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2024.05.16

不動産特定共同事業(不特事業)に関する法律相談-外国人が事業参加者となる場合の法的留意点-

<目次>
1. よくあるご相談事項
(1) 外国人も事業参加者となることは可能である
(2) 契約成立前書面や契約成立時書面、財産管理報告書の交付等が必要となる
2. その他の留意事項
(1) 犯収法に基づく取引時確認
(2) 外為法に基づく報告
(3) 相続等が生じた場合の対応
3. 関連記事

 本ニューズレターは、掲載時点までに入手した情報に基づいて執筆したものであり、また具体的な案件についての法的助言を行うものではないことにご留意ください。また、本ニューズレター中意見にわたる部分は、執筆担当者個人の見解を示すにとどまり、当事務所の見解ではありません。

1. よくあるご相談事項

<ご相談事項>
当社は、不動産特定共同事業法第2条第4項第1号に係る事業(第1号事業)について当局の許可を受けて、一般投資家を相手方とする不動産特定共同事業を行っています。
今般当社が計画している第1号事業に関する商品においては、海外に居住されている外国人の投資家の方なども事業参加者とすることを検討していますが、法的に留意すべき点などはあるでしょうか。

(1) 外国人も事業参加者となることは可能である

 事業参加者とは、不動産特定共同事業契約(不特契約)の当事者であって、当該不特契約に基づき不動産特定共同事業(不特事業)を営む者以外のもののことをいい(不特法第2条第12項)、不特事業における投資家のことを指します。任意組合型(不特法第2条第3項第1号)であれば業務執行組合員を除く組合員が、匿名組合型(不特法第2条第3項第2号)であれば匿名組合員が事業参加者に該当します。
 不特法上、外国人が事業参加者となることについて特段の制限はありませんので、海外に居住されている外国人の投資家の方(日本国籍を有しない方、日本語の通じない方など)であっても事業参加者となることは可能であるものと考えられます(※1)。

(※1)外国において締結される契約であって、国内でその締結の勧誘が行われる契約で当該契約の当事者が一時的に外国に移動し当該外国において締結するもの以外のものついては不特契約から除外されています(不特法第2条第3項、不特法施行令第1条第2号、不特法施行規則第1条)。

(2) 契約成立前書面や契約成立時書面、財産管理報告書の交付等が必要となる

 不動産特定共同事業者(不特事業者)は、不特契約が成立するまでの間に、申込者に対し、不特契約の内容等を記載した契約成立前書面を交付して説明し(不特法第24条第1項)、不特契約が成立したときは、不特契約の当事者に対し、契約成立時書面を交付する必要があります(不特法第25条第1項)。また、不特事業者は、1年を超えない期間ごとに財産管理報告書を作成して事業参加者に交付する必要があります(不特法第28条第2項、不特法施行規則第50条)。これらは外国人の方が事業参加者となる場合でも同様です。
 契約成立前書面の交付・説明は、不特契約の内容及びその履行に関する事項を投資家に理解してもらうことを目的として行うものになりますので、外国人の投資家の方が日本語を理解できない場合、翻訳や通訳等の手配をする必要が生じ得るものと考えられます。また、契約成立前書面の説明については、国土交通省の公表している「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」(監督留意事項)第7-6(2)において、「申込者が遠隔地に居住する場合等、対面による説明を行うことが困難な場合には、必ずしも対面による説明を要しないが、その場合には、ビデオ、DVD等の電子媒体を適切に活用するとともに、投資家からの個別の質問に対応できる体制を確保すること」とされていますので、外国人の投資家の方が遠隔地に居住されている場合には、①説明内容の動画を収録したDVD等を郵送するとともに、電話等により個別の質問に応じる、②オンライン会議にて書面を画面に表示しながら説明を行い、質問を受け付けるなどの対応を検討する必要があります。
 契約成立前書面、契約成立時書面及び財産管理報告書の交付については、申込者の承諾を得ることを前提に、書面の交付に代えて、電磁的方法により提供することが認められていますので(不特法第24条第3項、第25条第3項及び第28条第4項)、外国人の投資家の方が遠隔地に居住されている場合には、かかる方法により提供することが可能です。

2. その他の留意事項

(1) 犯収法に基づく取引時確認

 不特事業者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)における「特定事業者」に該当するところ(犯収法第2条第2項第27号)、不特事業に係る業務は同法の「特定業務」であり(犯収法施行令第6条第11号)、不特契約の締結等は「特定取引」に該当しますので(犯収法施行令第7条第1項第1号ワ)、不特契約の締結に際しては、犯収法に基づく取引時確認を行う必要があります(犯収法第4条第1項)。
 氏名、住居及び生年月日等の本人特定事項の確認方法については、犯収法施行規則第6条に従って行う必要があります。そのため、例えば、犯収法施行規則第6条第1項第1号チの方法による場合であれば、本人確認書類の送付や本人確認書類に組み込まれたICチップに記録された氏名、住居及び生年月日の情報ないし本人確認用画像情報の送信を受けるとともに、本人確認書類に記載・記録されている住居宛に取引関係文書を書留郵便等により転送不要郵便物等として送付する必要があります。
 投資家の方が非居住者である場合、非居住者の方との取引については、国家公安委員会が公表している犯罪収益移転危険度調査書(※2)において危険度の高い取引とされていますので(同調査書第4の3(3))、犯収法施行規則第26条各号の項目に従って取引に疑わしい点があるかどうかを確認するとともに、投資家の方に対して質問その他の調査を行った上で、当該取引に疑わしい点があるかどうかを責任者(統括管理者等)が確認することにも留意する必要があります(犯収法第8条第3項、犯収法施行規則第27条第1項第1号ハ)。

(※2)https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/nenzihokoku/nenzihokoku.htm

(2) 外為法に基づく報告

 非居住者の方が国内の不動産又はこれに関する権利を取得する場合、取得日から20日以内に、外国為替及び外国貿易法(外為法)上の報告を行う必要があります(外為法第55条の3第1項第12号、第20条第10号、外国為替の取引等の報告に関する省令第12条参照)。また、居住者が外国から本邦へ向けた3000万円を超える支払の受領をした場合などについても外為法上の報告を行う必要があります(外為法第55条第1項、外国為替令第18条の4第1項第1号、外国為替の取引等の報告に関する省令第1条1項)。
 外国の投資家の方が事業参加者となる場合、不特事業者としては、これらの規制を含め、外為法に基づく報告の要否についても確認する必要があります。

(3) 相続等が生じた場合の対応

相続や遺言の成立及び効力については、準拠法に関し、被相続人や遺言者の本国法によることとされています(法の適用に関する通則法第36条及び第37条)。そのため、不特事業者としては、外国人の方が事業参加者となり、その方に相続等が発生した場合、日本人が事業参加者となる場合に比べ、権利関係の把握が困難となる場合があることにも留意する必要があります。

3. 関連記事

以 上

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