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<目次>
1. 用語の説明
(1)「再資源化」
(2)「再資源化事業等の高度化」
2. 再資源化の促進
3. 再資源化事業等の高度化の促進
(1) 高度再資源化事業(1号)
(2) 高度分離・回収事業(2号)
(3) 再資源化工程の高度化(3号)


リサイクル事業等の高度化の促進に関し、判断基準となるべき事項の策定、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者(※)のリサイクルの実施状況等の報告及び公表、並びに再資源化事業等の高度化に係る認定制度の創設等の措置を講ずること等を内容とする「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(以下「再資源化事業等高度化法」といいます。)が、令和6(2024)5月29日に公布されました。同法は、令和7(2025)年2月1日に施行されることが、同年1月10日に閣議決定され、同月16日に資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律の一部の施行期日を定める政令資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律第十条第一項の要件を定める政令、及び廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を定める省令が公布されました。施行日が間近に迫っているため、以下で説明する特定産業廃棄物処分業者に該当し得る企業は早めの対策が必要になります。
  ※ ①当該年度の前年度において処分を行った産業廃棄物の数量が10,000トン以上であること、②当該年度の前年度において処分を行った廃プラスチック類の数量が1,500トン以上であることが要件とされています(資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律第十条第一項の要件を定める政令)。

1. 用語の説明

(1)「再資源化」

再資源化とは、廃棄物(※)の全部又は一部を部品又は原材料その他製品の一部として利用することができる状態にすることをいいます(再資源化事業等高度化法2条1項)。
※ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」といいます。)2条1項に規定する廃棄物をいいます。

(2)「再資源化事業等の高度化」

「再資源化事業等の高度化」とは、下記①ないし④の措置を講ずることにより、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出(※)の量の削減の効果が増大することをいいます(再資源化事業等高度化法2条2項)。

① 高度再資源化事業(1号)
物の製造、加工又は販売の事業を行う者の需要に応じた再資源化事業(再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の事業)の実施その他の再資源化事業の効率的な実施のための措置

② 高度分離・回収事業(2号)
廃棄物から有用なものを分離するための技術の向上その他の再資源化の生産性の向上のための措置

③ 再資源化工程の高度化(3号)
再資源化の実施の工程を効率化するための設備の導入その他の当該工程から排出される温室効果ガス(※)の量の削減のための措置

④ ①~③のほか、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出の量の削減に資する措置(4号)
※ 地球温暖化対策の推進に関する法律2条4項に規定する温室効果ガスの排出をいいます。

2. 再資源化の促進

再資源化事業等高度化法では、資源循環産業のあるべき姿を示し、資源循環産業全体の底上げを図るため、再資源化事業等の高度化の促進に関する廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を環境省令で定めることとされています(再資源化事業等高度化法8条)。これを受けて、令和7(2025)年1月16日に公布された廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を定める省令において、主に以下の①ないし⑤の廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項が定められました。

① 再生部品又は再生資源に対する需要の把握及び供給に関する事項(同省令2条)
② 技術の向上に関する事項(同省令3条)
③ 温室効果ガスの量を削減するための設備の改良又はその運用の改善に関する事項(同省令4条)
④ 再資源化の実施の目標の設定及び当該目標を達成するための措置に関する事項(同省令5条)
⑤ その他再資源化事業等の高度化及び再資源化の実施の促進に関し必要な事項(同省令6条)

また、資源循環の促進に向けた情報基盤を整備して、製造業者等とのマッチング機会の創出を通じた産業の底上げを図るため、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者(以下「特定産業廃棄物処分業者」といいます。)の再資源化の実施状況を報告させ、これを環境大臣が公表することとされています(再資源化事業等高度化法38条)。
なお、上記報告の結果、再資源化の実施状況が、再資源化事業等高度化法8条に規定する判断基準に照らして著しく不十分であると判断された場合、特定産業廃棄物処分業者は、環境大臣から再資源化の実施に関し必要な措置をとるべき旨の勧告を受ける可能性がある点に注意が必要です(再資源化事業等高度化法10条1項)。 

3. 再資源化事業等の高度化の促進

先進的な再資源化事業等の高度化の取り組みについて、環境大臣が認可する制度が創設されました。
本来廃掃法上は、廃棄物の処理を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長又は都道府県知事等の許可を受けなければならず(廃掃法7条1項、6項及び同法14条1項、6項)、また、廃棄物処理施設を設置する場合には、当該施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければなりません(廃掃法8条1項及び15条1項)。
しかし、再資源化事業等高度化法の認定を受けることにより、認定計画の範囲内で、廃掃法上の許可を受けずに再資源化に必要な行為を業として行い、また、廃棄物処理施設を設置することができるようになります。
以下、再資源化事業等高度化の内容ごとに説明します。
なお、再資源化事業等の高度化に関する認定基準については、再資源化事業等の高度化に関する認定基準検討ワーキンググループで審議される予定です。

(1) 高度再資源化事業(1号)

再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分の事業(以下「高度再資源化事業」といいます。)を行おうとする者は、高度再資源化事業計画を作成し、環境大臣の認定を受けることによって、認定計画の範囲内で、廃掃法による許可を受けずに再資源化に必要な行為を業として実施し、廃棄物処理施設を設置することができます(再資源化事業等高度化法11条、13条)。
つまり、国による一括認定により、地方公共団体ごとに必要となる廃掃法の許可について、迅速かつシームレスに実現することが可能となります。
これにより、製造業者が求める質・量の再生材を供給するため、その資材として利用可能な特定の廃棄物を複数の地方公共団体をまたがって広域的に収集し、質の高い再資源化を実施する事業を促進することが期待されます。
高度再資源化事業の対象としては、プラスチックのマテリアルリサイクル(※1)、ペットボトル等の水平リサイクル(※2)、アルミニウム等の金属類の水平リサイクル等が想定されています。

※1 マテリアルリサイクルとは、例えば、びんを砕いてカレットにした上で再度びんを製造する場合、アルミ缶を溶かしてアルミ缶その他のアルミ製品を製造する場合など、廃棄物等を原材料として再利用することをいいます。
※2 水平リサイクルとは、例えば、使用済ペットボトルを原料として再びペットボトルを製造する場合など、使用済製品を原料として用いて同一種類の製品を製造するリサイクルのことをいいます。

なお、再資源化に関する国内外の規制については、以下も参照してください。
※ 猿倉健司「プラスチック資源循環促進法(2022年4月施行)において排出事業者の盲点となる実務的措置」(BUSINESS LAWYERS・2022年6月28日)
※ 猿倉健司・堀田稜人「EUの包装および包装廃棄物規則2024年合意案について」(牛島総合法律事務所 ニューズレター・2024年4月17日)

(2) 高度分離・回収事業(2号)

高度な技術を用いて廃棄物から有用なものの分離及び再生部品・資源の回収を行う再資源化のための廃棄物の処分の事業(以下「高度分離・回収事業」といいます。)を行おうとする者は、高度分離・回収事業計画を作成し、環境大臣の認定を受けることによって、認定計画の範囲内で廃掃法による許可を受けずに、再資源化に必要な行為を業として実施し、廃棄物処理施設を設置することができます(再資源化事業等高度化法16条、18条)。
最先端の技術を用いた分離・回収等を必要とする再資源化は、国内に事例が少なく、適正処理の妥当性を判断することが容易でないことから施設の設置についての審査に時間がかかるところ、国が最新の知見を踏まえ迅速に認定することを狙いとしています。
高度分離・回収事業の対象としては、太陽光や風力の発電設備、リチウムイオン電池、使用済み紙おむつ等のリサイクルが想定されています。

(3) 再資源化工程の高度化(3号)

再資源化の工程を効率化するための設備や温室効果ガスの量の削減に資する設備の導入(「再資源化工程の高度化」といいます。)を行おうとする者は、再資源化工程高度化計画を作成し、環境大臣の認定を受けることによって、認定計画に従って行う設備の導入については、廃掃法による許可を受けたものとみなされます(再資源化事業等高度化法20条、21条)。
先進的な高性能の温室効果ガス削減に資する設備を廃棄物処理施設に導入する事例は国内では少なく、その妥当性を判断することが容易でないことからその導入が進んでいないところ、国の認定を通じて設備導入を促進し、脱炭素と資源循環を加速させることを目的としています。

リサイクル事業等の新規ビジネスにおける廃棄物処理判断と行政対応については、以下も参照してください。
※ 猿倉健司「新規ビジネスの可能性を拡げる行政・自治体対応 ~事業上生じる廃棄物の他ビジネス転用・再利用を例に~」(牛島総合法律事務所 特集記事・2023年1月25日)、「事業上生じる副生物・廃棄物を他のビジネスに転用・再利用する場合の留意点」(Business & Law・2023年9月14日)、「廃棄物・環境法規制と行政処分への対応(不要物の転用・リサイクル目的での再生利用を例に)」(牛島総合法律事務所ニューズレター・2023年9月23日)

なお、環境省は2025年度の税制改正で再資源化事業等高度化法の認定を受けた事業者について、事業者が設備投資にかけた費用の一定割合を法人税から控除する減税措置を求めており(※)、その動向にも注目する必要があります。
※ 環境省「令和7年度税制改正要望事項(新設)

(参考資料)

以 上

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