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事務所概要・アクセス
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<目次>
1. はじめに
2. 令和6年(2024年)金融商品取引法改正(投資運用業者の参入促進に関する改正)について
3. 投信運用業の登録要件・審査手続のポイント
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本ニューズレターは、掲載時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではないことにご留意ください。また、本ニューズレター中意見にわたる部分は、執筆担当者個人の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではありません。
「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」(閣法第56号)が第213回国会で可決され、令和6年5月22日に公布されました(以下「本改正」といいます。)。本改正には、投資運用業者の参入促進に関する改正が含まれており、同改正については公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されるものとされています(本改正附則第1条柱書本文)。
本ニューズレターでは、投信運用業者の参入促進に関する令和6年(2024年)金融商品取引法(金商法)の改正の概要や既存の投資運用業者に求められる対応を整理するとともに、これから投信運用業を行うことを検討している業者を念頭に、投資運用業の登録要件や審査手続を進めるに当たってのポイントを簡単にご紹介します。
本改正においては、「投資運用関係業務受託業者」(後記(2)参照)に投資運用業等に関して行う計理及びコンプライアンスに係る業務(ミドル・バックオフィス業務)を委託することで、投資運用業への登録要件(人的要件)を緩和することとされています(改正金商法第29条の4第1項第1号の2)。
具体的には、現行法上、投信運用業の登録申請において、「その行う業務に関する十分な知識及び経験を有する役員又は使用人の確保の状況並びに組織体制に照らし、当該業務を適正に遂行することができないと認められること」が登録拒否要件とされていましたが(現行金商法第29条の4第1項第1号ホ、金商業等府令第13条第1号)、本改正により、金商法第29条の4第1項第1号の2が新設され、登録申請者がミドル・バックオフィス業務を「投資運用関係業務受託業者」に委託する場合については、当該業務の監督を適切に行う能力を有する役員又は使用人を確保していれば足りる(登録拒否要件に該当しない)との改正がなされています。かかる改正により、例えば、コンプライアンス業務に関する経験を有する専任の担当者の確保が不要になるなど、人的な側面からの負担が軽減されることになるものと考えられます。
また、財務的な側面からの負担軽減措置として、政令改正事項になりますが、金融庁の説明資料によれば、投資運用業者が金銭等の預託を受けない場合について、資本金要件(現行法上5000万円)を1000万円に引き下げることが例示されています。このこととの関係で、投資運用業者が金銭又は有価証券(金銭等)の預託を受けず、かつ、自己と密接な関係を有する者として政令で定める者に顧客の金銭等を預託させない場合について、その旨を登録申請書に記載することとする改正がなされています(改正金商法29条の2第1項5号の2)。
本改正においては、投資運用業等に関して行う計理及びコンプライアンスに係る業務(ミドル・バックオフィス業務)について「投資運用関係業務」との定義規定が設けられています(改正金商法第2条第43項)。また、投資運用業等を行うことができる者の委託を受けて、その者のために投資運用関係業務のいずれかを業として行うことについて「投資運用関係業務受託業」との定義規定が設けられたうえで(改正金商法第2条第44項)、投資運用関係業務受託業を行う者(投資運用関係業務受託業者)について登録制度が設けられています(改正金商法第2条第45項、第66条の71~75)。
投資運用関係業務受託業者に対しては、誠実義務(改正金商法第66条の76)や忠実義務・善管注意義務(同第66条の77)のほか、業務管理体制の整備(同第66条の78)や名義貸しの禁止(同案第66条の79)その他の義務(同第66条の80、81)が課され、監督に関する規定(同第66条の82~89)も設けられています。
また、本改正においては、投資運用業者がファンドの運営機能(企画・立案)に特化し、様々な運用業者への運用(投資実行)権限を委託できるようにする改正も行われています。
具体的には、現行の金商法や投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)においては、運用権限や運用指図権限の全部委託はできないこととされていますが(現行金商法第42条の3第2項、投信法第12条第1項)、本改正においては、これらの規定を削除し、投資運用業者が運用(投資実行)権限を全部委託することを可能とするとともに、運用(投資実行)権限を委託する場合について、委託元(ファンドの企画・立案をする投資運用業者)が運用の対象や方針を決定し、委託先を管理することを義務付けることとされています(改正金商法第42条の3第2項)。
具体的な条項は以下のとおりです。内閣府令については今後公表されることになるものと考えられます。
現行金商法第42条の3 | 改正金商法第42条の3 |
第42条の3(略) 2. 金融商品取引業者等は、前項の規定にかかわらず、すべての運用財産につき、その運用に係る権限の全部を同項に規定する政令で定める者に委託してはならない。 3. (略) | 第42条の3(略) 2. 金融商品取引業者等は、前項の規定により委託をする場合においては、当該委託を受ける者に対し、運用の対象及び方針を示し、かつ、内閣府令で定めるところにより、運用状況の管理その他の当該委託に係る業務の適正な実施を確保するための措置を講じなければならない。 3. (略) |
本改正施行の際に現に投資運用関係業務を委託している金融商品取引業者については、施行日において改正金商法29条の2第1項12号に掲げる事項(投資運用関係業務を委託する旨並びに委託先の商号、名称又は氏名及び当該委託先に委託する投資運用関係業務の内容等)について変更があったものとみなして改正金商法第31条第1項が適用され、変更(すなわち施行日)から6か月以内に当局へ届け出ることが必要になります(本改正附則第8条第1項)。
また、改正法施行の際、現に金銭等の預託を受けていない金融商品取引業者は施行日から6か月以内に内閣府令で定めるところにより、その旨を記載した申請書を当局に提出する必要があります(この場合、当該申請が改正金商法第31条第4項の変更登録の申請とみなされることになります。本改正附則第7条)。
現行法上の投資運用業の主な登録要件は以下のとおりです。上記の法改正等に伴い、赤字箇所について変更され、登録要件が緩和されることになります。
資本金・純財産額 | ・ 原則5000万円以上であること (注)但し、適格投資家向けの投資運用業については1000万円(金商法第29条の5第1項、同法施行令第15条の7第7号) |
人的構成要件 | ・ 経営者:経歴及び能力等に照らして、金融商品取引業者としての業務を公正かつ的確に遂行することができる資質を有していること ・ 常務に従事する役員:金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、及び金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験を有すること ・ 資産運用担当者:資産運用を行う者として、運用を行う資産に関する知識及び経験を有する者が確保されていること ・ コンプライアンス担当者:資産運用部門とは独立してコンプライアンス部門(担当者)が設置され、その担当者として十分な知識及び経験を有する者が十分に確保されていること(外部委託は不可) |
法人要件 | ・ 株式会社(取締役会及び監査役、監査等委員会又は指名委員会等を置くものに限る)又は外国の法令に準拠して設立された取締役会設置会社と同種類の法人 |
営業所・事務所設置要件 | ・ 国内に営業所又は事務所を有すること |
主要株主要件 | ・ 個人:心身の故障により株主の権利を適切に行使できない者でない ・ 法人:5年以内の登録取消処分・罰金刑がない、他業が公益に反しない等 |
登録拒否要件 | ・ 5年以内の登録取消処分・罰金刑がない ・ 他業が公益に反することがない等 |
不動産関連特定投資運用業を行う場合の要件 | ・ 不動産投資顧問業登録規程第3条1項の総合不動産投資顧問業者としての登録を受けている者であること、又はその人的構成に照らして、当該登録を受けている者と同程度に不動産関連特定投資運用業を公正かつ適確に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であると認められること |
不動産を投資対象とする登録投資法人・投資信託の運用業務に関する要件 | ・ 不動産を投資対象とする登録投資法人又は投資信託(委託者指図型投資信託)の運用を行う場合は、宅地建物取引業者としての免許を受けている者であること ・ 当該登録投資法人又は投資信託が運用資産の50%超を不動産に対する投資として運用することを目的とする場合には、宅地建物取引業法第50条の2に定める取引一任代理等について国土交通大臣の認可を受けた者であること |
登録審査手続については、金融庁より「投資運用業等登録手続ガイドブック」が公表されていますので、こちらを参照しつつ手続を進めることになります。
詳細は同ガイドブックに記載のとおりですが、日本語で登録手続を行う場合については、大要、以下の①~③の流れで行うことになります。実際に手続を進めるに当たっては、多数の書面作成や財務局とのやり取りが必要となるため、法律専門家に相談するなどした上で慎重に行う必要があります。
事前相談は、申請者の想定している事業スキームや組織体制等について当局より確認が行われるとともに、法令・監督指針との整合性や提出書類の内容等について事前に審査を行うことを目的とするものです。
事前相談に要する期間は、事業スキームの規模や複雑性などの様々な事情によって大きく異なる可能性があるものの、平均的には概ね3~4か月程度とされています。
事前相談において必要な事項の確認が完了次第、登録申請書類の作成・提出を行うことになります。登録申請書には、各種添付書類を添付する必要があります。具体的な添付書類は法令や「投資運用業等登録手続ガイドブック」をご参照ください。
法令上は、自主規制機関(金融商品取引業協会)への加入は任意とされています。
もっとも、「投資運用業等登録手続ガイドブック」においては、投資運用業を行う金融商品取引業者については、一部の例外を除き、基本的に対応する協会に加入するものとされていますので留意が必要です。
・2024/09/06 ニューズレター
「第二種金融商品取引業の登録手続の概要と申請書類作成のポイント」
以上