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<目次>
1. 理事会決議及び社員総会決議を争う以外の選択肢
2. 医療法人に対する金銭的請求
(1) 残任期の報酬相当額の損害賠償請求
(2) 退職慰労金請求
(3) 出資金返還請求
3. 医療法人の事業譲渡や分割等のM&Aを活用した分院
(1) 事業譲渡
(2) 分割
4. 新病院又は新診療所の設立
(1) 競業避止義務―理事を退任するまで、病院ないし診療所を運営しない
(2) 元の医療法人からの医師及び職員の採用―医療法人に重大な影響を与えないような配慮が必要
5. 小括

1. 理事会決議及び社員総会決議を争う以外の選択肢

前回の記事では、医療法人の支配権をめぐる争い、特に理事長の解職ないし理事の解任の際の留意点について説明したが、かかる手続に瑕疵が認められる場合であっても、社員の過半数の賛同が得られない限り、再度、理事会決議又は社員総会決議を行われ、最終的には理事を解任されるか、又は理事長を解職されることになるのが通常である。

すなわち、医療法人の理事は、社員総会の決議によって選任され、また、社員総会の決議によっていつでも解任することができる(医療法(以下「法」という。)46条の5第2項、46条の5の2第1項)。また、医療法人の理事長は理事会の決議によっていつでも解職することができる(法46条の7第2項3号)。そのため、社員総会の構成員である社員の過半数の賛同を得ている者は、自身に賛同する者を社員総会決議により理事に選任し、理事会の構成員の過半数を掌握することで、理事長を解職することができるし、社員総会決議により理事長を理事から解任することもできる。したがって、解職ないし解任された理事長は、社員の過半数の賛同を得られる見込みがない限り、理事会決議及び社員総会決議の瑕疵について主張し、それが認められ、一時的に理事長ないし理事に返り咲いたとしても、最終的には理事を解任されるか、又は理事長を解職されることになることから、社員の過半数の賛同を得られる見込みがないにもかかわらず、理事会決議及び社員総会決議を争うことは、徒に時間と労力を費やすこととなるといえよう。

そこで、以下では、解職ないし解任された理事長が医療法人に対して金銭的な請求権を有していることは少なくないことから、理事会決議又は社員総会決議を争わずに、一定の金銭的な請求を医療法人に対して行い、新しく病院又は診療所を開設するといったような選択肢について説明することとしたい。

2. 医療法人に対する金銭的請求

(1) 残任期の報酬相当額の損害賠償請求

社員総会決議によって理事から解任された場合には、解任された理事は医療法人に対して、損害賠償の支払いを求めることができる(法46条の5の2第2項)。残任期の報酬相当額(解任されたため理事が受領できなかった役員報酬)を請求することが多い。

もっとも、理事を解任する正当な理由がある場合は、解任された理事は上記損害賠償請求を行うことはできない(法46条の5の2第2項)。正当な理由の例としては、理事の善管注意義務違反が解任理由の場合である。さらに、解任された理事が残任期の報酬を請求する際は、医療法人から、解任の正当な理由として善管注意義務違反の存在を主張されるとともに、反訴として善管注意義務違反により医療法人に生じた損害の賠償を請求されることもあるので注意が必要である。

(2) 退職慰労金請求

医療法人の理事については、退職金規程が定められていることも少なくなく、また、理事就任時や理事の在任中において、退職慰労金の支払いについて約束等がなされていることも散見されることから、解職ないし解任された理事長において医療法人からの退職慰労金の支給を期待している場合も多い。しかし、実際のところは、理事長が解職ないし解任された場合、医療法人が理事長とは敵対的な経営者によって経営されているため、医療法人が退職慰労金を任意に支給することは極めて稀である。

そこで、解職ないし解任された理事長が、医療法人に対して退職慰労金を請求する際の問題点について説明する。

ア 原則―社員総会決議が必要

理事の報酬等(職務執行の対価として医療法人から受ける財産上の利益)は、定款又は社員総会決議で決定すると医療法上定められている(法46条の6の4、一般法人法89条)。当該規定の趣旨はいわゆるお手盛りの防止にある。退職慰労金も、報酬等に含まれると解されているため、その支給には社員総会決議が必要である。したがって、役員退職慰労金規程が定められていたとしても、また、理事(長)との間や医療法人との間で退職慰労金の支給について合意していたとしても、退職慰労金を支給することについての社員総会決議がない限り、退職慰労金請求は認められないのが大原則である。退職慰労金に関する裁判例の多くは、社員(株主)総会決議がないことを理由として退職慰労金の請求を退けている。

なお、上記法46条の6の4は、平成28年9月1日に施行されており、それ以前は、報酬等の決定機関が医療法上明確でなく、裁判例上も判断が分かれている。

イ 例外―社員総会決議がない場合であっても、退職慰労金請求権が認められる場合がある

原則は上記のとおりであるが、理事の退任に至る経過によっては、退職慰労金の請求を認めるべき事例も存在する。裁判例においても、少数ながら、退職慰労金を支給する旨の社員総会決議が存在しないとしても、例外的に退職慰労金の支給請求を認めている例もある(※1)。裁判例を見ると、社員総会決議がない場合に退職慰労金請求権が発生するか否かは、以下のような点がポイントとなる。

具体的には、前提として、社員総会決議なくして退職慰労金を請求するためには、医療法人と理事の間で、退職慰労金の支給についての確定的な合意が認められなければならない。当該合意は口頭でも構わないが、裁判で立証する必要があるため、書面等で明確に合意していることが望ましい。書面等が存在せずとも、医療法人の経営において、将来の退職慰労金の支給を見越して、内規、支給基準の作成、費用の積み立て等を行っていることは少なくなく、これらの経緯によって合意の存在を立証できる場合もあり得る。

他の社員を支配するなど医療法人の経営を支配する社員が、退職慰労金を支給することを約束したにもかかわらず、退職慰労金の不支給に積極的に関与したような場合には、当該社員の退職慰労金支給を妨げる行為そのものが違法と判断されることもある。そのような場合は、社員総会決議なしに退職慰労金請求権、不法行為による損害賠償請求権などが発生するとされている。

また、退任理由も重要である。例えば、不正行為や経営の失敗が退任理由(再任されない理由)である場合、退職慰労金を支給しないことが合理的であると評価される可能性があり、退職慰労金を請求しても認められない可能性がある。

なお、医療法人の理事(長)の中には、理事兼従業員であるという場合もあり得る。その場合は、理事としての退職慰労金は請求できずとも、従業員として、就業規則等があれば、退職金を請求することは可能である。

※1 社員(株主)総会決議が存在しない場合における退職慰労金請求の多くは、株式会社における事例ではあるが、医療法人においても参考となる。

(3) 出資金返還請求

持分のある医療法人(※2)である場合には、理事長が医療法人に出資しており、持分を有していることが多い。医療法人の持分は、一定の要件の下で、払い戻しを請求(出資金返還請求)することが可能である。

そこで、解職ないし解任された理事長が、医療法人に対して退職慰労金を請求する際の問題点について説明する。

※2 持分のある医療法人とは、定款に持分に関する規定(定款の所定の事由が生じた場合に持分を払い戻す規定、解散時の残余財産の持分に応じた分配に関する規定など)を設けている社団法人を指す。

ア 出資金返還請求(持分の払い戻し)の概要

持分のある医療法人の多くは、以下のとおり、出資者が社員資格を喪失した時に、出資者に対して、持分の払い戻しをする旨を定款に定めている(厚生労働省が公開している「旧制度(平成18年改正前)の持分の定めのある社団医療法人定款例」(以下「旧モデル定款」という。)9条)。

【旧モデル定款の規定(出資金返還請求)】
第●条 社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。

上記のような、「定款の定めるところにより、出資額に応じて払戻し又は残余財産の分配を受ける権利」を持分という(法附則(平成一八年六月二一日法律第八四号抄)10条の3第3項2号括弧書)。持分のある医療法人における理事長は、医療法人の設立者であり、多額の持分を有していることも少なくないため、理事長が医療法人への関与を断念する場合には、出資金返還請求(持分の払い戻し)を行うことが考えられる。

イ 出資金返還請求(持分の払い戻し)で請求できる金額

出資金返還請求(持分の払い戻し)で請求できる金額は、以下のとおり、判例で基準が示されている。

判例(最判平成22年4月8日第64巻3号609頁)上、持分を有する(元)社員が医療法人に対して請求できる金額は、社員資格を喪失した時点における当該法人の財産の評価額(時価純資産)に、社員資格を喪失した時点における総出資額中の当該社員の出資額が占める割合を乗じて算定される額の返還を請求することができるとされている(※3)。

例えば、AとBが各1億円出資して医療法人を設立し、その後医療法人が成長し純資産が20億円となった場合、Bは、社員資格の喪失時に10億円を医療法人に対して請求することができることになる。

医療法人の登記上に「資産の総額」(簿価純資産価格)が記載されているため、持分の総数(総金額)並びに理事長が有している持分の数及び出資の時期(金額)が分かる資料を所持していれば、おおよその金額を算定することができる(※4)。

※3 定款の定めにより、請求できる金額を出資した金額に限定している医療法人も存在する。

※4 医療法人の登記上の「資産の総額」は、医療法人の計算書類上の金額(簿価純資産)であり、その時の医療法人の財産の総額(時価純資産)とは異なる概念である。時価純資産の算定には、不動産鑑定等の専門家の関与が必要である(東京地判平成26年1月15日第一法規法情報総合データベース文献番号29026720)。

ウ 出資金返還請求(持分の払い戻し)の手続き

出資金返還請求(持分の払い戻し)には、以下のとおり、退社の手続きが必要となる。

上述のとおり、多くの持分のある医療法人においては、以下のとおり社員資格を喪失した時に出資者に払い戻しをする旨を定めている(旧モデル定款9条)。

【旧モデル定款の規定(出資金返還請求)】
第●条 社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。

旧モデル定款は、社員資格の喪失事由を以下の3つと定めている(旧モデル定款7条1項)。

【旧モデル定款の規定(社員資格の喪失事由)】
第●条 社員は、次に掲げる理由によりその資格を失う。
(1) 除 名
(2) 死 亡
(3) 退 社

上記、除名、死亡、退社の内、解職ないし解任された理事長が任意に行うことはできるのは、退社であるところ(※5)、旧モデル定款上、退社の手続きは以下のとおり定められている(旧モデル定款8条)。

【旧モデル定款の規定(退社手続き)】
第●条 やむを得ない理由のあるときは、社員はその旨を理事長に届け出て、その同意を得て退社することができる。

上記手続きのうち注意が必要なのは、退社に理事長の同意が必要とされている場合である。解職ないし解任された理事長が出資金返還請求(持分の払い戻し)を行うことを目的に退社を届け出た場合、医療法人の新しい経営者(理事長)は、出資金返還請求(持分の払い戻し)を妨げるために、退社に同意をしないことが考えられる。旧モデル定款の文言上、新しい経営者(理事長)が退社に同意せずに退社させないことが可能であるとも読めるが、退社を禁じることは、結社の自由(憲法21条1項参照)を制約するものであり、公序良俗等に違反しかねないものであるので、実際に退社を拒める場面はそう多くないと考えられる。

※5 死亡とは文字通り社員の死亡であり、除名とは、社員総会の決議により強制的に社員資格を喪失させることである。

3. 医療法人の事業譲渡や分割等のM&Aを活用した分院

上記のような金銭の支払いによる解決以外の解決策としては、医療法人が複数の病院を有している場合には、現経営者と解職ないし解任された理事長の合意の下、病院を分院して、それぞれが病院を経営することも考えられる。分院をする場合は、主にいわゆる事業譲渡と医療法人の分割が考えられる。違いは主に以下のとおりとなる。

【事業譲渡と分割の違い】

また、現経営者と解職ないし解任された理事長の合意の下、医療法人の経営を双方行わないことを合意した場合には、以下の方法等で第三者に医療法人のM&Aを行い、医療法人の売買代金等を分割することも考えられる。

(1) 事業譲渡

株式会社等と異なり、医療法上においては、いわゆる事業譲渡は認められておらず、病院及びそれに関連する資産等の病院の経営に必要な資産等をまとめて売却・移譲する資産譲渡のことを一般に事業譲渡と称している。

事業譲渡は厚生労働省が示している社団医療法人定款例(平成30年3月30日最終改正)及び旧モデル定款が社員総会決議事項として定めている「重要な資産の処分」又は「その他重要な事項」に該当する可能性が高く、また、事業譲渡の対象となる病院ないし診療所の名称及び所在地を定款から削除する必要があるため(法44条2項3号)、社員総会決議(定款変更は3分の2以上の賛成が必要)を経る必要がある。

事業譲渡自体に行政庁の許可は不要であり、法律上は、病院そのものではなく、病院が所有する土地建物・設備等を売買しているに過ぎないことになる。もっとも、病院の開設主体が変更されることが多いので、その場合には、病院の廃止届・新規開設の許可等が必要となる。また、債権者・労働者が事業譲渡に応じて新病院に移るかなどについても個別の同意が必要である。

(2)  分割

医療法人の「分割」には、医療法人の事業の全部又は一部を新しく設立する会社に承継させる新設分割(法61条以下)と既に存在している医療法人に承継させる吸収分割(法60条以下)が存在し、いずれの方法でも病院を分院することができる。分割の場合、対象の病院ないし診療所に関する権利義務関係及び雇用関係は、新設分割契約・吸収分割契約に従い承継されるため(法60条の6第1項、61条の4第1項)、債権者及び労働者の個別の同意は不要であり、この点は事業譲渡と比較して簡略である(※6)。

一方、医療法人の分割には、分割には総社員の同意(法60条の3第1項、61条の3)及び都道府県知事の認可が必要であるため(法60条の3第4項、法61条の3)、事業譲渡よりも手続が厳格であるといえる。

※6 法62条により「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」が準用される。労働者は、労働契約の承継又は承継されないことについて異議を申し出ることができる場合があり(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律4条1項、5条1項)、異議を申し出た場合、労働契約を承継させることや、また逆に承継させないことができる(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律4条4項、5条3項)。

4. 新病院又は新診療所の設立

理事長は、医師又は歯科医師であるので(法46条の6第1項)、解職ないし解任された後に、新しく病院ないし診療所を開設することが可能であり、実際にそのようにすることも多い。以下では、解職ないし解任された理事長が新しく病院ないし診療所(以下「新病院等」という。)を開設する場合の注意点について解説する。

(1) 競業避止義務―理事を退任するまで、病院ないし診療所を運営しない

医療法人の理事は、当該医療法人と競合する取引を行わない義務を負っており、医療法人と競合する取引を行うときは理事会の承認が必要となる(法46条の6の4、一般法人法84条)。当該義務に違反すると、医療法人の理事は、医療法人に対して損害賠償義務を負うことがある(法47条1項及び2項)(※7)。解職ないし解任された理事長は、新病院等を開設し運営する場合、よほど遠方に開設する場合などを除き、患者の取り合いになるなどして、理事長を務めていた医療法人と新病院等が競合するのが通常と考えられる。したがって、理事長を解職されたが、理事として地位が残っている元理事長は、少なくとも理事在任中は、新病院等の運営を行うことはできないことになる。

もっとも、医療法が禁止しているのはあくまで競合する「取引」であり、新病院等の開設の準備を行うことは法律上禁止されていないと一般に解されている。ただし、従前務めていた病院等の資源(人材や情報網など)を利用して、新病院等を開設することは、善管注意義務に違反する可能性があるので注意が必要である。

理事退任後は、生計を立てる必要があるため、新病院等を開設・運営する自体が直ちに違法になるというものではない。新病院等の開設により、従前理事長として務めていた病院等の患者が、新病院等で受診したいと申し出てくることがあるが、それは病院間の自由競争の結果に過ぎないため、通常は問題とはならない。もっとも、新病院等の開設や運営方法等が信義則に反するような場合には、退任後であっても信義則上競業避止義務違反が認められる可能性があるので、新病院等の開設及びの運営には注意を払う必要がある(※8)。

※7 医療法人の理事会が競合する取引を行うことを承認すれば問題ないことはもちろんだが、事実上、解職ないし解任された理事長が競合する取引を行うことを承認することは通常考えがたいので、承認を得ることは期待できない。

※8 会社訴訟では、(退任した)取締役と会社との間の競業避止義務をめぐる裁判例が多数あり、医療法人でも参考となる。具体的にどのような場合に善管注意義務ないし信義則に反するかなどは個別具体的事情によるところが大きいところ、東京地方裁判所商事研究会が編集している「類型別会社訴訟Ⅰ[第三版]」(判例タイムズ社、2011)224頁以下で詳細に解説しており参考となる。

(2) 元の医療法人からの医師及び職員の採用―医療法人に重大な影響を与えないような配慮が必要

解職ないし解任された理事長が、新病院等を開設する際に、従前務めていた医療法人の医師及び職員が新病院等で働きたいと考えることもあり得る。医師及び職員は職業選択の自由(憲法22条1項)があり、解職ないし解任された理事長にも営業の自由(憲法22条1項)が存在する以上、解職ないし解任された理事長が従前務めていた医療法人の医師及び職員を雇用すること自体は一律に禁止されておらず、社会的相当性を逸脱した方法で行われた場合に善管注意義務違反となりうると解されている(※9、※10)。例えば、一斉かつ大量の医師又は職員を対象とした勧誘など、従前務めていた病院の存続を危うくする場合などは社会的相当性を逸脱していると判断される可能性があることに留意する必要がある。

また、退任後も、元の医療法人に損害を与える目的など営業活動の手段・方法が違法・不当な場合は、元の医療法人への不法行為となりかねない。

したがって、従前務めていた医療法人の医師及び職員を雇用する場合は、各人の意思に任せた、従前務めていた医療法人に損害を与えない社会的相当性を有する穏当な方法で行う必要がある。

※9 上記のとおり、患者の勧誘については、競業避止義務違反を問われる可能性もあるので、医師及び職員の勧誘同様、方法等について留意が必要である。

※10 会社訴訟では、取締役による従業員の勧誘が問題となった裁判例が多数あり、医療法人でも参考となる。何が社会的相当性を逸脱し極めて背信的な方法かどうかは、「従業員の引抜きと役員の損害賠償責任をめぐる諸問題(新・類型別会社訴訟3)」判例タイムズ1498号5頁で詳細に解説しており参考となる。

5. 小括

以上のとおり、解職ないし解任された理事長には、医療法人の支配権の再獲得を目指す以外にも、医療法人から貢献等に応じた正当な対価を受領し、異なる病院、診療所等の経営を行う道も残されているのである。

以 上

前回記事

医療法人の経営権・支配権等に関する内部紛争(1)
医療法人の経営権・支配権等に関する内部紛争(2)