つを満たす企業をいいます。
※2 「中小企業」とは、(i) 総資産が2000万ユーロ、(ii) 純売上高が4000万ユーロ、(iii) 従業員数が250人という基準の2つを超えない企業をいいます。
※3 ④の対象となるEU域外企業とは、EU域内の連結売上高が2会計年度連続して1億5000万ユーロを超え、かつEU域内における子会社が大規模企業若しくは上場企業に該当すること、又はEUにおける支店のEU域内の直近会計年度における売上高が4000万ユーロを超える企業をいいます。

(2) 規制の内容

 CSRDにおいて開示が求められる事項は、「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」によって別途定められることとされており(CSRD1条(8))、ESRSは、横断的基準(cross-cutting基準)と環境、社会、ガバナンスに関するトピック別基準を定めています。環境に関しては、気候変動、水と海洋資源、資源利用・サーキュラーエコノミー、汚染、生物多様性等のトピックについて開示することとされています(ESRS E1~E5)。
 また、CSRDでは、ダブルマテリアリティの原則が採用されており、対象企業は、サステナビリティ事項が企業の業績の推移や状況(財務的マテリアリティ)に与える影響のみならず、企業活動がサスティナビリティ事項(環境・社会マテリアリティ)に与える影響についても開示する必要があります。

(3) 罰則等

 CSRDに違反に違反した場合の罰則は、個々の加盟国の国内法によって決定されます。例えば、フランスでは、CSRDに違反した企業の取締役に対し、最高7万5000ユーロの罰金及び最高5年の懲役が科される可能性があります。

2. EU「企業サステナビリティデューデリジェンス指令(CSDDD)」(※)

 また、EUでは「企業サステナビリティデューデリジェンス指令」(Corporate Sustainability Due Diligence amending Directive(CSDDD))が制定されています。具体的には、人権や環境に関するリスクを特定して是正するデューデリジェンスを企業に義務付けるものであり、方針の策定や負の影響の特定と防止・軽減、「苦情処理メカニズム」の構築等のデューデリジェンスのプロセスを詳細に規定した内容となっています。CSDDDは、2023年12月14日、欧州議会及び理事会がその内容について暫定合意をし、2024年3月15日開催のEU理事会においてその修正案が採択され、同年4月24日に欧州議会によって最終的に採択されました。

※ Council of the European Union「Corporate Sustainability Due Diligence and amending Directive

(1) 適用対象企業の範囲

 EU域内の企業のうち、以下の①ないし③のいずれかに該当する企業はCSDDDの適用対象となります(CSDDD 2条1項)。

① 従業員数が1000名以上で、全世界での純売上高が4億5000万ユーロを超える企業
② 連結ベースで①に達したグループの最終親会社
③ EU域内でフランチャイズまたはライセンス契約を締結している企業またはグループの最終親会社であり、EU域内のロイヤリティが2250万ユーロを超え、かつ当該企業またはグループの全世界の純売上高が8000万ユーロを超える企業

 また、EU域外の企業であっても、以下の①ないし③のいずれかに該当する場合にはCSDDDの適用対象となります(CSDDD 2条2項)。

① EU域内での純売上高が4億5000万ユーロを超える企業
② 連結ベースで①に達したグループの最終親会社
③ EU域内でフランチャイズまたはライセンス契約を締結している企業またはグループの最終親会社であり、EU域内のロイヤリティが2250万ユーロを超え、かつ当該企業またはグループのEU域内における純売上高が8000万ユーロを超える企業

 CSDDDは、以下のとおり、段階的に適用されていく予定です。

① 2027年からは、従業員5000人以上、全世界での純売上高が15億ユーロを超える企業
② 2028年からは、従業員3000人以上、全世界での純売上高が9億ユーロを超える企業
③ 2029年からは、すべてのCSDDD対象企業(従業員1000人以上、全世界での純売上高が4億5000万ユーロを超える企業を含む。)

(2) 規制の内容

 対象企業は、以下の①ないし⑦について対応をする必要があります(CSDDD4条)。

① デューデリジェンスを企業の方針の中に取り込むこと(CSDDD 5条)
② 人権および環境に関する実際のまたは潜在的な負の影響を特定すること(CSDDD 6条)
③ 潜在的な負の影響を防止または軽減すること、および実際の負の影響を是正すること(CSDDD 7条)
④ 実際の負の影響なくし、または最小化すること(CSDDD 8条)
⑤ 苦情に関する制度を策定し、これを維持すること(CSDDD 9条)
⑥ デューデリジェンスに関する方針と各措置の有効性についてモニタリングすること(CSDDD 10条)
⑦ デューデリジェンスの取組状況について公表すること(CSDDD 11条)

 なお、今後、欧州委員会がガイドラインを作成する予定であり(CSDDD13条)、また、CSDDDの発効から30か月以内にモデル契約条項に関するガイダンスを採択するとされています(CSDDD 12条)。いずれも実務において参考になるものと考えられるため、今後の動向を注視する必要があります。

(3) 罰則等

 CSDDDに違反に違反した場合の具体的な罰則の内容は加盟国の国内法で整備されますが、上記規制に反した企業は、同企業の全世界の年間純売上高の5%を上限とする制裁金が科される可能性があるため注意が必要です(CSDDD 20条3項)。

3. その他の海外規制

 なお、2024年3月4日、EU理事会及び欧州議会が、欧州委員会により提案されていた包装及び包装廃棄物規則案につき暫定的な政治合意に達したとのプレスリリースが発表され、同月15日に合意法案が公開されました(REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on packaging and packaging waste, amending Regulation (EU) 2019/1020 and Directive (EU) 2019/904, and repealing Directive 94/62/EC)。
 この点は、猿倉健司・堀田稜人「EUの包装および包装廃棄物規則2024年合意案について」(牛島総合法律事務所ニューズレター、2024年4月17日)を参照してください。

4. 日本における環境DD・開示

 上記はいずれも、EU域内の企業だけでなくEU域内の売上高が一定規模以上の域外企業も対象になることから、日本企業も対応が必要となる場合があります。
 また、日本企業自体が対象企業に該当しない場合であっても、取引先が対象企業である場合には、上記各事項の取り組み状況等の確認を求められることがあり得ます。
 サステナビリティ開示をはじめとするESG規制については、近年国内外において様々な発効・改正が相次いでいることから、注意が必要です。特に海外の規制にあたっては、海外の法律事務所と提携している法律事務所に、適宜規制内容・対応のアップデートを依頼することも考えられます。

 なお、日本においても、①有価証券報告書におけるサステナビリティ開示の充実を求める開示府令等の改正、②金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループが日本におけるサステナビリティ開示基準の策定に関する報告書を発表、③サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が(i)サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用(案)」、(ii)サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第一号「一般開示基準(案)」、(iii)同第二号「気候関連開示基準(案)」を公開し、意見募集を開始する、等の動向がみられます。

以 上

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