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牛島総合法律事務所 Client Alert 2024年10月7日号
<目次>
2024年6月28日、金融庁は「公開買付けの開示に関する留意事項について(公開買付開示ガイドライン)(案)」(以下「本ガイドライン案」といいます。)を公表しました。以下、本ガイドライン案の概要についてご説明します。なお、本ガイドライン案に対しては、2024年7月29日までパブリックコメントの手続が行われておりました。そのため、これを踏まえてその内容が変更される可能性がありますのでご注意ください。
本ガイドライン案は、金融行政モニター制度を通じ2022年4月から6月に寄せられた意見(「主なご意見」の28番)や金融審議会公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループの指摘(2023年12月25日付け「金融審議会公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ報告」(以下「WG報告書」といいます。)10頁③)を踏まえて取りまとめられたものであり、公開買付者(発行者以外の者)による公開買付けに係る開示書類の審査を行う関東財務局に対して審査に当たっての留意事項(事前相談の在り方も含みます。)を示すとともに、法令上記載が求められる開示事項等についての考え方を示すことを目的としたものです。
本ガイドライン案は、「A 共通事項」、「B 基本ガイドライン」及び「C 株券等の公開買付けに関するQ&A」の3つの部分から構成されています。
「A 共通事項」においては、主として以下の点について言及されています。このうち、③については、WG報告書でも、部分取得を目的とする公開買付けを実施する公開買付者に対しては、公開買付届出書における開示の規律を強化することが提言されていたところです(「WG報告書」6頁)。
① 本ガイドライン案の趣旨
② 関東財務局が、公開買付届出書(その訂正届出書を含む。)の記載内容及び公開買付開始公告に先立ち公開買付けを実施する予定又はその可能性があることの公表(以下「予告公表」といいます。なお、予告公表は、国内外の競争法等の許認可の手続を経るために開示が必要である場合、又は同意なき買収を実施するに当たり予め買収の意図を公表する場合等になされることがあります。)に関する文書(公表文)の記載内容について、事前の相談に応じることとすること
③ 一般的留意事項として、公開買付届出書等の記載内容の審査に当たっては投資情報としての重要性を踏まえて、(i)全部取得を目的とする公開買付けの場合、公開買付価格の公正性に関する情報が適切に開示されているかを重点的に審査すること、(ii)部分取得を目的とする公開買付けの場合、公開買付価格の公正性に関する情報のほか、当該公開買付けの目的及びこれを踏まえた当該公開買付けの後における経営方針や株券等の追加取得又は第三者への譲渡の予定等に関する情報が適切に開示されているかを重点的に審査すること
本ガイドライン案は、「B 基本ガイドライン」において、企業内容等開示ガイドラインA1-7(「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」8頁)及び本ガイドライン案A(共通事項)4(上記(1)中の③)に留意することを前提に、公開買付届出書、公開買付届出書の添付書類、予告公表及び訂正届出書の記載内容についてそれぞれ言及しており、特に「Ⅰ.公開買付届出書」において、公開買付届出書の具体的な記載事項について詳細な説明をしています。
また、「Ⅲ.予告公表」においては、予告公表後、どのような場合に公開買付けが開始されるかの前提条件や公開買付けの開始予定時期についての具体的な記載内容について言及されています。予告公表に関する情報開示の在り方については、WG報告書でも提言がなされ(「WG報告書」10頁)、また、「企業買収における行動指針―企業価値の向上と株主利益の確保に向けて―」(25頁)においても言及されているところです。
さらに、「Ⅴ.その他」においては、関東財務局との事前相談から、たとえば大量保有報告書等の不提出や記載内容の形式上の不備又は虚偽記載(以下「不提出等」といいます。)が疑われる場合には、財務局担当課室と連携し、同担当課室において不提出等の事実を認めた場合には、不提出等の解消あるいは是正措置を講ずるものとされています。そのため、公開買付届出書以外の開示書類の提出時期及びその内容についても十分留意する必要があります。なお、大量保有報告制度を遵守しないまま公開買付けを開始しようとする事例については、WG報告書でも、公開買付届出書の事前相談の際に大量保有報告書の提出や訂正を求めるなど、適切な対応を講じることが提言されていたところ(「WG報告書」15頁)、本ガイドライン案によって適切な対応の一部が具体化されたと評価できます。また、今後、金商法に関する政令及び内閣府令においても、大量保有報告制度の実効性を確保するための仕組みが検討される予定となっています。
本ガイドライン案は、「C 株券等の公開買付けに関するQ&A」において、金融庁「株券等の公開買付けに関するQ&A」を引用しています。これにより、本ガイドライン確定後、当該Q&Aは本ガイドラインの一部として取り扱われることとなります。
なお、本ガイドライン案は、現行の公開買付制度を前提として策定されたものであることから、令和6年改正金商法(この改正の概要は、「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案の概要」をご参照ください。)のうち公開買付制度に係る部分に関して、今後、金商法に関する政令及び内閣府令の改正が行われる際には、見直しが検討されることになるとされています。そのため、今後も引き続き関連する情報を随時アップデートしていくことが必要です。
パートナー 渡邉 弘志
パートナー 稗田 直己
パートナー 山内 大将
パートナー 百田博太郎
2024年6月28日、中小企業庁は、中小企業の事業承継・M&Aに関する検討会を設置し、第1回会議を行いました。
中小企業庁は、かねてより事業承継及びM&Aに関する政策を推し進めており、2020年11月には「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」を設置し、2021年4月には中小M&A推進計画の策定を行い、その結果、中小企業の経営者年齢は一定の若返りが進み、それによる生産性や経営力の向上も一定程度実現してきました。他方、70代以上の経営者年齢の割合は高止まりの状況にあり、小規模事業者の事業承継は十分に進んでいないなどの課題があります。そのため、今般、中小企業庁は、中小企業の事業承継・M&Aの現状や課題を分析し、事業承継・M&Aをより一層推進していくために必要な施策の基本的な方向性を検討するため、「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」を改組し、「中小企業の事業承継・M&Aに関する検討会」を設置しました。
中小企業の事業承継・M&Aに関する検討会の第1回会議においては、主要課題に対する取組の方向性の案として、以下の①ないし⑬が提示されました。
まず、「事業承継・M&Aを契機とした成長支援」として、以下の①ないし⑦です。
① 事業承継税制の最大限の活用促進等
② 後継者支援の強化
③ 中小企業のグループ化の更なる促進
④ 連結会計等のグループ経営管理に係る環境整備
⑤ PMI(Post Merger Integration)の促進
⑥ 経営革新等に必要な設備投資等支援
⑦ エクイティ・ファイナンスの活用促進
具体的には、上記①は、事業承継税制における役員3年要件の見直し(※1)等の事業承継を促進する税制のあり方の検討を行うことなどを内容としています。また、上記⑤については、従前、中小企業庁は、中小PMIガイドラインの策定を実施し、PMI実践ツール、ガイドブック及び事例集の公表などを行ってきましたが、今般、金融機関を中心としたPMI支援機関の充実や、PMI支援策の充実を行うこととされています。
次に、「事業承継・M&Aの更なる促進に向けた体制強化」として、以下の⑧ないし⑩です。
⑧ 地域の支援機関の育成・サプライチェーン上の事業承継の啓発
⑨ 地方自治体との連携強化
⑩ 3機関連携の強化
具体的には、上記⑧は、事業承継・引継ぎ支援センターと中小機構が連携して、地域の支援機関の育成支援を行うことや、連鎖廃業リスク等も含めたサプライチェーン上の事業承継を啓発すべく、新たに業界団体等との連携を強化することなどを内容としています。
最後に、「M&Aの環境整備に向けた取組の継続」として、以下の⑪ないし⑬です。
⑪ 中小M&Aガイドラインの改訂・浸透等
⑫ 仲介・FA手数料をはじめとする支援機関の透明性強化
⑬ M&Aの支援を行う者に求められる知識・能力の検討
具体的には、上記⑪は、手数料に関する事項や広告・営業の禁止事項の明記などの中小M&Aガイドラインの改訂等を内容としていましたが、2024年8月末に中小M&Aガイドラインが改訂され(第3版)、これらの内容が反映されています。
(※1)特例事業承継税制が適用されるためには株式贈与日に後継者が役員に就任後3年以上を経過している必要がありますが、同税制は2027年12月末を期限としています。そのため、現時点において後継者が役員に就任していない場合、同期限の3年前となる2024年12月末までに役員に就任する必要があり、この要件の見直しが検討されています。
上記のとおり中小企業の事業承継・M&Aに関する取組みの方向性は多岐にわたっており、今後も進展するであろうことから、引き続き今後の動向を注視する必要があるものと考えられます。
パートナー 渡邉 弘志
パートナー 石川 拓哉
パートナー 石田 哲也
パートナー 薬師寺 怜
株式会社における役員の退職慰労金の支給については、原則として株主総会決議によって決することが必要ですが(会社法361条1項)、退職慰労金の具体額が推知されてしまうことを防ぐため、単に一定の支給基準に従い退職慰労金を支払うこととして、具体的な支給額は取締役会に一任する旨の株主総会決議を行うこと(場合によっては代表取締役に再一任すること)が多く行われています。判例上も、①会社の内規や慣行によって一定の支給基準が確立していること、及び②当該基準が株主にも推知できるものであることを条件として、このような実務上の取扱いが容認されています。一方で、株主総会決議によって取締役会に一任された後は、各取締役は委任の趣旨に従って合理的に退職慰労金の支給額等を定めるべき善管注意義務ないし忠実義務を負い、適切に退職慰労金を支給しなかった場合には損害賠償請求を受け得ることになります。
このような退職慰労金の具体額の決定に際しての取締役会の裁量の幅については議論があったところ、最判令和6年7月8日(以下「本判決」といいます。)は、内規の解釈について取締役会に幅広い裁量を認めた点で、重要な意義をもつものと考えられます(※1)。
(※1)裁判所ウェブサイト:093176_hanrei.pdf (courts.go.jp)
本件は、ある会社において、代表取締役を退任した者(以下「X」といいます。)の退職慰労金について、株主総会から一任された取締役会において、委任の範囲を超えて減額する旨の決議がされたと主張したXが、後任の代表取締役や会社に対して損害賠償を求めたという事案です。
この会社には退職慰労金の算定基準等を定めた内規(以下「本件内規」といいます。)が存在し、(i)退職慰労金については退任時の報酬月額等により一義的に定まる額を基準とする旨の定めや、(ii)取締役会が、退任取締役のうち会社に対して「在任中特に重大な損害を与えたもの」については、基準額を減額することのできる旨の定め(以下「本件減額規定」といいます。)がありました。なお、この定めによる減額の範囲等については何らの定めも置かれていませんでした。
Xには、在任中に複数の問題行為が存在し、そのためXの退任時の株主総会決議においては、「Xの退職慰労金は、取締役会において、中立かつ公正な調査委員会を設置しその調査結果を踏まえて決定する方針であり、Xとしてはその決定に従う意向である」との説明がなされた上で、退職慰労金支給決議(本件内規に従って決定することを取締役会へ一任する決議)がなされました(以下「本件総会決議」といいます。)。
その後、外部弁護士等で構成された調査委員会において、Xの問題行為が会社に多大な損害を与えるものであるとして、その財産上の損害が約3億5000万円であるとする調査報告書が提出され、これを受け、上記株主総会後の取締役会において、退職慰労金の「基準額」である約3億7000万円から上記損害の約90%を控除した5700万円を支給するのが相当であるとの決議がなされました(以下「本件取締役会決議」といいます。)。
これに対しXが、調査委員会によって認定された問題行為の一部に関し、これを考慮して退職慰労金を減額した本件取締役会決議が取締役会の裁量の範囲の逸脱及び濫用であるとして訴えを提起したものです。
本件の調査委員会において認定されたXの問題行為のうち、Xが本件で争った部分については、本件の第一審において、会社の営業利益や経常利益に与えた影響が必ずしも大きくないことや、Xが会社の内部手続を経ずに独断で当該行為を行っていたものとまでは認められない点などから、「特に重大な損害」には該当しないと認定されました。
上記事実関係を前提として、第一審及び控訴審においては、本件総会決議はXに支給する退職慰労金につき、「内規を適切に解釈適用し、その額を算定することを取締役会に委任するものであった」と認定し、本件内規に定められた「特に重大な損害を与えた」行為とは別の行為による損害を考慮して退職慰労金を減額することは許されないとして、本件取締役会決議の裁量の逸脱ないし濫用を認めました。
しかしながら、本判決は、概要以下のとおり判示し、取締役会が広い裁量権を有することを認め、Xの問題行為(のうちXが本件で争っていない部分)を会社に多大な損害を及ぼす性質のものと評価することも合理的と評価したうえで、上記別の行為が会社に損害を与えるものであったか否かにかかわらず、Xが本件減額規定にいう「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たると述べ、退職慰労金を減額した取締役会の判断につき裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を否定しました。
① 本件減額規定の趣旨は、取締役を監督する機関である取締役会が取締役の在任中の行為について適切な制裁を課すことにより、会社の取締役の職務執行の適正を図ることにあるものと解される。
② 退任取締役の退職慰労金について株主総会から一任された取締役会においては、退任取締役が本件減額規定にいう「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たるか否か、これに当たる場合に減額をした結果として退職慰労金の額をいくらにするかの点について判断する必要があるところ、上記の本件減額規定の趣旨に鑑みれば、取締役会は、当該退任取締役が会社に特に重大な損害を与えたという評価の基礎となった行為の内容や性質、当該行為によって会社が受けた影響、当該退任取締役の会社における地位等の事情を総合考慮して、上記の点についての判断をすべきである。
③ そして、これらの事情は、いずれも取締役会が判断するのに適した事項であること、さらに、本件内規が本件減額規定による減額の範囲等について何らの定めも置いていないことに照らせば、取締役会は、上記の点について判断するに当たり広い裁量権を有するというべきであり、取締役会の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということができるのは、この判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理である場合に限られると解するのが相当である。
今後は、本判決により、特に減額規定について取締役会に広範な裁量が認められることとなるため、退職慰労金の支給に際して基準額を減額できる規定さえ設けておけば、当該退任取締役の不祥事等に対する対応の一環として、退職慰労金額を決定する取締役会において今までよりも柔軟な内容の決議が可能となることが想定され、今後の退任取締役の退職慰労金の支給手続に関し、実務上重要な影響を与えるものと考えられます。
令和5年11月20日に成立した「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号。公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行。)による改正により、ブロックチェーンを活用してトークン化した不動産特定共同事業契約(以下「不特契約」といいます。)に基づく権利について、金融商品取引法の販売勧誘規制等が適用されることになりました。
これに伴い、不動産特定共同事業法において、その権利がトークン化された不特契約の締結の勧誘業務を「特定勧誘業務」と定義した上で(改正後不動産特定共同事業法第5条第1項第7号)、不動産特定共同事業者について、特定勧誘業務を行う場合に必要な金融商品取引業の登録等を行っていないことを欠格事由に追加すること(同法第6条第12号)、特定勧誘業務に関する事項を許可申請書等の記載事項や変更の届出の対象にすること(同法第5条第1項第7号及び第10条)などの改正が行われています。
かかる改正に伴う不動産特定共同事業法施行規則の改正案については、2024年6月27日から7月27日にかけて、概要、以下のような内容のパブリック・コメントが実施されています(※)。現時点(2024年9月20日時点)においては当該パブリック・コメントに関する結果は公表されていませんので、今後の動向について注視していく必要があります。
(※)不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令案に関する意見募集について|e-Govパブリック・コメント
不動産特定共同事業法施行規則(以下「規則」といいます。)の改正案について、現時点において具体的な条項案は公表されていませんが、概要、以下のような内容の改正を行うこととされています。
不特契約に基づく権利が電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示されるもの(以下「特定電子権利」といいます。)である場合の不特契約(以下「特定電子権利型契約」といいます。)に基づき不動産特定共同事業(以下「不特事業」といいます。)を行う場合について、約款に特定電子権利に関する事項を定めることとされています。
不動産特定共同事業者名簿の登載事項に、「特定電子権利型契約に係る約款の有無」を追加することとされています。
不特事業の業務に関して広告をするときに、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない事項に、「特定電子権利の性質に関する事項」及び「特定電子権利に係る保有又は移転の仕組みに関する事項」を追加することとされています。
特定電子権利型契約に基づき不特事業を行う場合について、不特契約が成立するまでの間に書面を交付して説明しなければならない事項に、「特定電子権利の概要その他特定電子権利の性質に関し顧客の注意を喚起すべき事項」を追加することとされています。
電子取引業務を行う期間及び電子取引業務に係る不特事業の期間中に情報通信の技術を利用する方法等により閲覧することができる状態に置かなければならない事項に「特定電子権利の概要その他特定電子権利の性質に関し顧客の注意を喚起すべき事項」を追加することとされています。
改正後不動産特定共同事業法別表第2号の上欄に規定する主務省令で定める不特事業は、金融商品取引法第2条で定める「電子記録移転権利」に係るものとするとの条項を規則第88条として新設することとされています。
パートナー 井上 正範
パートナー 稗田 直己
アソシエイト 加藤 浩太
国土交通省が策定した「不動産業による空き家対策推進プログラム」の一環として、空き家等の流通のビジネス化を支援するため、空き家等に関する宅地建物取引業者の媒介報酬を改正する告示(令和6年国土交通省告示第949号。以下「本改正告示」といいます。)が令和6(2024)年6月21日に公布され、同年7月1日から施行されました。
これを踏まえ、国土交通大臣が宅地建物取引業法の解釈・運用を行う際の基準である「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(以下「ガイドライン」といいます。)が改正(令和6年6月21日付け国不動第20号)され、令和6(2024)年7月1日から施行されました。この改正では、空き家等に関する媒介報酬の特例規定の考え方等が明らかにされるとともに、媒介以外の関連業務に関する記載が充実化されました。
本稿では、上記の改正の経緯と、本改正告示及びガイドラインによる改正の具体的な内容を紹介します。
なお、上記の改正と同時期に、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(以下「地域自主自立性改革推進法」といいます。)の施行に伴う宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)の政省令及びガイドラインの改正(※1)が行われました(※2)が、本稿では割愛します。
(※1)令和6年6月28日付け国不動第31号。
(※2)地域自主自立性改革推進法の施行に伴う宅建業法施行令及び同施行規則の改正は、令和6(2024)年6月28日に公布、令和7(2025)年4月1日(一部の規定については、同年1月1日)から施行。また、ガイドラインの改正は、令和7(2025)年4月1日(一部の規定については、令和6(2024)年7月1日及び令和7(2025)年1月1日)から施行。
近年、空き家等の増加やその活用が大きな課題となっているところ、物件調査や価格査定、売買・賃貸の仲介など、空き家等の発生から流通・利活用まで一括してサポートできるノウハウを有している不動産業者は、かかるノウハウを活かして、空き家等の所有者等のニーズに対応し、媒介業務にとどまらない役割を発揮することが強く期待されています。
そこで、国土交通省は、令和6(2024)年6月21日、「不動産業による空き家対策推進プログラム~地域価値を共創する不動産業を目指して~」(以下「空き家対策プログラム」といいます。)を策定しました。
空き家対策プログラムでは、「空き家流通のビジネス化支援」の一環として、「媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進」が掲げられています。
これを踏まえ、ガイドラインは、宅地建物取引業者が、以下のような媒介業務に含まれない関連業務について積極的に取り組むことが考えられるとしています(ガイドライン「第34条の2関係」・11(20頁及び21頁))。
① 媒介業務に先立って、又は媒介業務とは別に、空き家等の所有者等に対して行われる助言、総合調整等の業務
例)空き家・空き室等の利活用等に係る課題の整理や、空き家・空き室等の相続等の権利関係への助言、空き家・空き室等の利活用の方針の提案等
② 遠隔地に居住していること等により自ら適切に空き家等の管理を行うことが困難である等のニーズに対応して、所有者等から受託して行う空き家等の管理業務
例)除草・通風・通水・清掃、家財の片付け、定期的な点検、郵便物の保管・転送、修繕等の提案等(※3)
(※3)空き家対策プログラムの参考資料集64頁(国土交通省ウェブサイト掲載)。
媒介以外の関連業務を行う場合には、媒介業務との区分を明確にするため、あらかじめ契約内容を十分に説明して依頼者の理解を得た上で、媒介契約とは別に、業務内容、報酬額等を明らかにした書面等により契約を締結する必要があり、また、成果物がある場合には書面で交付等することが必要とされている点には注意が必要です。
そのうえで、ガイドラインでは、媒介以外の関連業務について、媒介契約との区分を明確にし、媒介契約とは別に、書面等により締結した契約に基づいて報酬を受けることは、宅建業法46条2項の規定による報酬の制限に違反するものではないということが明らかにされています(ガイドライン「第34条の2関係」・11(21頁))。
空き家対策プログラムでは、「空き家流通のビジネス化支援」の一環として、「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」が掲げられています。これを踏まえ、低廉な空家等の売買・交換や長期の空き家等の貸借の媒介・代理報酬に関し、本改正告示による「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号。以下「報酬告示」といいます。)の改正とガイドラインの改正が行われ、以下のとおり報酬上限が引き上げられました(報酬告示第7から第10まで、ガイドライン「第46条第1項関係」・1(6)から(9)まで(43頁及び44頁))。
① 低廉な空家等の売買又は交換の媒介については、当該媒介に要する費用を勘案して、原則による上限(報酬告示第2)を超えて、依頼者から報酬(30万円の1.1倍が上限)を受領することができます(報酬告示第7)。
② 長期の空家等の貸借の媒介については、当該媒介に要する費用を勘案して、原則による上限(報酬告示第4)を超えて、依頼者双方から受領する報酬の合計額が1ヶ月分の借賃の2.2倍を上限とする報酬を受領することができます(ただし、借主である依頼者から受領する報酬は、1ヶ月分の借賃の1.1倍(居住用の場合は、当該借主である依頼者の承諾を得ている場合を除き、0.55倍)が上限となります)(報酬告示第9)。
宅地建物取引業者は、上記①又は②に基づいて原則による上限を超えて報酬を受ける場合には、媒介・代理契約の締結に際し、あらかじめ、特例で定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があることに特に注意が必要です(ガイドライン「第46条第1項関係」・1(6)から(9)まで(43頁及び44頁))。
パートナー 東山 敏丈
パートナー 藤井 雅樹
パートナー 山内 大将
パートナー 関口 恭平
東京商工会議所は、2024年7月11日に、「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」(以下「本意見書」といいます)をとりまとめ、ホームページで公表しました(※1)。
(※1)東京商工会議所「『中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見』について」:https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1203522
本意見書は、我が国の企業数の99.7%を占める中小企業・小規模事業者の経営者の高齢化が進み、後継者が決まらずに廃業となれば、中小企業・小規模事業者の「価値ある事業」が失われるおそれがあるため(現に2000年以降休廃業を選択した事業者の半数以上は直近の決算が黒字であるとのことです。)、円滑な事業承継を実現することが急務であることからとりまとめられたものであり、国及び東京都に対し、事業承継のさまざまな課題に対応した具体的な対策を要望するものです。
具体的には、(i)事業承継対策を行う事業者の裾野拡大に向けた支援として、事業承継対策の第一歩である自社株式の評価の推進、事業承継に要する時間を考慮した事業承継計画の早期作成の重要性の周知等、(ii)親族内承継の取り組み支援として、事業承継税制の正しい理解・活用の促進、事業承継税制の制度改善、事業承継税制の恒久化、(iii)増加傾向にある「従業員承継の支援」として、従業員承継の事例発信、事業承継税制における低額譲受に係るみなし贈与の対象化、公的な事業承継支援ファンドや東京中小企業投資育成株式会社を活用した従業員承継の推進等、(iv)後継者不在企業のM&A推進に向けた支援として、M&Aの成功事例の周知及び譲渡側・譲受側双方に対する正しい理解の促進、廃業懸念企業が一部事業の譲渡により譲受企業にて事業を存続、雇用維持した事例の発信等を要望しています。
また、本意見書では、企業の声として以下が紹介されています。
① 「先代が株式の承継の準備をせずに急逝してしまった。株式を親族・役員等に分散したままの状態。その後、会社の業績が低迷し役員報酬を下げようとしたが、議決権割合が低く、うまくいかなかった(製造業)」
② 「株式が元従業員の家族や協力会社に分散。数年前から所有者を訪ねて、1件1件説明した上で買い取り等を行った。分散した株の所有者が亡くなっている、連絡先が不明な協力会社などもあり、先代が過去の経緯を知っていたため対応ができたが、先代がいなかったら大変なことになっていた(建設業)」
③ 「会社の株式は全て後継者(息子)へ相続させるように遺言を書き、信託した。遺言では会社の株は社長にわたるようにし、後継者の兄弟には株以外の資産が渡るようにした。その際、株式の価値は後継者(息子)の手腕によって変化することを理解させ、将来禍根を残さないようにした(建設業)」
上記の企業の声からも明らかなように、事業承継をどのような形で行うか(親族を後継者にするか、社内の役員・従業員を後継者にするか、M&Aにより第三者に承継させるか)に関わらず、いずれの場合であっても、株式を承継することが法的に必須です。
そのため、事業承継の準備として、まずは、株主名簿の管理を徹底し、名義株がある場合はそれを解消したり、株式が分散している場合は買い取る等して、株式を現代表者(又は後継者)に集中させることが必要になります。
株式を現代表者(又は後継者)に集中させる過程において、会社法上の問題等様々な法的問題点を検討する必要があり、その検討及び対応を怠った場合は、後に様々な紛争が生じ、会社の支配関係が不安定となり、経営に集中することができなくなるおそれがありますので、そうならないようにするために、事業承継の準備段階で、会社法に詳しい専門家への相談が必須となっております。
パートナー 大澤 貴史
金融庁は、2024年6月28日に、「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)」(以下「本レポート」といいます。)を公表しました。本レポートは、マネー・ローンダリング・テロ資金供与(以下「マネロン等」といいます。)対策について、2023事務年度(2023年7月から2024年6月)の金融庁所管事業者の対応状況や金融庁の取組等を取りまとめたものです。以下において本レポートのポイントを紹介いたします。
マネロン等対策については、金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」が、金融機関等において対応が求められる事項を示しているところ、金融庁は、2021年4月に、上記対応が求められる事項についての態勢整備の完了期限を2024年3月に設定し、金融機関等に対応を求めていました。本レポートは、上記期限を迎え、今後はFATF(Financial Action Task Force・マネロン対策の国際基準策定・履行を担う多国間枠組みとして設立された金融活動作業部会)の第4次対日相互審査での指摘への対応(本レポート第2章)から、第5次対日相互審査に向けた実効性の向上(本レポート第3章)に視点を移していくことが必要であるとしています(本レポート概要資料参照)。なお、FATF第5次対日相互審査は2028年8月にオンサイト審査が行われる予定です。
かかる観点から、本レポートにおいては、金融庁によるモニタリングの対象となった金融機関等におけるマネロン等のリスクの特定・評価・低減に係る有効性検証や、かかる有効性検証を実施するための態勢整備・実施手法の整理について、取組事例が紹介されています(本レポート15頁ないし20頁)。なお、金融庁は金融機関等が実施するこのような有効性検証等の取組事例・考え方などを整理し、公表・共有に向けた検討を進めていくとのことです(本レポート20頁)。
また、金融庁は、特殊詐欺事案等の急増とこれらにおける金融サービスの不正利用対策(本レポート第4章)を目下の最重要課題と位置付けています(本レポート概要資料参照)。この点については、本レポートは、インターネットバンキングに係る不正送金や預貯金口座不正利用が著しく増加傾向にあることや(28頁)、特に、売買等によって不正に取得された法人名義の預貯金口座を利用する特殊詐欺等の犯罪が多発している状況にあることを指摘しています(11頁及び31頁)。
かかる状況を受け、本レポートは、「インターネットバンキング不正送金対策強化」として、フィッシング対策や暗号資産交換業者宛ての不正送金対策に係る金融庁の取組や金融機関等の取組状況を紹介しています(28頁及び29頁)。また、「預貯金口座の不正利用対策等」として不正利用の特徴と対策等を紹介しているところ(本レポート30頁及び31頁)、特に法人口座を含む預貯金口座の不正利用への対策については、本レポート公表後の2024年8月に、金融庁及び警察庁が連名で以下のような対策の実施を預金取扱金融機関に要請いたしました。関係する金融機関等においては本レポートに加えて上記要請も踏まえた態勢整備を進めていく必要があります。
上記のほか、本レポートにおいては、日本政府におけるマネロン等対策の取組、金融セクター別のマネロン等リスクの分析などの金融庁による対応状況、暗号資産交換業者におけるトラベルルールの運用状況、2024年4月に公表された「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂の趣旨、本人確認書類の偽造等への対応等が言及されており、平時における態勢整備や金融サービスの不正利用が発覚した際の有事対応・再発防止策等の参考になるものと考えられます。
パートナー 渡邉 弘志
パートナー 東道 雅彦
パートナー 川村 宜志
アソシエイト 福田竜之介
公正取引委員会は、令和6年6月5日、「(令和6年6月5日)令和5年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引公正化に向けた取組」を公表しました。総じて、下請法の執行強化を示すものとなっておりますので、その概要をご紹介いたします。
令和5年度における下請法違反行為に対する指導・勧告、下請事業者が被った不利益の原状回復の状況、下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者に係る事案についての運用状況は以下のとおりです。指導件数こそ前年度を下回ったものの勧告件数などは前年度を大きく上回るものとなりました。
また、適切な価格転嫁の実現に向けた令和5年度における具体的な取組内容及び今後の取組みとして、公正取引委員会は、以下のものを挙げています。
公正取引委員会は、現下の急激な物価上昇を乗り越え、持続的な構造的賃上げを実現するためには、特に我が国の雇用の7割を占める中小企業がその原資を確保できる取引環境を整備することが重要であるとして、その取引環境の整備の一環として、令和5年11月29日、内閣官房及び公正取引委員会の連名で「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定・公表しました。公正取引委員会は、同指針の公表後、全国8ブロックで企業向けの説明会を実施するなど、同指針の周知徹底に努めています。
なお、同指針においては、労務費の上昇分に係る価格転嫁について、発注者の方から定期的に協議を求めるなど、発注者及び受注者の採るべき行動/求められる行動が掲げられております。このうち「留意すべき点」として記載される内容は、独占禁止法上の優越的地位の濫用又は下請法違反として問題となるおそれがあるとされていることから特に注意が必要です。
令和5年11月8日に公表した「価格転嫁円滑化に関する調査の結果を踏まえた事業者名の公表に係る方針について」に基づいて、前年度に引き続き、事業者名の公表があり得る旨を予告した上で個別調査を実施し、当該個別調査の結果、令和6年3月15日、相当数の取引先に対して協議を経ない取引価格の据え置き等が確認された事業者10名について、独占禁止法第43条の規定に基づきその事業者名を公表しました。なお、事業者間における価格転嫁円滑化に関する調査は令和6年度も引き続き実施される予定です。
価格転嫁等に関する政策につきましては、令和3年12月27日付け「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」を皮切りに、価格転嫁円滑化に向けた法執行の強化が推し進められています。「経済財政運営と改革の基本方針2024 ~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」(骨太方針2024)」においても、適切な価格転嫁を新たな商慣習として定着させるための対策として、独占禁止法や下請法の執行強化に加えて、下請法改正の検討等を行うことが記載されていること等から、今後も価格転嫁に関する更なる改革・執行強化が予想されます。
パートナー 猿倉 健司
アソシエイト 上田 朱音
アソシエイト 加藤 浩太
アソシエイト 福田竜之介
経済産業省は、再生プラスチックの使用に関し、製造業の事業者に対しその使用を義務付けることを内容とする資源有効利用促進法(以下「資源法」といいます。)の改正等を見据え、令和6(2024)年7月12日、「成長志向型の資源自律経済戦略の実現に向けた制度見直しに関する中間とりまとめ(案)」(以下「中間とりまとめ」といいます。)を公表しました。中間とりまとめでは、「資源生産性」の向上に向けた施策として、以下の(1)ないし(3)の事項を検討することが示されています(以下主要なもののみ取りあげます)。
中間とりまとめでは、省資源化、製品寿命・耐久性の向上、再生材やバイオ材の利用拡大、循環配慮設計等をはじめとする、サーキュラーエコノミーの実現において重要な循環指標を整理し、企業における循環実態の可視化・モニタリングや自主的なディスクローズを推進するため、「循環指標ガイドライン」を策定する旨が発表されました。
CEコマース(※)を制度化するために、製品の長期的利用を促す業種を指定するとともに、判断基準を設定し、特に高いレベルのCEコマースについては、ラベリング制度等によって差別化を図ることも検討されています。
(※)CEコマースとは、効率的な物品の利用を促進するビジネスのことをいいます。CEコマースには、シェアリング、サブスクリプションなどのサービス化や、リペア、リマニュファクチャリング、リファービッシュなどの長期利用、リユースなどが該当します。
特定の耐久財に対して、製造事業者とサードパーティとの間で適切に資源循環に関する情報や販売・修理の履歴等を共有することを可能とするため、表示の標準にトレーサビリティのための個別識別子の表示を追加すること、及び「CE情報流通プラットフォーム」を構築することが検討されています。
エコデザイン(循環配慮設計)の促進としては、資源又は部品レベルでの再利用の促進につながる特に優れた循環配慮設計を認定するトップランナー制度の導入や、認証を受けた再生材を利用している割合の製品への表示を許容するラベリング制度の導入などが検討されています。
国内マーケットの健全な育成が必要な資源としてプラスチック等を指定し、再生材の利用に関する義務を拡充すること、及び、特に有用物を多量に含むが国内循環ができていない工程端材を再生利用する義務を措置することが掲げられています。具体的な義務の内容としては、再生材・副産物の利用等に関して取り組むべき事項の明確化、それに関する計画の策定、実績の定期報告の追加(PDCAサイクルの構築)が挙げられています。
また、これらの再生利用義務を果たしている事業者に対して、購入インセンティブを強化するため、公的機関によるグリーン調達や各種補助制度との連携を図ることも掲げられています。
循環資源の量を確保するために必要な制度的措置として、自動車リサイクル法を参考にした個別分野におけるプラスチックの再資源化に対するインセンティブ付与の検討などがなされています。
また、循環資源の質を確保するために必要な制度的措置として、容器包装リサイクル制度の活用等を通じた品質評価項目の整理・可視化や再生材に関する認証制度の導入が挙げられています。
上記(1)ないし(3)の検討事項については、早ければ来年の国会で、法改正されることが予想されるため、今後の動向に注意が必要です。
パートナー 山中 力介
スペシャルカウンセル 柳田 忍
アソシエイト 服部 梓
政府が今年6月21日に発表した「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画2024年改訂版」においては、日本企業の競争力強化のため、ジョブ型人事(職務(ジョブ)ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自分の意思でリ・スキリングを行い、職務を選択できる制度)の導入を進めることとされていました(10頁以下)。これを受け、今年8月28日に、内閣官房は、「ジョブ型人事指針」(以下「指針」といいます。)を公表しました。指針においては、ジョブ型人事制度を導入した20社における、①等級制度、報酬制度、評価制度等の制度の骨格、②採用、人事異動、等級の変更等の雇用管理制度、③ジョブ型人事制度の導入プロセス等が紹介されています。
以下においては、指針を参照しつつ、ジョブ型人事制度の導入等の際に法的に問題となり得る点をご説明いたします。
人事異動について、労働者が自分の意思で職務を選択できるようにするというジョブ型の理念からすると、使用者が命令により職務内容等を一方的に変更することは行わず、従業員が従事する職務の変更は、従業員の意思に基づいて行う形が基本となるようにも思われます。もっとも、指針においては、各企業の実態に応じたジョブ型人事制度の導入を検討することが大切であるとされており(指針1頁及び2頁)、会社が人事異動を命ずる権利を有するタイプのジョブ型人事制度も想定されるところです。実際、指針に掲載されている企業の中には、基本的には本人の意に反する人事異動は行わず、明示的に本人の同意を取得するとしている企業(※1)もありますが、多くの企業は、命令による人事異動の制度を多かれ少なかれ維持していると考えられます(※2)。
ただし、使用者が人事異動を命じる権利を有するとしても、従業員との間で職種や勤務地を限定する合意がある場合には、人事異動の命令はその合意の範囲内に限定される点に留意する必要があります(最二小判令和6年4月26日)。特に、令和6年4月の労働基準法施行規則の改正により、企業には、労働条件通知書に就業場所・職務の変更の範囲を記載することが義務付けられるようになりましたので、使用者において異動を命じることができる範囲について疑義が生じないような記載をすることが重要になります。
他方で、職種限定の合意は、ジョブ型人事制度の理念の端的な現れであるといえ、高度な専門性を有する人材の確保に繋がるという利点があるとされています。また、高度な専門性が期待される職種等については、職種限定の合意をした場合には、当該職務の廃止の場合や、当該職務に必要な能力が不足している場合の解雇が認められやすくなる可能性もあると考えられます。企業においては、これらの考慮要素を踏まえ、自社のニーズや状況に応じて、特定の職種について職種限定の合意を行っていくことも検討に値すると考えられます。
(※1)株式会社資生堂(指針140頁)。
(※2)株式会社日立製作所(指針28頁)、株式会社KDDI(指針115頁)、オリンパス株式会社(指針170頁)等。
指針に掲載されている多くの企業においては、企業内の職務を職責の内容、重さに応じて等級(グレード)に分類・序列化し、等級ごとに給与範囲(レンジ)を設定するという仕組み(いわゆる職務等級制度)を採用しています(※3)。このような職務等級制度を導入した結果、旧制度の下で支給されていた賃金額より賃金額が減少する可能性がある場合、就業規則の不利益変更に該当する可能性があります。その場合、変更後の就業規則に拘束力を持たせるためには、就業規則の変更の内容だけではなく、その手続が合理的なものである必要がありますが、指針においては、各社がジョブ型人事制度を導入する際に行った労使コミュニケーションの概要等、導入プロセスについても説明されており、参考になると考えられます。
また、職務等級制度を導入している企業においては、通常、職務が職責の低いものに変更された場合には、職務等級を引き下げ、それに伴い給与も引き下げることが予定されています(※4)。このような職務等級の引き下げ及びこれに伴う賃金減額を有効に行うためには、就業規則等において明示的な根拠規定を定める等の措置が必要となります。指針で紹介されている事例を見る限り、職務等級の引き下げに伴う賃金減額をする場合には、何らかの激変緩和措置を採用することが一般的になっていると考えられます(※5)。
(※3)富士通株式会社(指針7頁以下)、株式会社日立製作所(指針21頁以下)ほか多数。
(※4)富士通株式会社(指針14頁以下)、株式会社レゾナック・ホールディングス(指針69頁以下)等。
(※5)ENEOS株式会社(指針184頁)、ライオン株式会社(指針197頁)ほか多数。
指針においては、その冒頭においてジョブ型人事制度の狙い・考え方について簡単に言及されているものの、ジョブ型人事制度の内容が具体的にどういうものであるべきかといったガイドラインは示されていません。ただし、指針で紹介されている20社の事例は、事実上政府の「お墨付き」を得た人事制度であるとの見方もできるところであり、これからジョブ型人事制度の導入を検討する企業においては、指針で紹介されている人事制度を参考にしつつ、自社に適した導入方法を検討すべきであると考えられます。
本年9月2日、「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」といいます。)の一部が施行されました。
改正法の概要は、以下のとおりです。
① 戦略的国内投資の拡大に向けて、戦略分野への投資・生産に対する大規模・長期の税制措置及び研究開発拠点としての立地競争力を強化する税制措置を講じる。
② 国内投資拡大に繋がるイノベーション及び新陳代謝の促進に向けて、我が国経済のけん引役である中堅企業・スタートアップへの集中支援等の措置を講じる。
本年9月2日に施行されたもので税務分野に関わるのは、上記①のうち戦略分野国内生産促進税制、上記②のうち中堅・中小グループ化税制などですので、これらの税制の概要について以下で紹介します。
米国のIRA法やCHIPS法、欧州のグリーン・ディール産業計画をはじめ、GX、DX、経済安保等、中長期的な経済成長を牽引する戦略分野の国内投資を強力に推進する世界的な産業政策競争が活発化しています。
そのような、国際競争に対応して内外の市場を獲得すること等が特に求められる革新性の高い商品を定義し(電気自動車等、グリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体)、これを生産・販売する計画を主務大臣が認定した場合、物資毎の生産・販売量に応じた税額控除(EV40万円/台、グリーンスチール2万円/トンなど、生産・販売量に応じたもの)がなされる「戦略分野国内生産促進税制」の措置を受けることができるようになりました。初期投資割合が大きい分野においては初期投資支援が有効ですが、生産段階でのコストが大きく、初期投資促進策だけでは投資判断が容易ではない分野においては、生産・販売段階での支援策が有効であることから、上記のとおり生産・販売量に応じた税額控除措置を設けることで、革新性の高い商品の市場創出を加速化すること等を目的とするものです。
常用従業員数2,000人以下の「中小企業者」や「特定中堅企業者」(常用従業員数2,000人以下の会社等である「中堅企業者」のうち特に賃金水準が高く国内投資に積極的な企業)が成長を伴う事業再編を内容とする計画を「特別事業再編計画」として主務大臣(事業所管大臣)に提出し、その認定を受けた場合に、当該計画に従ってM&A(株式等の取得に限る)を行うと、株式取得価額の最大100%を損失準備金として積み立てて損金算入し、その取り崩しを最長10年間据え置くことを可能とする「中堅・中小グループ化税制」を受けることができるようになりました。特別事業再編計画の認定には過去5年以内に取得金額1億円以上の一定のM&A(株式等の取得に限られない)をしていることが要件の一つとなっているため、複数回のM&Aを行う場合の2回目以降のM&Aとしての株式等の取得について税制上の支援が受けられることになります。
また、特別事業再編計画の認定を受けた特定中堅企業者等がグループ化に向けたM&A(吸収合併・分割など、株式等の取得に限られない)を行う場合には、登録免許税が軽減されます。
これらは、成長意欲のある中堅企業・中小企業が、複数の中小企業を子会社化し、親会社の強みを横展開したり経営を効率化することにより、グループ一体となって成長を遂げることを促すことを目的とした措置です。本税制の適用期限は令和9年3月31日までとなっています。
今回は、本年9月2日に施行された改正法のうち税務分野に関わるものの概要を取り上げました。改正法のうち「イノベーション拠点税制」は来年4月施行予定であるため、今後も動向を注視する必要があります。なお、紙幅の関係から上記の各措置の適用を受けるための要件の詳細や申請方法等は省略いたしました。
パートナー 東山 敏丈
パートナー 川村 宜志
パートナー 猿倉 健司
パートナー 百田博太郎
アソシエイト 甲斐 成輝
経済産業省は、2024年6月7日、今後の中小企業向け資金繰り支援について公表するとともに、関係省庁とともに、官民金融機関等に対し、コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等を要請しました(※1)。以下では、上記の公表及び要請についての概要をご紹介いたします。
(※1)「今後の中小企業向け資金繰り支援について公表します」(METI/経済産業省)
2024年3月8日に公表された「再生支援の総合的対策」において方向性が示されたとおり、同年7月以降は能登半島地震の被災地に配慮しつつ、中小企業向けの各種資金繰り支援策についてはコロナ前の水準に戻し、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援を行うこととされています。
具体的には、以下の3つが内容として掲げられています(※2)
① コロナ資金繰り支援のうち、「コロナセーフティネット保証4号」、「コロナ借換保証」については同年6月末で終了し、コロナ前から実施している「小口零細企業保証」を活用して借換等を支援すること。ただし、能登半島地震の影響が残る地域においては、「コロナ借換保証」を継続すること。
② 同支援のうち、「コロナ経営改善サポート保証」、「コロナ資本性劣後ローン」については同年12月末まで実施を延長し、「信用保証協会向けの総合的な監督指針」の運用を開始するなど、関係機関による支援の強化を図ること。
③ 資材費等の価格高騰対策として実施している日本公庫等の「セーフティネット貸付」については同年12月末日まで実施を継続すること。
(※2)詳しくは「今後の中小企業向け資金繰り支援について」をご参照ください。
コロナ資金繰り支援が転換点を迎えていることを踏まえ、関係省庁から官民金融機関等に対して、事業者支援の徹底等について要請がなされました。同要請の概要は以下のとおりです(※3)。
足下の資材費等の価格上昇や人手不足の影響、日本銀行の金融政策の枠組みの見直しに伴う今後の影響、コロナ資金繰り支援が一部終了または延長すること等を踏まえ、引き続き事業者に最大限寄り添ったきめ細かな支援を徹底すること等。
信用保証協会においては、2024年6月に改正された「信用保証協会向けの総合的な監督指針」を踏まえ、民間金融機関をはじめとした関係機関と連携して、主体的に経営支援の必要性を検討し、支援を行っていくこと等。
信用保証協会を含む官民金融機関等は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の出資するファンド(中小企業成長支援ファンド、中小企業再生ファンド等)の組成・活用について真摯に検討すること等。
信用保証協会及び民間金融機関においては、2024年3月より申込受付を開始した、信用保証付融資における経営者保証の提供を不要とする取組みについて事業者に周知し、積極的な活用を促すこと等。
官民金融機関、中小企業活性化協議会、信用保証協会等においては、外部機関や士業等の専門家と連携しつつ、事業者の経営改善・事業再生支援に積極的に取り組むこと。取組状況については、新たに創設される事業再生情報ネットワークを活用し、関係省庁(金融庁・国税庁・厚生労働省・中小企業庁)を通じて、公租公課の徴収現場(年金事務所、税務署等)等に共有すること等。
(※3)詳しくは「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について」をご参照ください。
上記2のとおり、2024年7月以降の資金繰り支援については、コロナ前の水準に戻し、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援に移行する方針となりました。今後もコロナ禍における資金繰り支援の終了や新支援策の開始等が想定されますので、中小企業の事業再生等における関係者(債務者・債権者・実務専門家等)におかれましては、資金繰り支援の動向を注視する必要があると考えられます。
シニアアソシエイト 冨永 千紘
シニアアソシエイト 眞田 大輝
2024年8月1日、EUにおける包括的なAI規制であるArtificial Intelligence Act(以下「AI Act」(※1)といいます。)が発効しました。
段階的施行が想定されており、利用等を禁止されるAIに関する条項は発効から半年後、汎用目的AIモデルに関する条項は1年後と、間近に迫っています。具体的な施行日や猶予措置については、「EU AI Act(AI規則)を踏まえた日本企業の対応事項」(牛島総合法律事務所 特集記事・2024年9月2日)(以下「本特集記事」といいます。)の4.をご参照ください。
AI ActはEU域内に拠点を有しない日本企業にも適用され得ます。主に、(i)AIシステムにより生成したアウトプットをEU域内で使用するAIのユーザー企業・ベンダーや、(ii)EU域内向けにAIシステムを運用するベンダーへの適用が想定されますが、その他適用される主体・要件については、本特集記事1.をご参照ください。
AI Actは、概要、AIシステムを、そのリスクの強度と範囲によって、①許容できないリスク、②高リスク、③透明性が必要なリスク、④その他に分類し、規制の内容を調整する(①は利用等を禁止、②はシステム要件充足とこれを担保するための登録等の義務を課す、③はAIが動作していることの通知等の義務を課す、④は基本的に規制なしとする)リスクベースアプローチを採用しており(前文(26)等)、違反に対する制裁金は非常に高額となっています(99条・101条)。制裁金の額を含めた分類毎の規制等の概要については、本特集記事2.、及び、その内容を敷衍した「EU AI Act(AI規則)の規制の概要」(牛島総合法律事務所 特集記事・2024年9月2日)ご参照ください。
日本企業の対応については、本特集記事3.でまとめておりますが、まず自社グループにAI Actが適用されるかを確認の上、適用がある場合には、AIの分類ごとに対応事項が異なることを踏まえ、AIマッピング(自社グループが利用・提供するAIの名称、AI Act上の分類等の整理)を行い、それぞれのAIについてAI Act上遵守すべき事項の対応を進めるべきと考えられます。
AI Actの適用がない場合にも、今後AI Actの影響が各国に波及する可能性が十分にあることや、自社グループ内で把握できていないAIの利用を制約なく放置することには日本法上も一定のリスク(個人データ・営業秘密の漏えい、秘密管理性の喪失(不正競争防止法の保護の対象外化)や、第三者提供規制その他個人情報保護法違反のリスク等)が伴うことに鑑み、少なくともAIマッピングと社内規程の整備徹底その他社内体制の構築を進める必要があると考えられます。
(※1)「AI法」や、法的性質が加盟国の立法を待たずに直接適用される規則であることから「AI規則」と呼称されることもあります。
2024年8月2日、AIに関する法規制のあり方を議論するAI制度研究会の初会合が、AI戦略会議と合同で開催されました。これまで日本では、2024年4月19日に経済産業省及び総務省から公表された「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」をはじめとしたガイドライン等をベースとしたソフトローによる規制がなされてきましたが、上記会合では、ハードロー、すなわち、新たな法制度の要否も含めた議論がなされております。まだ、検討段階ではあるものの、上記(1)のAI Actのようにリスクごとに対応を変える制度の在り方のイメージ図も公表されており(内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局「AI政策の現状と制度課題」11頁)、今後、AI Actのようなリスクベースアプローチによる立法がなされる可能性もあります。
これに関連する動向としては、2024年9月5日、米国、英国、EU等が、AIに関する世界初の国際条約となる「AI並びに人権、民主主義及び法の支配に関する欧州評議会枠組条約」(Council of Europe Framework Convention on Artificial Intelligence and Human Rights, Democracy and the Rule of Law)(以下「AI条約」といいます。)に署名している点が挙げられます。日本は精査等を理由に同日の署名は見送りましたが、AI条約の起草に日本も参加していること等から、今後署名・承認し、AI条約を踏まえた立法が日本でも行われることになる可能性があります。
今後も上記立法等に関する動向を注視していく必要がありますので、新たな動向があれば、Client Alert、フラッシュニュース又はニューズレター等で記載する予定です。
パートナー 山内 大将
パートナー 薬師寺 怜
パートナー 辻 晃 平
昨今の米中対立やロシアのウクライナ侵攻を受けて経済安全保障の重要性が高まっており、特にアメリカの輸出規制は、アメリカからの輸出だけではなくアメリカ原産貨物や技術が日本から再び輸出される場合にも適用があるため、これまでのClient Alertにおいても輸出管理に関するアメリカの動向についてお伝えしてきました(※1、※2)。今回は、その続報として、今年8月に米国商務省産業安全保障局(BIS)が発表した輸出管理規則(EAR)の改正についてお伝えします。
(※1)https://www.ushijima-law.gr.jp/client-alert_seminar/client-alert/20221216/
(※2)https://www.ushijima-law.gr.jp/client-alert_seminar/client-alert/client-alert-20230810/
ウクライナ独立記念日の前日である2024年8月23日、BISは、米国によるロシアの軍備増強およびウクライナに対する違法な戦争遂行能力の抑制に向けた継続的な措置の一環として、米国製品および米国ブランド製品のロシア・ベラルーシへの供給を制限することを定めていた輸出管理規則(EAR)を改正し、さらに制限を強化することとなる新たな連邦規則(以下「新規則」といいます。)を公表しました。
新規則によって、カナダ、中華人民共和国、ウクライナのクリミア地域、キプロス、イラン、カザフスタン、キルギス、ロシア、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦を仕向地とする123の事業体がエンティティリスト(米国の安全保障・外交政策上の利益に反する者や大量破壊兵器拡散懸念者等のリスト)に追加されました。
BISは、新規則の目的が以下の点にあると述べています。
① 米国以外で製造された場合であっても、米国に本社を置く企業のブランドを冠したマイクロエレクトロニクスやその他の物品を規制対象とする。加えて、コンピュータ数値制御(CNC)工作機械の操作用ソフトウェアについて、追加のライセンス要件を課すことで、ロシアおよびベラルーシが上記ソフトウェアを更新することを妨げる。
② 上記①の拡大された規制をエンティティリストに掲載されている外国企業(ロシア国外の数十の企業)に適用し、これらの企業への輸出を禁止する。
③ 特定の外国住所との取引を制限するとともに、外国のサービスプロバイダおよび規制対象となる外国住所に関連する疑わしい取引の特定に関する輸出業者向けガイダンスを発行し、ペーパーカンパニーの住所への輸出制限を強化する。
これに加え、BISは、新規則の公表と同日に、新規則の実施の一環として、以下のガイダンスを発行しました。
・米国財務省外国資産管理局(OFAC)のSDNリスト(制裁対象者リスト)に関するエンドユーザー管理ガイダンス:SDNリスト(制裁対象者リスト)に含まれる者への輸出等に関する規制について、Q&A形式でBISの見解を示したもの
・住所のスクリーニングに関するガイダンス:輸出者が取引制限対象である特定の外国住所への輸出に該当するか否かを判定する際の注意事項等について、Q&A形式でBISの見解を示したもの
・「Noロシア」契約条項に関するガイダンス:輸出者が輸入者との間で締結する契約書における再輸出禁止条項(ロシアへの特定の再輸出およびロシア国内での使用を目的とした再輸出を禁止する条項)の要否等について、Q&A形式でBISの見解を示したもの
このように、米国の輸出管理規制は日々更新されるため、日本企業においては引き続き最新の規制状況について把握することが重要です。