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セミナー
事務所概要・アクセス
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<目次>
1.指導、勧告事例から見えてくる留意事項
2.公正取引委員会が特に取りまとめた留意事項
(1)買いたたきの禁止、不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
(2)報酬の減額の禁止(振込手数料の差引)
(3)報酬の減額の禁止(改定後の単価の遡及適用)
3.小括
2024年11月1日、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス保護法」といいます。(※1))が施行され、1年超を経過しました。その間、公正取引委員会による指導及び勧告事例が公表されており、留意すべき事項が見受けられますので、紹介します。また、公正取引委員会は同法第5条の禁止行為に関する留意点を特に取りまとめていますので、この点についても紹介します。(※2)
なお、同法については、以下のニューズレターにおいても解説しています(ただし、解説当時の情報に基づくものです)。
(※1)「フリーランス法」「フリーランス新法」「フリーランス・事業者間取引適正化等法」との略称が用いられることもありますが、本ニューズレターにおいては「フリーランス保護法」といいます。
(※2)令和7年12月10日付け公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導等について」別紙2(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条の各規定に関する留意点)
公正取引委員会が公表している指導及び勧告事例の特徴は、①取引条件の明示義務違反(同法第3条違反)及び②期日における報酬支払義務違反(同法第4条違反)が問題になっている事例が非常に多いことです。たとえば、令和7年度の同法の勧告事例のうち全件(9件)で上記①の明示義務違反が認められており、1件を除く全件(8件)で上記①及び②の両義務の違反が認められています。(※3)
特に留意すべきは、上記①取引条件の明示義務違反の場合に、そのまま上記②期日における報酬支払義務違反に至る可能性がある点です。
すなわち、上記①取引条件の明示義務違反の典型は、発注時に報酬の支払期日を含む取引条件の明示がなされなかったというケースですが、同法上、報酬の支払期日が定められなかったときは給付を受領した日又は役務の提供を受けた日が報酬の支払期日とみなされます(同法第4条2項)。この場合、発注事業者は、給付を受けた日や役務の提供を受けた日までに報酬を支払っていない限り、これらの日から60日以内に報酬を支払っていても報酬の支払義務違反となります。給付を受けた日や役務の提供を受けた日までに報酬を支払っていることは稀でしょうから、この場合には上記①の明示義務違反からほぼそのまま上記②の報酬支払義務違反に至ります。
前述の令和7年度の勧告事例においても、1件を除く全件(8件)がこのケースに該当して上記①取引条件の明示義務違反と上記②期日における報酬支払義務違反の両方が認定されているため、十分に留意するべきです。
上記事態を避けるための対応はシンプルです。
発注書面であれ、契約書であれ、取引条件の明示義務を充足する形で整備して、それをフリーランスに交付ないし送信して明示することです。このようにすれば、発注書面又は契約書に定めた報酬の支払期日が適用されますので、その支払期日どおりに報酬を支払えば足ります。
なお、上記の他にも、特に指導事例を見ると(※4)、法定の明示事項のうち一部の明示がないものや、報酬の支払期日を定めていても請求書受領日基準となっているため同法違反となるおそれがあるものなどが指摘されています。これらを避けるための対応もまた、上記のとおり発注書面又は契約書において取引条件を正しく明示すれば足ります。
したがって、発注事業者においては、自社の発注書面又は契約書の内容が明示事項を網羅できているか、同法違反となる内容となっていないかを見直すことが重要と考えられます。
(※3)公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法勧告一覧(令和7年度)」
(※4)令和7年3月28日付け公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導について」、令和7年12月10日付け公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導等について」別紙1
公正取引委員会は、法適用の透明性及び事業者の予見可能性を確保するため、これまでの運用を踏まえた留意点として、同法第5条の禁止行為について特に取りまとめています。ここで取りまとめられた事項については、違反すると指導、勧告に至るおそれが相当程度あると考えられますので、十分に注意する必要があります。(※5)具体的には以下の3点です。
| 買いたたきの禁止(同法5条1項4号) 「四 特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること。」 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(同法5条2項2号) 「2 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、次に掲げる行為をすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。 (略) 二 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の内容を変更させ、又は特定受託事業者の給付を受領した後(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた後)に給付をやり直させること。」 |
約5か月後のイベント実演の委託において、発注事業者が自社の都合(イベントの参加者が集まらなかった)で、当該イベントを開催直前に中止し、当該業務委託をキャンセルしたという事例について、公正取引委員会は概要以下のとおり解説しています。
上記については、解釈ガイドライン39頁では、「給付内容の変更ややり直しによって、特定受託事業者がそれまでに行った作業が無駄になり、又は特定受託事業者にとって当初委託された内容にはない追加的な作業が必要となった場合に、特定業務委託事業者がその費用を負担しないことは、特定受託事業者の利益を不当に害することとなるものである」とされておりましたが、上記解説によれば、上記のような直前キャンセルの場合には「作業が無駄になった分の費用の負担」では足りず、それに加えて、「報酬の額」相当額の支払も要する場合があるため、発注事業者においては慎重な判断を要します。
| 報酬の減額の禁止(同法5条1項2号) 「二 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。」 |
自社ウェブサイトに掲載するための写真の撮影業務の委託において、業務委託の際に、フリーランスに口頭で了解を得た上で、報酬をフリーランスの銀行口座に振り込む際の振込手数料を報酬の額から差し引いて支払うこととした事例について、公正取引委員会は概要以下のとおり解説しています。
上記については、同法のQ&A上、令和8年1月1日よりも以前は発注前に合意した上で振込手数料を報酬から差し引くことが認められていましたが、改定後の現Q&A-78では、これが禁止行為である報酬の減額に該当することが明記されています。
自社で発行する雑誌に掲載する挿絵の制作業務の委託において、挿絵1枚当たりの単価を設定しているところ、単価改定を行う場合、単価の引下げの合意日以前に旧単価で既に発注したものに新単価を遡及適用する事例について、公正取引委員会は概要以下のとおり解説しています。
上記については、解釈ガイドライン31頁の①においても報酬の減額の具体例として明記されています。
発注事業者においては、自社の取引が上記3類型に該当していないか確認することが望ましいと考えられます。
(※5)令和7年12月10日付け公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導等について」別紙2(フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条の各規定に関する留意点)
フリーランス保護法違反については指導、勧告が相次いでいますので、今後も十分注意する必要があります。次回は、就業環境の整備に関する規制についても、同法施行後1年を踏まえた留意点を紹介します。
以 上