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2025.05.09

不動産特定共同事業(不特事業)に関する法律相談(第8回)-第1回「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会」の開催について-

<目次>
1. はじめに
2. 一般投資家への情報開示の充実
3. 規制も含めた制度的な対応
4. 行政による指導監督体制のあり方、業界団体との連携
5. 関連記事のご紹介

 本ニューズレターは、掲載時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではないことにご留意ください。また、本ニューズレター中意見にわたる部分は、執筆担当者個人の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではありません。

1. はじめに

 不動産特定共同事業(不特事業)は、1995年の制度創設以来、商品数・募集総額ともに着実に拡大を続けています。特に近年は、インターネットを通じて電子的に取引を完結する「不動産クラウドファンディング」の普及により、一般投資家の参画が急増しており、2023年度末時点において、運用中商品の一般投資家数は約29.7万人(うちクラウドファンディング約20.0万人)に達し、過去7年間で10倍以上に増加しています(2024年3月時点:1,051商品・1.3兆円)。
 国土交通省は、このような投資家層ないし投資環境の変化を踏まえ、「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会」を設置し、制度の見直しを含めた検討を進めています。
 現時点において具体的な改正対象(政省令や監督留意事項その他)や内容、時期は未定であるものの、2025年4月22日に行われた第1回の検討会では、一般投資家の増加に伴う制度の充実やいわゆる「破綻必至商法」の防止策が総論的な視点として取り上げられ、老朽アセットの開発・改修を通じた地方創生などへの貢献も期待される不特事業について、推進と保護のバランスを取りながら健全なマーケットを形成していくことの必要性などが指摘されています。
 その他、第1回の検討会では、概要、以下のような趣旨の指摘・意見交換が行われており、今後の動向についても注視していく必要があります。(※)
 
(※)議事概要その他詳細については国土交通省のウェブサイトにおいて公表されています。下記URLをご参照ください。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk5_000001_00034.html

2. 一般投資家への情報開示の充実

(1) 開示項目の充実の検討

  • J-REITの内容も参考にしつつ、不特事業では開発・改修も可能であることを踏まえ、情報開示項目の充実を検討するべき
  • 情報があまりに多く複雑になるとかえって一般投資家が読みにくくなる可能性にも留意が必要
  • いわゆる「破綻必至商法」を防ぐという観点から、事業の実態の有無を見分けやすくすることが重要なポイントになる
  • 開発・改修を伴う商品について、事業内容やスケジュールに関する情報が事業者から投資家へ十分に説明されることが必要

(2) 想定利回りについて

  • (一般投資家への宣伝材料となっている)想定利回りについては、根拠が明示されるべき
  • 通常、ハイリターンであればハイリスクを伴うので、特に開発・改修を伴う商品など、そのリスクについても十分に説明することが必要

(3) 対象不動産の価格や利害関係人取引について

  • (現在の算定式などの説明に留まらず)その価格水準の妥当性についても、不動産鑑定評価額など客観的な数字を基に、事業者に説明を要求することを検討

(4) 出資金の使用使途について

  • 出資金の使用使途の説明がなされるべき
  • 例えば、対象不動産の取得先が利害関係人である場合には、その先の利害関係人を含めて何に用いられるのか説明がなされるべき

(5) 運用報告の頻度見直し

  • 現在は年1回となっているが、頻度や内容の充実を検討

3. 規制も含めた制度的な対応

(1) 不特事業者について更新制のような枠組みの検討

  • 現在の永続的な許可制度について、例えば2~3年ごとの更新制のような枠組みを検討

(2) 対象不動産の価格について

  • 不動産価格について第三者の目線が入ることが妥当
  • 「破綻必至商法」の防止や投資家への損失補填を防ぐ観点から、運用終了時に対象不動産を利害関係人に売却する際、不動産鑑定評価に準じた価格とするよう要求することを検討
  • 不動産鑑定評価の義務化について、商品によっては収益性が見込めなくなる場合もあるため、事業性との両立にも注意する必要
  • 開発型の事業については、どのように不動産鑑定評価を行うのが妥当かも含めて検討が必要

4. 行政による指導監督体制のあり方、業界団体との連携

(1) 国土交通省や金融庁の関与の強化

  • 都道府県が監督する事業者が販売する商品についても、商品の内容などから都道府県のみでは対応が難しい案件については、国土交通省や金融庁の積極的な関与が必要

(2) 業界団体による自主規制の創設等

  • すべてを行政の監督・規制で対応することは難しいため、業界団体で事前チェックの仕組みを設けるなどの自主規制の創設や普及啓発活動も有効
  • 行政と業界団体の連携した対応が重要(業界団体が一般投資家からの相談窓口機能を果たすこと等)

5. 関連記事のご紹介

 不動産特定共同事業に関する最新の法改正や実務相談、コンプライアンス対応等については、以下のような関連記事を執筆し、随時配信しています。ご興味のある方はU&Pニューズレターの配信登録(こちら)をいただければ幸いです。

以 上