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<目次>
1. 用語の説明
(1)「再資源化」
(2)「再資源化事業等の高度化」
2. 再資源化の促進
3. 再資源化事業等の高度化の促進
(1) 類型①:高度再資源化事業(1号)
(2) 類型②:高度分離・回収事業(2号)
(3) 類型③:再資源化工程の高度化(3号)
4. 減税措置


リサイクル事業等の高度化の促進に関し、廃棄物処分業者の判断基準となるべき事項の策定、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者のリサイクルの実施状況等の報告および公表、並びに再資源化事業等の高度化に係る認定制度の創設等の措置を講ずること等を内容とする「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(以下「」といいます。)が、令和6(2024)年5月29日に公布され、令和7(2025)年11月21日に全面施行されました。
特に重要なポイントは、①特に処分量の多い産業廃棄物処分業者にリサイクルの実施状況等の報告・公表義務が課されたこと、②リサイクル事業を行うのに廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」といいます。)上の許可が不要になるほか、同法で禁止されている再委託が認められる認定制度が創設されたことです。
以下で、その内容を説明します。

1. 用語の説明

(1)「再資源化」

再資源化とは、廃棄物(※)の全部または一部を部品または原材料その他製品の一部として利用することができる状態にすることをいいます(法2条1項)。
※ 廃掃法2条1項に規定する廃棄物をいいます。

(2)「再資源化事業等の高度化」

「再資源化事業等の高度化」とは、下記①ないし④の措置を講ずることにより、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出(※)の量の削減の効果が増大することをいいます(法2条2項)。

① 高度再資源化事業(1号)
物の製造、加工または販売の事業を行う者の需要に応じた再資源化事業(再資源化のための廃棄物の収集、運搬および処分(再生を含む。)の事業)の実施その他の再資源化事業の効率的な実施のための措置
② 高度分離・回収事業(2号)
廃棄物から有用なものを分離するための技術の向上その他の再資源化の生産性の向上のための措置
③ 再資源化工程の高度化(3号)
再資源化の実施の工程を効率化するための設備の導入その他の当該工程から排出される温室効果ガス(※)の量の削減のための措置
④ ①~③のほか、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出の量の削減に資する措置(4号)

※ 地球温暖化対策の推進に関する法律2条4項に規定する温室効果ガスの排出をいいます。

2. 再資源化の促進

法では、資源循環産業のあるべき姿を示し、資源循環産業全体の底上げを図るため、再資源化事業等の高度化の促進に関する廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を環境省令で定めることとされています(法8条)。これを受けた廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を定める省令において、主に以下の①ないし⑤の廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項が定められています。

① 再生部品または再生資源に対する需要の把握および供給に関する事項(同省令2条)
② 技術の向上に関する事項(同省令3条)
③ 温室効果ガスの量を削減するための設備の改良またはその運用の改善に関する事項(同省令4条)
④ 処分する廃棄物に占める再資源化を実施する量の目標の設定および当該目標を達成するための措置に関する事項(同省令5条)
⑤ その他再資源化事業等の高度化および再資源化の実施の促進に関し必要な事項(同省令6条)

また、資源循環の促進に向けた情報基盤を整備し、製造業者等とのマッチング機会の創出を通じて産業の底上げを図るため、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者(以下「特定産業廃棄物処分業者」(※)といいます。)は毎年度、再資源化の実施状況を環境大臣に報告し、環境大臣がこれを公表することとされています(法38条)。

※ ①当該年度の前年度において処分を行った産業廃棄物の数量10,000トン以上であること、または②当該年度の前年度において処分を行った廃プラスチック類の数量1,500トン以上であることが要件とされています(資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律第十条第一項の要件を定める政令)。

なお、上記報告の結果、再資源化の実施状況が、法8条に規定する判断基準に照らして著しく不十分であると判断された場合、特定産業廃棄物処分業者は、環境大臣から再資源化の実施に関し必要な措置をとるべき旨の勧告を受ける可能性がある点に注意が必要です(法10条1項)。また、環境大臣は、勧告を受けた特定産業廃棄物処分業者が、正当な理由なく勧告に従わなかった場合において、再資源化の実施の促進を著しく阻害すると認めるときは、中央環境審議会の意見を聴いて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができるとされています(法10条2項)。

3. 再資源化事業等の高度化の促進

先進的な再資源化事業等の高度化の取り組みについて、環境大臣が認定する制度が創設されました。
本来、廃掃法上は、廃棄物の処理を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長または都道府県知事等の許可を受けなければならず(廃掃法7条1項、6項および同法14条1項、6項)、また、廃棄物処理施設を設置する場合には、当該施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければなりません(廃掃法8条1項および同法15条1項)。
しかし、法の認定を受けることにより、認定高度再資源化事業計画の範囲内で、廃掃法上の許可を受けずに再資源化に必要な行為を業として行い、また、廃棄物処理施設を設置することができるようになります。
つまり、国による一括認定により、本来は地方公共団体ごとに廃掃法の許可を受ける必要のある事業について、複数の地方公共団体をまたいでも迅速かつシームレスに実現することが可能となります。
これにより、製造業者が求める質・量の再生材を供給するため、その資材として利用可能な特定の廃棄物を複数の地方公共団体にまたがって広域的に収集し、質の高い再資源化を実施する事業を促進することが期待されます。
また、廃掃法では、廃棄物処理の再委託は原則として禁止されていますが(廃掃法7条14項、同法14条16号)、認定高度再資源化事業計画に記載された認定事業者から処理の委託を受けた者(再委託受託者)についても、廃掃法上の収集・運搬業、処分業の許可を受けないで認定高度再資源化事業計画に従って行う再資源化に必要な行為をすることが認められています(法13条1項、3項)。
これにより、複数の事業者によって特定の廃棄物を幅広く収集し、一定量の廃棄物を確保することで、製造事業者等の需要に応じた再生部品等を提供する再資源化事業を実施することができます。
以下、再資源化事業等高度化の内容ごとに説明します。

(1) 類型①:高度再資源化事業(1号)

再資源化のための廃棄物の収集、運搬および処分の事業(以下「高度再資源化事業」といいます。)を行おうとする者は、高度再資源化事業計画を作成し、環境大臣の認定を受けることによって、認定高度再資源化事業計画の範囲内で、廃掃法による許可を受けずに再資源化に必要な行為を業として実施し、廃棄物処理施設を設置することができます(法11条、同法13条1項、9項)。
高度再資源化事業の対象としては、プラスチックのマテリアルリサイクル(※1)、ペットボトル等の水平リサイクル(※2)、アルミニウム等の金属類の水平リサイクル等が想定されています。

※1 マテリアルリサイクルとは、例えば、びんを砕いてカレットにした上で再度びんを製造する場合、アルミ缶を溶かしてアルミ缶その他のアルミ製品を製造する場合など、廃棄物等を原材料として再利用することをいいます。
※2 水平リサイクルとは、例えば、使用済ペットボトルを原料として再びペットボトルを製造する場合など、使用済製品を原料として用いて同一種類の製品を製造するリサイクルのことをいいます。

高度再資源化事業は、①再資源化の実施に伴って温室効果ガスの排出量を削減できること(法11条4項1号)に加え、②再資源化によって得られる再生部品や再生資源が事業計画で定める需要者の需要に適合し、かつ、大部分が当該需要者に供給される事業である必要があります(同項2号)。②については、法施行規則8条各号の基準を満たすことが必要です。

なお、他の再資源化に関する国内外の規制については、以下も参照してください。
※ 猿倉健司「プラスチック資源循環促進法(2022年4月施行)において排出事業者の盲点となる実務的措置」(BUSINESS LAWYERS・2022年6月28日)、猿倉健司・堀田稜人「EUの包装および包装廃棄物規則2024年合意案について」(牛島総合法律事務所 ニューズレター・2024年4月17日)

(2) 類型②:高度分離・回収事業(2号)

高度な技術を用いて廃棄物から有用なものの分離および再生部品・資源の回収を行う再資源化のための廃棄物の処分の事業(以下「高度分離・回収事業」といいます。)を行おうとする者は、高度分離・回収事業計画を作成し、環境大臣の認定を受けることによって、認定高度分離・回収事業計画の範囲内で廃掃法による許可を受けずに、再資源化に必要な行為を業として実施し、廃棄物処理施設を設置することができます(法16条1項、同法18条1項、5項)。
最先端の技術を用いた分離・回収等を必要とする再資源化は、国内に事例が少なく、適正処理の妥当性を判断することが容易でないことから施設の設置についての審査に時間がかかるところ、国が最新の知見を踏まえ迅速に認定することを狙いとしています。
高度分離・回収事業の対象となる廃棄物としては、廃太陽電池廃リチウム蓄電池等廃ニッケル水素蓄電池等が定められています(法16条1項、法施行規則32条、令和7年環境省告示第82号)。

(3) 類型③:再資源化工程の高度化(3号)

再資源化の工程を効率化するための設備や温室効果ガスの量の削減に資する設備の導入(「再資源化工程の高度化」といいます。)を行おうとする者は、再資源化工程高度化計画を作成し、環境大臣の認定を受けることによって、認定再資源化工程高度化計画に従って行う設備の導入については、廃掃法による変更許可を受けたものとみなされます(法20条、同法21条)。
先進的な高性能の温室効果ガス削減に資する設備を廃棄物処理施設に導入する事例は国内では少なく、その妥当性を判断することが容易でないことからその導入が進んでいないところ、国の認定を通じて設備導入を促進し、脱炭素と資源循環を加速させることを目的としています。

リサイクル事業等の新規ビジネスにおける廃棄物該当性の判断と行政対応については、以下も参照してください。
※ 猿倉健司「新規ビジネスの可能性を拡げる行政・自治体対応 ~事業上生じる廃棄物の他ビジネス転用・再利用を例に~」(牛島総合法律事務所 特集記事・2023年1月25日)、「事業上生じる副生物・廃棄物を他のビジネスに転用・再利用する場合の留意点」(Business & Law・2023年9月14日)、「廃棄物・環境法規制と行政処分への対応(不要物の転用・リサイクル目的での再生利用を例に)」(牛島総合法律事務所ニューズレター・2023年9月23日)

(参考)認定を受けた場合の許可の要否
類型①類型②類型③
収集運搬業許可一般廃棄物許可不要
産業廃棄物許可不要
処分業許可一般廃棄物許可不要許可不要
産業廃棄物許可不要許可不要
施設設置許可一般廃棄物許可不要許可不要変更許可を受けたものとみなす
産業廃棄物許可不要許可不要変更許可を受けたものとみなす

4. 減税措置

法の認定を受けることで、税制上の優遇措置を受けることができる場合があります。
まず、法の認定を受けて設置される廃棄物処理施設における設備の固定資産税の課税評価額を2分の1とする特例措置が講じられています。
また、高度再資源化事業(類型①)または高度分離・回収事業(類型②)の認定を受けた者が、廃棄物処理施設を構成する機器等のうち特に環境大臣らが高度と認めるものを取得等して事業を実施した場合、その取得金額の35%の特別償却を認める特例措置が創設されました。

以 上

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